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2021年 10月 31日

注目新刊:クルティーヌ編『感情の歴史(Ⅲ)』藤原書店、ほか

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★最近出会いのあった新刊を列記します。

感情の歴史(Ⅲ)19世紀末から現代まで』A・コルバン/J-J・クルティーヌ/G・ヴィガレロ監修、ジャン=ジャック・クルティーヌ編、小倉孝誠監訳、藤原書店、2021年10月、本体8,800円、A5判上製848頁+カラー口絵24頁、ISBN978-4-86578-326-1
都市と文明――文化・技術革新・都市秩序(Ⅱ)』ピーター・ホール著、佐々木雅幸 監訳、藤原書店、2021年10月、本体6,500円、A5判上製616頁+口絵16頁、ISBN978-4-86578-327-8
生きている不思議を見つめて』中村桂子著、藤原書店、2021年10月、本体1,800円、B6変型判上製256頁、ISBN978-4-86578-328-5
世界の夜――非時間性をめぐる哲学的断章』布施哲著、航思社、2021年10月、本体2,600円、四六判上製280頁、ISBN978-4-906738-23-6
映画論の冒険者たち』堀潤之/木原圭翔編、東京大学出版会、2021年10月、本体3,800円、A5判並製312頁、ISBN978-4-13-083082-9
伊藤整日記(6)1963-1965年』伊藤整著、伊藤礼編、平凡社、2021年10月、本体4,400円、A5判上製函入434頁、ISBN978-458-236536-8

★藤原書店さんの10月新刊は3点。『感情の歴史(Ⅲ)19世紀末から現代まで』は全3巻の完結篇。原著は2017年刊。『感情の歴史』は『身体の歴史』全3巻、『男らしさの歴史』全3巻に続く、コルバン/クルティーヌ/ヴィガレロ監修の3部作の完結篇でもあります。「感情を考える」「一般的な感情の生成」「トラウマ――極限的な感情と激しい暴力」「感情体制と情動の系譜」「感情のスペクタクル」の5部構成で、クルティーヌ(Jean-Jacques Courtine, 1946-)による序論「感情の支配」のほか、26篇の論文を収録。目次詳細は書名のリンク先でご覧いただけます。

★クルティーヌはこう述べています。「本書は、現代人の感情体制を調査する。網羅的になることはできないので、大衆社会の感受性の領域でいまや支配的になっているいくつかの感情に的をしぼることにする。漠然とした不安、慢性的なうつ、拡散した屈辱感、そしてさらに、思いがけない共感と同情、愛や欲望の規範の変化など。この歴史的考察の最後には、現代における感情の支配を特徴づける本質的な次元のひとつ、つまり感情をスペクタクルに変える次元への問いかけがくる。スペクタクルは美術館、映画館、スタジアム、劇場やコンサートの舞台、そしていまやわたしたちを取り巻くさまざまなスクリーンで展開しているのである」(序論、34頁)。

★「これまでアラン・コルバン、ジョルジュ・ヴィガレロそしてわたし自身を身体、男らしさ、感情の歴史的世界の調査へと導いてきた営みはこれで終わるわけだが〔…〕『感情の歴史』最終巻はいかなる意味でも結論ではなく、むしろ始まり、いざないにほかならない。わたしたちの恐怖と苦悩という暗黒大陸の歴史的理解に向けて、絶えずより深く進んでいくことへのいざない、わたしたちの喜びと快楽という無限の広がりを踏破することへのいざないである」(同)。

★ホール『都市と文明(Ⅱ)』は全3分冊の第2回配本で、第Ⅱ部「革新的環境としての都市」と第Ⅲ部「芸術と技術の融合」を収録。帯文に曰く「マンチェスター、グラスゴー、ベルリン、デトロイト、サンフランシスコおよび東京圏で育まれた紡績機、電気、自動車から情報通信機器に至る技術革新、そしてロサンゼルス、メンフィスを舞台とする映画・音楽産業の隆盛とテクノロジーの関わりを詳説」と。

★中村桂子『生きている不思議を見つめて』は、藤原書店の月刊PR誌「機」に2015年4月号から2019年12月号まで続いた連載「生きているを見つめ、生きるを考える」(全57回)に加筆修正したものを第一部とし、第二部に藤原書店創業30周年記念講演「いのち愛づる生命誌〔バイオヒストリー〕――私たちの中の私」(2021年4月10日、アルカディア市ヶ谷)を収録した一冊。

★「本書でとりあげたさまざまなエピソードを、最先端科学の知識として憶えよう〔…というその〕気持ちをちょっと脇に置き、すべてのエピソードの中に生きものならではのおもしろさを感じていただきたいのです。そうすると、きっと物の見方が変わります。世界観が変わります。/私はそれを「生命論的世界観」と呼んでいます。現代社会は「機械論的世界観で動いています」(あとがき、243~244頁)。「機械への道か、生きものとしての道か。今やこの選択を求められているのだと思う。/政治、経済の世界は、今もなお成長と進歩を口にし、意識せぬままに機械への道を歩こうとしているのではないだろうか。地球に生きる生きものという認識なしに生き続けることは難しいし、その先に、一人一人がい来ることを楽しむ社会はないと思うのだが。「滅び」という言葉さえ浮かんでくる」(第一部、196頁)。中村さんの言葉が胸に沁みます。

★『世界の夜』は、シュンペーター、レオ・シュトラウス、ラクラウという「一見相容れない3人」(帯文より)を「非時間性」を軸に論じた政治哲学論集。2012年から2015年に各誌で発表してきた論考に書き下ろしを加えたものです。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。本書のための書き下ろしを含むシュトラウス論2篇は、シュトラウスをネオコンの始祖と見なす凡庸な印象論とは一線を画すものです。「シュトラウスにとって、この世のありとあらゆる悖理を産み堕とし続けるのは、人に強制と隷従を課さずにおかない政治的現実であり、それは煉獄へと向かう者たちが群居する、この貧しい「世界」の骨相そのものであった」(272頁)。

★「当時の治安当局から見たシュトラウスが最高度の要警戒人物リストに入っていたとしてもおかしくはない。というのも、彼が「愛情をもって迎える」マキアヴェッリは、古い諸様態と諸秩序の破壊者だからである。マキアヴェッリにあって模倣すべしとされるのは、新しさを得るための古さの破壊であり、彼が遡行する伝統、「掘り出さなければならない」徳/力量の痕跡は、伝統からの切断を要求する「非伝統の伝統」を踏襲し遂行するためのものであったことが、再度確認されなければならないだろう」(262頁)。

★著者の布施哲(ふせ・さとし, 1964-)さんは名古屋大学大学院人文学研究科准教授。単独著の刊行は『希望の政治学――テロルか偽善か』(角川叢書、2008年)以来となります。同姓同漢字で『米軍と人民解放軍――米国防総省の対中戦略』(講談社現代新書、2014年)や『先端技術と米中戦略戦争――宇宙、AI、極超音速兵器が変える戦い方』(秀和システム、2020年)などの著書がある布施哲(ふせ・さとる, 1974-)さんは別人で、テレビ朝日ワシントン支局長。

★『映画論の冒険者たち』は、「サイレント期から現代に至るまで、映画を独創的な仕方で論じてきた21人の人物を取り上げ、各映画論のエッセンスの紹介を目的に編まれた入門書」(「はじめに」より)。全5部の部題と論じられる人物は以下の通り。「古典的映画論のアクチュアリティ」(ヒューゴー・ミュンスターバーグ、ベーラ・バラージュ、ジャン・エプシュタイン、セルゲイ・エイゼンシュテイン、ジークフリート・クラカウアー)、「映画批評の実践」(アンドレ・バザン、エリック・ロメール、セルジュ・ダネー、V・F・パーキンズ、蓮實重彥)、「現代映画理論の展開」(クリスチャン・メッツ、レーモン・ベルール、ローラ・マルヴィ)、「フィルム・スタディーズの冒険」(デイヴィッド・ボードウェル、ミリアム・ハンセン、リンダ・ウィリアムズ、トム・ガニング)、「哲学者たちの映画論」(スタンリー・カヴェル、フレドリック・ジェイムソン、ジル・ドゥルーズ、ジャック・ランシエール)。

★『伊藤整日記(6)1963-1965年』は全8巻の第6回配本。「米国滞在から戻って「純文学論争」を起こし」(版元紹介文より)、「大学はやめたが、日本近代文学館設立運動で大忙し」、「役所通い、政界・財界めぐり」(ともに帯文より)と。続く第7巻は1966年から1967年までの日記で、12月発売予定。


by urag | 2021-10-31 01:06 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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