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2025年 08月 10日

注目新刊:角悠介『呪文の言語学』作品社、ほか

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★まず、ここ数ヶ月分の注目新書新刊既刊(新書サイズの単行本を含む)を記します。

帝国陸軍――デモクラシーとの相剋』髙杉洋平(著)、中公新書、2025年7月、本体1,100円、新書判312頁、ISBN978-4-12-102863-1
物語化批判の哲学――〈わたしの人生〉を遊びなおすために』難波優輝(著)、講談社現代新書、2025年7月、本体960円、新書判240頁、ISBN978-4-06-539964-4
「進歩」を疑う――なぜ私たちは発展しながら自滅へ向かうのか』スラヴォイ・ジジェク(著)、早川健治(訳)、NHK出版新書、2025年7月、本体1,250円、新書判並製208頁、ISBN978-4-14-088747-9
出版という仕事』三島邦弘(著)、ちくまプリマー新書、2025年7月、本体900円、新書判並製224頁、ISBN978-4-480-68528-5
悲劇の誕生――あるいはギリシア精神と悲観論』ニーチェ(著)、浅井真男(訳)、 白水Uブックス「思想の地平線」、2025年6月、本体1,700円、新書判並製200頁、ISBN978-4-560-72142-1
セカンド・チャンス――シェイクスピアとフロイトに学ぶ「やり直しの人生」』スティーブン・グリーンブラット/アダム・フィリップス(著)、河合祥一郎(訳)、岩波新書、2025年6月、本体1,200円、新書判334頁、ISBN978-4-00-432068-5
[新書版]人間の本性――人間社会を自分が生き延びるための本能』アルフレッド・アドラー(著)、長谷川早苗(訳)、興陽館、2025年6月、本体1,500円、新書判232頁、ISBN978-4-87723-341-9
存在論のフロンティア――自然・技術・形而上学』セバスチャン・ブロイ/井頭昌彦/田中祐理子(編著)、読書人、2025年5月、本体1,800円、新書判並製350頁、ISBN978-4-924671-94-2
立ち読みの歴史』小林昌樹(著)、ハヤカワ新書、2025年4月、本体1,200円、新書判200頁、ISBN978-4-15-340043-6

★盆休みの省力中につき、1点のみ言及しておきます。新書レーベルではないものの新書版として刊行された興陽館の、アドラー『人間の本性』に注目。『Menschenkenntnis』を二分冊した前半部で、単行本『人間の本性――人間とはいったい何か』(興陽館、2020年)として刊行されたのち、新書版として再刊されました。後半部は単行本『性格の法則 ――あのひとの心に隠された秘密』(長谷川早苗訳、興陽館、2020年)として刊行されたのち、新書版『性格の秘密――あのひとの心に隠された』が今年1月に発売済です。また、長谷川早苗訳のアドラー新書版には『生きる意味』(興陽館、2024年)があります。

★『Menschenkenntnis』の既訳としては、『人間知の心理学』(高尾利数訳、春秋社、1987年)、『人間知の心理学』(岸見一郎訳、アルテ、2008年;新装版2021年)、『性格の心理学』(岸見一郎訳、アルテ、2009年)、『現代人の心理構造』(山下肇訳、日本教文館、1957年;『現代人のこころ――個人心理学入門』山下肇訳、潮文庫、1971年;『人間をかんがえる』山下肇・山下萬里訳、河出書房新社、2021年)などがあり、アドラーの代表作として日本でも広く読まれてきたと言えるのではないでしょうか。

★次に、最近出会いがあった作品社、平凡社の新刊を列記します。まず作品社7~8月新刊より3点。

マーベル・コミックのすべて』ダグラス・ウォーク(著)、上杉隼人(訳)、作品社、2025年8月、本体6,300円、四六判並製608頁、ISBN978-4-86793-101-1
〈聖戦〉という思想――近代日本の宿命』田中久文(著)、作品社、2025年8月、本体2,700円、四六判並製272頁、ISBN978-4-86793-106-6
呪文の言語学――ルーマニアの魔女に耳をすませて』角悠介(著)、作品社、2025年7月、本体2,400円、四六判並製256頁、ISBN978-4-86793-104-3

★『マーベル・コミックのすべて』は、米国の作家で批評家のダグラス・ウォーク(Douglas Wolk, 1970-)による『All of the Marvels: A Journey to the Ends of the Biggest Story Ever Told』(Penguin Books, 2021)の訳書。「世界で唯一!? マーベル・コミックの“ほぼ”すべて――2万7000冊以上を読破した著者による、初心者・マニアも必携の、作品宇宙の完全ガイド」(帯文より)。附録は「マーベル・ストーリー要約集」。巻末索引は「キャラクター、架空の団体・媒体・事件、セリフほか」「実在の人物・団体・事件ほか」「作品(コミック、映画、書籍、アルバム、曲など)」という三つのカテゴリーで作成されています。

★『〈聖戦〉という思想』は、帯文に曰く「近衛文麿らの総力戦体制論、石原莞爾、大川周明らの超国家主義や京都学派「近代の超克」論など、先人たちの思考をもう一度、丁寧に読み直す」。序章で著者はこう書いています。「実は戦争を自己目的とするような聖戦論は存在しない。どのような聖戦論も永久平和を実現する手段として説かれるのである。そう考えると、聖戦論は平和論と決して矛盾するものではない。だとするならば、各時代の聖戦論を丹念に紐解くことによって、そこから平和につながる新たな知恵の端緒を見出すことはできないであろうか。そうした願いから本書は書かれたものである」(8頁)。著者の田中久文(たなか・きゅうぶん, 1952-)さんは日本女子大学名誉教授。ご専攻は倫理学、日本思想史です。作品社では2020年に単著『西田幾多郎』を上梓されています。

★『呪文の言語学』は、国内外の大学で教える言語学者の角悠介(すみ・ゆうすけ, 1983-)さんによる単著。まえがき全文が公開されています。曰く「本書で扱うのは東欧ルーマニアの呪文である。〔…〕筆者の実体験や民間伝承も交えながら魔術を検証し、からくりを紐解き、人々の幻想に埋もれかけている「本来的な魔女」を掬い出す。きっと本書は言語学や民族学に興味がある人だけでなく、ファンタジー小説や漫画のクリエーターにも何かしらのアイデアを提供するのではないかと期待している」と。巻末にはルーマニア出身で日本で料理教室や語学教室を開催しつつ、伝統魔術を日々実践しているという山田エリーザさんへのインタビューが併載されています。

★続いて平凡社の7月新刊より4点。

尹致昊日記(8上)1920-1921年』尹致昊(著)、木下隆男(訳注)、東洋文庫:平凡社、2025年7月、本体4,100円、B6変型判上製函入392頁、ISBN978-4-582-80925-1
尹致昊日記(8下)1922-1924年』尹致昊(著)、木下隆男(訳注)、東洋文庫:平凡社、2025年7月、本体4,000円、B6変型判上製函入308頁、ISBN978-4-582-80926-8
まいあ Maia―SWAN actⅡ― 完全版 第1巻』有吉京子(著)、平凡社、2025年7月、本体1,300円、4-6判並製272頁、ISBN978-4-582-28885-8
ウイングス・オブ・ファイア(4)闇の救世主――夜の翼のスターフライト』トゥイ・タマラ・サザーランド(著)、田内志文(訳)、平凡社、2025年7月、本体2,500円、4-6判上製424頁、ISBN978-4-582-31534-9

★『尹致昊〔ユン・チホ〕日記(8上)1920-1921年』『尹致昊日記(8下)1922-1924年』は、東洋文庫の第925番と第926番。それぞれの帯文を引きます。上巻は「斎藤実総督の文化政治の下、資本主義が都市から農村へと浸透。若者・女性・一般大衆が社会の表舞台に登場し、朝鮮社会は三・一独立運動以前の“近代”かえあ“現代”への過渡期に入る」。下巻は「1913年以来の懸案事項「日韓YMCA併合協約書」の破棄により朝鮮YMCAの独立を確保。キリスト教系出版社「彰文社」の設立を巡る総合。関東大震災後、反動とテロリスムの時代が到来」。次回配本は今月(2025年8月)、版元紹介文を借りると「朝鮮王朝を中心に、新羅以降の史話や朝鮮官界の見聞譚、巷の噂話、鬼神譚など、300を超えるさまざまな逸話を収め」た、成俔『慵斎叢話』(野崎充彦訳注)全3巻中の第1巻。

★『まいあ 完全版 第1巻』は、有吉京子(ありよし・きょうこ, 1950-)さんによるバレエ漫画『SWAN』(愛蔵版全16巻、平凡社)の登場人物「真澄」と「レオン」の愛娘「まいあ」の物語を描いた全7巻を、最新作の描き下ろし番外編やカラー絵を加えて新編集のもと完全版全4巻としてリニューアルする、その第1巻。主人公のまいあがパリ・オペラ座バレエ学校を受験する様子が描かれています。番外編として巻頭カラーおよび扉絵コレクション「まいあ variation(1)」7頁を併載し、初回出荷分限定でポストカードが付されています。

★『闇の救世主』は、アメリカの児童文学作家のトゥイ・タマラ・サザーランド(Tui Tamara Sutherland, 1978-)によるドラゴン戦記シリーズ「ウイングス・オブ・ファイア」の第4巻『Wings of Fire: The Dark Secret』(2013年)の訳書。巻頭に掲出された内容紹介文を参照すると、「ウイングス・オブ・ファイア」シリーズは、ドラゴンが住まうピリア大陸に七つの種族があり、殺された女王の後継争いが続くなか、予言により戦争を止めるとされた五頭の「運命のドラゴンの子」たちが平和のために立ち上がる、という物語。これまでに『運命のドラゴン――泥の翼のクレイ』『帰ってきた王女――海の翼のツナミ』『かくされた王国――雨の翼のグローリー』が刊行され、今回の新刊のあとに、本年末(2025年12月)刊行予定で『かがやく炎の翼――砂の翼のサニー』が予告されています。


by urag | 2025-08-10 23:05 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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