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2026年 06月 15日

注目新刊:バシュラール『火の精神分析』平凡社ライブラリー、ほか

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★注目の文庫新刊既刊を列記します。

火の精神分析』ガストン・バシュラール(著)、前田耕作(訳)、平凡社ライブラリー、2026年6月、本体1,800円、B6変型判並製304頁、ISBN978-4-582-77015-5
わが思想の歩み』アラン(著)、長谷川宏(訳)、光文社古典新訳文庫、2026年5月、本体1,400円、文庫判472頁、ISBN978-4-334-11005-5
発売日:2026.05.12
ハンムラビ法典』中田一郎(訳)、講談社学術文庫、2026年5月、本体1,500円、A6判352頁、ISBN978-4-06-543866-4
ジャイナ教』渡辺研二(著)、講談社学術文庫、2026年5月、本体1,300円、A6判272頁、ISBN978-4-06-543800-8
日本のタワー』橋爪紳也(著)、講談社学術文庫、2026年5月、本体1,100円、A6判224頁、ISBN978-4-06-543723-0
口語訳 養生訓』貝原益軒(著)、松宮光伸(訳注)、角川ソフィア文庫、2026年5月、本体1,540円、文庫判464頁、ISBN978-4-04-400894-9
旧暦大全』岡田芳朗(著)、角川ソフィア文庫、2026年3月、本体1,450円、文庫判352頁、ISBN978-4-04-400890-1
日本書紀』遠藤慶太(編)、角川ソフィア文庫、2026年2月、本体1,540円、文庫判464頁、ISBN978-4-04-400848-2
山海経の妖怪たち――古代中国の奇獣図鑑』森和(著)、角川ソフィア文庫、2026年2月、本体1,600円、文庫判512頁、ISBN978-4-04-400784-3
前世の記憶をもつ少年――全訳勝五郎再生記聞』平田篤胤(著)、今井秀和(訳)、角川ソフィア文庫、2026年1月、本体1,100円、文庫判224頁、ISBN978-4-04-400843-7
数学入門』ホワイトヘッド(著)、長谷川珈/高橋達二(訳)、西郷甲矢人(監訳)、角川ソフィア文庫、2025年12月、本体1,360円、文庫判352頁、ISBN978-4-04-400877-2

★平凡社ライブラリーの新刊と光文社古典新訳文庫の既刊書から。『火の精神分析』は、フランスの科学哲学者で詩学者のガストン・バシュラール(Gaston Bachelard, 1884-1962)の著書『La Psychanalyse du feu』(Gallimard, 1938)の全訳に、同書英訳版へのノースロップ・フライによる序文も訳出し(樋渡雅弘訳)、さらにモネやシャガール、バルザックやマラルメなどを論じた論考6篇を併録した訳書(せりか書房、改訳版、1999年)を文庫化したもの。親本は1969年に刊行されたあと、1974年に改訂増補版が出て、最終改訳版が1999年に出版された、という流れかと思いますが、各図書館の書誌情報の変遷にはいささか混乱があるようです。

★帯文に曰く「神話、文学、夢想、宗教、科学史を横断し、火に託された欲望と禁忌、破滅と再生への憧れをたどりながら、人間の無意識と想像力の根源を照らし出す。詩的想像力を論じたバシュラールの代表作」。訳者はすでに亡くなっておられ、訳文の調整の有無については特記されていません。巻末解説は、橋爪恵子さんによる「バシュラール詩学への誘い」。平凡社ライブラリーでのバシュラールの既刊書には『科学的精神の形成――対象体認識の精神分析のために』(及川馥訳、2012年4月)がありますが、現在は品切中。

★『火の精神分析』冒頭から引きます。「自分が客観的であると信じるためには、ひとつの対象について語りさえすればよい。ところが、まず最初に対象を選びとるや、対象は思っている以上のものを明かす。だから世界についての自分の思考を根本的なものだと信じることは、往々にして自分の精神の未熟さを打ち明けているようなものだ」(10頁)。

★『火の精神分析』は、「物質についての想像力論」と題された一連の連作の第一巻で、第二巻は『水と夢』(小浜俊郎/桜木泰行訳、国文社、1969年;及川馥訳、法政大学出版局、2008年;新装版、2016年)、第三巻は『空と夢』(宇佐見英治訳、法政大学出版局、1968年;新装版、2016年)、第四巻は第一部が『大地と意志の夢想』(及川馥訳、思潮社、1972年)、同巻第二部が『大地と休息の夢想』(饗庭孝男訳、思潮社、1970年)です。

★『わが思想の歩み』は、フランスの哲学者アランの著書『Histoire de mes pensées』(Gallimard, 1936)の全訳。帯文に曰く「曖昧な世界のなかで思索を重ねる営みのゆたかさと魅力。考えることの自由をつらぬいた、哲学者の軌跡」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。長谷川さんによる、光文社古典新訳文庫でのアランの訳書は、2008年『芸術の体系』と2015年の『芸術論20講』に続く3冊目です。『わが思想の歩み』の既訳文庫には、森有正『わが思索のあと』(中公文庫、2018年)がありますが、現在品切中。

★講談社学術文庫の先月既刊書から。『ハンムラビ法典』は、巻末特記に曰く「2002年に「古代オリエント資料集成 1」としてリトンから刊行された『ハンムラビ「法典」』(第二版)を増補・改訂したもの」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。訳者による巻頭の「講談社学術文庫版刊行にあたって」によれば、「改訂第三版のための原稿が完成した段階で、不運にも出版社リトンの大石昌孝氏が病に倒れ、リトンが解散のやむなきに至った」と。さらなる不運には、第二版までの印刷所も倒産したとのことで、旧版は古書価高騰が避けられなかったと思われます。改訂第三版を同文庫が救ったことは非常に幸いでした。

★『ジャイナ教』は、2006年に現代図書から刊行された『ジャイナ教入門』の改題文庫化。カバー表4紹介文に曰く「あらゆるものに生命の存在を認め、尊ぶ稀有な宗教の教義、歴史、戒律、信徒の実践をまとめた格好の概説書」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻末特記によれば「学術文庫への収録にあたり、サンスクリット語、パーリ語、プラークリット語(アルダマーガディー語)の表記を今日通用のものに変更し、文献の表記を統一したほか、適宜改訂を施し」たとのこと。ジャイナ経研究者で東京大学アジア研究図書館助教の河﨑豊さんが巻末解説を寄せておられ、故人である著者の詳細な文献案内をさらに補っておられます。

★『日本のタワー』は、河出ブックスの1冊として2012年に刊行された『ニッポンの塔――タワーの都市建築史』の改題文庫化。帯文に曰く「浅草十二階・東京タワー・通天閣・太陽の塔……塔(タワー)には進歩と郷愁の物語がある――多数の貴重図版とともに辿る、日本人の心の建築史」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。新たに加わった「学術文庫版へのあとがき」によれば、「若干の修正と補筆を行った」とのことです。

★角川ソフィア文庫のここ半年の既刊書から。『口語訳 養生訓』は、巻末の編集付記によれば「『口語 養生訓』(日本評論社、2000年)および『女大学と房中訓――貝原益軒を読み解く』(百年書房、2023年)の一部を合本としてまとめ」たもの。帯文に曰く「三百年読み継がれる健康指南の書、漢方の専門家による現代語訳と注釈」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。『養生訓』の現代語訳は文庫版で複数の既刊書があり、伊藤友信訳(講談社学術文庫、1982年)や松田道雄訳(中公文庫、1977年;改版、2020年)はいずれもロングセラーです。

★『旧暦大全』は、日本史家の岡田芳朗(おかだ・よしろう, 1930-2014)さんの著書『改訂新版 旧暦読本』(創元社、2015年)を改題文庫化したもの。「十二支・二十四節気・七十二候・九星とは。季節の変化から占いまで、知ると愉しい暦の知識」(帯文より)。同文庫での岡田さんの既刊書には2012年の『暦ものがたり』があります。

★『日本書紀』は、文庫内シリーズ「ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」の1冊。「神武東征、壬申の乱、大化改新――古代国家の姿を現代語訳で読む」(帯文より)。意外すぎてにわかに信じがたいのですが、角川文庫で「日本書紀」が刊行されるのはこれが初めてのようです。「古事記」が1956年以降、訳注版、新訂版(訳注補訂版)、ビギナーズ・クラシックス初版(現代語訳付)、新版(現代語訳付)と半世紀以上にわたりリレーされてきたこととは対照的であるように見えます。

★『山海経の妖怪たち』は、版元紹介文に曰く「晋代の郭璞(かくはく、276~324)による『山海経図讃』の原文・現代語訳、『山海経』の図300点以上、そして著者による解説を収録した、書き下ろしの文庫」。帯文では「古代中国のヘンな生き物たち。411体を現代語訳と図で知り尽くす」。森和(もり・まさし, 1974-)さんは、杏林大学教授で、ご専門は中国古代史。なお山海経の文庫版での類書には『山海経――中国古代の神話世界』(高馬三良訳、平凡社ライブラリー、1994年)があります。

★『前世の記憶をもつ少年』は、書き下ろし。平田篤胤が8歳の少年から聞き取りした転生譚をまとめた『勝五郎再生記聞』の現代語訳。池田冠山「武州多摩郡中野村勝五郎再生前生話」現代語訳も併録。それぞれ原文も収めています。帯文に曰く「後に小泉八雲英訳し海外に広めた奇談「ほどくぼ小僧」の原型」と。小泉八雲の「勝五郎の転生記」は、同文庫の『怪談 決定版』(池田雅之編訳、2025年8月)などで読むことができます。なお、今井さんによる同文庫での既刊書には『世にもふしぎな化け猫騒動』(2020年7月)や、『天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞』(2018年12月)があります。後者は平田篤胤『仙境異聞』の抄訳です。

★『数学入門』は、英国の哲学者で数学者のアルフレッド・ノース・ホワイトヘッド(Alfred North Whitehead, 1861-1947)の著書『An Introduction to Mathematics』(Williams & Northgate, 1911)の訳書。帯文に曰く「「あたりまえのこと」を深く考えると、数学になる。哲学の巨人に教わる数学の本質」。前世紀後半における既訳書には、大出晃訳『数学入門』(ホワイトヘッド著作集第二巻、松籟社、1983年)があります。ホワイトヘッドの著書の文庫化は本書が初めてで、画期的なことです。



by urag | 2026-06-15 02:34 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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