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2026年 04月 13日
![]() ★まず、平凡社ライブラリーの注目新刊および既刊を列記します。 『指示と存在――存在しないものに固有名はあるか』ソール・クリプキ(著)、八木沢敬(訳)、平凡社ライブラリー、2026年4月、本体2,000円、B6変型判並製304頁、ISBN978-4-582-77012-4 『民主主義の非西洋起源について――「あいだ」の空間の民主主義』デヴィッド・グレーバー(著)、片岡大右(訳)、平凡社ライブラリー、2026年4月、本体1,700円、B6変型判並製216頁、ISBN978-4-582-77011-7 『チェコ21世紀SF短編集』ズデニェク・ランパス(編)、平野清美(編訳)、平凡社ライブラリー、2026年3月、本体2,000円、B6変型判408頁、ISBN978-4-582-77010-0 『暴力の考古学――未開社会における戦争』ピエール・クラストル(著)、毬藻充(訳)、松村圭一郎(解説)、平凡社ライブラリー、2026年1月、本体2,000円、B6変型判192頁、ISBN978-4-582-77006-3 『ユートピア文学選集』コンドルセ/カベ/ゴダン/ユゴー/タルド/ゾラ/ウーセ/フルネル/リラダン/クロ/モーパッサン(著)、小倉孝誠(監訳)、平凡社ライブラリー、2025年11月、本体2,200円、B6変型判並製472頁、ISBN978-4-582-77001-8 ★『指示と存在』はライブラリーオリジナルの訳し下ろし。米国の哲学者ソール・クリプキ(Saul Aaron Kripke, 1940-2022)が1973年にオックスフォード大学の「ジョン・ロック講義」で行なった6回の講義をまとめた『Reference and Existence: The John Locke Lectures』(Oxford University Press, 2018)の訳書です。帯文に曰く「『名指しと必然性』の理論を推し進め、言葉と世界の結びつきを根底から問い直した、存在しないものをめぐる言語哲学」。『名指しと必然性(Naming and Necessity』(原著1972年刊)は、1970年にプリンストン大学で行われた講義をまとめたもの。その訳書『名指しと必然性――様相の形而上学と心身問題』(八木沢敬/野家啓一訳、産業図書、1985年;底本はHarvard University Press版、1980年刊)は日本で長く読み継がれています。 ★『民主主義の非西洋起源について』は、米国の人類学者デヴィッド・グレーバー(David Graeber, 1961-2020)の論考「There Never Was a West: Or, Democracy Emerges From the Spaces In Between」(2005年)の日本語訳を中心に、仏語訳版『La démocratie aux marges』(2014年)に付されたアラン・カイエによる「フランス語版のためのまえがき」と、グレーバーの関連論考「惜しみなく与えよ――新しいモース派の台頭」(2000年)の2篇の翻訳を併載して、以文社より2020年に刊行された単行本の、文庫再刊です。カバー表4紹介文に曰く「私たちが「西洋」と呼んできたものは、いつ、どのようにしてかたちづくられたのか――。国家による統治の外に広がる空間に民主主義の萌芽を見いだし、多種多様な人びとの衝突と対話から立ち上がるもうひとつの世界史を描き出す。「啓蒙の脱植民地化」の出発点にして、最良のグレーバー入門」。巻末に新たに訳者による「六年後の春に――平凡社ライブラリー版に寄せて」が加わっています。 ★『暴力の考古学』は、フランスの人類学者ピエール・クラストル(Pierre Clastres, 1934-1977)の著書『Archéologie de la violence : La guerre dans les sociétés primitives』(Éditions de l'Aube, 1997)の、現代企画室より2003年に刊行された全訳書の再刊。訳者はすでに逝去されているため、明らかな誤りのみ修正され、参考文献の書誌情報がアップデートされています。帯文に曰く「未開社会の自由を「暴力」から読み解き、政治権力のあり方を問い直した、夭折の人類学者による古典的名著」。巻末解説「未開の戦争と国家の戦争」は、文化人類学者の松村圭一郎さんによるもの。 ★『チェコ21世紀SF短編集』と『ユートピア文学選集』はどちらも興味深いアンソロジー。帯文の文言を借りると、前者は「チャペック以降、政治への鋭い批判と奇抜な設定で世界中の読者を魅了し続けるチェコSFから、21世紀に発表された選りすぐりの7編を収録」。後者は「空想社会をめぐる旅行記からSF小説、未来都市のルポから思弁的エッセイまで。近代化と産業化が加速する19世紀フランスで生まれた、来るべき社会を想像するためのアンソロジー」。目次詳細はそれぞれの書名のリンク先でご確認いただけます。 ★このほか最近では以下の新刊との出逢いがありました。 『樹木譜』奥田實(著)、平凡社、2026年3月、本体12,000円、A4変型判上製360頁、ISBN978-4-582-54271-4 『悪いキツネをおさえつけることはできない――気高き保守・国粋・愛国主義者の皆さんと「悪魔のアボカド」の戦い』丸屋九兵衛(著)、平凡社、2026年3月、本体2,600円、4-6判並製320頁、ISBN978-4-582-83959-3 『異境のフロイト――精神分析のはじまりの肖像』上尾真道(著)、岩波書店、2026年3月、本体3,200円、四六判上製296頁、ISBN978-4-00-061750-5 『日常的抵抗への招待――後期新自由主義における子どもと教育』桜井智恵子(著)、洛北出版、2026年3月、本体2,600円、四六判上製336頁、ISBN978-4-903127-38-5 『文藝 2026年夏季号』河出書房新社、2026年4月、本体1,400円、A5判並製472頁、雑誌07821-05 ★『樹木譜』は、北海道在住の写真家、奥田實(おくだ・みのる, 1948-)さんのボタニカル・フォト・コラージュ図鑑『野草譜』(平凡社、2021年)に続く新作。「北海道の大地の魅力的な樹木を克明に撮影し、植物が季節ごとに見せる様々な姿をひとつの画面にまとめた画期的な図鑑&植物誌。全157種」(帯文より)。全頁フルカラーの、迫力ある大判図鑑です。 ★『悪いキツネをおさえつけることはできない』は、評論家の丸屋九兵衛さんがwebちくまで連載していた時事コラム(2018年2月~2022年12月、全55回)から「ポップカルチャー寄り」だという諸篇を外して、1冊にまとめたもの。帯文に曰く「「共産党より左側」で知られ、学術的分野からオタク的カテゴリーまでムヤミに幅広くカバーする「万物評論家」丸屋九兵衛。多様性社会と多文化共生に抗戦を続ける憂国の志士たちの骨を拾いつつ、トランプ政権2.0とシンクロした世界同時多発右傾化に至る道を、さまざまな視点から解読する」(帯表4紹介文より)。 ★『異境のフロイト』は、広島市立大学准教授でご専門が精神分析と思想史の、上尾真道(うえお・まさみち, 1979-)さんによる、『ラカン 真理のパトス――一九六〇年代フランス思想と精神分析』(人文書院、2017年)以来の単独著。帯文に曰く「精神分析の創始者、ジークムント・フロイトが歩んだ軌跡は、決して一本道ではなかった。挫折や葛藤を含み込んだ彼の思想は、他なるものと接する地点、すなわち「異境」のなかでこそ形づくられる。異境を見据えつつ、あるいは自らも異境に留まり続けた、まったく新しいフロイトの肖像」。 ★『日常的抵抗への招待』は、版元紹介文に曰く「ケアや支援がいかに便利使いされ、そこに教育や福祉の業界はどのように加担し、加担させられているかについて、まずは歴史的に把握する。そのうえで、「稼げる個人」とは別のあり方と自由について、アナキズムや政治思想史の知見、各地で行なわれている実際の取り組みなどを紹介しながら、素描を試みる」。著者の桜井智恵子(さくらい・ちえこ)さんは関西学院大学人間福祉研究科教授。ご専門は、教育社会学、社会思想史で、直近の単独著既刊書に『ポンコツでいこう――反開発主義による社会の再生産』(いのちのことば社、2025年9月)があります。 ★『文藝 2026年夏季号』の特集は二本立て。特集1は「失恋、あるいは恋の不可能性」、特集2は「緊急寄稿 殺したくも殺されたくもない私たちのNO WAR」。前者にはサリンジャーの短篇「イレーン」柴田元幸訳、論考として2篇、堀内翔平「試行錯誤のできない社会で、恋の不可能性を考える」、難波優輝「恋愛の根源的はちゃめちゃさとおもちゃの恋」、そして瀬戸夏子、宮崎智之、青木耕平の3氏による選書の「もうすぐ絶滅するという恋愛についてのブックガイド」などが含まれています。このほかの目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。
by urag
| 2026-04-13 00:46
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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