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2026年 04月 05日
★最近出会いのあった新刊を列記します。 『世界の意味』ジャン=リュック・ナンシー(著)、伊藤潤一郎/横田祐美子(訳)、叢書・ウニベルシタス:法政大学出版局、2026年4月、本体4,300円、四六判上製352頁、ISBN978-4-588-01197-9 『京都に、劇場をつくる 京都で、演劇をする』あごうさとし/仲正昌樹(著)、作品社、2026年4月、本体2,700円、四六判並製260頁、ISBN978-4-86793-139-4 『ヘーゲル哲学と性』岡崎佑香(著)、人文書院、2026年3月、本体4,500円、四六判上製280頁、ISBN978-4-409-03147-6 『政治的エコロジー ――資本新世末期における包摂と排除』土佐弘之(著)、人文書院、2026年3月、本体3,000円、四六判並製250頁、ISBN978-4-409-03146-9 『中立という選択肢――エーモン・デ・ヴァレラとアイルランドの第二次世界大戦』小関隆(著)、レクチャー第二次世界大戦を考える:人文書院、2026年3月、本体2,500円、四六判並製196頁、ISBN978-4-409-51125-1 ★『世界の意味』は、フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy, 1940-2021)の著書『Le sens du monde』(Galilée, 1993)の全訳。帯文に曰く「世界に意味はない。だからこそ生きる意味がある。私たちは、この腐敗した世界の終わりすら越えて行く。砂漠を行き抜くための指南書――翻訳困難と言われたナンシーの主著、30余年の時を経ていま、全訳なる」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。 ★「おそらく意味〔サンス〕には三つの形式的構造しかない。(一)世界秩序あるいは習わしの遵守――そこでのあらゆる不幸は悲劇的な違背であり、真理へと通じている(オイディプス)。(二)救済――そこでの不幸は病という現世での疎外であり、その終わりなき治癒/償いという悲劇を招く(パルジファル)。(三)世界へと向かって存在することの露呈としての実存、あるいは世界であることの露呈としての実存――そこでの悪と善ならびに「最悪」と「最善」は同じ外延をもつようにみえるし、それゆえに露呈はそのたびごとに決定されなければならない。あるいはまた、そこでの意味〔サンス〕は、与えられ、媒介され、不意撃ちされたものとしての意味〔サンス〕である。別の言い方をすれば、記号の総体としての、意味作用〔シニフィカシオン〕としての、意味生成〔シニフィアンス〕の起源としての意味〔サンス〕である」(「悲嘆。苦痛。不幸」263~264頁)。 ★訳者あとがきに、伊藤潤一郎さんの印象的な言葉があります。「なぜ2025年になって訳者たちの訳出ペースが上がったのか〔…〕ひとつのブレイクスルーが訪れたのである。それは、ナンシーをデリダのメガネをとおして読まなくなったときにやってきた。これまでナンシーはデリダと深い友愛で結ばれた哲学者であり、思想的にもデリダの影響を強く受けているといわれてきた。実際、本書にもデリダは登場し、「差延」と題された節まである。それゆえに多くの研究者はデリダとナンシーの思想的才がどこにあるのかといった論文を大量に生み出してきた(実際、私自身も過去に何度か書いている)。しかし、デリダをとおしてナンシーを見るというそのような見方こそが、『世界の意味』を読むうえでは邪魔になるのだ」(307~308頁)。 ★『京都に、劇場をつくる 京都で、演劇をする』は、THEATRE E9 KYOTO芸術監督のあごうさとし(1976-)さんと、同氏が構成し演出する演劇作品のドラマトゥルクを担当してきた仲正昌樹(なかまさ・まさき, 1963-)さんの共著。第一部「京都の劇場と演劇」では、仲正さんが聞き手となりあごうさんがこれまでの活動や上演作を語ります。第二部「あごうさとし氏のドラマトゥルク(兼訳者として)」は仲正さんが上演作を振り返るもの。第三部「各作品台本」では4本の台本「パサージュⅠ」「純粋言語を巡る物語――バベルの塔Ⅰ」「Pure Nation 2」「触覚の宮殿」を収録。付録は、仲正さんによる「クライスト『ペンテジレーア』の訳者解説」。これは、論創社より2020年に刊行された仲正さん訳『ペンテジレーア』の訳者解説に若干の修正を加えて再録したものです。 ★人文書院さんの新刊より3点。『ヘーゲル哲学と性』は、博士論文「ヘーゲル哲学における性」(京都大学、2023年)に「大幅な加筆修正を施したもの」。本書は「ヘーゲルの思想を「性Geschlecht」の観点から論じるものである。論理学、自然哲学、そして精神哲学から成るヘーゲルの哲学体系において性差やセクシュアリティがどのように論じられているかを批判的に検討すること、これが本書の取り組む課題である。本書はこの課題を、ヘーゲル自身の手によるテクストに加え、ヘーゲルの講義を聴講した者たちの手によるテクストを読解することで遂行する。前者としては著作刊行物、草稿、そして自筆メモを検討し、後者については批判的・歴史的な校訂を経て近年新たに公刊された校訂版『ヘーゲル全集』第二部「講義筆記録」を精査の対象とすることで、ヘーゲル哲学における「性」の内実を解明することを目指す」(序章、9頁)。岡崎佑香(おかざき・ゆか)さんは現在、早稲田祭学文学学術院文学部講師。 ★『政治的エコロジー』は、帯文に曰く「深まる資本主義の危機にともなう社会‐自然の破局を回避する政治はいかにして可能か。人新世、人間中心主義、環境正義、採掘主義、ファシズム、人種主義など数々のテーマを分析し、ノン・ヒューマンを含む道徳的共同体を構想する」。土佐弘之(とさ・ひろゆき, 1959-)さんは神戸大学名誉教授。ご専門は国際関係論・政治社会学です。人文書院から上梓された単独著には2020年の『ポスト・ヒューマニズムの政治』があります。 ★『中立という選択肢』は、新シリーズ「レクチャー第二次世界大戦を考える」の第1弾。帯文に曰く「チャーチルを苛立たせたアイルランド首相デ・ヴァレラ。大国の戦争に巻き込まれまいとする小国にとって、中立は実践可能な選択肢なのか? ナチズムとの「聖戦」に背を向けるのは正当なのか? 中立の光と影を描く」。著者の小関隆(こせき・たかし, 1960-)さんは京都大学人文科学研究所教授。新シリーズに先行する「レクチャー第一次世界大戦を考える」(全12冊、人文書院、2010~2014年)では、『徴兵制と良心的兵役拒否――イギリスの第一次世界大戦経験』(2010年)を上梓されています。 ★新シリーズ第2弾は4月発売予定。小関さんら5氏によるアンソロジー『第二次世界大戦再考』です。第3弾以降の予定については版元さんのプレスリリース「レクチャー第二次世界大戦を考える 3月より刊行開始」に掲出されています。 ★ちくま学芸文庫の4月新刊5点を列記します。 『中国の神話・伝説』伊藤清司(著)、ちくま学芸文庫、2026年4月、本体1,500円、文庫判416頁、ISBN978-4-480-51356-4 『増補 南島の神話』後藤明(著)、ちくま学芸文庫、2026年4月、本体1,400円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-51355-7 『言語起源論の系譜』互盛央(著)、ちくま学芸文庫、2026年4月、本体1,800円、文庫判608頁、ISBN978-4-480-51354-0 『武器と農具の江戸時代――—刀狩りから幕末まで』武井弘一(著)、ちくま学芸文庫、2026年4月、本体1,300円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51353-3 『シュラクサイの誘惑――現代思想にみる無謀な精神』マーク・リラ(著)、佐藤貴史/高田宏史/中金聡(訳)、ちくま学芸文庫、2026年4月、本体1,300円、文庫判336頁、ISBN978-4-480-51337-3 ★『中国の神話・伝説』は、慶應義塾大学名誉教授の伊藤清司(いとう・せいじ, 1924-2007)の著書(東方書店、1996年)の文庫化。カバー表4紹介文の文言を借りると、『史記』『漢書』『書経』『韓非子』などの古典に見られる「古い神話や伝承の断片〔…〕を、「天体」「神界からの贈り物」「怪物退治」「洪水/旱魃」「異界訪問」「英雄出生」「異類女房」などに分類して集成」したもの。巻末特記によれば「文庫化にあたっては明らかな誤り等は、適宜修正をほどこしている」とのこと。杏林大学准教授の森和さんによる解説「多彩な研究蓄積がひらく中国の神話伝説の豊かな世界」が加わっています。 ★『増補 南島の神話』は、喜界島サンゴ礁科学研究所学術顧問の後藤明(ごとう・あきら, 1954-)さんの著書『南島の神話』(中公文庫、2002年)の増補文庫化。カバー表4紹介文に曰く「本書は英雄マウイの伝説からハワイの創世詩クムリポまで、この海洋世界に生まれた多彩な神話の数々を紹介する。〔…〕再刊に当たり、南島語圏から人類全体へと射程を広げて神話と文化の関係を考察した補章「人類と日本列島の古層神話――世界神話学からの挑戦」を収録。豊かな南島神話世界への格好の入門書」。 ★『言語起源論の系譜』は、言語論、思想史がご専門の互盛央(たがい・もりお, 1972-)さんの著書(講談社、2014年)の文庫化。親本は第36回サントリー学芸賞芸術・文学部門を受賞しています。帯文に曰く「「言語」とは何か――すべてはそこに収斂する。ヨーロッパの特異性を浮かび上がらせる傑作思想史」。巻末特記によれば「文庫化にあたっては適宜訂正を行い、索引〔人名・作品名〕も付した」と。ちくま学芸文庫版あとがきに「今回、改めて読みなおしてみて、本書の筆致のそこここに今は失われた激しさや怒りのようなものを感じた。それはこの10年で失った若さの表れかもしれず、あるいはこの10年がもたらした諦めの証かもしれないが、文庫版にするにあたって緩和するほかなかったことを、ここに記しておく。/それでもなお失われていない怒りがある」とあります。 ★『武器と農具の江戸時代』は、金沢大学教授でご専門が日本近世史の、武井弘一(たけい・こういち, 1971-)さんの著書『鉄砲を手放さなかった百姓たち』(朝日選書:朝日新聞出版、2010年)を、加筆修正し、補論2篇「新たな刀狩り論へ」「日本人は銃とどのように向き合ってきたのか――銃社会日本の歴史」と文庫版あとがきを加えて改題文庫化したもの。カバー表4紹介文に曰く「なぜ、百姓は鉄砲を必要としたのか。鳥、猪、鹿などの獣との関わり、農耕の営みなど、百姓が自然といかに向き合ってきたのかを描」く、と。 ★『シュラクサイの誘惑』は、コロンビア大学歴史学部人文学教授で西洋政治思想、宗教思想が専門のマーク・リラ(Mark Lilla, 1956-)の著書『The reckless mind : intellectuals in politics』(New York Review Books, 2001)の全訳書(日本経済評論社、2005年)に、原著2016年版の「あとがき 信仰のみ」を新たに訳出して文庫化したもの。中金聡さんによる「文庫版訳者あとがき」によれば「文庫化を機に、表記の統一を徹底し、引用・引照文献の書誌情報を最新化するなど、あらたな読者のニーズにも応えられるよう若干の手を加えた」とのことです。カバー表4紹介文に曰く「20世紀の名だたる哲学者たち──ハイデガー、アーレント、ヤスパース、シュミット、ベンヤミン、コジェーヴ、フーコー、デリダ──を取り上げ、政治と哲学との複雑なもつれを丹念に解きほぐしていく」。リラの既訳書には以下のものがあります。 『神と国家の政治哲学――政教分離をめぐる戦いの歴史』原著2008年;訳書2011年、鈴木佳秀訳、NTT出版。 『難破する精神――世界はなぜ反動化するのか』原著2016年;訳書2017年、山本久美子訳、NTT出版。 『リベラル再生宣言』原著2017年;訳書2018年、夏目大訳、早川書房。
by urag
| 2026-04-05 21:24
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