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2025年 11月 09日
★まもなく発売となるちくま学芸文庫の11月新刊を列記します。 『仮面と神話』大林太良(著)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,400円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-51333-5 『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』スティーヴン・グリーンブラット(著)、河野純治(訳)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,600円、文庫判472頁、ISBN978-4-480-51332-8 『英語の習得法』最所フミ(著)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,000円、文庫判176頁、ISBN978-4-480-51331-1 『近代小説の表現機構』安藤宏(著)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,600円、文庫判560頁、ISBN978-4-480-51328-1 『エントロピーと秩序――熱力学第二法則への招待』ピーター・W・アトキンス(著)、米沢富美子/森弘之(訳)、ちくま学芸文庫、2025年11月、本体1,600円、文庫判448頁、ISBN978-4-480-51325-0 ★『仮面と神話』は、1998年に小学館から刊行された、民族学者の大林太良(おおばやし・たりょう, 1929‐2001)さんの講演録をまとめたもののの文庫化。版元紹介文に曰く「人類は文明のどの段階から仮面を使うようになるのか。多数の図版と分布地図を用い、世界的視野で民族学の重要な諸論点を平明に語る」。文庫版解説「世界・東アジア・日本」は、松村一男さんによるもの。 ★『一四一七年、その一冊がすべてを変えた』は、米国の文学史家スティーヴン・グリーンブラット(Stephen Greenblatt, 1943-)さんのピュリッツァー賞受賞作『The Swerve: How the World Became Modern』(Norton, 2011)の訳書(柏書房、2012年)を文庫化したもの。版元紹介文に曰く「ルネサンスの原動力となったのは、忘れ去られていた古代ローマの哲学詩だった──。ある写本の発見が与えた衝撃を描く傑作歴史物語」。巻末解説は、池上俊一さんによるもの。古代ローマの哲学詩というのは、ルクネティウス『事物の本性について』のことです。ちくま学芸文庫では今年3月に藤沢令夫/岩田義一訳が刊行されています。 ★『英語の習得法』は、評論家で翻訳家の最所フミ(さいしょ・ふみ, 1908-1990)さんの著書(研究社、1981年)の文庫化。「英語と日本語の違い、効果的な「読み」、「書く」ための心構え、英会話と音読といったテーマを通し、著者一流の秘訣を一挙公開」(カバー表4紹介文より)。巻末特記によれば「北村一真氏のご協力の下、本文内の誤りは適宜訂正した」とのことです。北村さんは巻末解説もお書きになっています。書名のリンク先では、巻頭の「はしがき」を立ち読みすることができます。 ★『近代小説の表現機構』は、東京大学名誉教授で日本近代文学がご専門の安藤宏(あんどう・ひろし, 1958-)さんの著書(岩波書店、2012年)の文庫化。「小説が小説たろうとするための"よそおい"や"みぶり"を「表現機構」と名付け、分析概念の核に据えて考察することで、近代小説の全体像に新たな見取り図を示す」(カバー表4紹介文より)。著者による「ちくま学芸文庫版の刊行に当たって」と、佐藤秀明さんによる巻末解説が加わっています。 ★『エントロピーと秩序』は、レーベル内シリーズ「Math&Sciences」の最新刊。英国の物理化学者ピーター・W・アトキンス(Peter William Atkins, 1940-)の著書『The Second Law』(Scientific American Library/Freeman, 1984/1994)の訳書(日経サイエンス社、1992年)の文庫化です。熱力学第二法則をめぐり、「その基本となる考え方を、できるだけ数式を用いずに、かつ学問的な厳密性をいささかも損なうことなく、懇切丁寧に説明していく。〔…〕蒸気機関から生命現象まで多様なトピックを扱いつつ、熱力学の奥深さを説き明かした不朽の名著」(カバー表4紹介文より)。「文庫版訳者あとがき」が新たに加わっています。 ★次に、注目の文庫新刊既刊書から。 『チベット死者の書――サイケデリック・バージョン』ティモシー・リアリー/ラルフ・メツナー/リチャード・アルパート(著)、菅靖彦(訳)、平凡社ライブラリー、2025年10月、本体1,900円、B6変型判320頁、ISBN978-4-582-77000-1 『永久革命者とは何か――埴谷雄高論集』吉本隆明(著)、講談社文芸文庫、2025年10月、本体2,400円、A6判368頁、ISBN978-4-06-541226-8 『人魚紀聞――椿實幻想短篇選』椿實(著)、中公文庫、2025年9月、本体1,300円、文庫判448頁、ISBN978-4-12-207699-0 『神秘学入門』高橋巖(著)、講談社学術文庫、2025年10月、本体1,000円、A6判192頁、ISBN978-4-06-541432-3 『ペンテジレーア』クライスト(著)、大宮勘一郎(訳)、岩波文庫、2025年10月、本体910円、文庫判312頁、ISBN978-4-00-324169-1 『エミール3』ルソー(著)、斉藤悦則(訳)、光文社古典新訳文庫、2025年10月、本体1,600円、ISBN978-4-33-410790-1 『ブレシアの飛行機/バケツの騎士』カフカ(著)、丘沢静也(訳)、光文社古典新訳文庫、2025年10月、本体900円、ISBN978-4-33-410791-8 『安芸厳島社』松岡久人(著)、法蔵館文庫、2025年10月、本体1,400円、文庫判296頁、ISBN978-4-831827104 ★『チベット死者の書』は、1994年に八幡書店から刊行された単行本の文庫化。『The Psychedelic Experience: A Manual Based on The Tibetan Book of the Dead』(1964年)の訳書で、アメリカの心理学者で戦後アメリカの対抗文化を牽引したティモシー・リアリー(Timothy Francis Leary, 1920-1996)らによる実験的トリップマニュアルです。付録として朗読CD『バルド・ソドル』の全訳が併録され、菅靖彦さんによる「平凡社ライブラリー版訳者あとがき」、木澤佐登志さんによる巻末解説「変性意識とカウンターカルチャーの精神史」も加わっています。平凡社ライブラリーの記念すべき1000巻目が本書というのはなかなか凄いチョイスですね。なおCD『バルド・ソドル』は八幡書店より1994年に発行されていました。 ★『永久革命者とは何か』は、吉本隆明さんによる埴谷雄高論21篇をまとめたもの。収録テクストは書名のリンク先でご確認いただけます。巻末解説は安藤礼二さんによる「先鋭的な対立と創造的な対話」。安藤さんは二人の関係をこう評しておられます。「先鋭的に対立するからこそ創造的な対話が成り立つのである。/吉本隆明によって、埴谷雄高は、畏怖すべき「対立者」であるとともに創造的な「対話者」でもあった。深い共感とともにその著作を読み進めると同時に、ある場合には、その行動に根底から抗い、厳しい異議を申し立てる。しかし、その異議申し立てによって、吉本隆明は未知なる自己の可能性を再認識し、その表現は新たな次元に到達する」(336~337頁)。 ★『人魚紀聞』は、作家の椿實(つばき・みのる, 1925-2002)さんの生誕100年記念出版で、デビュー作にして代表作の「メーゾン・ベルビウ地帯」をはじめ、晩年に至るまでの17篇の幻想・推理短篇を厳選した「初のベスト・セレクション」(カバー表4紹介文より)。巻末に資料として5篇の関連テクストが併録されています。柴田錬三郎「二十世紀ロマンの旗幟」、吉行淳之介「椿實のデビューまで」、窪田般彌「忘れられたアリエッタ」、澁澤龍彦「神話的な名曲」、小笠原賢二「文字でつくった「万華鏡」――椿實インタビュー」。 ★『神秘学入門』は、美学者で日本におけるルドルフ・シュタイナー研究の第一人者である、高橋巖(たかはし・いわお, 1928-2024)さんが2000年にちくまプリマーブックスの1冊として上梓したものの文庫化。「シュタイナー思想を軸に神秘学の基本的な考え方と歴史的転回をやさしく解説しながら、魂を探る旅へとみちびく最良の入門書」(カバー表4紹介文より)。巻末解説「神秘学徒の視座」は若松英輔さんによるもの。 ★『ペンテジレーア』はクライストによる悲劇『Penthesilea』(1808年)の、大宮勘一郎(おおみや・かんいちろう, 1960-)さんによる新訳。岩波文庫での旧訳は、吹田順助訳で、1941年初版、2012年の3刷が最終重版と思われます。内容紹介文は旧版のカバーソデ記載の文言が端的なので借りてみると、「ギリシア軍のトロヤ攻撃に材を取り、女人国アマゾン〔アマツォーネ:アマゾネス〕の女王ペンテジレーアと英雄アヒレス〔アキレス〕との激しい恋の葛藤を主題として、愛と憎しみ、憧憬と絶望との交錯を描いた悲劇」。 ★『エミール3』は、全3巻の完結篇。「女子教育、恋愛、結婚にたいするルソーの考えが語られる。〔…〕『社会契約論』とも密接に通じる最終巻」。巻末解説は淵田仁さんによる「Q&Aで読む『エミール』」。既刊は第1巻(2025年4月)、第2巻(2025年7月)。『社会契約論』は光文社古典新訳文庫では、2008年に中山元訳『社会契約論/ジュネーヴ草稿』として刊行済。 ★『ブレシアの飛行機/バケツの騎士』は、カフカ短篇集。「短編集収録の小品ほか、表題の2作と親友M・ブロートとの共作など、新聞・雑誌にだけ掲載されたものを含む38編+1を収録。そのうちの24編が「カフカがカフカになった」といわれる傑作『判決』以前の小品、初期の習作。若書き特有のぎこちなさの奥にある原石のカフカに出会える一冊」(カバー表4紹介文)。収録作品は書名のリンク先でご確認いただけます。『観察』より16篇、『田舎医者』より10篇、『断食芸人』より2篇、新聞や雑誌にだけ掲載された作品群から10篇です。表題作2篇はいずれも新聞掲載のもの。 ★『安芸厳島社』は、日本中世史がご専門の歴史家、松岡久人(まつおか・ひさと, 1918-2009)さんの著書(法蔵選書、1986年)の文庫化。「世界遺産・日本三景の一つ安芸の宮島にまします厳島神社。厳島神の鎮座、社殿の造営、平清盛の信仰、社家・供僧・内侍の活動、大内氏・毛利氏による復興など、原子から中世末に至るまでに積み重ねられた奥深い文化を、史料から丁寧に明らかにする」(カバー表4紹介文より)。巻末解説は秋山伸隆さんによる「松岡久人氏と厳島研究」。
by urag
| 2025-11-09 22:24
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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