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2026年 06月 01日
★最近出会いのあった新刊を列記します。 『現代思想2026年6月号 特集=アラビア哲学――もうひとつの哲学史へ』青土社、2026年5月、本体1,800円、A5判並製246頁、ISBN978-4-7917-1497-1 『荻生徂徠全詩(3)』荒井健/田口一郎(訳注)、東洋文庫:平凡社、2026年5月、本体5,000円、B6変型判上製函入356頁、ISBN978-4-582-80934-3 『還暦之記・古稀之記〈現代語訳〉』元田永孚(著)、野口宗親(編訳)、藤原書店、2026年5月、本体16,000円、A5判上製728頁、ISBN978-4-86578-499-2 『子宝と子返し〈増補新版〉――近世農村の家族生活と子育て』太田素子(著)、藤原書店、2026年5月、本体4,400円、四六判並製496頁、ISBN978-4-86578-497-8 『伊都子の食卓〈増補新版〉』岡部伊都子(著)、藤原書店、2026年5月、本体2,700円、四六判並製360頁、ISBN978-4-86578-498-5 ★『現代思想2026年6月号』の特集は「アラビア哲学」。版元紹介文に曰く「アラビア哲学の地位は、この百年の間に劇的に変化した。「中世」の概念が一変したことを背景に、アラビア哲学の重要な哲学者の紹介が相次ぎ、彼らが生みだした独特の用語や概念も疎遠ではなくなりつつある。本特集では、ますます注目を集めるこの巨大な伝統に光をあて、その全体像に迫る」と。小村優太さん、アダム・タカハシさん、山内志朗さんの三氏による討議「ギリシャから遠く離れて」に始まり、15本の論考を収録。目次詳細は指名のリンク先でご確認いただけます。 ★新連載として山口尚さんによる「東京学派と革命」の第一回「「駒場カルテット」という事件——イントロダクション」が掲載されています。「駒場カルテット」というのは、廣松渉、大森荘蔵、坂部恵、井上忠、の4氏のことで、小林康夫さんが英文で発表した論考「The Komaba Quartet: A Landscape of Japanese Philosophy in the 1970s」に拠っているとのことです。この連載は「廣松・大森・坂部・井上の順で駒場カルテットの面々を論じ、その後の終結部〔コーダ〕においてこれらの男たちのしごとをはみ出す1970年代の革命性に触れる」(198頁)とのことです。 ★『荻生徂徠全詩(3)』は、全4巻の第3巻。巻5「七言絶句百十六首」、巻6「七言絶句八十七首」を収録。『荻生徂徠全詩』全4巻は「古文辞の学を唱道した荻生徂徠。典拠を多用した難解なその漢詩全作品を、読み下し、詳細な注、現代語訳により明瞭に読み解く、かつてない試み」。東洋文庫次回配本は6月、『尹致昊日記(10上)1932-1934年』『尹致昊日記(10下)1935年』。全11巻中の第10巻2分冊。 ★藤原書店さんの5月新刊は3点。『還暦之記・古稀之記〈現代語訳〉』は、帯文に曰く「明治天皇の“思想的支柱”(ドナルド・キーン評)は、いかなる男であったのか? 明治天皇の侍読・侍講を20年にわたって務め、「教育勅語」の作成に関わるなど、明治の政治・教育に大きな影響を及ぼした元田永孚(もとだ・ながざね, 1818-1891)。自らの生涯に重ねて、歴史の動きや、横井小楠ら関係者の人物像などを、驚異的な記憶力で詳述、権力の中枢にあった人物の自伝という稀有な歴史史料でありながら、難解ゆえに活用されてこなかった書物を完訳。明快に現代語訳し、詳細な注と解題・解説を付した決定版」。 ★巻末解説には二書の概要が端的に次のように書かれています(626~627頁)。 『還暦之記』文政元年(1818)~明治11年(1878) (1)江戸末期の上級武士の家庭とその教育。 (2)藩校時習館の教育およびその改革。 (3)実学党誕生の経緯、展開、離脱、分裂。 (4)家督を継ぎ騎馬使番、京都留守居役、中小姓頭、用人兼奉行等を経験しながら見聞したペリーの浦賀来航依頼、激動する幕末・明治初年における熊本藩や世の中の様子。 (5)侍読・侍講としての元田と明治天皇とのかかわり。 (6)明治初年から西南戦争までの世の中や宮中の動向。 (7)天皇補佐のための侍補の設置および彼ら宮中保守派の天皇親政運動。 などが描かれている。特に実学党の誕生や侍補の設置については、その当事者であったため、貴重な資料となっている。 『古稀之記』明治11年(1878)~明治23年(1890) (1)還暦の祝いから明治23年新年講書進講までの世の中の動きや宮中の動向。 (2)天皇側近(侍読・侍補・宮中顧問官・枢密顧問官)として、また天皇の寵愛を背景にその政治「顧問(相談役)」として、元田の政治・経済・教育・外交等へのかかわり。 が描かれている。明治の重臣たち(伊藤・岩倉ら)ですら彼の意向を気にした。特に教育面で、明治12年「教学聖旨」以降、従来の知育中心の欧米流教育政策に反対、天皇尊崇や「忠孝」中心の徳育教育に変えるよう教育行政に干渉、結果として「教育勅語」の作成に関わり、その後の国民教育の方針を決定づけた人物であるだけに、その動機や考え、敬意を知るための貴重な資料である。 ★『子宝と子返し〈増補新版〉』は、2007年に刊行された教育学者で和光大学名誉教授の太田素子(おおた・もとこ, 1948-)さんの著書の増補版。「近世農村の家族にあった、子どもへの情愛と、丁寧な子育て。嬰児殺し(子返し)、捨子などの事態とそれらをめぐる意識のありようを直視しつつ、日記などの生活記録を丹念に分析し、共感的な理解に満ちた子ども観、仕事を介した大人―子どものコミュニケーションなど、江戸の豊かな人間形成力を描き好評を博した初版に、江戸期の出生抑制・避妊と性愛に焦点をあてた2編を増補」(帯文より)したもの。 ★2篇というのは、「「求子」と避妊の社会史――近世前期東北農民の性愛と家族関係」(初出1996年を改稿)と「近世中・後期会津農村にみるセクシュアリティ――産科医と性愛文学についての覚書」(初出1997年を改稿)。「増補新版に際して避妊の研究を少し加えさせていただいた。後嗣確保に関心の深かった近世社会では14世紀中国医学から情報を得て、受胎のメカニズムを考察している。当初は「求子」のためだった考察が、近世後期には避妊への手がかりとして損人に語られる地域もあった。埋もれそうになった避妊の研究が著書の中に残ることになり、とても感謝している」(「増補新版にあたって」vii頁)。 ★『伊都子の食卓〈増補新版〉』は、2006年に刊行された随筆家の岡部伊都子(おかべ・いつこ, 1923-2008)さんの著書の増補版。藤原良雄さんによる「編集後記」によると、「食」をテーマにした甘辛社の『あまカラ』誌での連載(1957年~)から“手料理”“手仕事”が書かれた11編を新たに収録したとのこと。巻頭には三砂ちづるさんによる「一ページの宇宙――新版に寄せて」が加わっています。「この本の多くの随筆は200字足らずである。俳句のような随筆。きらめくような才能である。すべての食べ物に岡部伊都子の人生のどこからかが、きりとられ、ひきだされている。随筆とは、人生のひきだされるもの。一ページだけの宇宙を提示するために。それらのきっかけとしての、食べもののひとつひとつは、ただ、愛おしい」(iv頁)。
by urag
| 2026-06-01 01:36
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