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2026年 02月 02日

注目新刊:デリダ『マルクスの亡霊たち 増補新版』藤原書店、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。まず人文書院さんの新刊から。

地球共同体――最後のユートピアについての考察』アシル・ンベンベ(著)、中村隆之/平田周(訳)、人文書院、2026年1月、本体2,800円、四六判上製260頁、ISBN978-4-409-04134-5
心の帝国――イギリス・フランス植民地帝国の過去と現在』ロバート・ギルデイ(著)、池田亮/和田萌(訳)、人文書院、2026年1月、本体5,500円、A5判上製360頁、ISBN978-4-409-51104-6
言葉と音――音響の群島』フランソワ・J・ボネ(著)、小嶋恭道(訳)、人文書院、2026年1月、本体5,000円、四六判並製408頁、ISBN978-4-409-03145-2
新装版 人間――密儀の神殿』マンリー・P・ホール(著)、大沼忠弘/山田耕士/吉村正和(訳)、人文書院、2026年1月、本体5,500円、A5判上製346頁、ISBN978-4-409-04132-1

★『地球共同体』は、カメルーン出身の政治理論家アシル・ンベンベ(Joseph-Achille Mbembe, 1957-)の『La Communauté Terrestre』(Éditions La Découverte, 2023)の全訳。帯文に曰く「テクノロジーと暴力の時代に、「地球」を再想像する。人間とは本来、この地球上で「去り行く者」でしかない。そんな私たちが生きられる共同体とは――。世紀を代表する思想家が見据える〈全‐惑星〉的未来の書」。ンベンベの訳書は『黒人理性批判』(宇野邦一訳、講談社選書メチエ、2024年11月;著者名表記は「ムベンベ」)、『ネクロポリティクス――死の政治学』(岩崎稔/小田原琳訳、人文書院、2025年10月)に続く3点目。

★『心の帝国』と『言葉と音』はいずれの著者も初訳。まず『心の帝国』は、英国オックスフォード大学教授で歴史家のロバート・ギルデイ(Robert Gildea, 1952-)の『Empires of the Mind: The Colonial Past and the Politics of the Present』(Cambridge University Press, 2019)の全訳。帯文に曰く「英仏の歴史を比較検証し、冷戦終結後の帝国的・新植民地的思考の復活をたどる」と。次に『言葉と音』は、フランスの作曲家フランソワ・J・ボネ(François J. Bonnet aka Kassel Jaeger, 1981-)の著書『Les mots et les sons : Un archipel sonore』(L’éclat, 2012)の全訳。帯文に曰く「〈音響的なもの〉と〈可聴的なもの〉という独自の概念を軸に、現象学をはじめ多様な哲学的ツールを柔軟に駆使し、音響をめぐるまったく新しい思想の展開へと至る画期作」と。巻頭には『聴取について』の著者ペーター・サンディによる寄稿「オトグラフ」が置かれています。


★『新装版 人間』は、1982年刊行の旧版の待望の復刊。古書価が高騰していただけに(某マケプレで3万円台~、某フリマでは14万円)、復刊を待っていた読者がいたことでしょう。未読の方は、巻末の索引(事項、人名、書名)をざっと見るだけでも興味が湧くのではないかと思います。人文書院ではマンリー・P・ホールの「象徴哲学大系」全4巻が新装改訂版で出ていますが、在庫僅少になりつつあるようなので、要注意です。83年刊『フリーメーソンの失われた鍵』も復刊されると良いですね。流し読みするなら国会図書館デジタルコレクションでもいいかもしれませんが、精査するならやはり紙版が欲しいところですから。

★「人間は「神」の生ける神殿であり、心臓はその神殿の「至聖所」である。それは小宇宙の王の宮殿であるのみならず、「密儀の神殿」でもある。それは「神」の歩む内室、聖域、内陣、神託所である。古代の密儀参入の神殿には、神々の住むところそのものと見なされる部屋があり、特別の浄化と祈りの期間を経ないではだれも入ることができなかった」(第11章「心臓、生命の座」218頁)。「神殿は、物質的宇宙の真中に霊的宇宙の象徴であった。それは共同社会における文化生活の心臓部であり、心臓が物質的な肉体を支えているように、人間の幸福を支えていた。それゆえ、心臓が世界の宗教建築の規範となった原型的な神殿であると知っても驚くべきではない」(同219頁)。

★続いて、藤原書店さんの1月新刊3点。いずれも既刊書の新版です。

マルクスの亡霊たち〈増補新版〉――負債状況=国家、喪の作業、新しいインターナショナル』ジャック・デリダ(著)、増田一夫(訳)、藤原書店、2026年1月、本体5,200円、四六判上製480頁、ISBN978-4-86578-484-8
最後の転落〈新版〉――ソ連崩壊のシナリオ』エマニュエル・トッド(著)、石崎晴己(監訳)、石崎晴己/中野茂(訳)、藤原書店、2026年1月、本体3,000円、四六判並製504頁、ISBN978-4-86578-487-9
大地よ!〈新版〉――アイヌの母神、宇梶静江自伝』宇梶静江(著)、藤原書店、2026年1月、本体2,600円、四六判並製456頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-486-2

★『マルクスの亡霊たち〈増補新版〉』は、2007年9月刊の旧版に、バリバールによるテクスト「30年後」と、原著刊行直後に国際哲学コレージュで行なわれた本書をめぐる「討論」(デリダ、バリバール、ロロー)を収録した増補版。2024年にスイユから刊行された原著改訂版に基づくものです。原著初版は、ガリレから1993年に刊行。スイユではデリダの講義録が刊行中で白水社から順次翻訳されているのは周知の通りです。「ル・モンド」紙2019年7月7日の記事「Derrida de Galilée au Seuil : les raisons d’un transfert」が参考になります。今後、ガリレのデリダ既刊書もスイユから刊行されるのかどうか、注視したいと思います。『最後の転落〈新版〉』は、2013年1月刊の旧版に鹿島茂さんによる書評「ソ連崩壊「予言の書」から現代を解読する」(毎日新聞2013年2月17日付)を再録したもの。トッド25歳のデビュー作です。『大地よ!〈新版〉』は、2020年2月刊の旧版に巻頭言「新版によせて」を加えたもの。巻末の年譜は増補され、初版刊行後の主な書評や記事がリストアップされています。

★最後に、雑誌3点。

現代思想2026年2月臨時増刊号 特集=ハンナ・アーレント:生誕120年』青土社、2026年1月、本体2,200円、A5判並製302頁、ISBN978-4-7917-1493-3
現代思想2026年2月号 特集=医療の未来:再生医療・生殖技術・終末期ケア…』青土社、2026年1月、本体1,800円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1492-6
文藝 2026年春季号』河出書房新社、2026年1月、本体1,450円、A5判並製584頁、雑誌07821-02

★『現代思想2026年2月号』は、通常号の特集が「医療の未来」、臨時増刊号が「ハンナ・アーレント」。版元紹介文によれば、前者では「「医」をめぐる最新の知見と議論をさまざまなトピックを横断しつつ検討することで、ありうべき未来を広く考えていく」。後者では「生誕120年を機に、アーレントの提起した問題系にさまざまな角度から応答する」。目次は各号のリンク先で確認できます。通常号の次号(3月号)の特集は「〈野生〉とのつきあい方:狩猟文化、家畜化の歴史から現代のクマ問題まで」と予告されています。

★『文藝 2026年春季号』は、特集1が「うたのことば」、特集2が「ハン・ガンを読む」。前者の30人アンケート「わたしたちを揺さぶる“うたのことば”」が楽しい。3つの設問「あなたを揺さぶる「うたのことば」を教えてください」「その「うたのことば」のどこになぜ惹かれますか」「いま注目している「うたのことば」の作り手と、その「推しの作品」を教えてください」に、作家、文筆家、劇作家、歌人、詩人、川柳人、俳人、文学研究者、作詞家、作曲家、ミュージシャン、ラッパー、漫画家、映像作家、写真家、声優、俳優、芸人、といった多彩な面々が答えています。



by urag | 2026-02-02 00:46 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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