SF古典の巨匠のユートピア小説、待望の初訳。実現しうる理想社会か、行きすぎた管理社会か――シリウスの彼方に位置するもうひとつの地球で優秀なサムライたちが営む世界統一国家の様相を描いた実験的小説 A Modern Utopia(1905年)の完訳。その先進的社会像は、ウェルズによる当世批判であり、先人たちのユートピア観を乗り越える、より現代的で実際的な段階的変革の提示でもあった。ウェルズが追い求め続けた理想の可能性と限界は、本書で明らかになる。本作の思想的背景や問題点に光を当てる訳者解説を付す。叢書・エクリチュールの冒険、第25回配本。
ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866-1946)イギリスの作家。代表作に『タイム・マシン』(1895年)、『透明人間』(1897年)、『宇宙戦争』(1898年)、『アン・ヴェロニカの冒険』(1909年)、『トーノ・バンゲイ』(1909年)、『解放された世界』(1914年)など。近年の訳書に『盗まれた細菌/初めての飛行機』(南條竹則訳、光文社古典新訳文庫、2010年)、『タイムマシン』(池央耿訳、光文社古典新訳文庫、2012年)、『世界文化小史』(下田直春訳、講談社学術文庫、2012年; 初版、角川文庫、1971年)、『ポリー氏の人生』(高儀進訳、白水社、2020年)などがある。