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2025年 11月 24日

注目新刊:『ジル・ドゥルーズ講義録 絵画について』河出書房新社、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。

ジル・ドゥルーズ講義録 絵画について』ジル・ドゥルーズ(著)、ダヴィッド・ラプジャード(編)、宇野邦一(訳)、河出書房新社、2025年11月、本体3,800円、46判上製 448頁、ISBN978-4-309-22979-9
民族の平和的共存は可能か』ヤン・ボードアン・ド・クルトネ(著)、桑野隆(編訳)、ゲンロン、2025年11月、本体3,800円、四六判並製256頁、ISBN978-4-907188-65-8
故ギャレ氏 リバティ・バー』ジョルジュ・シムノン(著)、中村佳子(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2025年11月、本体3,200円、四六変形判上製360頁、ISBN978-4-86488-337-5
ウクライナ文化の挑戦――激動の時代を越えて』赤尾光春/原田義也(編)、幻戯書房、2025年11月、本体4,800円、A5判並製504頁、ISBN978-4-86488-335-1
幽霊 新装版』イーディス・ウォートン(著)、薗田美和子/山田晴子(訳)、作品社、2025年11月、本体2,700円、46判並製四六判312頁、ISBN978-4-86793-121-9

★『ジル・ドゥルーズ講義録 絵画について』は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze, 1925-1995)の大学講義録シリーズの第1弾『Sur la peinture : Cours mars-juin 1981』(Minuit, 2023)の訳書。帯ソデの内容紹介文によれば「サン=ドニ(パリ第8大学)にて、1981年3月から6月まで全8回にわたって行われた講義に、詳細な注釈を加えて収録」と。「20世紀を代表する哲学者ジル・ドゥルーズ。彼は唯一の絵画論である『フランシス・ベーコン 感覚の論理学』を刊行した同年に、講義で集中的に絵画について論じていた。セザンヌ、ファン・ゴッホ、ミケランジェロ、ターナー、クレー、ポロック、モンドリアン、ベーコン、ドラクロワ、ゴーギャン、カラヴァッジョ……彼らはいったい何と格闘してきたのか? 数多くの画家の仕事を、美術史家リーグルやヴェルフリン、ヴォリンガーらによる研究を参照しつつ解読し、「ダイアグラム」「コード」「デジタル/アナログ」「変調」といった哲学的概念を提示する。著作に連なる重要な指摘がなされる一方で、より闊達に、また詳細に展開される議論。芸術と哲学をめぐる理解を一新する声の記録がついに公刊」(同帯より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★シリーズ「ジル・ドゥルーズ講義録」の特色として帯に記載されているのは次の4点です。「ドゥルーズの愛弟子による巧みな編集」「その場で聴いているかのような、語りの忠実な再現」「著者との関連や、議論の背景などがわかる精緻な注釈」「第一線の研究者による翻訳・解題」。講義録の訳書第2弾は『スピノザについて』(Sur Spinoza : Cours novembre 1980-mars 1981, Minuit, 2024)の予定です。原書では先月、『Sur l’appareil d’état et la machine de guerre : Cours novembre 1979-mars 1980』と『Sur les lignes de vie : Cours mai-juin 1980』が刊行されています。

★『絵画について』の訳者あとがきで、宇野さんは編者のラプジャード(David Lapoujade, 1964-)さんの作業について次のように説明されています。「この書物の編者ダヴィッド・ラプジャードは、すでにインターネットでは、録音とともにその筆記も公開されていた講義を精確に校訂し、引用された文献も網羅的に調査・確認をし、質疑応答の部分さえも可能なかぎり記録するという、大変緻密な編集作業を行っている。講義のなかの発言で、ドゥルーズの著作や他の講義に類似するところがあれば、その箇所さえも指摘してある。講義特有の話言葉の冗長な部分は整理されているとはいえ、書物ではうかがいしれないドゥルーズの「語り」、「口調」、「リズム」を、この講義録は可能なかぎりも文字化している。こうして登場した「絵画について」の講義録は『フランシス・ベーコン』とは独立した一つの「総合的」な美術論の書物という資格をもっている(もちろんヘーゲル的な「総合」を拒否したドゥルーズの、決して完結しない「総合」である)」(428頁)。

★ドゥルーズの講義録からも引いておきます。「私は自分の力能を行使する範囲で存在します。私はもはや私の限界の輪郭の中には存在しません。私の限界は輪郭であることをやめたのです。私の唯一の限界、それは私の力能がもはや行使されないときです。ここには何か根本的なものがあって、それは光の発見なのです。もろもろの文章を無理に解釈しているわけではありません。光に関するプロティノスのあらゆる文章において、彼は純粋に光学的な光を発見しています。彼は明白に光に言わせている、どこで私は始まるのか、どこで私は終わるのかと。限界を優先する輪郭の否定が起き、絵画において限界はまさに明暗によって定義されて、ギリシア人の触覚-光学的空間とはまったく異なる光学的空間のあの拡張をもたらしています」(1981年5月26日講義より、358頁)。

★河出書房新社創業140周年、ドゥルーズ生誕100年/没後30年となる2025年、すでに文庫化されているドゥルーズ+ガタリの主著2点が、一巻本・愛蔵版として再刊される予定とのことです。12月下旬刊行予定『アンチ・オイディプス ──資本主義と分裂症』(宇野邦一訳、予価本体6,500円、A5判上製480頁、ISBN978-4-309-22983-6)、2026年2月刊行予定『千のプラトー ──資本主義と分裂症』(宇野邦一ほか訳、予価本体8,000円、A5判上製720頁、ISBN978-4-309-23176-1)。

★『民族の平和的共存は可能か』は、ポーランドの言語学者で「ソシュールと並ぶ構造主義言語学の先駆」(略歴より)であるヤン・ボードアン・ド・クルトネ(Jan Baudouin de Courtenay, 1845-1929; ボードゥアン、とも)の論文を日本語版で独自にまとめたもの。帯文に曰く「ポーランド人の言語学者は、なぜロシアからの独立を望まなかったのか。帝国、マイノリティ、宗教の共存、そしてユダヤ人問題からウクライナまで――100年前に現代の混乱を予言した画期的論文集」と。「ウクライナについて」「自治の面からみた民族的特徴と地域的特徴」「民族の平和的共存について」「文学と言語」の4部構成で、補遺としてヴィクトル・シクロフスキー「昔々あるところに……」と、編者の桑野隆さんによる「ソシュールとボードアン」が収められています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★ボードアンはモスクワで発行されていた月刊誌のアンケートに対して次のように答えています。「国家やロシア社会としては、ウクライナに対するもっとも公正で望ましい関係形態は、私には以下のように思われる。/各人の個別的な事柄や、自発的に成立している文化集団の個別的な事柄に対して、無条件に寛容であり、干渉しない。〔…〕ウクライナ人もウクライナに住むポーランド人に対して、またウクライナに住むポーランド人もウクライナ人に対して、おなじことを要求すべきである。すなわち、たがいにかまうことなく、たがいに邪魔をしない。言い換えれば、個々各人にも集団全体としても、望むがままの者であり望むがままにまとまる権利を認める」(「民族を超越した視点からみた〈ウクライナ問題〉」58頁)。

★『故ギャレ氏 リバティ・バー』は、ルリユール叢書第52回配本74冊目。ベルギー出身の作家で、フランス、米国、カナダ、スイスなどで活躍したジョルジュ・シムノン(Georges Simenon 1903–89)の代表作であるメグレ警視シリーズより初期作2篇『Monsieur Gallet, décédé』(1930年)と『Liberty bar』(1932)の新訳を1冊にまとめたもの。2作品とも既訳があります。帯文に曰く「早晩、結実する〈硬い小説(ロマン・デュ―ル)〉を彷彿とさせる舞台で、偏見持ちで情の深いメグレ警視ならではの人間観察が冴える、じっくり味読したい探偵小説が新訳で復活」と。ルリユール叢書次回配本は12月、フィリピン系米国人作家セシリア・マンゲラ・ブレイナードの『虹の女神が涙したとき』松田卓也訳、が予告されています。

★『ウクライナ文化の挑戦』は、帯文によれば「「ロシア世界」からの解放へと向かうウクライナ文化の最前線を総展望する、本格的なウクライナ文化論集」。全5部15章構成を軸に、コラム5本、特別寄稿2本、編者による序章とあとがきを加え、22名の研究者が参加しています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。共編者の赤尾光春(あかお・みつはる, 1972-)さんは巻頭の「序章」で次のように書いておられます。

★「この戦争が、ウクライナにとってロシアからの脱植民地化という意味での「独立戦争」であるならば、今日のウクライナが置かれている状況を、十九世紀から二十世紀にかけて諸帝国からの独立を果たしたヨーロッパや南北アメリカ大陸の国々とともに、第二次世界大戦以降にようやく独立を成し遂げたアジア・アフリカ諸国の事例との比較の視座から考察することは、今後ますます重要になってくるだろう。このように世界史的な観点からこの戦争を捉え直すためにも、まさに「主体としてのウクライナ」を尊重するという基本姿勢が日本の言論空間でも確立されて然るべきである」(29頁)。

★『幽霊 新装版』は、2007年刊の新装版。米国の作家イーディス・ウォートン(Edith Wharton, 1862-1937)による幽霊物語7篇(カーフォル|祈りの公爵夫人|ジョーンズ氏|小間使いを呼ぶベル|柘榴の種|ホルバインにならって|万霊節)と、そのうち4篇(カーフォル|ジョーンズ氏|小間使いを呼ぶベル|柘榴の種|万霊節)を収めている原著『Ghosts』(1937年刊)の序文も収録。「小間使いを呼ぶベル」「柘榴の種」の2篇が山田晴子さんによる翻訳で残りは薗田さん訳。ウォートンの訳書は近年増えています。今年2025年は4月に『国の慣習』上下巻(小林由杲訳、Stellar Classic Books)が出版され、『歓楽の家』は6月に北烏山編集室より加藤洋子訳、さらに来月12月に彩流社より同書の山口ヨシ子訳が刊行予定です。


by urag | 2025-11-24 20:00 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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