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2025年 11月 17日

注目新刊:コジェーヴ『ヘーゲル読解入門』が白水社より再刊、ほか

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★まずは注目文庫新書新刊から。

純粋理性批判の超批判』ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(著)、杉山卓史(訳)、講談社学術文庫、2025年11月、本体2,100円、A6判並製528頁、ISBN978-4-06-541579-5
経験論と主体性――ヒュームにおける人間的自然についての試論』ジル・ドゥルーズ(著)、木田元/財津理(訳)、河出文庫、2025年11月、本体1,500円、文庫判並製288頁、ISBN978-4-309-46823-5
ヘーゲル読解入門――『精神現象学』を読む(上)』アレクサンドル・コジェーヴ(著)、上妻精/今野雅方(訳)、白水Uブックス「思想の地平線」、2025年11月、本体1,600円、新書判並製324頁、ISBN978-4-560-72145-2
ヘーゲル読解入門――『精神現象学』を読む(下)』アレクサンドル・コジェーヴ(著)、上妻精/今野雅方(訳)、白水Uブックス「思想の地平線」、2025年11月、本体1,600円、新書判並製294頁、ISBN978-4-560-72146-9

★『純粋理性批判の超批判』は、18世紀ドイツの哲学者ヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(Johann Gottfried von Herder, 1744-1803)の著書『Eine Metakritik zur Kritik der reinen Vernunft』(1799年)の全訳。カバー紹介文に曰く「『言語起源論』で注目されたヘルダーが満を持して公刊した主著『人類歴史哲学考』に対して、カントは厳しい批判を浴びせた。これを受けて旧師の主著『純粋理性批判』を俎上に載せて徹底的に批判し、ドイツ観念論の先駆をなした書、本邦初訳」。訳者解説によれば「本書は、被批判者カントを「本気」にさせた(=再批判を用意させた)数少ない批判のうちの一つである」(508頁)。「さらに後世の哲学との関連では、カントの超越論哲学をパースの記号論によって刷新しようとするアーペルの「超越論的語用論」を本書が先取りしている――アーペル自身もそう認めている――ことも付言しておこう」(510頁)。

★『経験論と主体性』は、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze, 1925- 1995)の初期作『Empirisme et subjectivité. Essai sur la nature humaine selon Hume』(1953年)の訳書の文庫化。『ヒュームあるいは人間的自然――経験論と主体性』(朝日出版社、1980年)の改訂改題版である『経験論と主体性――ヒュームにおける人間的自然についての試論』(河出書房新社、2000年)の文庫化ですが、共訳者の財津さんの「文庫版への訳者あとがき」によれば「さらに多くの箇所を修正した」のことです。カバー表4紹介文に曰く「ドゥルーズが、イポリットとカンギレムの指導のもと、22歳で執筆した研究論文をもとにした、初期の重要な著作。哲学者としての早熟さと、のちの思想の萌芽がうかがえる、独創的なヒューム論。想像や妄想、虚構や自然が交じり合い、主体が生成していく過程を描く」と。

★『ヘーゲル読解入門(上・下)』は、ロシア生まれのフランスの哲学者で官僚でもあったアレクサンドル・コジェーヴ(Alexandre Kojève, 1902-1968)による高名な講義録『Introduction à la lecture de Hegel. Leçons sur la Phénoménologie de l'esprit professées de 1933 à 1939 à l'École des Hautes Études, réunies et publiées par Raymond Queneau』(Gallimard, 1947)の抄訳(国文社、1987年)の新書化。上巻巻末に、共訳者の今野雅方(こんの・まさかた, 1946-)さんによる「『ヘーゲル読解入門』への後書き」が新たに加わっています。改訳についての特記はありませんが翻訳作業当時の貴重なエピソードが紹介されています。国文社の廃業とともに親本が入手できなくなっていたので、こうして再刊されたことはたいへん幸いでした。帯文に曰く「現代思想への分岐点」。講義には前任者のコイレのほか、編者のクノー、さらにレイモン・アロン、バタイユ、クロソウスキー、ラカン、メルロ=ポンティ、カイヨワ、サルトル、レリス、アンリ・コルバンらが聴講し、またフランスにおけるヘーゲル受容において重要な役割を果たしたヴァール、イポリット、エリック・ヴァイルらも参加していたと伝えられています。本書を読むとき、これらの思想家たちの星座に読者もまた参入することになるわけです。

★有名な「歴史の終末」に関する注記(第七章原注6)は、上巻の298頁から301頁にかけて細かい活字で収録されています。特に次のくだりはよく知られているかと思います。「「ポスト歴史の」日本の文明は「アメリカ的生活様式」とは正反対の道を進んだ。〔…〕生のままのスノビスムがそこでは「自然的」或いは「動物的」な所与を否定する規律を作り出していた。〔…〕執拗な社会的経済的な不平等にもかかわたず、日本人はすべて例外なくすっかり形式化された価値に基づき、すなわち「歴史的」という意味での「人間的」な内容をすべて失った価値に基づき、現に生きている。〔…〕最近日本と西洋世界との間に始まった相互交流は、結局、日本人を再び野蛮にするのではなく、(ロシア人も含めた)西洋人を「日本化する」ことに帰着するであろう。〔…〕どのような動物もスノッブではありえない以上、「日本化された」ポスト歴史の後の時代はどれも特有な仕方で人間的であろう」(300~301頁)。

★まもなく発売となる新刊3点を列記します。

遠い国 遠い言葉――柄谷行人未刊行文集』柄谷行人(著)、読書人、2025年11月、本体5,500円、A5判上製652頁、ISBN978-4-924671-99-7
戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む――現代社会と民主主義を考えるための10講座』王寺賢太/小林康夫/渡辺靖/武田徹/苅部直/米本浩二/成田隆一/野家啓一/吉見俊哉/小松美彦(著)、読書人、2025年11月、本体2,600円、四六判並製370頁、ISBN978-4-924671-98-0
FSB ロシア連邦保安庁――沿革・任務・機構』ケヴィン・P・リール(著)、並木均(訳)、作品社、2025年11月、本体2,700円、四六判並製280頁、ISBN978-4-86793-123-3

★『遠い国 遠い言葉』は、批評家の柄谷行人(からたに・こうじん, 1941-)さんの未刊行文集。版元紹介文によれば「30代の時に雑誌に発表し、これまで単行本に収録されてこなかった、連載、批評、エッセイ、発言を、ほぼ網羅する。近年打ち立てられた「交換様式」の理論に先立つマルクス論、作家・坂上弘との貴重な往復書簡を収める。書簡のなかでは、アメリカでの日常生活や大学の様子などを事細かに綴る。「匿名」で執筆した「侃侃諤諤」(新発見)も収録」と。「一頁時評(連載)」「往復書簡 遠い言葉、遠い国(柄谷行人・坂上弘)」「マルクスの系譜学 (予備的考察/貨幣の形而上学)」「手帖(連載)」「短・中篇批評、エッセイ、インタビュー」の5部構成。詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。「マルクス論だけではなく、本書におさめられた文章は、出版界のみならず世界全体を文学のオーラが包んでいたような、文学が輝かしかった時代の濃厚な名残のなかで書かれたのである」(あとがきより)。

★『戦後の日本社会に影響を与えた「古典」を読む』は、2024年4月から7月にかけて立教大学でにおいて行われた「読書人カレッジ」の全10回の講義「戦後日本社会に影響を与えた「古典」を読む――現代社会を読み解くために」の記録に加筆訂正を加えたもの。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。取り上げられる主な書籍は以下の通りです。ルソー『人間不平等起源論』、三島由紀夫『豊饒の海』四部作、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』、沢木耕太郎『テロルの決算』『一瞬の夏』、小林秀雄「ヒューマニズム」(『考へるヒント2』所収)、石牟礼道子『苦海浄土』、網野善彦『「日本」とは何か』、トマス・S・クーン『科学革命の構造』、真木悠介『時間の比較社会学』、フーコー『知への意志』。

★『FSB ロシア連邦保安庁』は、英国ブルネル大学講師のケヴィン・P・リール(Kevin P. Riehle)さんの著書『The Russian FSB: A Concise History of the Federal Security Service』(Georgetown University Press, 2024)の全訳。FSB(ロシア連邦保安庁)とは、ソ連KGB(国家保安委員会)の国内保安担当部局を継承した諜報機関。本書の特色は帯文に次のようにまとめられています。「米政府で30年以上分析官を務めた専門家による入門書。ロシア語一次資料を多数使用。帝政期に遡る組織の起源、構造、歴代指導者から、映画等に描かれるロシア文化内のFSB表象までを射程に。FSBを特徴づけるソ連時代から続く国民への抑圧的な精神構造と、ウクライナ侵攻にも繫がった歴史観を分析」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。付録として、FSBの主要部局を記載した組織図が挟みこまれています。訳者あとがき全文がnoteで公開されています。

★このほか最近では以下の新刊との出逢いがありました。

隣接の遁走曲〔フーガ〕』四方田犬彦/飯沢耕太郎(著)、作品社、2025年11月、本体2,700円、四六判並製288頁、ISBN978-4-86793-122-6
サラム・アサイラム』崔真碩(著)、夜光社、2025年10月、本体1,500円、A5判並製142頁、ISBN978-4-906944-24-8

★『隣接の遁走曲〔フーガ〕』は、四方田犬彦(よもた・いぬひこ, 1953-)さんと飯沢耕太郎(いいざわ・こうたろう, 1954-)さんの往復書簡形式の対論集。版元紹介文に曰く「詩、小説、漫画、映画、写真、美術、音楽、建築、世界への旅、1960~70年代の記憶……。あらゆる表象芸術を論じ、同じ時代を疾駆した博覧強記の評論家ふたりによる初の対論。隣り合って交錯し、ずれながら反響する知のセッション」。四方田さんが高校二年生の折にガリ版刷りで製作したという詩集『暗い入江』(1969年)の写真が掲載され、一部が引用されています。図書室にある書物からの引用で詩作品を作ったとのこと。「半世紀ぶりに読み返して気が付いたのは、あちらこちらにカミュとボブ・ディランの断片が顔を覗かせていることです」(143頁)。本書付録となる二氏の詩作品5篇を掲載した「詩選集」がPDFで作品社ウェブサイトで無料公開されています。

★『サラム・アサイラム』は、広島大学大学院准教授で、朝鮮近現代文学やポストコロニアル研究がご専門の崔真碩(ちぇ・じんそく, 1973-)さんの『サラム ひと』(夜光社、2018年)に続く第2詩集。収録作品は、「クロムビに行く門」「アサイラム ひと」「アンダーグラウンド・オキナワ」「放蕩ステイション」「ニューヨーク」「ポストコロニアル」「歴史と民族の再生」「歴史の天使」「K」の9篇。あとがきから引きます。「詩で戦争を止める。詩で朝鮮戦争を終わらせる。これが私の詩心であり、私のライフワーク、私の本気だ。/本書は、在日朝鮮人文学だ。在日朝鮮人文学の継承だ。根無し草の私にルーツがあるとすれば、それは在日朝鮮人文学だ。在日朝鮮人文学はいつでも私のアサイラムだった」(137頁)。



by urag | 2025-11-17 01:09 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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