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2026年 06月 28日

注目新刊:グレアム・ハーマン『ゲリラ形而上学』法政大学出版局、ほか

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★最近出会いのあった注目新刊を列記します。

ゲリラ形而上学――現象学と事物の大工仕事』グレアム・ハーマン(著)、小嶋恭道(監訳)、飯盛元章(訳)、叢書・ウニベルシタス:法政大学出版局、2026年6月、本体5,800円、四六判上製546頁、ISBN978-4-588-01200-6
建築の装飾――主体性と政治性のあいだ』アントワーヌ・ピコン(著)、千代章一郎(訳)、鹿島出版会、2026年7月、本体3,200円、四六判並製288頁、ISBN978-4-306-04723-5
現代思想2026年7月号 特集=「リベラル」のゆくえ』青土社、2026年6月、本体1,800円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1499-5

★『ゲリラ形而上学』は、米国の哲学者グレアム・ハーマン(Graham Harman, 1968-)の著書『Guerrilla Metaphysics: Phenomenology and the Carpentry of Things』(Open Court Publishing, 2005)の全訳。帯文に曰く「人間がアクセスしうる思索の安全領域をめぐって争う伝統的哲学を斥け、想像可能なあらゆる対象の相互作用を記述するオブジェクト指向哲学/存在論の出発点にして、その後の展開を決定づけたハーマンの初期代表作」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★「オブジェクト指向哲学が主張するのは、人間が花粉や酸素、鷲、風車に対して持つ関係は、これら対象どうしの相互作用と同じものであるということだ」(3頁)。「オブジェクト指向哲学は、対象間の関係に対して、よくある物理的アプローチをとるのではなく、むしろきっぱりと形而上学的アプローチを採用している。実際、オブジェクト指向哲学という名称のかわりに、ゲリラ形而上学という別の名称を使うことができる――この名称が示そうとしているのは、たしかに形而上学に対して現代においてもなおさまざまな批判があるが、わたしはそれらにとくに従うつもりはない、ということだ。/本書は『ゲリラ形而上学』は、前著『道具存在』の続篇である」(4頁)。『道具存在』というのは、ハーマンの単独著第一作『Tool-Being: Heidegger and the Metaphysics of Objects』(Open Court Publishing, 2002;未訳)のこと。

★「オブジェクト指向哲学の主要課題は、〈事物の大工仕事〉である。それが取り扱うのは、別個の存在者のあいだで生じるコミュニケーションと衝突である。そして大工仕事が物語るのは、対象どうしの接合だけでなく、個々の部分から成る対象の内的構成さえも、物理的な仕方ではなく、形而上学的な仕方でなされている、ということだ」(4頁)。ハーマンの既訳書を列記しておきます。

◎グレアム・ハーマン(Graham Harman, 1968-)訳書一覧
四方対象──オブジェクト指向存在論入門』岡嶋隆佑監訳、山下智弘/鈴木優花/石井雅巳訳、人文書院、2017年;The Quadruple Object, Zero Books, 2011.
非唯物論──オブジェクトと社会理論』上野俊哉訳、河出書房新社、2019年; Immaterialism: Objects and Social Theory, Polity Press, 2016.
思弁的実在論入門』上尾真道/森元斎訳、人文書院、2020年;Speculative Realism: An Introduction, Polity Press, 2018.
『ゲリラ形而上学――現象学と事物の大工仕事』小嶋恭道監訳、飯盛元章訳、法政大学出版局、2026年;Guerrilla Metaphysics: Phenomenology and the Carpentry of Things, Open Court Publishing, 2005.

★『建築の装飾』は、フランスの建築史家アントワーヌ・ピコン(Antoine Picon, 1957-)の著書『Ornament: The Politics of Architecture and Subjectivity』(Wiley, 2013)の訳書。訳者あとがきによれば、仏語版も参照したとのことです。帯文に曰く「装飾の黎明から、モダニズムにおける拒絶、ポストモダニズムにおける失敗、そしてデジタル技術による復活まで。時代を横断して装飾の本質を問う、古くて新しい建築史」。アントワーヌ・ピコンの訳書は『建築の物質性』(原著2021年;千代章一郎訳、鹿島出版会、2015年12月)に次ぐ2冊目です。

★「装飾は現代の建築表現において再び重要な位置を占めるようになったが、それは決して付加的な位置づけを取り戻すことではなかった。それどころか、装飾は被膜と切り離すことのできない存在となった。〔…〕現在の状況は、かつて構造的なものと装飾的なものとのあいだに存在した両義性とは比較できないが、多くの場合、装飾的な性質を持つはずのない要素にも影響を及ぼすようになっている。装飾は構造との相互補完的で複雑な駆け引きをする代わりに、構造を汚染しようとしている。/伝統的な装飾と現代の装飾のもうひとつの大きな違いは、少なくとも表面的には、あらゆる種類の象徴的な意味を戦略的に拒否していることである」(第一章「装飾への回帰という問題」63~64頁)。

★『現代思想2026年7月号』の特集は「「リベラル」のゆくえ」。版元紹介文に曰く「世界的な右傾化の進展とともに、政治におけるリベラル勢力の退潮がとみに指摘される現在。その要因はどこにあり、いかにして打開の方途を探るべきなのか。そしてそもそもリベラルとは何であるのか。本特集ではますます混迷する情況を読み解くべく、いまあらためて岐路に立つ「リベラル」の可能性と課題について多様な視点から検討する」。斎藤幸平「リベラルの欺瞞と進歩の終わり」をはじめ、20本の論考を収録。次号8月号の特集は「〈ソロ〉の現在――ひとりでいることの思想」。

★続いて、幻戯書房さんの6月新刊より3点。

夜はわが光』エティエンヌ・ド・グレーフ(著)、梅澤礼(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2026年6月、本体5,700円、四六変型判上製576頁、ISBN978-4-86488-349-8
加藤晴久文集(Ⅰ)文学・思想篇』幻戯書房、2026年6月、本体3,800円、2026年6月、本体3,800円、四六判上製520頁、ISBN978-4-86488-347-4
加藤晴久文集(Ⅱ)語学教育篇』幻戯書房、2026年6月、本体3,800円、四六判上製368頁、ISBN978-4-86488-348-1

★『夜はわが光』は、ルリユール叢書の第61回配本、81冊目。ベルギーの精神科医で作家のエティエンヌ・ド・グレーフ(Étienne De Greeff, 1898–1961)の小説『La Nuit est ma lumière』(Seuil, 1949)の訳書です。帯文に曰く「医師の父と夫をもつ女性が、ある日突然、統合失調症を発症する。患者、家族、看護師はおのおの苦しみながらも救いを探ってゆく——ベルギー精神医学界の権威であるド・グレーフが、専門家の眼と細やかな筆致で描いた、人間の尊厳と愛の形を問う感動の長編小説。本邦初訳」。フランスの精神科医ジャン・レルミット(Jacques Jean Lhermitte, 1877-1959)は「統合失調症患者の人格の変化を、ここまでリアリティをもって描写できたのは、人間の精神についての深い知識がド・グレーフにあったからこそである」と評したとのことです。ルリユール叢書次回配本は7月下旬予定、ウクライナの詩人イワン・コトリャレウシキー(Ivan Kotlyarevsky, 1769–1838)による叙事詩『エネイーダ』です。

★『加藤晴久文集』全二巻は、東京大学名誉教授で仏文学者の加藤晴久(かとう・はるひさ, 1935-)さんの単行本未収録の文業を集成したもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。第Ⅰ巻「文学・思想篇」には、蓮実重彦さんの二篇のコラム「〈わが友〉加藤晴久――世界解読の鋭さ、誤訳を発見する名人」(日本読書新聞、1978年10月30日付)と「加藤晴久さんを送る」(東京大学教養学部報、第400号、1996年2月)、そして、鹿島茂さんのコラム「私の読書日記」(抄録、週刊文春、2016年9月22日号)が併載されています。「この本はサルトルの『存在と無』の「無」に帰するまでの、私のささやかな存在証明である」(「はじめに」より)。加藤さんが蔵書のほとんどを処分したあとに残した「特別な愛着のある本」には、サルトルの『L'Être et le néant』(1961年版)が含まれているとのことです。

★最後に、作品社さんの6月新刊から4点。いずれも、目次詳細を書名のリンク先でご確認いただけます。

著作権全史――古代ギリシアからAI時代まで』デイヴィッド・ベロス/アレクサンドル・モンタギュー(著)、小佐田愛子(訳)、作品社、2026年6月、本体3,200円、四六判並製328頁、ISBN978-4-86793-155-4
ジョン・ボイド――アメリカ軍と戦争を変えた伝説の戦闘機パイロット』ロバート・コーラム(著)、池田忍/冨田直治(訳)、作品社、2026年6月、本体4,500円、四六判並製582頁、ISBN978-4-86793-137-7
現代軍事学入門――文脈・政策・運用・管理』武内和人(著)、作品社、2026年6月、本体2,700円、四六判並製256頁、ISBN978-4-86793-145-5
学から見た人間の〈多様性〉とは何か――遺伝科学と疑似科学』ジョナサン・マークス(著)、桐谷知未(訳)、作品社、2026年6月、本体3,000円、四六判並製264頁、ISBN978-4-86793-154-7

★『著作権全史』は、英国出身の比較文学研究者デイヴィッド・ベロス(David Michael Bellos, 1945-2025)と米国の弁護士アレクサンドル・モンタギュー(Alexandre Montagu)による著書『Who Owns This Sentence?: A History of Copyrights and Wrongs』(Norton, 2024)の訳書。帯文によれば「私たちの生活を取り囲み、巨大マネーマシンとなった「著作権」。その基礎となる、「アイデア」を「所有する」という考えは、いかに生まれたのか? 文化と法制度の、これまでになかったユニークなグローバル史」。

★「今日、世界最大手企業のうち六社は――アップル、マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、メタ、ディズニーで、それぞれの資本評価額は世界各国の国内総生産よりも大きい――その評価額のほとんどが著作権素材の所有と管理によって構成されている。映画や歌といったコンテンツのものもあれば(ディズニー、アマゾン)、意匠登録や特許という形であったり(アップルとマイクロソフト)、ほとんどがコンピュータ・ソフトウェアの形であったりする(アルファベット、メタ)。IP〔知的財産〕の帝国は、現代の封建的領地といえる」(16頁)。

★「したがって、著作権の最近の歴史は、個人の自由と個人の権利の成長の一部としてみるのは公正ではない。むしろ、その逆の方が真実に近いだろう。〔…〕私たちが貧しい小作人なのは変わらず、享受する無形の品々に、巧妙に隠された使用料を払わねばならない。今日の企業地主の広大な領地に侵入する者には災いあれ!/本書はこのような状況がどのようにして生じたのか、その複雑なストーリーを語り、この状況がもたらす実在するリスクについて考察する」(16~17頁)。

★『ジョン・ボイド』は、米国のジャーナリスト、ロバート・コーラム(Robert Coram)による、ジョン・ボイド(John Richard Boyd, 1927-1997)についての評伝『Boyd: The Fighter Pilot Who Changed the Art of War』(Little, Brown and company, 2002)の訳書。「傑作機F-15、F-16生みの親、湾岸戦争勝利の立役者、ハイブリッド戦争の先駆者、そして孫子以来最も影響力のある理論「OODAループ」を発案した米軍随一の戦闘機パイロットをめぐるオーラルヒストリー」(帯文より)。付録としてボイド自身による論考「破壊と創造」(1979年9月3日付)が巻末に配され、投げ込みでB4判サイズの「戦闘機カタログ/ジョン・ボイド人物相関図」1枚が付属しています。戦闘機カタログはフルカラーです。

★『現代軍事学入門』は、軍事学者の武内和人(たけうち・かずと)さんによる書き下ろし。「基礎から学ぶ政軍関係・文民統制・軍事行政・戦略・作戦・戦術・情報・人事・兵站まで。自由・民主主義の下で、戦争と平和をリアルに考えるため、豊富な図解と用語の解説で体系的に学ぶ入門書」(帯文より)。序論で本書の三つの目標が掲げられています。曰く「現代軍事学の内容を一般の読者に向けて可能な限り体系的な形で伝える」こと、「軍事力が、平和と民主主義に必ずしも矛盾しないことを示す」こと、「軍事理論で運用と管理の問題を総合的に取り扱う」こと。「どのような防衛力を持ち、どのように使うべきか〔…〕私が本書で目指したことは、軍事学の知識が軍人だけでなく国民一人ひとりの大きな助けになることを示すことである」(「はじめに」5頁)。

★『学から見た人間の〈多様性〉とは何か』は、米国の生物人類学者ジョナサン・マークス(Jonathan Mitchell Marks, 1955-)の著書『Understanding Human Diversity』(Cambridge University Press, 2024)の訳書。「本書は自然(生物)人類学と進化遺伝学の視点から、人間の差異のパターンに関する科学的な事実を明らかにし、疑似科学の神話から生まれた誤解をひとつひとつ解きほぐしていく」(「訳者あとがき」より)。コスタス・カンポーラキスによる「序文」に曰く「遺伝学的に言えば、内部で同質の集団や他と完全に区別できる集団に人々を正確に分ける方法は存在しない。マークスによれば、いちばん重要なのは、わたしたちの進化が生物文化的なものであること、つまりわたしたちの文化と生物学が絶えず相互作用していることを忘れてはならないという点だ。そのことを認識して初めて、人間の多様性を理解できる」(12頁)。


by urag | 2026-06-28 22:36 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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