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2026年 03月 02日
★まず、文庫化されていた現代思想のベストセラーが、著者の生誕100年および没後30年で再単行本化された件です。 『千のプラトー ――資本主義と分裂症』ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ(著)、宇野邦一/小沢秋広/田中敏彦/豊崎光一/宮林寛/守中高明(訳)、河出書房新社、2026年2月、本体8,800円、A5判上製712頁、ISBN978-4-309-23176-1 『アンチ・オイディプス――資本主義と分裂症』ジル・ドゥルーズ/フェリックス・ガタリ(著)、宇野邦一(訳)、河出書房新社、2025年12月、本体6,500円、A5判上製472頁、ISBN978-4-309-22983-6 ★ドゥルーズ+ガタリ『資本主義と分裂症』の第1巻と第2巻は河出書房新社ではまず単行本として刊行されました。第1巻『アンチ・オイディプス』は市倉宏祐訳が1986年に全1巻の単行本で発売され、2006年に宇野邦市さんの新訳で文庫上下巻が刊行されました。昨年12月に、宇野版が愛蔵版全1巻で単行本化。巻末の「一巻本への訳者あとがき――半世紀後の『アンチ・オイディプス』」によれば、「この機会に改めて全文を読みなおし、改訳というほどではないが、訳文を推敲することにした」とのこと。 ★宇野さんはこうお書きになっています。「『アンチ・オイディプス』の提案は、きわめてつつましく細心にして、きわめて野心的だ。あらゆる(内部の)抑圧、(外部の)抑制を厳密に批判しようとしたからだ。ここには正義も信条も方針も示されていないので、〈左翼〉の本としてはあまりにアナーキーに見える。仕方なく〈右翼〉の本として扱う人々も現れた。この本の〈扱い〉は難しいが、ごく単純でもある。最初のページから現れる数々の〈叫び〉や〈兆し〉に敏感であることだけが必要だ。(他にも数々ある)このような本に誰も反応しなくなり、その思考がただ無意味として葬り去られるとき、無世界・砂漠化の完成のときだろう」(462~463頁)。 ★第2巻『千のプラトー』は6氏による共訳で全1巻の単行本が1996年に発売され、2010年に上中下巻で文庫化されました。文庫化に際して訳文を推敲したことが「文庫版への訳者あとがき」に書かれています。今般愛蔵版全1巻が刊行され、宇野さんによる「一巻本への訳者あとがき――内容と表現、アレンジメント」によれば「訳文の細部を推敲し」、「序――リゾーム」での訳文の脱落を補い、第2章「1914年――狼はただ一匹か数匹か」と第3章「BC10000万年――道徳の地質学(地球はおのれを何と心得るか)」の冒頭が改稿されているとのことです。 ★宇野さん曰く「人類の叡智の成果だったかもしれない政権、市場、企業、技術は、ますます制御不可能な愚かさや暴力を生産し続ける。しかしアレンジメントという特異で凡庸な「連合」の数々、その果てしない「系譜」、それによる永久革命も絶えることがない。革命でも反革命でもない永久革命は、決して死語ではなく、ユートピアでもない。『千のプラトー』は『アンチ・オイディプス』とともに、そのための過剰に開かれた本であり続ける」(703頁)。 ★さいきん出会いのあった2月新刊を列記します。 『生きることを忘れるなかれ――ゲーテと精神的修練の伝統』ピエール・アド(著)、村松正隆(訳)、叢書ウニベルシタス:法政大学出版局、2026年2月、本体3,500円、四六判上製264頁、ISBN978-4-588-01195-5 『季刊 農業と経済 2025年秋号(91巻4号)』英明企画編集、2025年11月、本体1,700円、A5判並製270頁、ISBN978-4-909151-67-4 『グリーンランド〈増補新版〉――人文社会科学から照らす極北の島』高橋美野梨(編)、井上光子/小澤実/ウルリック・プラム・ガド/須藤孝也/高橋美野梨/中丸禎子/本多俊和(スチュアートヘンリ)/イーリャ・ムスリン/ソアン・ルド(著)、藤原書店、2026年2月、本体3,300円、四六判並製432頁、ISBN978-4-86578-489-3 『後藤新平の処世訓〈現代語訳〉』後藤新平(述)、平木白星(編)、楠木賢道(編・解説)、藤原書店、2026年2月、本体2,600円、A5判上製232頁、ISBN978-4-86578-490-9 『反メリトクラシー ――新自由主義と平等の神話』ジョー・リトラー(著)、河野真太郎(訳)、人文書院、2026年2月、本体3,800円、四六判並製366頁、ISBN978-4-409-24177-6 『トランスインペリアル・ヒストリー ――植民地主義への新たな視座』水谷智/馬路智仁/山田智輝(編)、人文書院、2026年2月、本体7,500円、A5判上製400頁、ISBN978-4-409-51123-7 『新自由主義権力と抵抗』佐藤嘉幸(著)、人文書院、2026年2月、本体2,800円、四六判並製240頁、ISBN978-4-409-04135-2 ★『生きることを忘れるなかれ』は、フランスの哲学者、歴史家、文献学者のピエール・アド(Pierre Hadot, 1922-2010)の著書『N'oublie pas de vivre : Goethe et la tradition des exercices spirituels』(Albin Michel, 2008)の全訳。帯文に曰く「ギリシャの哲学からニーチェへと受け継がれる系譜にゲーテを位置づけ、〈現在〉の瞬間への集中、〈高みからの眼差し〉を通じた世界の俯瞰、詩篇「始源の言葉」の〈希望〉、〈運命への愛〉という四つの主題から鮮やかに読解する」と。 ◎ピエール・アド既訳書 2020年01月『イシスのヴェール――自然概念の歴史をめぐるエッセー』小黒和子訳、叢書ウニベルシタス:法政大学出版局;原著2004年刊。 2021年12月『生き方としての哲学――J・カルリエ、A・I・デイヴィッドソンとの対話』小黒和子訳、叢書ウニベルシタス:法政大学出版局;原著2002年刊。 2022年06月『ウィトゲンシュタインと言語の限界』合田正人訳、古田徹也解説、講談社選書メチエ:講談社;原著2004年刊。 ★『季刊 農業と経済 2025年秋号(91巻4号)』の特集は「食料価格「危機」をいかに乗り越えるか──安定した生産・供給・消費のために」で、「価格高騰で逼迫する食と暮らし」「「令和の米騒動」の生産・流通裏事情」「「農業者適正価格」と「消費者適正価格」とを近づける」の三部構成です。扉に掲出された紹介文に曰く「なぜ食料価格が上がったのか、どうすれば下がるのか」という消費者の疑問に答えることをめざし、食料価格「危機」の要因と対策について解説する」と。 ★藤原書店さんの2月新刊2点。『グリーンランド〈増補新版〉』は、2023年に刊行された論文集の増補新版。帯文によれば「トランプが執拗に狙う「グリーンランド」とは?「東と西」、「自然と人間」の混淆する極北の島を多角的に描いた画期的論集に、デンマーク/グリーンランドの未来を問う特別論考を緊急増補」とのこと。『後藤新平の処世訓〈現代語訳〉』は、帯文に曰く「台湾・満洲での活躍を経て初入閣、注目を集めていた1911年、54歳の後藤新平の言行からピックアップしてまとめられた100篇余の処世訓・人生訓を、全面的に現代語訳し注を付して刊行」。 ★人文書院さんの2月新刊3点。『反メリトクラシー』は英国の社会学者で文化理論家、ロンドン大学ゴールドスミス校教授のジョー・リトラー(Jo Littler, 1972-)の著書『Against Meritocracy: Culture, Power and Myths of Mobility』(Routledge 2018)の全訳。表4帯文に曰く「メリトクラシー〔能力主義〕という言葉の来歴を概観した上で、歴代の英国首相のスピーチからセレブたちの言動まで、多岐にわたるメディア・文化を分析。私たちの日常や社会制度がいかに新自由主義的メリトクラシーの論理に浸されているのかを鮮やかに捉えた、第一級のカルチュラル・スタディーズ」。リトラーの既訳書には、「ケア・コレクティヴ」名義の共著書『ケア宣言──相互依存の政治へ』(岡野八代/冨岡薫/武田宏子訳、大月書店、2021年)があります。 ★『トランスインペリアル・ヒストリー』は論文集。帯文に曰く「帝国の〈はざま〉から植民地主義の歴史を再考する。〔…〕支配と抵抗をめぐる協力や競合、連関――複数の帝国の同時代的な関係性を立体的に捉えなおす画期的研究」。「異民族統治をめぐる〈比較のポリティクス〉」「帝国の〈はざま〉における経験――移動・帰属・入植」「トランスインペリアルな被支配経験――もつれあう抵抗と連帯」の三部構成。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。『新自由主義権力と抵抗』は、版元ウェブサイトでの特記によれば「『新自由主義と権力』(2009年)の内容を大幅に変更し、題名を改めたもの」。序論が公開されています。
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