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2025年 03月 03日
★まもなく発売となる新刊2点を列記します。 『サイバー覇権戦争』ジェイコブ・ヘルバーグ(著)、川村幸城(訳)、作品社、2025年3月、本体3,400円、四六判並製432頁、ISBN978-4-86793-062-5 『アンビバレント・ヒップホップ』吉田雅史(著)、ゲンロン叢書:ゲンロン、2025年3月、本体3,000円、四六判並製424頁、ISBN978-4-907188-58-0 『サイバー覇権戦争』は、「サイバーセキュリティの専門家として2020年までグーグル社で対偽情報・外国介入のポリシー策定を主導し」、現在はパランティア・テクノロジーズ社CEO上級政策顧問を務めるジェイコブ・ヘルバーグ(Jacob Helberg, 1989/90-)のデビュー作『The Wires of War: Technology and the Global Struggle for Power』(Simon & Schuster, 2021)の全訳。帯文に曰く「新たな戦争=「グレー戦争」の主戦場であるサイバー空間での戦いを、「フロントエンド」=ソフトウェア(ニュース・SNS・アプリなど)と、「バックエンド」=ハードウェア(コンピュータ・タブレット・スマホ・光ファイバー・衛星など)の二つの戦線に整理。最新技術を用いて、世界の勢力圏の再編成を試みるテクノロジー権威主義国の攻撃の実態を明らかにし、加熱するグレー戦争に民主主義国はいかに対処するべきか、第二次トランプ政権、国務次官(経済成長、エネルギー、環境問題担当)指名の著者が処方箋を提示する」と。 ★訳者の川村幸城(かわむら・こうき)さんは防衛省防衛研究所(政策研究部・グローバル安全保障研究室)主任研究官、1等陸佐。他の訳書では「慶應義塾大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。防衛大学校総合安全保障研究科後期課程を修了し、博士号(安全保障学)を取得」と紹介されています。最近のご活躍では、2024年12月4日の会津大学での川村さんの講話「安全保障分野における最近のサイバー行動」について、陸上自衛隊東北方面隊の「みちのくWeb」が紹介しています。川村さんの既訳書には以下のものがあります。 2017年7月:マイケル・フリン/マイケル・レディーン『戦場――元国家安全保障担当補佐官による告発』中央公論新社 2019年7月:ヤクブ・グリギエル/A・ウェス・ミッチェル『不穏なフロンティアの大戦略――辺境をめぐる攻防と地政学的考察』中央公論新社 2021年3月:ルイス・A・デルモンテ『AI・兵器・戦争の未来』東洋経済新報社 2021年6月:ショーン・マクフェイト『戦争の新しい10のルール――慢性的無秩序の時代に勝利をつかむ方法』中央公論新社 2022年9月:エリザベス・ヴァン・ウィー・デイヴィ『陰の戦争――アメリカ・ロシア・中国のサイバー戦略』中央公論新社 2023年3月:スコット・ジャスパー『ロシア・サイバー侵略――その傾向と対策』作品社 2023年6月:ジェームズ・ジョンソン『ヒトは軍用AIを使いこなせるか』並木書房 2025年1月:ラース・サレンダー『検証 空母戦――日米英海軍の空母運用構想の発展と戦闘記録』中央公論新社 ★『アンビバレント・ヒップホップ』は、批評家であるとともにビートメイカー、MCの肩書をもつ吉田雅史(よしだ・まさし, 1975-)さんの初の単独著。『ゲンロンβ』での連載(全24回、2016~2019年)をもとに、大部分を書き下ろしたとのことです。版元の内容紹介文によれば「アメリカと日本(フッド)に引き裂かれた日本語ラップには、戦後社会のアンビバレンスが凝縮されている。緻密な楽曲分析を通し、ヒップホップの本質とこの国の「リアル」を抉る、衝撃の日本=ラップ論」。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。吉田さんの共著書や訳書には以下のものがあります。 2017年3月:『ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで』毎日新聞出版(大和田俊之、磯部涼との鼎談) 2018年8月:ジョーダン・ファーガソン『J・ディラと《ドーナツ》のビート革命』DU BOOKS 2024年3月:『最後の音楽𝄇――ヒップホップ対話篇』DU BOOKS(荘子itとの対談鼎談集、鼎談ゲストは、さやわか、菊地成孔、後藤護、Illicit Tsuboi) ★注目の新刊と既刊を列記します。 『思弁的註記――ヘーゲルの機知に富んだ語』ジャン=リュック・ナンシー(著)、小原拓磨(訳)、叢書・ウニベルシタス:法政大学出版局、2025年2月、本体3,500円、四六判上製270頁、ISBN978-4-588-01180-1 『ルネサンス絵画の社会史』マイケル・バクサンドール(著)、篠塚二三男/石原宏/豊泉尚美/池上公平(訳)、アートワークス、2024年12月、本体2,600円、A5判並製312頁、ISBN978-4-903423-03-6 『芸術と進歩――進歩理念とその芸術への影響』E・H・ゴンブリッチ(著)、下村耕史/後藤新治/浦上雅司(訳)、アートワークス、2022年11月、本体2,000円、A5判並製204頁、ISBN978-4-903423-01-2 ★『思弁的註記』は、フランスの哲学者ジャン=リュック・ナンシー(Jean-Luc Nancy, 1940–2021)の単独著第一作『La Remarque spéculative (un bon mot de Hegel)』(Galilée, 1973)の全訳。序言の原註12によれば「本書の仕事は1973年3月にユルム街で開かれたJ・デリダのセミネールでの発表にもとづいている」(32頁)とあります。「ヘーゲルを別の仕方で読むこと〔…〕アウフヘーブングを別の仕方で読み、書かなければならない」(序言、30頁)。帯文に曰く「弁証法的体系の内包する根源的複数性を明るみに出したナンシーの翻訳困難なデビュー作」と。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。 ★法政大学出版局の今月来月の続刊予定には注目書が多いです。3月刊予定:アンリ・ベルクソン『ベルクソン書簡集(Ⅲ)1925-1940』平賀裕貴訳、モーリス・ラヴェル『ラヴェル著述選集』笠羽映子編訳。4月刊予定:ソフィー・ロイドルト『法現象学入門』青山治城ほか訳、ハインリヒ・ハイネ『アルマンゾル』今本幸平訳。 ★『ルネサンス絵画の社会史』は、イギリス出身の美術史家で長らくヴァールブルク研究所の教授を務めたマイケル・バクサンドール(Michael David Kighley Baxandall, 1933-2008)の著書『Painting and Experience in Fifteenth-Century Italy: A Primer in the Social History of Pictorial Style』(Oxford University Press, 1972; 2nd ed., 1988)の全訳で、平凡社の「ヴァールブルクコレクション」にて1989年に刊行されたものの再刊。共訳者の篠塚二三男さんによる「アートワークス版への手記」(2024年11月付)によれば「復刊にさいしては、全文に目を通し修正に努めた。〔…〕不分明であった箇所がより明瞭となり、またレイアウトの細部の面でもだいぶ読みやすくなったと思う」とのことです。また、篠塚さんによる平凡社版の訳者あとがきを再録し、共訳者の池上公平さんによるアートワークス版訳者あとがきが加わっています。平凡社版のバクサンドール自身による挨拶文「日本の読者のみなさまへ」はそのまま再録されています。 ★アートワークスは、学習院大学名誉教授で美術史家の高橋裕子(たかはし・ひろこ, 1949-)さんが設立した美術史専門出版社。SNSでの自己紹介によれば「主に英文による西洋美術史の名著を良質な翻訳と手頃な価格で刊行することを目的に」しているとのことです。注文はSNS(X, facebook)に記載されているメールアドレスにて受付。後払用の郵便振替用紙を添付して迅速に送付してくださいます。バクサンドールの再刊より前のこれまでの既刊書は以下の通り。 2021年10月:レンスラー・W・リー『ウト・ピクトゥラ・ポエシス 詩は絵のごとく/絵は詩のごとく――人文主義絵画理論』(森田義之/篠塚二三男訳) 2022年11月:E・H・ゴンブリッチ『芸術と進歩――進歩理念とその芸術への影響』下村耕史/後藤新治/浦上雅司(訳) 2023年10月:エルンスト・クリス/オットー・クルツ『芸術家伝説――歴史学的研究の試み』(E・H・ゴンブリッチ序、大西広/越川倫明/児島薫/村上博哉訳) ★『芸術と進歩』は、オーストリア出身の美術史家エルンスト・ゴンブリッチ(Sir Ernst Hans Josef Gombrich, 1909-2001)の著書『Kunst und Fortschritt: Wirkung und Wandlung einer Idee』(DuMont, 1978)の全訳で、中央公論美術出版より1991年に刊行された単行本を改訂して再刊したもの。共訳者の下村さんによる巻末解説によれば、本書のもととなる英語版講演原稿を参照し「独英の両テキストを比較することで、著者の真意により近づくことができたものと確信する」とのことです。巻末の「ゴンブリッチ著作目録」も拡張されて「著者の生涯の著作活動全体が見渡せるものとした」と。 ★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。都合により、書誌情報のみ掲出します。月刊誌『現代思想』3月号と、藤原書店の2月新刊4点です。 『現代思想2025年3月号 特集=統治vsアナーキー』青土社、2025年2月、本体1,800円、A5判並製238頁、ISBN978-4-7917-1478-0 『台湾の歴史 大全――基礎から研究へのレファレンス』春山明哲/松田康博/松金公正/川上桃子(編)、藤原書店、2025年2月、本体4,400円、A5判上製464頁、ISBN978-4-86578-446-6 『美か義か――日本人の再興』新保祐司(著)、藤原書店、2025年2月、本体2,600円、四六判上製216頁、ISBN978-4-86578-451-0 『阿蘇神社の夜明け前――神々とともに生きる社会のエスノグラフィー』柏木亨介(著)、藤原書店、2025年2月、本体4,800円、A5判上製344頁、ISBN978-4-86578-452-7 『「公害地域再生」とは何か――大阪・西淀川「あおぞら財団」の軌跡と未来』清水万由子(著)、藤原書店、2025年2月、本体4,200円、A5判並製296頁+カラー口絵4頁、ISBN978-4-86578-450-3
by urag
| 2025-03-03 00:31
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
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