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2025年 01月 13日

注目文庫既刊(2024年8~12月)

★注目文庫既刊(2024年8~12月)を列記します。まずは、講談社学術文庫。文庫オリジナルは、新訳の『ティマイオス』『アストロノミカ』『善悪の彼岸』。『アストロノミカ』は『占星術または天の聖なる学』(有田忠郎訳、白水社:ヘルメス叢書、1993年)に続くマーニーリウス(マルクス・マニリウス)の訳書。訳者の竹下哲文さんは『詩の中の宇宙 マーニーリウス『アストロノミカ』の世界』(京都大学学術出版会:プリミエ・コレクション、2021年)の著者です。

ティマイオス』プラトン(著)、土屋睦廣(訳)、講談社学術文庫、2024年12月、本体1,250円、A6判304頁、ISBN978-4-06-538095-6
哲学宗教日記 1930-1932/1936-1937』ルートヴィッヒ・ウィトゲンシュタイン(著)、イルゼ・ゾマヴィラ(編)、鬼界彰夫(訳)、講談社学術文庫、2024年12月、本体1,460円、A6判400頁、ISBN978-4-06-536565-6
陶淵明』興膳宏(著)、講談社学術文庫、2024年12月、本体780円、A6判112頁、ISBN978-4-06-537649-2
日本動物民俗誌』中村禎里(著)、小松和彦(解説)、講談社学術文庫、2024年12月、本体1,150円、A6判264頁、ISBN978-4-06-537935-6
アストロノミカ』マーニーリウス(著)、竹下哲文(訳)、講談社学術文庫、2024年11月、本体1,460円、A6判400頁、ISBN978-4-06-537794-9
インドの宗教とキリスト教』ルードルフ・オットー(著)、立川武蔵/立川希代子(訳)、講談社学術文庫、2024年11月、本体1,100円、A6判248頁、ISBN978-4-06-537674-4
善悪の彼岸』フリードリヒ・ニーチェ(著)、丘沢静也(訳)、講談社学術文庫、2024年10月、本体1,380円、A6判368頁、ISBN978-4-06-537320-0
英雄伝』コルネリウス・ネポス(著)、山下太郎/上村健二(訳)、講談社学術文庫、2024年9月、本体1,210円、A6判280頁、ISBN978-4-06-536363-8

★続いて、岩波文庫。『政治的神学』は、『政治的なものの概念』(岩波文庫、2022年)に続く、権左武志さんによる岩波文庫でのシュミットの訳書の2冊目。『エティオピア物語』は2022年に廃業した国文社の「叢書アレクサンドリア図書館」で2003年に刊行されたものの文庫化。同叢書からは先述の講談社学術文庫でネポス『英雄伝』が再刊されています。国文社から刊行されていた数々の名著は今後も少しずつ文庫化されていくのではないかと想像します。

政治的神学――主権論四章』カール・シュミット(著)、権左武志(訳)、岩波文庫、2024年11月、本体720円、文庫判168頁、ISBN978-4-00-340303-7
日本往生極楽記・続本朝往生伝』大曾根章介/小峯和明(校注)、岩波文庫、2024年11月、本体910円、文庫判262頁、ISBN978-4-00-300441-8
過去と思索(五)』ゲルツェン(著)、金子幸彦/長縄光男(訳)、岩波文庫、2024年12月、本体1,430円、文庫判540頁、ISBN978-4-00-386044-1
過去と思索(四)』ゲルツェン(著)、金子幸彦/長縄光男(訳)、岩波文庫、2024年10月、本体1,500円、文庫判590頁、ISBN978-4-00-386043-4
エティオピア物語(下)』ヘリオドロス(作)、下田立行(訳)、岩波文庫、2024年11月、本体910円、文庫判334頁、ISBN978-4-00-321272-1
エティオピア物語(上)』ヘリオドロス(作)、下田立行(訳)、岩波文庫、2024年10月、本体910円、文庫判308頁、ISBN978-4-00-321271-4

★次に河出文庫。『「国を守る」とは何か』は、三島生誕百年記念の文庫オリジナル政治論集。カバー表4紹介文に曰く「戦時下に書かれた「大東亜戦に対する所感」から、1970年11月25日に撒かれた「檄」まで、政治をめぐる文章を精選」と。全28篇。解題は友常勉さんが寄せておられます。ブコウスキーの3点はいずれも新装再刊。『雨月物語』は『日本文学全集』からのスイッチですが、同文庫では『雨月物語』関連ではこれまでに、円地文子訳『現代語訳 雨月物語 春雨物語』(『現代語訳日本の古典』シリーズよりのスイッチ、2008年)と『水木しげるの雨月物語』(1985年)を刊行しており、円地訳は現在も販売中。水木さんのはイラスト付きで「吉備津の釜」「夢応の鯉魚」「蛇性の婬」の三話を収録した再話絵本で、河出文庫では品切ですが、2017年に復刻ドットコムよりA4判サイズの大判で函入の愛蔵復刻版が刊行されました。なお水木さんには「新・雨月物語」という劇画作品もあって、こちらは『水木しげる漫画大全集(77)現代妖怪譚[全]他』(講談社、2015年)に収録されています。周知の通り『雨月物語』は岩波文庫、講談社学術文庫、ちくま学芸文庫、角川ソフィア文庫などでも読める、古典の人気作です。

「国を守る」とは何か――三島由紀夫政治論集』三島由紀夫(著)、河出文庫、2024年12月、本体1,100円、文庫判280頁、ISBN978-4-309-42155-1
雨月物語』円城塔(訳)、河出文庫、2024年11月、本体800円、文庫判216頁、ISBN978-4-309-42151-3
詩人と女たち』チャールズ・ブコウスキー(著)、中川五郎(訳)、河出文庫、2024年10月、本体1,500円、文庫判544頁、ISBN978-4-309-46809-9
くそったれ! 少年時代』チャールズ・ブコウスキー(著)、中川五郎(訳)、河出文庫、2024年9月、本体1,300円、文庫判448頁、ISBN978-4-309-46805-1
死をポケットに入れて』チャールズ・ブコウスキー(著)、ロバート・クラム(画)、中川五郎(訳)、河出文庫、2024年8月、本体900円、文庫判248頁、ISBN978-4-309-46804-4

★次に角川文庫と角川ソフィア文庫。「100分間で楽しむ名作小説」は角川文庫の創刊75周年を記念して昨春(2024年3月)にスタートしたレーベル内シリーズで、キャッチフレーズは「あなたの時間を少しだけ、小説とともに。いつもより大きな文字で届ける厳選名作」。読書に時間を割きづらい現代人に完読の達成感を与えてくれる、ハードルを下げてくれる廉価シリーズです。いずれも薄い本なので、たとえ100分では読み切れなくても、短期間で読了できるでしょう。好感と共感を抱けるシリーズです。既刊は14点ですが、私はまず安吾と夢野久作を選んでみました。安吾の表題作は先の大戦での空襲の描写がすさまじく、中東の惨状を報道で見聞きしている日本人には改めてリアリティをもって迫るのではないかと感じます。久作の方は収録作の3篇とも死の色が濃厚な怖い1冊。このシリーズを全冊読破する楽しみもあるのではないかと思います。

100分間で楽しむ名作小説 瓶詰の地獄』夢野久作(著)、角川文庫、2024年11月、本体600円、文庫判144頁、ISBN978-4-04-115253-9
100分間で楽しむ名作小説 白痴』坂口安吾(著)、角川文庫、2024年11月、本体600円、文庫判128頁、ISBN978-4-04-115250-8
蛇の神――蛇信仰とその源泉』小島瓔禮(編著)、河出ソフィア文庫、2024年11月、本体1,360円、文庫判336頁、ISBN978-4-04-400850-5
現代語訳 東都歳事記』斎藤月岑(著)、長谷川雪旦/長谷川雪堤(画)、小林祥次郎(解説)、角川ソフィア文庫、2024年10月、本体1,450円、文庫判496頁、ISBN978-4-04-400833-8

★続いて光文社古典新訳文庫。丘沢さんはカフカの『変身』『流刑地にて』『訴訟』と代表作を手がけられ、ついに『城』を上梓。史的批判版からの新訳。帯文に「カフカの最高傑作」とありますが、私も個人的にはそう思います。『訴訟(判決)』も名作ですが、『城』は迷宮感がさらに増しており、生きづらい現代社会をなぞっているように感じます。丘沢さんはニーチェ『善悪の彼岸』の新訳も、カフカ『城』の2か月前に刊行されており、訳業に圧倒されるばかりです。

』カフカ(著)、丘沢静也(訳)、光文社古典新訳文庫、2024年11月、本体1,420円、文庫判600頁、ISBN978-4-334-10505-1
ネコのムル君の人生観(下)』ホフマン(著)、鈴木芳子(訳)、光文社古典新訳文庫、2024年10月、本体1,400円、文庫判464頁、ISBN978-4-334-10467-2
ネコのムル君の人生観(上)』ホフマン(著)、鈴木芳子(訳)、光文社古典新訳文庫、2024年9月、本体1,400円、文庫判++頁、ISBN978-4-334-10420-7
沈黙の春』レイチェル・カーソン(著)、渡辺政隆(訳)、光文社古典新訳文庫、2024年9月、本体1,100円、文庫判496頁、ISBN978-4-334-10421-4

★最後に、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、創元推理文庫、創元ライブラリー、ちくま文庫、双葉文庫、宝島SUGOI文庫。ホフマンは『ムル』の新訳が先述の通り出ましたが、『ドイツロマン派怪奇幻想傑作集』でも「からくり人形」と「砂男」の新訳が収められています。この手の翻訳アンゾロジーは品切にならないうちに購入しないと後悔しますね。

数覚とは何か?〔新版〕――心が数を創り、操る仕組み』スタニスラス・ドゥアンヌ(著)、長谷川眞理子/小林哲生(訳)、ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2024年12月、本体1,600円、文庫判684頁、ISBN978-4-15-050612-4
ドイツロマン派怪奇幻想傑作集』ティーク/ザリーツェ=コンテッサ/フケー/ハウフ/フォン・アルニム/ホフマン(著)、遠山明子(編訳)、創元推理文庫、2024年9月、本体1,200円、文庫判414頁、ISBN978-4-488-58409-2
サラゴサ手稿〈下〉』ヤン・ポトツキ(著)、工藤幸雄(訳)、創元ライブラリー、2024年8月、本体1,200円、文庫判406頁、ISBN978-4-488-07061-8
ストリートの思想 増補新版』毛利嘉孝(著)、ちくま文庫、2024年9月、本体900円、文庫判368頁、ISBN978-4-480-43956-7
世界マヌケ反乱の手引書――ふざけた場所の作り方 増補版』松本哉(著)、ちくま文庫、2024年9月、本体880円、文庫判352頁、ISBN978-4-480-43972-7
人類前史――失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった(上)』グラハム・ハンコック(著)、大地舜/榊原美奈子(訳)、双葉文庫、2024年9月、本体1,200円、A6判576頁、ISBN978-4-575-71506-4
人類前史――失われた文明の鍵はアメリカ大陸にあった(下)』グラハム・ハンコック(著)、大地舜/榊原美奈子(訳)、双葉文庫、2024年9月、本体1,200円、A6判640頁、ISBN978-4-575-71507-1
神社に秘められた日本史の謎』新谷尚紀(監修)、古川順弘(著)、宝島SUGOI文庫、2024年9月、本体800円、文庫判192頁、ISBN978-4-299-05994-9




by urag | 2025-01-13 20:06 | ENCOUNTER(本のコンシェルジュ) | Comments(0)


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