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2025年 12月 22日

注目新刊:東浩紀『平和と愚かさ』ゲンロン、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。

平和と愚かさ』東浩紀(著)、ゲンロン叢書:ゲンロン、2025年12月、|四六判|本体3,000円、四六判並製500頁、ISBN978-4-907188-67-2
虹の女神が涙したとき』セシリア・マンゲラ・ブレイナード(著)、松田卓也(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2025年12月、本体3,600円、四六変形判上製368頁、ISBN978-4-86488-338-2
プラトーノフ・コレクション(I)エーテル軌道 1920-1931』アンドレイ・プラトーノフ(著)、工藤順/古川哲(編訳)、大山麻稀子/きのしたはるよ/佐藤貴之/清野公一/高柳聡子/鳥山祐介/正村和子(訳)、作品社、2025年12月、本体6,300円、46判上製728頁、ISBN978-4-86793-118-9
チャーチル伝』フランソワ・ケルソディ(著)、大嶋厚(訳)、君塚直隆(解説)、作品社、2025年12月、本体5,400円、46判並製736頁、ISBN978-4-86793-125-7

★『平和と愚かさ』は、批評家で作家、ZEN大学教授、ゲンロン創業者の東浩紀(あずま・ひろき, 1971-)さんによる平和論。3部構成で、第1部「平和について」は、『ゲンロン』第17号(2024年)と第18号(2025年)で発表された論考「平和について、あるいは考えないことの問題」前篇・後篇を統合し、大幅に加筆修正したもの。第2部「ウクライナのまわりで」は、『ゲンロン』第10号(2019年)と第11号(2020年)で発表された「悪の愚かさについて」2篇と、『ゲンロン』第16号(2024年)に掲載された「ウクライナと新しい戦時下」を収録。第3部「断章」では『ゲンロン』誌などで2020年から2024年に発表された4篇を収録。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。巻頭の「はじめに」と巻末の「おわりに」は書き下ろし。「はじめに」によれば第2部と第3部は「誤字脱字や重複の削除、どうしても必要な注の追加のほかは〔…〕原則修正していない」とのことです。

★「ぼくの考えでは、平和と愚かさはともに「考えないこと」の表現である点で共通している。ひとはものを考えないときに平和を感じる。しかしなにも考えないと愚かなことをする。/平和と愚かさが表裏一体であること。ここにはとても重要な問題がある」(はじめに、8頁)。「あらゆる問題について合理的な判断を下し、道徳的な正しさを引き受けることができる人間など存在しない。ひとは弱い。だから賢さへの強迫が過剰だと、不安を感じ逃走してしまう。平和を感じることができなくなる。そしてより深い愚かさに突入する。2025年のいま、世界で起きているのはそういうことだと思う。/だから、いまは「考えないこと」の価値を論じることが重要だと考えた」(同、9頁)。「これこそがぼくが書きたかった平和論なのである。ぼくたちはいま、あまりにも政治について語りすぎている。そしてそのせいでどんどん平和から遠ざかっている。ぼくたちは、そのような政治への切迫こそが平和にとって最大の脅威になることを、いったん自覚しなければならない」(同、10頁)。東さんの「考えないことについて考えるという、ほとんど自己矛盾のような作業」(同、9頁)は、何かと考えすぎな現代人にとって、自縄自縛(がんじがらめ)を解きほぐす、解毒剤となるのではないでしょうか。

★『虹の女神が涙したとき』は、ルリユール叢書第53回配本75冊目。フィリピンのセブ島出身で米国カリフォルニアで活躍している作家セシリア・マンゲラ・ブレイナード(Cecilia Manguerra Brainard, 1947-)の小説『When the Rainbow Goddess Wept』(Dutton, 1994; University of Santo Tomas Publishing House, 2019)の全訳。帯文に曰く「太平洋戦争時、日本軍の侵攻に抵抗するフィリピンの住民たちが自由のために戦う中、一人の少女が神話的想像力によってエンパワメントを歌い求める――フィリピン系アメリカ人女性作家ブレイナードの半自伝的なマジックリアリズム小説にして歴史証言の文学。本邦初訳」。巻末に著者自身による2025年3月29日付の「日本語版刊行によせて」という6頁にわたる文章が寄せられています。曰く「作品の語り手であるイヴォンは、私自身の幼少時代をモデルにしています」(308頁)。

★「あの戦争はずっと遠い過去の出来事であり、ほとんどの証言者たちはいなくなっています。人びとの記憶から、あの戦争も消えつつあります。〔…〕日本とフィリピンはこの歴史を共有しており、私は日本人とフィリピン人の双方がこの戦争について、より深く知るべきだといつも感じています。「なぜあの戦争のことを気にしないといけないのか」と訊ねる人がいるかもしれません。その問いに対する答えは明快です。「歴史を記憶しない者はそれを繰り返すから」です。今も世界の至るところで戦争が起きています。人びとは故郷を追われ、独裁的な指導者が民衆を煽動し、都市が爆撃され、破壊され、イヴォンのような子供たちが、日々の暮らしの中で恐怖にさらされています。私たちは記憶する必要があるのです」(309頁)。

★『プラトーノフ・コレクション(I)』は、ロシアの作家アンドレイ・プラトーノフ(Андре́й Плато́нович Плато́нов, Andrei Platonovich Platonov, 1899-1951)の著作選集全二巻中の第一巻。全22作品を収録。詳細は版元ドットコムの単品頁にてご確認いただけます。ロシア文学者の亀山郁夫さんの推薦文が帯に引かれています。曰く「霊性の大地に、雷鳴のように轟きわたる革命のヴィジョン。その実現に邁進する人々の夢と絶望を驚くべき文体で綴る。20世紀ロシア文学の隠された原点」。再評価が近年著しいプラトーノフは、作品社より2022年6月に長篇作『チェヴェングール』が刊行され、2023年6月には白水社が『幸福なモスクワ』、群像社が『ポトゥダニ川――プラトーノフ短篇集』を刊行しています。

★作品社版『プラトーノフ・コレクション』全2巻は、「未邦訳作品を中心に、創作史において特に重要とされる作品約40作を精撰した、世界でも類例のない著作選集」(版元note記事より)。「最良の訳者14名による翻訳で、代表的な中篇・短篇・評論・童話・戯曲を網羅的に紹介(ほぼすべて本邦初訳)。代表作の長篇『チェヴェングール』以前と以後という時代区分による2巻構成で、創作史全体を把握するための視座を提示。各訳者が多様な観点からプラトーノフへのアプローチを紹介する付録冊子「訳者アンケート」付き」と謳われています。2月刊行予定と聞く第Ⅱ巻『ジャン 1932–1951』は全16作品収録。

★『チャーチル伝』は、フランスの歴史家フランソワ・ケルソディ(François Kersaudy, 1948-)による評伝『Winston Churchill : le pouvoir de l'imagination』(Tallandier, 2001; nouvelle édition revue et augmentée, 2015)の全訳。底本には2021年版が使用されています。帯文に曰く「生誕150年、没後60年。膨大な資料と多数の関係者の証言をもとに、あまり知られていない若き日々にページをさき人生を描き切る、世界的権威による決定版評伝」。駒澤大学教授で歴史家の君塚直隆さんによる解説が巻末に付されています。本書について「通常のイギリスの歴史家では書けないような、チャーチルとドゴールとの愛憎半ばする関係が見事に描かれている」と評価しておられます。巻頭には配された著者自身による「日本語版への序文――すべての苦しい体験から、勝利を得て抜け出す……」(2025年11月6日付)は、気になる言葉で締めくくられています。「私はこの二人〔チャーチルとドゴール〕の並外れた、こんにちではもはやお目にかかれないレベルのアクターたちに注目してきた。/ところが、この数年で、ヨーロッパに非常にチャーチル的な人物が姿を現したようだ――彼の名は、ヴォロディミル・ゼレンスキーである……」(4頁)。


by urag | 2025-12-22 00:09 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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