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2026年 05月 25日
★まず注目の中公文庫新刊既刊を列記します。 『ドストエフスキー全短篇Ⅰ』ドストエフスキー(著)、米川正夫(訳)、中公文庫、2026年5月、本体1,200円、文庫判488頁、ISBN978-4-12-207797-3 『ドストエフスキー全短篇Ⅱ』ドストエフスキー(著)、米川正夫(訳)、中公文庫、2026年5月、本体1,200円、文庫判488頁、ISBN978-4-12-207798-0 『フーコーの振り子(上)』ウンベルト・エーコ(著)、藤村昌昭(訳)、中公文庫、2026年3月、本体1,500円、文庫判432頁、ISBN978-4-12-207774-4 『フーコーの振り子(中)』ウンベルト・エーコ(著)、藤村昌昭(訳)、中公文庫、2026年4月、本体1,600円、文庫判464頁、ISBN978-4-12-207786-7 『フーコーの振り子(下)』ウンベルト・エーコ(著)、藤村昌昭(訳)、中公文庫、2026年5月、本体1,700円、文庫判456頁、ISBN978-4-12-207796-6 『夜の酒場』萩原朔太郎(著)、中公文庫、2026年4月、本体900円、文庫判256頁、ISBN978-4-12-207784-3 『ねむれなくなる本』岩本敏男(著)、中公文庫、2026年4月、本体980円、文庫判304頁、ISBN978-4-12-207780-5 『不思議の国のアリス/鏡の国のアリス』ルイス・キャロル(著)、高山宏(訳)、佐々木マキ(絵)、中公文庫、2026年3月、本体1,450円、文庫判408頁、ISBN978-4-12-207775-1 『アメリカとアメリカ人――未来のためのエッセイ』ジョン・スタインベック(著)、大前正臣(訳)、中公文庫、2025年12月、本体920円、文庫判224頁、ISBN978-4-12-207738-6 ★中公文庫の新刊既刊から。『ドストエフスキー全短篇』全二巻は、巻末特記によれば『ドストエフスキイ前期短編集/後期短編集』(福武文庫、1987年)を元に、同署未収録の作品を『ドストエーフスキイ全集』(河出書房新社、1969~1971年)より増補して再編集したもの。カバー表4紹介文と目次を転記しておきます。 第Ⅰ巻 版元紹介文: 貧乏官吏が遺したもの(「プロハルチン氏」)。孤独な青年の恋(「白夜」)――数々の長篇で有名なドストエフスキーは、短編の名手でもあった。その全短篇を文庫で初めて集成する。第Ⅰ巻には、華々しいデビュー以降、シベリア流刑により文筆活動を中断させられるまでの「前期」に書き継いだ八篇を収める。 目次: プロハルチン氏 九通の手紙に盛られた小説 ポルズンコフ 弱い心 人妻と寝台の下の夫 正直な泥棒 クリスマスと結婚式 白夜 訳者解説――河出書房新社版『ドストーエフスキイ全集』より|米川正夫 解説――福武文庫版『ドストエフスキイ前期短編集』より|江川卓 第Ⅱ巻 版元紹介文:墓地でさざめく死者たち(「ボボーク」)。自殺を決意した男が夢に見たユートピアの悲劇(「おかしな人間の夢」)――突然の逮捕とシベリア流刑による活動中断を経て、作家はその才能をますます深化させていった。第Ⅱ巻には、大長篇執筆のかたわら個人雑誌『作家の日記』に発表した短篇を中心に、後期作品十一篇を収める。 目次: 初恋 いやな話 鰐 ボボーク キリストのヨルカに召されし少年 百姓マレイ 百歳の老婆 宣告 おとなしい女 おかしな人間の夢 現代生活から取った暴露小説のプラン 訳者解説――河出書房新社版『ドストーエフスキイ全集』より|米川正夫 解説――福武文庫版『ドストエフスキイ前期短編集』『同 後期短編集』より|江川卓 ★『フーコーの振り子』全三巻は、没後10年記念出版。文春文庫上下巻(1999年6月)を三分冊にして再刊するもの。上巻は「ケテル」「ホフマー」「ビナー」「ヘセド」を収録。巻末付録は、訳者の藤村昌昭さんによる「「語り」と「騙り」の見分け方――「フーコーの振り子」のメッセージ」(初出は「朝日新聞」1993年4月30日付夕刊)。中巻は「ゲブラー」と「ティフェレト」の途中までを収め、巻末付録は和田忠彦さんによる「文体〔スタイル〕は世界の造形から――『フーコーの振り子』を読むために」(書き下ろし)。下巻は「ティフェレト(承前)」「ネツァー」「ホド」「イェソド」「マルクート」を収録し、巻末には訳者あとがき「残された三枚のファイル」と、池澤夏樹さんによる解説(書き下ろし)を併載。 ★『夜の酒場』は、文庫オリジナルの詩文集。「酒をめぐる詩歌、時代風俗を活写した随筆を収める」(帯文より)。目次は紀伊國屋書店さんの単品ページに転記されていますが、巻末附録の情報が不完全なので補うと、江戸川乱歩「「猫町」」(「小説の泉」誌第4集、矢貴書店、1948年)、荻原葉子「晩酌」(『父・萩原朔太郎』筑摩書房、1959年)、伊藤信吉「「さけば」の詩人」(『酒』誌、1991年5月)の三篇が併録されています。 ★『ねむれなくなる本』は、「離婚、免罪、心中、誘拐、地球滅亡――日常に潜む不安や悲しみを子供の眼でとらえた、読むと背筋が寒くなる伝説の短編集」(帯文より)。巻末の編集付記を補いつつ引くと「本書は、単行本『ねむれなくなる本』〔偕成社、1984年〕に、短編集『赤い風船』〔理論社、1971年〕より二篇〔「ゆうれいのオマル」「あいうえお」、さらに『赤い風船』あとがきも併載〕、および書籍未収録のエッセイを加えたものです」と。エッセイというのは「私は留守です」(初出「日本児童文学」1983年4月)、「ひとり暮らし」(初出「京都新聞」1984年5月19日付夕刊)、「(教職についてすぐにも私は……」(初出「京都教育大学同窓会だより」第50号、2001年5月10日)の三篇。巻末には、上野瞭さんによる「友よ、さらば――追悼・岩本敏男」(初出「日本児童文学」2002年1・2月号)、能町みね子さんによる書き落とし解説「一すじの道」を収めています。 ★『不思議の国のアリス/鏡の国のアリス』は、亜紀書房より刊行された『不思議の国のアリス』(2015年)、『鏡の国のアリス』(2017年)の合本文庫化。文庫版訳者あとがき「ルイス・キャロル、理系バロック」が加わっています。巻末の編集付記によれば「底本中、明らかな誤植は訂正し、新たにルビを付した。また、一部の訳文を改訂した」とのこと。 ★『アメリカとアメリカ人』は、1969年にサイマル出版会より単行本が刊行され、2002年に平凡社ライブラリーで再刊されたものの再文庫化。編集部注と年譜が加えられています。ライブラリーに付されていた亀井俊介さんによる解説は省かれています。カバー表4紹介文に曰く「人種間の差別の構図、大統領への矛盾する感情――『怒りの葡萄』から『チャーリーとの旅』を経てスタインベックが見出したのは、祖国への愛着と痛烈な洞察。〈アメリカとは何か〉を探求した最晩年のエッセイ」。原著は『America and American』(1966)で、生前最後に刊行された作品です。スタインベックは1968年12月20日に心臓麻痺で死去しています。中公文庫でのスタインベック作品は本書が初めてです。 ★続いて、注目のちくま文庫新刊既刊より。 『諸星大二郎自選短篇集 幻』諸星大二郎(著)、ちくま文庫、2026年5月、本体1,000円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-44100-3 『山尾悠子偏愛アンソロジー 構造と美文』山尾悠子(編)、ちくま文庫、2026年3月、本体1,000円、文庫判320頁、ISBN978-4-480-44095-2 『だめ連の働かないでレボリューション!』神長恒一/ペペ長谷川(著)、ちくま文庫、2026年3月、本体900円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-44090-7 ★『諸星大二郎自選短篇集 幻』は、あとがきを参照すると画業40年超の記念出版であった『諸星大二郎自選短篇集 幻妖館へようこそ』(MANGATRIX、2019年)を底本に、収録策のいくつかを差し替え、構成を変更して文庫化したもの。カバー表4紹介文によれば「土の中から現れた人びと、いにしえの中国の伝奇譚、謎の屋敷に囚われた少女、魔術で怪物を召喚する高校生たち、河童伝説を調査する妖怪ハンター、古書店に出現した奇態な本、エリック・サティへの幻想譜……古今東西の怪異譚を渉猟し、妖しくたゆたう異界への扉をひらく異能のマンガ家が、自ら選んだ傑作15篇。蠱惑的な「幻視の国々」へと読者を誘う招待状。カバーイラスト描きおろし」。収録作品15篇の作品名は書名のリンク先の目次欄でご確認いただけます。諸星大二郎(もろぼし・だいじろう, 1949-)さんの作品は、ちくま文庫では1991年に『完全版 マッドメン』が刊行されており、昨年末(2025年12月)の「ちくま文庫創刊40周年記念」として復刊されています。なお他社本ですが、小学館では著者の画業55周年記念出版として『諸星大二郎短編集成』全12巻の刊行が2026年1月から開始されています。 ★ご参考までに、MANGATRIX版とちくま文庫版の収録作品を比較してみます。 MANGATRIX版(14篇、星野之宣寄稿漫画2頁を併録) 鳥人の森(描き下ろし新作34頁) 涸れ川 →ちくま文庫再録 異界録 →ちくま文庫再録 Gの日記 →ちくま文庫再録 ことろの森 →ちくま文庫再録 赤い唇 石の中の女 奇妙なレストラン →ちくま文庫再録 奇妙なおよばれ →ちくま文庫再録 本の魚(栞と紙魚子) →ちくま文庫再録 黒石島殺人事件 加奈の失踪 夏の庭と冬の庭 小ねずみと小鳥と焼きソーセージ ちくま文庫版(15篇、巻末にあとがきあり) 涸れ川 異界録 (「諸怪志異」シリーズより) Gの日記 (「グリムのような物語」シリーズより) 鏡島 (「妖怪ハンター」シリーズより) 影の街 ことろの森 (「あもくん」シリーズより) 魔術 (「栞と紙魚子」シリーズより) 淵の女 (「妖怪ハンター」シリーズより) それは時には少女となりて 鳥居の先 (「あもくん」シリーズより) 奇妙なおよばれ (「グリムのような物語」シリーズより) 奇妙なレストラン 遠い国から 第一信 本の魚 (「栞と紙魚子」シリーズより) (眼鏡なしで)右と左に見えるもの~エリック・サティ氏への親愛なる手紙~ ★『構造と美文』は、書名にある通り「山尾悠子偏愛アンソロジー」。ボルヘス、バラード、ラヴクラフト、ブッツァーティ、マンディアルグ、モラヴィア、ユルスナール、シュオップなどの17作品に、山尾さんの最近作掌編「室内」(初出「文藝」2021年秋季号、再録にあたり加筆修正を加えたとのこと)と、編者あとがき「頭蓋骨に咲く花々の記」を収録。17作品の明細は書名のリンク先でご確認いただけます。「昔から厳然と好みの定まっている意中の作品をリストアップしたところ、今さらながら一定の方向性があることに気がついた。ざっくりした言いかただが、どうやら〈構造のある小説〉および〈極度に人工的な文章、スタイル〉の二方向が我が好みらしいのだ。ここのところは、あるいは読書人生の最初期に出会った澁澤龍彦の影響が大きいのかもしれない」(編者あとがき、295頁)。「塔や迷宮や架空の街や崩壊する世界など、多くは極度に人工的な作風のものを好み、好きなように読んできた。譚の世界の不滅を信じ、豊かに栄えることを記念しつつ」(同、309頁)。 ★『だめ連の働かないでレボリューション!』は、巻末特記によれば「『だめ連の「働かないで生きるには?!」(筑摩書房、2000年)を元に大幅に再編集し加筆して、改題したもの」とのこと。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻末解説は高祖岩三郎さんによる「羊の皮をかぶった狼を讃えて」と、雨宮処凛さんによる「だめ連の奇跡」の二篇で、帯には栗原康さんによる推薦文が載っています。 ★神長さんは「文庫版まえがき」でこう説明しています。「単行本刊行から25年後の文庫化ということで、状況の変化なども大きく、今回内容を大幅に変更させていただきました。/各章のぼく(神長)とぺぺ長谷川のトークは、なるべく元の会話を残すようにしましたが、ぼくの発言部分はかなりの部分変更してあります。それはせっかく本を出し多くの読者の方に本書を読んでいただくにあたって、やっぱり今の自分の思いを伝えたいという気持ちからです。2023年2月に多くの仲間たちにおしまれつつ胆管肝がんで亡くなったぺぺ長谷川の発言にかんしては、もちろんほとんど手を加えずそのままです(一部二人の会話そのものを削ったところなどもあります)。つまりぺぺとぼくの二人の会話は、2000年のぺぺと2025年のぼくとの会話ということになります。ぺぺが亡くなったという事情もあり、ちょっと変わった作りになっています。/それ以外の部分では単行本での対談や座談会、写真、イラストなどを一部をのぞいて割愛させていただき、より今に即した形であらたに一つの座談会と、多くの方々にテーマごとの文章を書いていただき、加えました。今回参加していただいた方々は、ほとんどがわれわれだめ連二人との友人、仲間だったり、交流してきた人たちです」(19~20頁)。 ★このほか最近では以下の新刊既刊との出会いがありました。 『野生の教養Ⅲ――旅する教養/芸術の旅』丸川哲史/倉石信乃(編)、法政大学出版局、2026年5月、本体2,800円、四六判並製254頁、ISBN978-4-588-13048-9 『難しい地名もスラスラ読める! ふりがな日本地図帳』平凡社地図出版(編)、今尾恵介(コラム監修)、平凡社、2026年5月、本体2,500円、A4判並製128頁、ISBN978-4-582-41822-4 『まいあ Maia―SWAN actⅡ― 完全版 第4巻』有吉京子(著)、平凡社、2026年4月、本体1,400円、4-6判並製264頁、ISBN978-4-582-28888-9 『昭和の母と娘たち』小石房子(著)、作品社、2026年6月、本体1,800円、四六判上製98頁、 ISBN978-4-86793-156-1 『獄に暮らせば――「21年7カ月の獄中日記から」』重信房子(著)、作品社、2026年6月、本体3,200円、四六判並製352頁、ISBN978-4-86793-148-6 『言葉と出来事』阿部大樹(著)、作品社、2026年5月、本体2,600円、四六判並製192頁、ISBN 978-4-86793-146-2 『バッファロー・ドリーマー』ヴァイオレット・ダンカン(著)、小澤なつみ(訳)、作品社、2026年5月、本体2,200円、四六判並製232頁、ISBN978-4-86793-152-3 ★法政大学出版局さんの新刊より。『野生の教養Ⅲ』は、明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻総合芸術系と教養デザイン研究科が共同で編んでいる論文集『野生の教養』の第三弾。第一弾は『野生の教養――飼いならされず、学び続ける』岩野卓司/丸川哲史編、2022年11月)、第二弾は『野生の教養Ⅱ―― 一人に一つカオスがある』岩野 卓司/丸川哲史編、2024年10月)でした。第三弾の主題は「教養×旅×芸術」(帯文より)。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。編者の丸川さんは巻頭の序文「月日は百代の過客にして」で、本書について倉石さんの『孤島論』(インスクリプト、2025年4月)の「合わせ鏡となるべきもの」と綴っておられます。本書には丸川さんによる写真が複数挿入されており、キャプションはあえて付されていないようですが、第Ⅲ部の扉に掲げられた写真に写っているのは、若い時分のぺぺ長谷川さんではないかと思います。 ★平凡社さんの新刊既刊より。『ふりがな日本地図帳』は、「すべての地名にふりがなが付いた、はじめての日本地図帳」(帯文より)。しばしばどう読むのか分からない地名が多いですから、たいへん助かります。労作ではないでしょうか。随所にちりばめられたコラムも楽しいです。たとえば53頁の「長野にある読書ダム」など。『まいあ 完全版 第4巻』は完結巻。完全版特典は、描きおろし番外編8ページ、巻頭カラー&扉絵コレクション。初回出荷分限定でポストカードが付いています。なお、今秋(2026年9月)に『SWAN』の初の舞台化が新国立劇場で決定しているとのことです。 ★作品社さんの新刊より。いずれもまもなく発売。『昭和の母と娘たち』は、あとがきの文言を借りると「昭和という時代に生きた母と五人姉妹のエッセイで、前作『男にあらずんば子供にあらず。――女性史と私』〔作品社、2023年〕の続編」とのこと。『獄に暮らせば』は、帯文に曰く「元日本赤軍リーダーが綴った、満期出所時までの心情とその葛藤」。第一部「逮捕から確定判決まで(2000年11月~2010年8月)」、第二部「癌闘病と執筆の受刑生活」の二部構成。『言葉と出来事』は、「精神科医の哲学的断想集」(帯文より)。著者と哲学者の古田徹也さんとの特別対談冊子が附録に付いています。著者の「あとがき――日記という形式について」の全文が作品社さんのnoteで公開されています。『バッファロー・ドリーマー』は、「金原瑞人選モダン・クラシックYA」シリーズの最新作。カナダ先住民の作家でネイティヴ・ダンサー、教育者のViolet Duncanの小説『Buffalo Dreamer』(Nancy Paulsen Books, 2024)の訳書。「この作品は、主人公のサマーが、クリー族をはじめとする北アメリカ先住民の経験したつらい過去を学んでいくお話です」(訳者あとがきより)。全米図書賞最終候補作とのことです。
by urag
| 2026-05-25 02:22
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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