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2025年 10月 26日

注目新刊:本巻全38巻完結、晶文社版『吉本隆明全集38[書簡Ⅱ・Ⅲ]』

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★まず、最近出逢いのあった書籍新刊を列記します。

吉本隆明全集38[書簡Ⅱ・Ⅲ]』吉本隆明(著)、晶文社、2025年10月、本体7,600円、A5判変型上製580頁、ISBN978-4-7949-7138-8
言語活動の秘蹟――宣誓の考古学』ジョルジョ・アガンベン(著)、上村忠男(訳)、以文社、2025年10月、本体3,600円、四六判上製144頁、ISBN978-4-7531-0397-3
メダンの夕べ――戦争と女たち』ゾラ/モーパッサン/ユイスマンス/ほか(著)、足立和彦/安達孝信(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2025年10月、本体3,900円、四六変形判上製432頁、ISBN978-4-86488-333-7
現代思想2025年11月号 特集=「終末論」を考える――破局と救済のポリティクス』青土社、2025年10月、本体1,800円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1489-6
決定版 日本のイカ・タコ』土屋光太郎(解説)、阿部秀樹(写真)、平凡社、2025年9月、本体4,200円、A5変型判336頁、ISBN978-4-582-54257-8

★『吉本隆明全集38[書簡Ⅱ・Ⅲ]』はまもなく発売。「11年の歳月をかけ、遂に本巻完結」(帯文より)。最終巻となる第38巻は、京都・三月書房の宍戸恭一宛全書簡143通(1959~2002年)を収録する「書簡Ⅱ」と、「1950年代の北川太一、島尾敏雄宛の書簡に始まり、著者の執筆・言論活動の重要な舞台となった『試行』の直接購読者とのやりとりなど、書簡190通余りを収録する」(版元紹介文より)「書簡Ⅲ」、さらに「36巻刊行後に入手できた遺留原稿「ヨブ記註解」を収録」(同)とのこと。巻末には間宮幹彦さんによる「解題」のほか、全集の舞台裏を窺える貴重な「謝辞」が載っています。付属の「月報38」は、大塚英志さんの「「位相」の出自」と、ハルノ宵子さんの「来訪神」を収録。月報によれば、全集に関連する直販冊子『吉本隆明・赤羽淑(往復)書簡』(税別2500円)の受注を、晶文社がほどなく開始するようです。

★「ヨブ記註解」より引きます。「ヨブは絶望する。一族や肉親が不幸な災難に見舞われ、所有していた富や財が無に帰し、じぶんは皮膚病の苦痛にさいなまれているからか。たしかにひとりの個人ヨブは、ほかの個人のようにこれほどの災厄に見舞われれば、誰でも絶望にうちのめされることがある。ヨブもおなじだ。だが信仰の人ヨブにはもうひとつの絶望に打ちのめされていることがある。それは神は不善や不公平や悪をなすものではないのかという疑念と不信に由来する信仰としての絶望だ。これは私人としての絶望、じぶんの不幸の意識からくる絶望とはちがう。また違わなければ、旧約の精髄としての『ヨブ記』は成り立たない。/ヨブのおおげさにみえる自身への嘆きと、神への呪詛ににた抗弁のうしろに、この二重の絶望を読むのが妥当なようにみえる。『ヨブ記』は受難者ヨブの物語であるとともに、旧約の「神」の本質に向かって肉迫してゆく人間的な本質の対抗の物語だ」(539頁)。

★『言語活動の秘蹟』は、イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンの主著「ホモ・サケル」シリーズの第二部第三巻で、シリーズ唯一の未訳本となっていた『Horkos: Il sacramento del linguaggio Archeologia del giuramento』(Laterza, 2008; Quodolibet, 2023)の全訳。版元紹介文に曰く「「宣誓」に先立って、宗教や法が存在するのではなく、まさに「宣誓」の行為遂行性によって、宗教・法が立ち現れる。政治的動物(ゾーオン・ポリティコン)たる人間そのものを問いに付す、宣誓の哲学的考古学の探究」。全29節。

★「宣誓を考古学的に探求するということは、わたしたちがここでは基本的にギリシア=ローマの範囲内に制限することにする歴史的データの分析を人類の発生と現在のあいだに張り渡されたアルケーのほうへ差し向けていくことを意味することになるだろう。すなわち、わたしたちが「宣誓」という語で指示している、法的であると同時に宗教的でもある謎めいた制度は、それが言葉を話す存在および政治的動物としての人間の自然本性そのものを問いに付すような展望のもとに置くことにとってのみ、知解可能になるというのが、わたしの仮説である。ここから宣誓の考古学の今日的意義はやってくる。実際にも、人類の発生といったような超歴史は一度完遂されたならそれで終わりといった出来事ではない。それはつねに進行中である。というのも、ホモ・サピエンスはけっして人間になることをやめないからであり、おそらく、言語に接近し、言葉を話す存在としてのみずからの自然本性にもとづいて宣誓することを、なおもやり終えていないからである」(第5冊19頁)。

★『メダンの夕べ』は、ルリユール叢書の第51回配本、73冊目。『Les Soirées de Médan』(1880年)の全訳。底本には2015年にフラマリオンから再刊された版が使用されています。戦場、野戦病院、兵舎、総司令部などにおける「現実」を直視し、戦時下の軍人や女たちの生を鮮明に描き出すことによって、戦争美化の言説に抗議の声をあげる――パリ郊外のメダンにあるゾラ宅に集った〔…〕6人のフランス自然主義作家が普仏戦争(1870-71)を記録、諷刺した短編小説集。本邦初完訳」(帯文より)。収録作は、エミール・ゾラ「水車小屋の攻防」、ギ・ド・モーパッサン「脂肪の塊」、ジョリス゠カルル・ユイスマンス「背囊を背負って」、アンリ・セアール「瀉血」、レオン・エニック「大七事件」、ポール・アレクシ「戦闘のあと」。補遺として、「(五十周年記念の再刊に寄せた)レオン・エニックによる序文」と、モーパッサンによる「メダンの夕べ――どのようにしてこの書が作られたか」が併録されています。ルリユール叢書次回配本は11月下旬発売予定、ジョルジュ・シムノン『故ギャレ氏/リバティ・バー』(中村佳子訳)。

★『現代思想2025年11月号』の特集は「「終末論」を考える」。版元紹介文に曰く「本特集では終末論の政治的含意を批判的に問うとともに、その宗教的な淵源や、歴史・文化も含め広く検討することで、オルタナティヴな未来の思想を模索する」と。橋迫瑞穂さんと森岡正博さんの討議に始まり、17篇の論考を収録。寄稿者は以下の方々です。大澤真幸、森元斎、菊地夏野、土佐弘之、沖田瑞穂、辻隆太朗、柳澤田実、冲永宜司、工藤万里江、逆卷しとね、宮本道人、小泉空、木村政樹、寺田俊郎、柿木伸之、大竹弘二、亀井大輔。11月末発売の12月号の特集は「排外主義の時代」。

★『決定版 日本のイカ・タコ』は、「気鋭の学者と写真家による10年に及ぶコラボ作」(版元紹介文より)だというカラー図鑑。「最新の分類と知見、美しい700枚のカラー写真で、イカ類20科71種、タコ類10科42種を解説。頭足類のユニークで不思議な世界」(帯文より)。「筆者ははや40年、頭足類の研究に携わり、分類研究者として標本に基づいた研究を続けてきた。今からほぼ20年前、筆者らは『イカ・タコガイドブック』(TBSブリタニカ)を刊行した。その編集の際にも生きた頭足類の変化に富んだ生態画像に触れ、その変化の美しさと、その同定の難しさを深く感じたが、さらにこのたびも、共著者である水中カメラマンの阿部秀樹さんが日本全域にわたり、30年以上の時間をかけて撮影した膨大な生態写真を基に新たな頭足類の図鑑を刊行する機会を得た」(序文、4頁)。

★次に、水声社さんの注目新刊既刊書から。

太陽の都市』トンマーゾ・カンパネッラ(著)、澤井繁男(訳)、イタリアルネサンス文学・哲学コレクション:水声社、2025年10月、本体2,700円、A5判上製160頁、ISBN978-4-8010-0776-5
世界の可能性――ピエール゠フィリップ・ジャンダンとの対話』ジャン゠リュック・ナンシー(著)、伊藤潤一郎/吉松覚/松田智裕(訳)、批評の小径:水声社、2025年9月、本体2,200円、四六判上製197頁、ISBN978-4-8010-0886-1

★『太陽の都市』は、作家でルネサンス文化研究者の澤井繁男(さわい・しげお, 1954-)さんによる責任編集のシリーズ「イタリアルネサンス文学・哲学コレクション」全6巻の最終回配本となる第6巻。イタリアの聖職者で自然哲学者のトンマーゾ・カンパネッラ(Tommaso Campanella, 1568-1639)の代表的著作『La città del Sole』(1602年)の新訳。帯文に曰く「教会とスペイン帝国に対し武装蜂起を企図したカトリック僧が、逮捕された獄中にて執筆したユートピア論。神政政治、結婚と生殖の管理、財産の共有、卓越した科学技術……混迷の17世紀イタリアで千年王国到来の予感とともに夢想する、原始共産制社会の驚くべきビジョン」。

★同書の既訳には、以下のものがありました。加藤朝鳥訳「太陽の都」(『世界大思想全集(50)』所収、春秋社、1929年)、島谷俊三訳『太陽の都』(玉川叢書:玉川学園出版部、1932年)、大岩誠訳『太陽の都』(岩波文庫、1950年)、坂本鉄男訳『太陽の都・詩篇』(古典文庫:現代思潮社、1967年)、近藤恒一訳『太陽の都』(岩波文庫、1992年)。

★「イタリアルネサンス文学・哲学コレクション」の全巻構成は以下の通り。

第1巻:ジョヴァンニ・ボテロ『都市盛衰原因論』石黒盛久訳、2019年3月
第2巻:トルクァート・タッソ『詩作論』村瀬有司訳、2019年4月
第3巻:トンマーゾ・カンパネッラ『哲学詩集』澤井繁男訳、2020年4月
第4巻:ピエトロ・アレティーノ『コルティジャーナ(宮廷生活)』栗原俊秀訳、2019年9月
第5巻:ガリレオ・ガリレイ『ガリレオ書簡集――天文学的発見から聖書解釈まで』小林満訳、2022年12月
第6巻:トンマーゾ・カンパネッラ『太陽の都市』澤井繁男訳、2025年10月

★なお当初の予定では第6巻は、マルシリオ・フィチーノ『人間の生について』河合成雄訳、と予告されていました。

★『世界の可能性』は、フランスの哲学者ジャン゠リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy, 1940-2021)の対話篇『La Possibilité d’un monde : Dialogue avec Pierre-Philippe Jandin』(Les petits Platons, 2013)の全訳。帯文に曰く「少年期の読書体験から芽吹き、意味、共同体、政治、宗教、芸術へと枝葉を伸ばした思索が、やがて世界の輪郭を描き出す。その思想史的軌跡と核心を、対話の中で鮮やかに照射する——私たちの思考を新たな地平へ押しひろげる、ナンシーによるナンシー哲学入門」。目次は書名のリンク先でご確認いただけます。

★「悪は、まさにしく世界を拒否すること、世界をあるひとつの帝国でもって置き換えようとすることでしょう――そこに主権があるかどうかはともかく、です……。そのような帝国は、貨幣の帝国でもあるかもしれませんし、「私」の帝国であったり、ある神の帝国であったりするかもしれませんし、自分に酔いしれた技術の帝国であったり、自分に酔った信仰の帝国であったりするかもしれません。そこには求心的で自己充足した数々の力が見出されます。しかし世界は遠心的で、彷徨的で、開かれているのです」(164頁)。

★ここ1年間で水声社さんから刊行された書籍のうちの注目書を以下に列記します。

2025年09月《人類学の転回》:マリリン・ストラザーン『アフター・ネイチャー ――20世紀後期におけるイングランドの親族』谷憲一/堀口真司(訳)、ISBN978-4-8010-0723-9
2025年09月:マリオ・ペルニオーラ『すべてがアートになったあと――現代美術と理論の戦略』鯖江秀樹(訳)、ISBN978-4-8010-0883-0
2025年06月《芸術/言語》:ガブリエレ・グエルチョ(編)『哲学以後の芸術とその後――ジョゼフ・コスース著作集成 1966-1990』鍵谷怜(訳)、ISBN978-4-8010-0874-8
2025年05月:W・H・オーデン『もうひとつの時代』岩崎宗治(訳)、ISBN978-4-8010-0860-1
2025年05月:W・H・オーデン『アキレスの盾』太田雅孝(訳)、ISBN978-4-8010-0859-5
2025年05月《言語の政治》:アントワーヌ・コンパニョン『ベルナール・ファイ――ある対独協力知識人の肖像』今井勉(訳)、ISBN978-4-8010-0869-4
2025年4月《記号学的実践叢書》:シーモア・チャットマン『小説と映画の修辞学[改訳決定版]』田中秀人(訳)、ISBN978-4-8010-0621-8
2025年01月《言語の政治》:ロバート・ハーヴェイ『コモン・グラウンドの倫理――デュラス、フーコー、シャールの文学空間』中川真知子(訳)、ISBN978-4-8010-0840-3 
2024年11月《批評の小径》:マルセル・ベナブー『私はなぜ自分の本を一冊も書かなかったのか』塩塚秀一郎(訳)、ISBN978-4-8010-0783-3
2024年11月《言語の政治》:アントワーヌ・コンパニョン『ブリュヌチエール――ある反ドレフュス派知識人の肖像』今井勉(訳)、ISBN978-4-8010-0827-4
2024年10月:マシュー・フラー/エヤル・ヴァイツマン『調査的感性術――真実の政治における紛争とコモンズ』中井悠(訳)、ISBN978-4-8010-0765-9
2024年10月:ルドルフ・シュタイナー『シュタイナー医学講義――アントロポゾフィー的治療』小林國力/福元晃/中谷三恵子(訳)、ISBN978-4-8010-0819-9


by urag | 2025-10-26 21:16 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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