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2026年 03月 23日

注目新刊:『ゲンロンy 創刊号』ゲンロン、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。まもなく店頭発売開始の本も含みます。

ゲンロンy 創刊号』植田将暉/五月女颯/森脇透青/栁田詩織(編集委員)、ゲンロン、2026年3月、本体2,800円、A5変形判並製384頁、ISBN978-4-907188-68-9
文学は割に合う!』アントワーヌ・コンパニョン(著)、本田貴久(訳)、作品社、2026年3月、本体2,700円、四六判並製248頁、ISBN978-4-86793-126-4
情理論――思想と文芸の基層』伊藤益(著)、法政大学出版局、2026年3月、本体4,000円、四六判並製444頁、ISBN978-4-588-13046-5
ロンリー・ロンドナーズ』サミュエル・セルヴォン(著)、星野真志(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2026年3月、本体2,900円、四六変型判上製256頁、ISBN978-4-86488-344-3

★『ゲンロンy 創刊号』は発売済。『ゲンロン』誌の姉妹誌の創刊号です。編集委員4氏は90年代生まれ。執筆陣は80年代生まれからゼロ年代生まれまで。版元紹介文に曰く「世界がツイートとスワイプで動く時代に、雑誌にはなにができるか。わたしたちの文化を再定義する特集1〈令和カルチャー!〉、戦争の時代に「思想」の使命を問う第2特集〈帝国をつくろう〉。そして、瀬戸内海から日本の未来をウォッチする小特集〈瀬戸内海未来主義〉まで。新進気鋭の著者たちによる、21世紀を見通すための総合雑誌をおとどけします」。

★個人的には、第二特集に掲載された、東京大学東洋文化研究所特任研究員の石橋直樹さんによる「「天球」から「怪物」へ──国学の図像的想像力」に強く惹かれました。創刊号から投稿論文枠があり、4篇が掲載されていますが、応募は63篇あったとのことです。巻末の広告欄「ゲンロンの軽出版」では刊行予定として『ゲンロンy落選論文集(仮)』が予告されています。

★『文学は割に合う!』はまもなく発売。ベルギー生まれのフランスの文芸批評家でコレ─ジュ・ド・フランス教授のアントワーヌ・コンパニョン(Antoine Compagnon, 1950-)の著書『La littérature, ça paye !』(Les Équateurs, 2024)の全訳。帯文に曰く「世界にはびこる文系不要論に抗し、人間的な豊かさをはぐくむための文学の有用性を説くのみならず、その市場価値にまであえて踏み込み、「長期的投資」「遅れてくる利子」としての意義を強調する。フランス文学界の碩学による、抒情的な思索とアイロニカルな語り口に満ちた唯一無二の書。本を読み、考えるという営みの肯定」。

★本書から引きます。「私たちの生きる〈現代の世界〉における文学の立場を弁護するために、『文学は割に合う!』という、まるで軍旗をはためかすかのように戦闘的で強気な、そしてややもすると挑発的なタイトルを付けました。今日、文学やその価値、効力、有効性、未来を疑うひとびとが、同僚である大学教員や同志である作家、そしてわたしの読者のなかにも出てきているのだと実感しています。この文學への疑いを端的に要約すると「文学は得にならない、あるいはもう得にならなくなるだろう」ということになります」(5頁)。「「文学は割に合う!」というスローガンにはふたつの意味があると考えています。ひとつは、「作者にどれほどの利益をもたらすのか」、もう一方は「読者にどれほどの利益をもたらすのか」という意味です」(7頁)。

★「文学・哲学だけでなく、美術、映画、画面上のたくさんのコンテンツも含めた教養は、仕事における目先の作業から距離をとり、自らを客観視し、外部と内部とに同時に存在しながら自らを見つめ、人生を変えるための手助けをしてくれます。もともとのキャリアを超え出るため、方向を変えるため、関連分野へと分化していくため、新しいチャンスをとらえるためには、教養が不可欠なのです。一般教養がもたらすものとは、洞察力とか直感力という別種の知性です。これは優れた犬や狐にみられる勘に近いものなのです。鋭い勘は生まれつきではなく、読書によって養われるものであり、読書は他の経験への入り口となります。読書は勘を養ってくれるのです。困難を切り抜け、立て直すのにこれほど必要なものはないのです」(第14章「すべてのひとのための文学」118~119頁)。

★なお、本書の端緒となる2012年のコンパニョンの来日講演「文学は割に合う」は、月刊誌『群像』2012年9月号に中地義和さんの訳で掲載されています。

★『情理論』はまもなく発売。筑波大学名誉教授で日本倫理思想がご専門の伊藤益(いとう・すすむ, 1955-)さんによる書き下ろし。帯文に曰く「西洋哲学と東洋的論理の両者に通じる著者が、物語、理性、神話、理念、文芸、性愛、仏法の各主題から、私たちを統べる情と理の働きをいかなる幻想もなしに照らし出す。ものごとに即して思索しうるための必読書」。

★「国が滅ぶという局面に先駆けて、哲学が滅びようとしているのかもしれない。この国のあらゆる分野における退行現象を踏まえつつ、「日本の哲学」を打ち建てようと努めてきた数少ない研究者の一人として、筆者はこの論考を、至極単純な一言を以て締めくくりたい。すなわり、情性を理路を以て組み立てる情理のはたらきに身を委ねようとする努力を怠れば、いかにロゴスとしての理性を研ぎ澄まそうとも、人間性の本然の態様は見落とされる、という一言を以て」(第七章「仏法論」432頁)。

★『ロンリー・ロンドナーズ』はまもなく発売。ルリユール叢書第58回配本(77冊目)。トリニダード生まれの英国の黒人作家サミュエル・セルヴォン(Samuel Selvon, 1923–1994)の小説『The Lonely Londoners』(1956年)の訳書。帯文に曰く「クレオール英語の特異な文体で、ロンドン移民の苦境の現実と夢を「都会のブルース」として描き、イギリス社会をユーモラスに風刺する「黒い大西洋(ブラック・アトランティック)」の傑作小説。本邦初訳」。ルリユール叢書次回配本は4月、本田博之訳『シラー戯曲傑作選 群盗――戯曲と悲劇』。「1781年匿名出版の『群盗――戯曲』と、熱狂を生んだ82年改稿版『群盗――悲劇』の両版を収録。本邦初訳の「初版序文」も加え、天才劇作家の原点に迫る決定版」とのことです。

★最近出会いのあった、平凡社さんの既刊書を列記します。

文献集――中国学の先人と漢籍のはなし』井上進(著)、平凡社、2026年2月、本体4,300円、4-6判並製344頁、ISBN978-4-582-83998-2
食の欲望論――生存から快楽、そして情報へ』小林哲/藤本憲一(編)、公益財団法人味の素食の文化センター(企画)、食の文化フォーラム:平凡社、2026年2月、本体3,000円、4-6判並製288頁、ISBN978-4-582-83996-8
明治の貸本屋さん』松永瑠成(著)、ブックレット〈書物をひらく〉:平凡社、2026年2月、本体1,500円、A5判並製96頁、ISBN978-4-582-36477-4
「忠臣」創出――戦国武将標葉氏の近代』西村慎太郎(著)、ブックレット〈書物をひらく〉:平凡社、2026年1月、本体1,500円、A5判並製96頁、ISBN978-4-582-36476-7
調べてみよう! 国際交流(3)SDGs』澤井陽介(監修)、2026年2月、本体3,500円、A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-72413-4
調べてみよう! 国際交流(2)文化』澤井陽介(監修)、2026年2月、本体3,500円、A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-72412-7
調べてみよう! 国際交流(1)スポーツ』澤井陽介(監修)、2026年1月、本体3,500円、A4変型判上製32頁、ISBN978-4-582-72411-0
まいあ Maia―SWAN actⅡ― 完全版 第3巻』有吉京子(著)、平凡社、2026年1月、本体1,400円、4-6判並製264頁、ISBN978-4-582-28887-2

★『文献集』は、序言に曰く「伝統中国が生み出した書物の数々、いわゆる漢籍に関する話と、漢籍を博く精しく読むことで中国の伝統文化を研究すると同時に、研究対象たる中国の伝統文化に深く魅入られていった浅学の話から」なる、とのこと。名古屋大学名誉教授で東洋史学者の井上進(いのうえ・すすむ, 1955−)さんが各媒体で1998年から2025年にかけて各媒体で発表してきた論文や講演記録、14本をまとめた一書です。

★『食の欲望論』は論文集。「「食の欲望」をテーマに、人間と食の複雑な関係に迫った2024年度〈食の文化フォーラム〉の記録本」(版元紹介文より)。「食の欲望の人類史」「なぜ人は〈食べ過ぎる〉あるいは〈食べることを拒否する〉のか」「食の欲望はどこへ向かうのか」の三部構成で、「人類学・心理学・食品科学・歴史学といった多角的な視点から、食の欲望の起源とその変容を考察する。さらに、健康志向やフードテック、宇宙食、SNSの「映え」文化など、現代から未来へと広がる食のかたちにも目を向ける」(同)。目次詳細は書名のリンク先をご確認ください。

★ブックレット〈書物をひらく〉の第36巻と第37巻が発売となりました。過去は単なる過去ではなく、未来を見遥かす手がかりとなることを教える、素晴らしいシリーズです。各巻のカバーソデ紹介文によれば、『「忠臣」創出』は、「福島県浪江町の一角に立つ「標葉公忠勲之碑」、南朝顕彰の碑が建っている。しかしその基になったのは、南北朝のはるか後代、十五世紀末に滅亡した戦国武将である。どんな歴史の事実が、いつ、なぜ、どのように、かくも読み替えられたのか。小さい地域の深い歴史」。『明治の貸本屋さん』は、「購入するよりも安価に読み物を楽しむことのできる貸本屋の仕組み、江戸時代に端を発したこの業態は、明治時代にどのように継続し、また変容したのか。実態を示す資料が乏しいなかで、貸本事態に貼られて残る貸本規則や蔵書目録、補強に使われた営業文書の反故紙、また引札や新聞広告、新聞記事、貸本印から起業手引書まで、あらゆる資料・痕跡から、海外在留邦人向けまであった近代貸本業の実像に迫る」。

★『調べてみよう! 国際交流』は、国際交流を知るためのシリーズ全5巻。版元紹介文に曰く「小学生から身につけておきたい、異なる国の人々や文化の相互理解を育むためのシリーズ」で、各巻のテーマは、第1巻:スポーツ、第2巻:文化、第3巻:SDGs、第4巻:日本の国際貢献、第5巻:共生するまち。第4巻と第5巻はまもなく発売と聞きます。

★『まいあ Maia―SWAN actⅡ― 完全版 第3巻』は、全4巻の第3巻。帯文に曰く「最上級の第1学年に進級したまいあは、恒例行事の学校祭の準備に忙しい。その後に控えるパリ・オペラ座入団私見のことも気になり始め――」。巻頭はカラー、巻末には書き下ろし番外編8頁のほか、扉絵コレクション、さらに初回出荷分限定でポストカードがついています。第4巻は4月下旬発売予定。


by urag | 2026-03-23 02:05 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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