人気ブログランキング | 話題のタグを見る

URGT-B(ウラゲツブログ)

urag.exblog.jp
ブログトップ
2025年 12月 01日

注目新刊:福尾匠『置き配的』講談社、ほか

注目新刊:福尾匠『置き配的』講談社、ほか_a0018105_00394896.jpg



★最近出会いのあった新刊を列記します。

置き配的』福尾匠(著)、講談社、2025年11月、本体2,100円、四六判並製240頁、ISBN978-4-06-540137-8
建築の物質性』アントワーヌ・ピコン(著)、千代章一郎(訳)、鹿島出版会、2025年12月、本体2,800円、四六判並製264頁、ISBN978-4-306-04721-1
脱暴力の臨床社会学――被害者にも加害者にも傍観者にもならないために』中村正(著)、人文書院、2025年11月、本体4,800円、四六判並製390頁、ISBN978-4-409-24176-9
サンタクロースの文化史――古代ヨーロッパから現代日本へ』水口寿穂(著)、人文書院、2025年11月、本体2,700円、四六判並製266頁、ISBN978-4-409-53053-5
言霊の舟――白川静・石牟礼道子往復書簡』白川静/石牟礼道子(著)、笠井賢一(編)、藤原書店、2025年11月、本体2600円、四六判上製272頁、ISBN978-4-86578-480-0
日本に生きた〈ディアスポラ〉――アルメニア人大虐殺とダイアナ・アプカー』メスロピャン・メリネ/太田阿利佐(著)、藤原書店、2025年11月、本体3,800円、四六判上製432頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-478-7
「手仕事」ルネサンス――土から衣まで』石垣昭子(著)、三砂ちづる(編)、藤原書店、2025年11月、本体2,600円、四六判並製272頁+カラー口絵8頁、ISBN978-4-86578-479-4
季刊 農業と経済 2025年夏号(91巻3号)』英明企画編集、2025年8月、本体1,700円、A5判並製240頁、ISBN978-4-909151-66-7

★『置き配的』は、月刊誌「群像」での批評家の福尾匠(ふくお・たくみ, 1992-)さんの連載「言葉と物」(2023年7月号~2024年11月号、全11回)が加筆修正されて単行本化されたもの。「連載時のタイトルとして「言葉と物」を借用したのは、フーコーの方法論における批判=創造の二重性を、僕なりに実践したかったからです。一方でわれわれの社会における言葉と物を統御する置き配的なシステムを分析し、他方でその端々に残された空隙をテコにして、それを内側から組み換えていく可能性を示すこと。この後者の可能性を担うのが、作ること、制作することの意味を立ち上げなおすことです」(序文、17頁)。

★「コロナ禍によっていちばんの打撃を被ったのは飲食業や観光業といった「サービス」業だと言うが、これはあらゆるサービスがピックとドロップに置き換えられていく過程だと言えるかもしれない。いまや温かい料理までもがサプライチェーンに組み込まれている。とりあえずこのような状況を「置き配的」と呼ぶことにしよう」(第1回B-1、33頁)。「ホストとゲストが隔たったふたつの点として切り離され、配達員は一方でピックし他方でドロップし、店はゴースト化・バーチャル化し、サービスは消失する」(同、34頁)。「置き配的なものにおいては、配達員はもはや代補者ではなく、つまり郵便的なものにあった届けるという目的と投函するという代補的な手段の分割が消失し、置くことを直接的な目的としているように思われる。届ける代わりに置いているのではなく、置いたという事実を持ち帰るために運んでいるかのような。〔…〕これはちょっと踏み込んで言えば「責任」の終わりである」(同、36頁)。

★本書は「現代社会の息苦しさを「置き配的」という観点から批判的に検討」し、「理論的な背景の確認を挟んで〔…〕置き配的なものをひっくり返す糸口をそれぞれの角度から探」って、「「置き配的」というネガティブな条件を転覆させうるポジティブなテーゼ」(以上224頁)へと接近しようとする果敢な試みです。批評への動力のリブートがここに賭けられ、風景を解析するための座標がすでに移動しつつあることを読者に告知しているように思えます。

★『建築の物質性』は、ハーヴァード大学デザイン大学院教授で建築史家のアントワーヌ・ピコン(Antoine Picon, 1957-)さんの著書『The Materiality of Architecture』( University of Minnesota Press, 2020)の訳書。帯文に曰く「現代の哲学や社会学における「物質」への着目を背景に、古典主義建築からデジタル時代の現代建築まで、人間と物質の関係性として描かれる、古くて新しい建築史」。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。「本書の目論見は建築固有の能力に関連して政治の問題を扱うこと、言い換えれば、ある程度自律した分野と考えられている建築がいかに政治的でありうるのかを示すことであった。〔…〕本書において素描した、物質性の制度の変容から見た建築史のあらましは、建築がはらむ政治性の歴史として読むこともできる」(204頁)。

★人文書院の最新刊2点。『脱暴力の臨床社会学』は、版元紹介文に曰く「DVやモラル・ハラスメント、児童虐待の男性加害者は、これまで慣習的に身につけた意識や行動を根本的に顧みることなく、社会のなかで「漂流」している。暴力の再生産を防ぎ、脱暴力に向かうために必要なのは、かれらとの対話である。加害男性のカウンセリングに長年携わってきたからこそ見えてくる、暴力と結びついた男性性を手放すための方法、あるいは社会から暴力を縮減させるためのアプローチとは。臨床社会学からの画期的提言」。著者の中村正(なかむら・ただし, 1958-)さんは立命館大学特任教授・名誉教授で、脱暴力にとりくむ一般社団法人UNLEARN代表理事。京都府から受託したDVの加害男性向けの個人相談とグループワークを行う男性問題相談事業に取り組んでおられます。

★『サンタクロースの文化史』は、「古来の来訪神と罰」「近代におけるサンタクロースの創造と受容」「日本におけるクリスマスとサンタクロース」の三部構成。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「クリスマスの基盤となったと考えられている祭りは、キリスト教以前から存在する土着の民間信仰に見られる冬至祭や太陽神の復活祭である。〔…来訪神は〕悪しきものを祓い、福を呼び込むという変化〔…〕死を象徴する冬を終わらせ、生命が再生する初を呼び込むという変化ももたらす」(233頁)。「科学や産業の発展による生活の向上と、医療の発展による死亡率の減少は、人々の価値観の変化をもたらした。それまで自然崇拝に基づき死と再生のサイクルを意識して生きていた人々の信仰にヒビを入れることになったのである」(234~235頁)。巻末付録として「聖ニコラウスの訪れ(A Visit from St. Nicholas)」の和英対訳が付されています。著者の水口寿穂(みずぐち・かずほ, 1986-)さんは常磐会短期大学非常勤講師。

★藤原書店の11月新刊3点。『言霊の舟』は、版元紹介文に曰く「白川静(1910-2006)の文字学に大きな衝撃を受け、師と仰いだ石牟礼道子(1927-2018)。文字以前の原初的意識への憧憬を抱き続けた石牟礼に、白川の学問と思想は何を刻みつけたのか。1993年の初邂逅から白川が没する2006年までの60通の未公開書簡と、生涯に2回だけ実現した対談を収録し、言葉と芸能、そして魂をめぐる二人の交流の深層を明かす」。笠井賢一さんは「編者あとがき」でこう書いておられます。「お二人の仕事は貴重な知的・文学的遺産である。〔…〕この遺産を次世代に伝えることは大きな責務である。その想いで注釈を書いた」(258頁)。

★『日本に生きた〈ディアスポラ〉』は、「アルメニア人貿易商、ダイアナ・A・アプカー(Diana Agabeg Apcar, 1859-1937)を本格的に取り上げた日本で初めての書籍である。ダイアナは明治末期から昭和の初めに日本に在住し、オスマン帝国による大虐殺、ジェノサイドを逃れて日本にたどり着いた数多くのアルメニア難民を救った。〔…〕しかし日本では彼女はほとんど知られていない」(はしがき、6頁)。本書は「自らも〈ディアスポラ〉の一人として半世紀を日本で生き、国境を越えた人脈と精力的な情報発信によって救済活動を展開、アルメニア第一共和国(1918-20)から駐日名誉領事にも任命されたその足跡を、多数の書簡や新聞・雑誌寄稿を発掘し初めて描」(帯文より)いた評伝です。巻頭には、初代駐日アルメニア共和国特命全権大使のグラント・ポゴシャン氏の推薦文が掲載されています。ポゴシャン氏はダイアナさんのことを「真の人道主義者」と高く評価しています。

★『「手仕事」ルネサンス』は、染織家の石垣昭子(いしがき・あきこ, 1938-)さんへの聞き書きをまとめたもの。2025年3月に、藤原良雄(藤原書店社長)、山田鋭夫(経済学者)、笠井賢一(劇作家)、亀井保信(玻座間民俗芸能保存会会長)、三砂ちづる(文筆家)の各氏が参加し、三砂さんがまとめ、石垣さんが加筆したもの。三砂さんは「はじめに」でこう述べておられます。「石垣昭子のやっていることは、本来の手仕事の復興であり、ほんとうに美しいものの追求、である」(5頁)。

★『季刊『農業と経済』2025年夏号(91巻3号)』は、特集が「「郷土食」を見つめ直す──開放性、真正性、継承性」。責任編集は、中村貴子、大石和男、柏尾珠紀、中塚華奈の四氏が担当しています。中村、大石の両氏に井上弘司、左嵜謙祐、山本志乃、の三氏が加わった座談会「「郷土食」の魅力と可能性──その行方と役割を考える」で始まり、「あらためて問う「郷土食」の現代的価値」「「郷土食」を軸とする地域振興」「環境変化と「郷土食」の持続可能性」「「郷土食」を継承することの意味と意義」「社会経済制度の変化による「郷土食」への影響」の5つのセクションに、14本の論考と6本のコラムが収録されています。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。


by urag | 2025-12-01 00:12 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


<< 月曜社1月新刊:全三巻完結『丹...      注目新刊:『ジル・ドゥルーズ講... >>