人気ブログランキング | 話題のタグを見る

URGT-B(ウラゲツブログ)

urag.exblog.jp
ブログトップ
2025年 07月 21日

注目新刊:ジューヴ『カトリーヌ・クラシャの冒険』幻戯書房、ほか

注目新刊:ジューヴ『カトリーヌ・クラシャの冒険』幻戯書房、ほか_a0018105_17142178.jpg


★まず注目既刊書から。文庫や新書の新刊既刊も取り上げる予定でしたが、点数が多いので、次の機会に持ち越します。

ETHレクチャー(7)1939-1940 ユングが語るイグナティウス・ロヨラの霊操』C・G・ユング(著)、M・リープシャー(編)、河合俊雄(監修)、猪股剛/宮澤淳滋/長堀加奈子(訳)、創元社、2025年6月、本体6,000円、A5判並製432頁、ISBN978-4-422-11739-3
技術への問い』マルティン・ハイデガー(著)、中山元(訳)、日経BPクラシックス、2025年6月、本体3,000円、四六変形判上製276頁、ISBN978-4-296-00249-8

★『ユングが語るイグナティウス・ロヨラの霊操』は、シリーズ「ETHレクチャー」の第7巻。「1939年から1940年の冬にかけて行われた『霊操』に関する講義の記録。キリスト教の精神修養とアクティブ・イマジネーションとの類似点についてのユングの研究の集大成」(帯文より)。「監修者によるまえがき」で河合俊雄さんはこう解説しています。「『赤の書』で知られるように、ユングは想像上の人物像との対話を行うアクティヴ・イマジネーションのという技法を用いたので、いわば神との対話を行う霊操(Exercitia spiritualia)という方法についてのユングの解説は、アクティヴ・イマジネーションの歴史的背景を知り、またユングの霊操についての理解を知るために非常に参考になると考えられる」(7頁)。

★「ETHレクチャー」は、ETH(エーテーハー:スイス連邦工科大学)で一般聴衆向けに行われた講義録シリーズの翻訳。既刊書は、第1巻『近代心理学の歴史(1933-1934)』2020年8月刊、第6巻『ヨーガと瞑想の心理学(1938-1940)』2023年8月刊、第2巻『意識と無意識(1934)』2024年10月刊。

★『技術への問い』は、日経BPクラシックスの第29弾。「ハイデガーの技術論の核心を示す4つの講演・論文を収録」(版元紹介文より)。「技術への問い」(Die Frage nach der Technik, 1953年)、「建てること、住むこと、考えること」(Bauen Wohnen Denken, 1951年) 、「物」(Das Ding, 1949年)、「世界像の時代」(Die Zeit des Weltbildes, 1938年)の新訳を収録し、巻末に中山元さんによる「ハイデガーの四つの技術論の位置――訳者あとがきに代えて」が配されています。「わたしたちが危険に近づけば近づくほど、救いをもたらすものに通じる道がそれだけ明るく輝き始めるのであり、それだけいっそうわたしたちは問い掛ける者となるのです。というのも、問い掛けるということは、思考の敬虔なあり方だからです」(「技術への問い」82頁)。

★このほか最近では以下の新刊との出逢いがありました。

渇き』ガブリエル・マルセル(著)、古川正樹(訳)、〈ルリユール叢書〉第48回配本69冊目:幻戯書房、2025年7月、本体2,900円、四六変形判上製232頁、ISBN978-4-86488-327-6
カトリーヌ・クラシャの冒険』ピエール・ジャン・ジューヴ(著)、小川美登里/飯塚陽子(訳)、〈ルリユール叢書〉第48回配本68冊目:幻戯書房、2025年7月、本体4,500円、四六変形判上製408頁、ISBN978-4-86488-326-9
満月が欠けている――不治の病・緑内障になって歌人が考えたこと』穂村弘(著)、叢書クロニック:ライフサネンス出版、2025年7月、本体2,000円、四六判並製256頁、ISBN 978-4-89775-492-5
vanitas No. 009 特集=なぜつくるのか』蘆田裕史+水野大二郎(責任編集)、アダチプレス、2025年7月、本体2,400円、A5判変型216頁、ISBN978-4-908251-18-4
木下尚江 その生涯と思想』鄭玹汀(著)、平凡社、2025年6月、本体5,000円、A5判上製388頁、ISBN978-4-582-83985-2
完全版 ブロードウェイ・ミュージカル事典』重木昭信(著)、平凡社、2025年7月、本体22,000円、A5判上製函入1088頁、ISBN978-4-582-12650-1

★ジューヴ『カトリーヌ・クラシャの冒険』とマルセル『渇き』は、幻戯書房の〈ルリユール叢書〉第48回配本となる、68冊目と69冊目。『カトリーヌ・クラシャの冒険』は、フランスの作家ピエール・ジャン・ジューヴ(Pierre Jean Jouve, 1887–1976)の小説『Aventure de Catherine Crachat』(Mercure de France, 1962)の新訳。帯文に曰く「映画女優カトリーヌをめぐる三角関係と破局を描く『ヘカテー』。小説の結構が瓦解し、主人公の夢と現が混淆する『ヴァガドゥ』。めくるめく二つの物語がオペラのように紡がれる詩的長編小説」。既訳には豊崎光一訳(モダン・クラシックス:河出書房新社、1975年)があります。 河出版の帯文はこうでした。「罪と愛と死とエロチシズムをめぐって生命からほとばしりでるパッション(受難-情熱)の世界」。

★『渇き』は、フランスの哲学者ガブリエル・マルセル(Gabriel Marcel, 1889–1973)の戯曲『Le soif』(Desclée de Brouwer, 1938)の初訳。帯文に曰く「日常生活における真の「愛」の実相が家庭劇の対話を通じて追求され、登場人物各自の自発的な自己反省から人間存在そのものの内なる飢え、〈渇き〉という存在論的問題が浮き彫りにされる」と。訳者の古川さんは同じくルリユール叢書で、マルセルの戯曲の訳書『稜線の路』(2023年;原著1936年)を手がけておられます。

★『満月が欠けている』は、歌人の穂村弘(ほむら・ひろし, 1962-)さんが「私の持病である緑内障とその周辺について」(あとがきより)語った半世紀とも言える一冊。表題作の「満月が欠けている」は、北原白秋や寺山修司らの短歌を「瞳」をめぐる作品として読み解いたもの。緑内障の主治医・後藤克博氏との対談「今日は患者の君の目を診る」や、長年の友人で精神科医の春日武彦氏との対談「天国に格差はある?」を併録。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

★ファッション批評誌『vanitas』の第9号は特集「なぜつくるのか」。創刊13年目を迎える今号では巻頭言(foreword)が更新され、判型も一回り大きくなっています。誌名のリンク先では目次詳細と、水野大二郎さんによる「introduction」の主要部分を読むことができます。曰く「人間とその内面や、人間と人間、人間と技術、人間と環境、人間と未来など、多様な要素の連関や応答のなかで「なぜつくるのか」をとらえることは近年、ますます重要となっている。なぜなら、ファッションとは個人や社会、ひいては地球のあり方と連関し応答する文化的な営みだからだ」と。

★『木下尚江 その生涯と思想』は、「日本における稀有の革命思想家、木下尚江の評伝決定版」(帯文より)。「普選運動の開拓者、絶対天皇制への挑戦者、人権の擁護者、反戦運動の唱道者、野生のキリスト教徒、社会主義の闘士として活躍しながらも、一切の権力を否定しきった果て、政治闘争の世界に望みを絶ち、野に隠れた木下尚江。それから数十年、長い沈黙を破って再び公衆の前に姿を現した彼が、その人生を賭けて語ろうとした「革命」とは」(同)。巻頭の「はじめに」によれば「本書は前著『天皇制国家と女性――日本キリスト教史における木下尚江』(教文館、2013年)で扱えなかったところ、つまり木下尚江の幼年・少年期、東京専門学校(現・早稲田大学)に在籍した時期、そして政治・社会運動家ら離れた後半生を含めて、その生涯の全体に光を当てて再構成した評伝である」。著者の鄭玹汀(ちょん・ひょんじょん, 1967-)さんは、ソウル生まれで2002年に来日。東京大学で博士課程を終え、現在は中国の東北師範大学副教授、立命館大学客員研究員を務めておられます。

★木下尚江(きのした・なおえ, 1869-1937)の著作については、教文館より『木下尚江全集』全20巻(1990~2003年)がありますが、現在は新本では全巻を揃えるのが難しいようです。鄭さんの評伝本の帯表4には木下の『貧乏』(昭文堂、1908年;教文館全集第6巻所収、1991年)から次の言葉が引かれています。「君に故郷という観念がないのは、僕から見れば実に大なる恩寵だ、古来大思想家だの、大宗教家だのと云う連中でも、皆なこの故郷とか祖国とか云う小感情に制〔おさ〕えられて、自由自在に伸びることができなくて、中途はんぱで委縮している」。昨今の政治家に音読させたい名言です。

★『完全版 ブロードウェイ・ミュージカル事典』は、重木昭信(しげき・あきのぶ, 1951-)さんによる、『ミュージカル映画事典』(平凡社、2016年)、『音楽劇の歴史――オペラ・オペレッタ・ミュージカル』(平凡社、2019年)に続く大作。『ブロードウェイ・ミュージカル事典』は「芝邦夫」名義で劇書房より1984年に上梓され、1997年には同社より増補再版が刊行されていました。今般、28年ぶりに約2倍の増量と改訂を行った完全版が完成。総項目数は約1,800、総索引数は約12,000とのことです。帯文に曰く「ブロードウェイの250年をわしづかみにする日本唯一の専門事典」と。本書の特徴について帯表4より転記しておきます。

作品編:演目数約900。出演者、スタッフ、物語、解説を掲載。
人名編:480を超える重要人物の紹介と、関連演目を収録。
用語集:演劇・ミュージカル用語を中心に、約250語を解説。
劇場案内:おもな劇場約100館の概要と、上演演目を収録。
作品年表:主要約22600作品を上演順に掲載。
ブロードウェイ・ミュージカル小史:成立から発展を端的に記述。
文献案内:案内書や通史、事典から論文までを概観。
索引:和文・欧文で引ける作品索引/人名索引/事項索引。



by urag | 2025-07-21 16:08 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


<< 注目新刊:ウィダー『深海の闇の...      月曜社8月新刊:ジル・ドゥルー... >>