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2025年 08月 24日
★まず最初に注目の新刊既刊書を列記します。 『7』トリスタン・ガルシア(著)、高橋啓(訳)、河出書房新社、2025年8月、本体4,800円、46変形判上製528頁、ISBN978-4-309-20929-6 『精神指導の規則』ルネ・デカルト(著)、山田弘明(訳)、知泉学術叢書:知泉書館、2025年7月、本体3,000円、新書判上製248頁、ISBN978-4-86285-439-1 『デカルトの道徳論』ジュヌヴィエーヴ・ロディス=レヴィス(著)、大﨑博(訳)、成隆出版、2025年2月、本体4,000円、A5判上製218頁、ISBN978-4-86825-000-5 ★『7』は、フランスの哲学者トリスタン・ガルシア(Tristan Garcia, 1981-)の小説『7』(Gallimard, 2015)の訳書。帯文に曰く「ドラッグの売人、元ロック・スター、トップモデル、革命家、UFO研究者、分断世界の監察官、そして不滅の男――7つの物語が交叉する。仏哲学界の新スターによる驚異的建築物のごとき傑作小説」。7つの物語というのは、「エリセエンヌ」「木管」「サンギーヌ」「永久革命」「宇宙人の存在」「第七」の7篇。「第七」はさらに7つのパート(第一~第七)に分かれており、死なない少年の物語で、本書の半分近くの長さを占め「それまでの六つの小説をひとまとめにした趣」があると訳者あとがきで紹介されています。ガルシアによる哲学書の訳書には既刊書と近刊書が各1点ずつあります。既刊書は『激しい生――近代の強迫観念』(栗脇永翔訳、人文書院、2021年)です。近刊書は来月(2025年9月)発売予定の『〈私たち〉とは何か―― 一人称複数の哲学』(関大聡/伊藤琢麻/福島亮訳、法政大学出版局)です。 ★『精神指導の規則』は、デカルトがオランダに移住する直前の1628年に執筆したとされる『Regulae ad directionem ingenii』の全訳。底本はアダン=タヌリ版全集で、オランダ語訳版、ハノーファー版、ケンブリッジ版などを参照しているとのことです。「原本が失われている『規則論』の現存する複数の写本を参照のうえ翻訳、さらに各規則間の関連や、『方法序説』(1637)、『省察』(1641)などその後のデカルトの著作への発展に関する注も充実している。また付録として『規則論』がデカルトの死後どのように伝承され、影響をあたえたのかを知るためのテキストも収録」(カバー表4紹介文より)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。なお既訳には、野田又夫訳(岩波文庫)や大出晁/有働勤吉訳(白水社版デカルト著作集第4巻所収)があります。 ★『デカルトの道徳論』は、フランスの哲学者ジュヌヴィエーヴ・ロディス=レヴィス(Geneviève Rodis-Lewis, 1918-2004)の著書『La Morale de Descartes』(PUF, 1962)の訳書。「本書はデカルトの書簡、著作からの数多くの引用で組み立てられている。青年時代からの哲学形成の歩みを辿りながら、最晩年に高邁の概念に到達し、道徳的「知恵」について言及するようになるまでの道徳論の生成が、主要な著作を基に丹念に跡付けされている」(版元紹介文より)。ロディス=レヴィスの単独著の既訳書には以下のものがあります。『デカルトと合理主義』(福居純訳、文庫クセジュ、1967年;著者名表記は「ロディス=ルイス」)、『デカルトの著作と体系』(小林道夫/川添信介訳、紀伊國屋書店、1990年)、『デカルト伝』( 飯塚勝久訳、未來社、1998年)。 ★次に最近出会いのあった新刊2点を列記します。 『スカートをはいたドン・キホーテ』ベニート・ペレス=ガルドス(著)、大楠栄三(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2025年8月、本体5,900円、四六変形判上製632頁、ISBN978-4-86488-330-6 『ネオ・ユーラシア主義――「混迷の大国」ロシアの思想』浜由樹子(著)、河出新書、2025年6月、本体1,200円、新書判280頁、ISBN978-4-309-63192-9 ★『スカートをはいたドン・キホーテ』は、スペインの作家ベニート・ペレス=ガルドス(Benito Pérez Galdós, 1843–1920)の長編小説『La desheredada』(1881年;原題直訳『相続権を剥奪された娘』)の初訳。帯文によれば「『ドン・キホーテ』のパロディーたるスペイン自然主義文学にして、マリオ・バルガス゠リョサに「20世紀初頭の前衛小説に先んじた手法」と称された《非現実の夢》を用い、首都マドリードの都市空間の綾を読み解くベニート・ペレス゠ガルドスの都市小説の傑作長編」。訳題は、バルガス=リョサが本作について論じた言葉から採られたもの。訳者解題によれば、バルガス=リョサによるガルドス論『ペレス=ガルドスの穏やかな眼差し』(2022年)の訳書を上梓する予定とのことです。 ★『ネオ・ユーラシア主義』は、「ネオ・ユーラシア主義とはあどのような思想なのか、どのような思想なのか、どのような状況から生まれたのか、そして誰が主導者で、どのような変遷を遂げてきたのかを体系的に示す試み」(はじめに、4頁)。「本書では、(1)最右翼のアレクサンドル・ドゥーギン、(2)グローバリズム批判の論客であるアレクサンドル・パナーリン、(3)外務省周辺の実務家たち、(4)中央アジアとの地域統合をリードする政治家、という四つの代表的グループに焦点を絞る」(第一章、24頁)。ソ連崩壊以後、ヨーロッパでもアジアでもないユーラシアの国家としての自意識を高めつつあるロシアの現在を読み解くうえでの必読書ではないかと思われます。「一度はリベラルな改革を経験しながら反リベラリズムへと向かった今のロシアが、世界と自らの関係をどのように見ているのかを理解する「補助線」としての意味はあるはずだ」(おわりに、260頁)。 ★最後に人文書院の近刊新刊6点を列記します。 『カントと二一世紀の平和論』日本カント協会(編)、人文書院、2025年8月、本体3,800円、四六判上製276頁、ISBN978-4-409-03141-4 『未来への負債――世代間倫理の哲学』キルステン・マイヤー(著)、御子柴善之(監訳)、逢坂暁乃/尾崎賛美/繁田歩/田原彰太郎/中村涼/浜野喬士/道下拓哉/渡辺浩太(訳)、人文書院、2025年8月、本体3,800円、四六判上製248頁、ISBN978-4-409-03142-1 『脱領域の読書――あるロシア研究者の知的遍歴』塩川伸明(著)、人文書院、2025年7月、本体3,200円、四六判並製310頁、ISBN978-4-409-24172-1 『お土産の文化人類学――地域性と真正性をめぐって』鈴木美香子(著)、人文書院、2025年7月、本体2,400円、四六判並製200頁、ISBN978-4-409-53052-8 『魂の文化史――19世紀末から現代におけるヨーロッパと北米の言説』コク・フォン・シュトゥックラート(著)、熊谷哲哉(訳)、人文書院、2025年7月、本体6,000円、四六判上製444頁、ISBN978-4-409-04131-4 『映画研究ユーザーズガイド――21世紀の「映画」とは何か』北野圭介(著)、人文書院、2025年7月、本体2,400円、四六判並製230頁、ISBN978-4-409-10047-9 ★『カントと二一世紀の平和論』『未来への負債』はまもなく発売。そのほかの4点は発売済です。『魂の文化史』について特記します。ガーナ出身で現在オランダで教鞭を執る宗教学者コク・フォン・シュトゥックラート(Kocku von Stuckrad, 1966-)の著書『Die Seele im 20. Jahrhundert: Eine Kulturgeschichte』(Fink, 2019;原題直訳『20世紀の魂――ひとつの文化史』)の全訳。帯文に曰く「古代ギリシアや古典ロマン主義の時代から、心理学による「魂」の忘却、ドイツ・ナショナリズムの高揚とユングの元型論、オカルティズムと神秘主義、ニューエイジとトランスパーソナル運動、果てはレイチェル・カーソン、ル=グウィン、ハリー・ポッターまで――ヨーロッパとアメリカを往還する「魂」の軌跡を精緻に辿る、壮大で唯一無二の系譜学」。「一八七〇年から一九三〇年までの文化的言説における魂」「ヨーロッパからアメリカ、そして再びヨーロッパへ―― 一九五〇年代から現在までの魂」の二部構成。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。
by urag
| 2025-08-24 22:46
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