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2025年 02月 24日
★まず最初に、まもなく発売となる新刊3点をご紹介します。 『スピリチュアリズムの時代 1847-1903』伊泉龍一(著)、紀伊國屋書店、2025年3月、本体6,800円、A5判上製806頁、ISBN978-4-314-01207-2 『サルとジェンダー』フランス・ドゥ・ヴァール(著)、柴田裕之(訳)、紀伊國屋書店、2025年3月、本体3,200円、46判上製512頁、ISBN978-4-314-01213-3 『レヴィナスのユダヤ性』渡名喜庸哲(著)、勁草書房、2025年2月、本体5,000円、A5判上製352頁、ISBN978-4-326-10349-2 ★紀伊國屋書店より2点。『スピリチュアリズムの時代』は、占い・精神世界研究家で翻訳家の伊泉龍一(いずみ・りゅういち)さんによる「近代スピリチュアリズム研究の決定版」(帯文より)。「源流となる18世紀のスウェーデンボルグやメスメリズムに遡りつつ、ムーヴメントが隆盛を極めた1847年から1903年までの資料から、“見えない力”や“霊的なるもの”に翻弄された人々の記録を辿りながら、その背景にあった社会思想や文化的意義を踏まえて考察する」(同)。「スピリチュアリズムの台頭」「サイキカル・リサーチ」の二部構成。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。 ★「私は、スピリチュアリズムが全盛期だった十九世紀後半の出来事を知るにつれ、驚き、興奮した。当時の新聞や雑誌や書簡をもとに何が起こっていたのかを追いながら、当事者たちの見解や考えかた、そして信奉者と批判者の論争に目を通していくと、そこには形而上学、生理学、心理学、物理学などと関連する興味深い諸問題があることに気付かされた。とりわけ、1882年にイギリスで設立されたソサエティ・フォー・サイキカル・チサーチ(本書ではSPRと表記、「心霊現象研究協会」とも訳されている)による研究結果が記された当時の機関誌や紀要を精査していくと、会議はだったはずの私自身の常識を揺さぶるような論証に目を開かせられることもあった」(はじめに、11頁)。 ★『サルとジェンダー』は、オランダ生まれの動物行動学者フランス・ドゥ・ヴァール(Frans de Waal, 1948-2024)の著書『Different: Gender Through the Eyes of a Primatologist』(Norton, 2022)の全訳。チンパンジーやボノボの研究を通じて人間の性差について考察しています。かのユヴァル・ノア・ハラリは本書を次のように論評しています。「性とジェンダーに関する白熱した論争に、科学的で思いやりのあるバランスのとれたアプローチをもたらす、すばらしく魅力的な本」。目次詳細は書名のリンク先でご覧ください。序文と第一章「おもちゃが私たちについて語ること――男の子と女の子と他の霊長類の遊び方」の冒頭、そして訳者あとがきの立ち読みもリンク先でできます。 ★勁草書房より1点。『レヴィナスのユダヤ性』は、フランス哲学や社会思想史がご専門の立教大学教授、渡名喜庸哲(となき・ようてつ, 1980-)によるレヴィナス研究書。本書は「レヴィナスがユダヤ思想ないしユダヤ教をテーマに公刊した著作群を対象とし、できるかぎりその全容に目配せすることで、またそれを時代的背景と照らし合わせて読み解いていくことで、レヴィナスの「ユダヤ性」なるものがどのようなものだったか、どのような変遷をたどっているのか」(おわりに、285頁)を論じたもの。「フランスをはじめとするヨーロッパにおけるユダヤ人の波乱に満ちた知的営みを理解するうえでも、また、現在なおも続く「イスラエル」問題を巨視的に理解するうえでも、前提となる基本的な理解枠組みが提示できればと考える」(はじめに、5頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。 ★次に、最近出会いのあった新刊を列記します。 『道徳的責任廃絶論――責めても何もよくならない』ブルース・N・ウォーラー(著)、木島泰三(訳)、平凡社、2025年2月、本体7,200円、A5判並製544頁、ISBN978-4-582-70372-6 『愛する者は憎む』アドフフォ・ビオイ・カサーレス/シルビナ・オカンポ(著)、寺田隆吉(訳)、ルリユール叢書:幻戯書房、2025年2月、本体2,700円、四六変型判上製240頁、ISBN978-4-86488-318-4 『アフター・リアリズム――全体主義・転向・反革命』中島一夫(著)、書肆子午線、2015年1月、本体4,300円、四六判上製528頁、ISBN978-4-908568-47-3 ★『道徳的責任廃絶論』は、米国の哲学者ブルース・N・ウォーラー(Bruce N. Waller, 1946-2023)の著書『Against Moral Responsibility』(MIT Press, 2011)の全訳。「本書は、道徳的責任というシステムへの攻撃の書である。つまり道徳的責任のシステムという、私たちの社会と制度の中に深く根を下ろし、私たちの感情の奥底にその根源をもち、アリストテレスから現代にいたる哲学者たちが熱心に用語してきたシステムを攻撃する書、ということだ」(まえがき、8頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。また、まえがき全文が無料公開されています。 ★「道徳的責任のシステムには、数多くの深刻な欠陥が存在しているのだ。加えて、道徳的責任を擁護する哲学者たちは〔…〕道徳的責任という砦を防衛するための統一された擁護論を提供するに至っていない。それどころかこれらの哲学者たちは、科学の進歩による異議申し立てに対しては道徳的責任を擁護するために、お互いに大きく異なった、しかも相互に矛盾し合う根拠を提供している」(同)。「道徳的責任の完全な廃絶は、望ましいと共に、実現可能なものでもある」(同、10頁)。 ★『愛する者は憎む』は、〈ルリユール叢書〉第44回配本、63冊目。アルゼンチンの作家夫妻、アドルフォ・ビオイ・カサーレス(Adolfo Bioy Casares, 1914–1999)とシルビナ・オカンポ(Silvina Ocampo, 1903–1993)の唯一の共作となる探偵小説『Los que aman, odian』(Emecé, 1946)の初訳。初版はボルヘスが監修したシリーズ〈第七圏〔セプティモ・シルクロ〕〉から刊行され、それから「75年以上も定期的に改版・増刷を続けている」(訳者解題)とのことです。「刊行当初こそ大きな反響を呼ぶことはなかったものの、その後「アルゼンチン推理小説の先駆的作品」という評価が定まったこの作品を今改めて手に取ってみると、色褪せることのないその独創性に驚かされる」(同)。 ★『アフター・リアリズム』は、文芸評論家の中島一夫(なかじま・かずお, 1968-)さんの論考、時評、書評を集成したもの。「文学・転向・リアリズム」「ラーゲリ・ユートピア・保守革命」「時評 二〇一四年一月~一二月」「書評」の四部構成。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。 ★「ブランショと交わる地点で、三島由紀夫は、「私が「私」というとき」と言った。「それは厳密に私に帰属するような「私」ではなく、私から発せられた言葉のすべてが私の内面に還流するわけではなく、そこになにがしか、帰属したり還流したりすることのない残滓があって、それをこそ、私は「私」と呼ぶであろう」(「太陽と鉄」)。私は「私」という言葉に「帰属」しない「残滓」にしかいない。それは「失われた=残滓」としての「ラザロ」だ。「探求としての文学の言語」は、言葉によって死んだ「ラザロ」を蘇らせ再現するのではなく、いかに墓の「ラザロ」、失われた「ラザロ」を求めるか、なのだ。いくら転倒して見えようとも、この逆説にしか文学の真実はない。究極、文学は、ラザロを蘇らせる者と、失われたラザロを求める者とのたたかいである。本当の文学論争はそこにしかない。〔…〕文学とは、つねに転向者のものである。転向者にしかリアリズムが不可能であることが、言い換えれば失われたラザロの姿を見ることはできないからだ。〔…〕本書は、だから今さらながら、転向を問う書である。転向を問うことでしか、失われたラザロというアフター・リアリズムは決して見えてこない」(はじめに、18~19頁)。
by urag
| 2025-02-24 23:12
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