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2026年 03月 30日
★河出書房新社さんの人文書新刊より。 『解き放たれた無――啓蒙と絶滅』レイ・ブラシエ(著)、仲山ひふみ(監訳)、小林卓也/島田貴史(訳)、河出書房新社、2026年3月、本体5,900円、46変形判上製484頁、ISBN978-4-309-23175-4 『言語の人類史――言葉の進化の謎を解く』スティーヴン・ミズン(著)、岩坂彰(訳)、河出書房新社、2026年3月、本体4,500円、46変形判上製544頁、ISBN978-4-309-23183-9 ★『解き放たれた無』は、英国出身の哲学者レイ・ブラシエ(Raymond Brassier, 1965-)の主著『Nihil Unbound: Enlightenment and Extinction』(Palgrave Macmillan, 2007)の全訳。凡例によれば仏語訳版のために著者が書き下ろした第七章〔絶滅の真理〕の新しい最終パラグラフと仏訳版序文を併せて訳出したとのことです。 ★「哲学とは肯定の媒体でも正当化の源泉でもなく、むしろ絶滅の思考機関である〔…〕。絶滅の主体は、生と死のあいだの差異を捨て去ることとして実存するのである。生と死の差異の現象学的な意味を、この切り離す主体の同一性は、否定する。この否定は、〈なしで[lessness; sans]〉の啓蒙としての意味の絶滅を実現する道具である。すなわちこの否定が、思考に普遍的な空虚化の力を付与する解き放ち〔アンバインディング〕を実行するのである」(418~419頁)。 ★帯文に曰く「思弁的実在論が生み出した空前の問題作」。千葉雅也さんの推薦文も帯に載っています。「自然科学と情報がすべてだという今、哲学を「無化する」ぎりぎりまで追い詰めていくのだから、この本は難しい。その難しさが、面白い」。巻末には監訳者の仲山ひふみさんによつ40頁強の懇切な解説が付されています。 ★『言語の人類史』は、英国の考古学者スティーヴン・ミズン(Steven Mithen, 1960-)の著書『The Language Puzzle: How we Talked Our Way Out of the Stone Age』(Profile Books, 2024)の訳書。 帯文に曰く「サルの鳴き声、声道のしくみ、石器の製作、子どもの言語学習、火の使用、脳の進化、遺伝、意味や発音の変化、抽象思考、象徴性……言語はなぜ、いつ、どのように生まれたのか? 言語学、考古学、人類学、遺伝学、神経科学、心理学、動物行動学……各分野先端の知見を駆使し、『心の先史時代』『歌うネアンデルタール』のミズン教授が、人類最大の謎、壮大なジグソーパズルに挑む」。 ★新曜社さんの近刊および既刊書より。 『現象学入門』ダン・ザハヴィ(著)、中村拓也(訳)、新曜社、2026年4月、本体2,900円、4-6判並製288頁、ISBN978-4-7885-1922-0 『事実のあと――二つの国の四〇年と人類学者』C・ギアツ(著)、小泉潤二(訳)、新曜社、2026年2月、本体4,800円、4-6判上製288頁、ISBN978-4-7885-1905-3 『イマジネーション講義――フィクションの現象学』ポール・リクール(著)、ジョージ・H・テイラー/ロバート・D・スウィーニー/ジャン゠リュック・アマルリック/パトリック・F・クロスビー(編)、山野弘樹(訳)、2026年1月、本体6,500円、A5判上製528頁、ISBN978-4-7885-1907-7 ★『現象学入門』は、まもなく発売。デンマークの哲学者でコペンハーゲン大学教授のダン・ザハヴィ(Dan Zahavi, 1967-)の著書『Phenomenology: The Basics』(Routledge, 2019; 2nd edition, 2025)の全訳。帯文に曰く「現象学の基本概念と方法論的意義を明晰に示しつつ、今日の研究動向まで視野に収める入門書」。目次構成は書名のリンク先でご確認いただけます。 ★「第二版へのまえがき」によれば、第二版は改訂増補版であり「最初の八章への変更はかなり控えめである。それらはいくつかのささいな微調整と文体上の改善、そして第七章〔空間性と身体性〕の場合にはいくつかの圧縮を含んでいる。しかし、序論は拡張され、第九章〔批判的・政治的現象学〕は新しく、第一〇章から第一二章〔古典的応用――心理学・精神医学・社会学;質的研究と認知科学における現行の論争;方法・態度・理論的枠組み〕は書き直されている」とのことです。 ★同まえがきによれば、本書はもともとデンマーク語で2003年に出版された入門書の英語版として構想されたそうで、結果的に「テクスト全体を練り直し、書き直」したとのことです。2003年の元版の方は、2007年のドイツ語訳版からの日本語訳『初学者のための現象学』(中村拓也訳、晃洋書房、2015年)が刊行されています。 ★『事実のあと』は、米国の人類学者クリフォード・ギアツ(Clifford Geertz, 1926-2006)の自伝的著書『After the Fact: Two Countries, Four Decades, One Anthropologist』(Harvard University Press, 1995)の訳書。帯文に曰く「人類学のみならず人文社会科学全般に解釈学的転回をもたらしたギアツ。自身のフィールドワークを振り返りながら、「事実とは何か、事実を知るとはどういうことか」を理解しようとした彼の思想と方法の核心を具体的に語る」。訳者の小泉潤二さんはギアツの元同僚とのことです。 ★『イマジネーション講義』は、フランスの哲学者ポール・リクール(Paul Ricœur, 1913-2005)が1975年にシカゴ大学で行なった講義の記録『Lectures on Imagination』(The University of Chicago Press, 2024)の訳書。帯文に曰く「イマジネーションは世界を創造する――西洋思想の伝統において、「どこにもないもの」は周縁的なテーマとされてきた。本講義でリクールは、哲学の泰斗たちとの対話を経て、新たな現実を生み出すフィクションの理論を構想する」。リクールは1975年にイマジネーションをめぐるもうひとつの講義も行っています。、姉妹編であるその講義は『イデオロギーとユートピア――社会的想像力をめぐる講義』(川﨑惣一訳、新曜社、2011年)として翻訳されています。 ★作品社さんの近刊、金剛出版さんと晶文社さんの新刊を列記します。 『ぼそぼそ声のフェミニズム 増補新版』栗田隆子(著)、作品社、2026年4月、本体2,200円、四六判並製256頁、ISBN978-4-86793-137-0 『転落男性論――孤立、暴力、ホモソーシャル』西井開(著)、金剛出版、2026年3月、本体3,000円、四六判並製240頁、ISBN978-4-7724-2164-5 『吉本隆明全集月報集』晶文社編集部(編)、晶文社、2026年3月、本体2,500円、四六判上製356頁、ISBN978-4-7949-8043-4 ★『ぼそぼそ声のフェミニズム 増補新版』は、2019年に刊行された、文筆家の栗田隆子(くりた・りゅうこ, 1973-)さんの著書の増補新版。帯文に曰く「「カッコ悪いフェミニストがここにいる」――「弱さ」と共にある、これからの思想のかたちを描き話題を呼んだ名著に、書き下ろし「新しい「ぼそぼそ」たちへ」を加えた、私たちのためのフェミニズム宣言書」。来月(2026年4月)末には青土社から『暗中模索のフェミニズム』も発売予定です。 ★『転落男性論』は、帯文に曰く「男性を縛ってきたのは、男らしさを達成したいという上昇の願望ではなく、ここから転げ落ちたくないという不安ではなかったか? 語られなかった男性たちの経験を〈転落〉の現象から見つめる、比類なき臨床社会学的試論」。著者の西井開(にしい・かい, 1989-)さんは臨床心理士で立教大学特任教授。著書に『「非モテ」からはじめる男性学』(集英社新書、2021年)があります。 ★『吉本隆明全集月報集』は、帯文に曰く「総勢62名が語る、私の吉本隆明。晶文社版『吉本隆明全集』の月報を集約し、略年譜(生活史)付す」。略年譜の作成者は石関善治郎さん。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻末特記によれば「再録にあたり、旧字を新字にあらため、明らかな誤植と思われる個所は訂正した」とのことです。なお御息女の漫画家、ハルノ宵子さんが寄稿した文章の多くは『隆明だもの』(晶文社、2023年)にまとまっています。 ★以文社さんの3月新刊は1点2冊。 『分析手帖――概念と形式 第一巻』ピーター・ホルワード/ノックス・ピーデン(編)、ジャック=アラン・ミレール/イヴ・デュルー/セルジュ・ルクレール/ジャン=クロード・ミルネール/フランソワ・ルニョー/アラン・バディウ/アラン・グロリシャール(著)、佐藤嘉幸/坂本尚志(監訳)、伊藤蓮/上尾真道/近藤和敬/田中祐理子/中村大介/信友建志/箱田徹/宮﨑裕助(訳)、以文社、2026年3月、本体5,000円、 A5判並製440頁、ISBN978-4-7531-0400-0 『分析手帖――概念と形式 第二巻』ピーター・ホルワード/ノックス・ピーデン(編)、フランソワ・ルニョー/パトリス・マニグリエ/エドワード・ベアリング/トレーシー・マクナルティ/エイドリアン・ジョンストン/スラヴォイ・ジジェク/エティエンヌ・バリバール/イヴ・デュルー/アラン・グロリシャール/ジャン=クロード・ミルネール/ジャック・ブーヴレス/ジャック・ランシエール/アラン・バディウ(著)、佐藤嘉幸/坂本尚志(監訳)、伊藤蓮/上尾真道/近藤和敬/田中祐理子/中村大介/信友建志/箱田徹/宮﨑裕助(訳)、以文社、2026年3月、本体5,000円、A5判並製512頁、ISBN978-4-7531-0401-7 ★『分析手帖』は、帯文に曰く「1960年代のフランス現代思想において、アルチュセール、ラカン、カンギレム、フーコー、デリダ、バディウら、錚々たる執筆陣が寄稿し、新たな知を生み出す場所として機能した思想雑誌、その全貌(全二巻)」。「第一巻は『分析手帖』全10号のなかから重要論考を集めて再録。編者であるピーター・ホルワードによる『分析手帖』全体の歴史的・思想的・政治的文脈を論じた詳細な序論を付す」。「第二巻は、『分析手帖』について新たに寄せられた論文。当時の編集委員会のメンバーや参加した人々へのインタビューからなる」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。 ★藤原書店さんの3月新刊は3点。 『大宅壮一 昭和史の証言――「無思想人宣言」の思想』大宅壮一(著)、大宅映子(監修)、森健(解説)、藤原書店、2026年3月、本体3,300円、四六判並製576頁、ISBN978-4-86578-493-0 『戦後行政の構造とディレンマ〈新版〉――予防接種行政の変遷』手塚洋輔(著)、藤原書店、2026年3月、本体3,200円、四六判並製320頁、ISBN978-4-86578-492-3 『清朝期のモンゴル――その統治と人の移動』岡洋樹(著)、岡田英弘(監修)、清朝史叢書:藤原書店、2026年3月、本体6,200円、A5判上製440頁、ISBN978-4-86578-488-6 ★『大宅壮一 昭和史の証言』は、ジャーナリストの大宅壮一(おおや・そういち, 1900-1970)さんの文章を集めたアンソロジー。大宅映子(おおや・えいこ, 1941-)さんの「序」によれば「昭和初期から、評論家として全英を迎える昭和三十年代まで、昭和のエポックメーキングな出来事を活写した作品を選んだ」と。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。出版人を論評したパートもあり、「出版界五人男」(初出誌不明、1956年)では、文藝春秋新社・佐佐木茂索社長、新潮社・佐藤義夫社長、岩波書店・岩波雄二郎社長、講談社・野間省一社長、中央公論社・嶋中鵬二社長を、「男の顔は履歴書である」では二人の創業者と社長、すなわち平凡社創業者・下中弥三郎さん、文藝春秋創業者・菊池寛さん、東洋経済新報社・石橋湛山社長を取り上げています。 ★『戦後行政の構造とディレンマ〈新版〉』は、2010年に刊行された手塚洋輔(てづか・ようすけ, 1977-)さんの著書の新版。巻頭に「新版に寄せて」という一文が添えられています。帯文に曰く「常に難問と賛否に直面してきた予防接種行政。その歴史を通じて、行政の「行動原理」と「責任」のあり方を問うた名著、待望の新版」。 ★『清朝期のモンゴル』は、シリーズ「清朝史叢書」の最新刊。豊岡康史『海賊からみた清朝――十八~十九世紀の南シナ海』2016年2月刊、岡田英弘『大清帝国隆盛期の実像――第四代康熙帝の手紙から 1661-1722』2016年3月刊(『康熙帝の手紙』改題再版)に続く久しぶりの続刊かと思います。帯文に曰く「モンゴル語・マンジュ語で記された清朝期の文書史料から、中国と異質な統治文化をもつ“遊牧社会の統治”の実像をあぶり出す。清支配下であってもモンゴル人出稼ぎ者やラマ(チベット仏教僧)たちが“越境移動”していたことを示す」と。著者の岡洋樹(おか・ひろき, 1959-)さんは東北大学名誉教授。ご専門は東洋史、モンゴル史。 ★最後に青土社月刊誌と英明企画編集季刊誌の最新号です。奇しくも両誌ともに「誰のため」を問う特集号となっています。 『現代思想2026年4月号 特集=教育は誰のためか――特別支援教育・いじめ問題・子どものメンタルヘルス…』青土社、2026年3月、本体1,800円、A5判並製230頁、ISBN978-4-7917-1495-7 『季刊 農業と経済 2026年冬号(92巻1号)』英明企画編集、2026年2月、本体1,700円、A5判並製206頁、ISBN978-4-909151-68-1 ★『現代思想2026年4月号』の特集は「教育は誰のためか――特別支援教育・いじめ問題・子どものメンタルヘルス…」。版元紹介文によれば「“教育”をとりまく包摂と排除を問う――貧困・障害・エスニシティ…教育を受けようとするとき、そこにはさまざまな要因によって意図的な線引きが存在していることに気づかされる。教育はいったい誰のためのものなのか。本特集では、教育を学校制度のみならず、子どもの成長を支えるケアや家族政策、労働問題とも連関しながら、現場の知とともに応答する」。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。次号は4月末発売の5月号で特集は「ニューロダイバーシティ ――脳/神経の多様性をめぐる思想」。 ★『季刊 農業と経済 2026年冬号(92巻1号)』の特集は「たがための農林業──多様な生きものとの共生が生み出す価値」。特集頁の扉に記載された紹介文に曰く「経済性のみを重視するのではなく、農林業を自然と人間とのあいだに位置する循環的な営みと位置付け、産業的価値を超えた意義に共感して実践する人々が存在し、増えている。本特集では、こうした農林業に見られる“他がために”農林業を営む想いと、それらの実践が投げかけている「農林業は“誰がために”あるのか」という問いに着目し、事例を紹介するとともにその意義と可能性を検討する」。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。
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