2024年11月27日取次搬入予定 ジャンル:文芸、英文学、SF
モダン・ユートピア
H・G・ウェルズ[著] 小澤正人[訳]
月曜社 本体3,400円 46判並製512頁(188x128x31mm) 500g ISBN978-4-86503-196-6
SF古典の巨匠のユートピア小説、待望の初訳。実現しうる理想社会か、行きすぎた管理社会か――シリウスの彼方に位置するもうひとつの地球で優秀なサムライたちが営む世界統一国家の様相を描いた実験的小説 A Modern Utopia(1905年)の完訳。その先進的社会像は、ウェルズによる当世批判であり、先人たちのユートピア観を乗り越える、より現代的で実際的な段階的変革の提示でもあった。ウェルズが追い求め続けた理想の可能性と限界は、本書で明らかになる。本作の思想的背景や問題点に光を当てる訳者解説を付す。叢書・エクリチュールの冒険、第25回配本。
「現代の夢想者が考える〈ユートピア〉は、ダーウィンが世界の思想を活性化した時よりも前に計画された諸々の〈どこにもない国〉や〈ユートピア〉とはひとつの基本的な点で異なっていなければなりません。それ以前のものはどれもが完全で、静的な〈国家〉であって、幸福の優勢さが、諸事情に内在する不安定と無秩序の力と戦って、永遠に勝ち取られたものでした。〔…〕しかし、〈現代のユートピア〉は静的ではなく、動的でなければなりませんし、恒久的な状態としてではなく、長い上昇をなすいくつもの段階へとつながる、希望に満ちた一段階として形作られなければなりません」(第一章「地誌」より)。
目次
序文(一九二五年版)
声の所有者
第一章 地誌
第二章 自由に関して
第三章 〈ユートピア〉の経済学
第四章 自然の声
第五章 〈現代のユートピア〉における落伍者
第六章 〈現代のユートピア〉における女性
第七章 〈ユートピア〉に関するいくつかの印象
第八章 〈ユートピア〉の私自身
第九章 サムライ
第一〇章 〈ユートピア〉における人種〔レイス〕
第一一章 泡がはじける
付録 道具についての懐疑
原注/訳注
訳者解説
ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells, 1866-1946)イギリスの作家。代表作に『タイム・マシン』(1895年)、『透明人間』(1897年)、『宇宙戦争』(1898年)、『アン・ヴェロニカの冒険』(1909年)、『トーノ・バンゲイ』(1909年)、『解放された世界』(1914年)など。近年の訳書に『盗まれた細菌/初めての飛行機』(南條竹則訳、光文社古典新訳文庫、2010年)、『タイムマシン』(池央耿訳、光文社古典新訳文庫、2012年)、『世界文化小史』(下田直春訳、講談社学術文庫、2012年; 初版、角川文庫、1971年)、『ポリー氏の人生』(高儀進訳、白水社、2020年)などがある。
小澤正人(おざわ・まさと, 1953-)愛知県立大学外国語学部名誉教授。著書に『ユートピアの誘惑――H・G・ウェルズとユートピア思想』(三恵社、2018年)、訳書に、ダニエル・ピック『戦争の機械――近代における殺戮の合理化』(法政大学出版局、1998年)、エドワード・ブルワー=リットン『来るべき種族』(月曜社、2018年)がある。