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2021年 10月 24日

注目新刊:『仮想空間への招待──メタヴァース入門』Pヴァイン、など

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★まもなく発売となる新刊3点を列記します。人文書院さんの新刊2点はともに28日(木)取次搬入とのことです。Pヴァインさんの新刊は29日(金)発売と聞いています。

流れの中で――インターネット時代のアート』ボリス・グロイス著、河村彩訳、人文書院、2021年10月、本体2,600円、4-6判並製242頁、ISBN978-4-409-10045-5
自閉症者たちは何を考えているのか?』マルタン・ジュベール著、佐藤愛/吉松覚訳、2021年10月、本体3,200円、4-6判上製206頁、ISBN978-4-409-34056-1
仮想空間への招待──メタヴァース入門』ele-king編集部編、Pヴァイン、2021年10月、本体1,600円、A5判並製160頁、ISBN978-4-910511-06-1

★『流れの中で』は、東ドイツ生まれで現在ニューヨーク大学特別教授を務める美術批評家ボリス・グロイス(Boris Groys, 1947-)の著書『In the Flow』(Verso, 2016)の訳書。『全体芸術様式スターリン』(原著1992年;亀山郁夫/古賀義顕訳、現代思潮新社、2000年)、『アート・パワー』(原著2008年;石田圭子ほか訳、現代企画室、2017年)に続く3冊目の翻訳です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。訳者解題に曰く「本書では、インターネットの興隆と現代美術作品の変化の相互関係と、デジタル化がわれわれの鑑賞態度に与えた影響に焦点が当てられている。〔…〕グロイスの論考は、ポスト冷戦期から情報技術の興隆という時代の流れにわれわれが必然的に巻き込まれてゆくさまを、芸術を通して見定めているように思われる」と。グロイスは巻頭でこう述べています。「芸術は未来を予言しない。むしろ現在の移り変わる性質を示し、そのようにして新しいものへの道を開く」(14頁)。

★『自閉症者たちは何を考えているのか?』はフランスの精神分析家マルタン・ジュベール(Martin Joubert, 1957-)の著書『À quoi pensent les autistes ?』(Gallimard, 2018)の全訳で、ジュベールの本の日本初の訳書です。訳者解説に曰く「本書は、彼がパリの医学心理センター(CMP)で担当した6人の自閉症の子どもたちの診療の記録である」と。「本書が立脚したのは、精神分析の理論のみならず、新生児や乳幼児の発達に関わる生物心理学、神経科学等の理論である。したがって、自閉症に対して精神分析が有効な仮説を提示することができるとすれば、それは純粋に精神分析の領域から生まれるのではなく、他の分野との協調のなかからであると本書は考える」。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。

★『仮想空間への招待』は「eke-king」誌の臨時増刊号(2021年第4号)。オンライン上の3D仮想空間メタヴァースをめぐるインタヴューとコラムを1冊にまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。メタヴァースはコミュニケーション・プラットフォームであり、インターネットの後継と目されることがあるとのこと。三淵啓自(みつぶち・けいじ, 1961-)さんのインタヴューによれば、デジタル革命、インターネット革命、ソーシャル革命、ヴァーチャル革命という技術進展の4段階があり、メタヴァースはこの4つめに当たる、と。「そしていま起きているのが物質革命です。今度は逆に、入れ込まれた情報からリアルを変えていくというあり方です。3Dプリンターやドローンがそうですね」(10頁)。メタヴァースで電子書籍を販売するヴァーチャル書店や図書館がいずれ誕生するかもしれない未来――まだ見ぬ新世界への想像力が掻き立てられます。

★発売済の最近の新刊では以下の書目に注目しています。

まんが訳 稲生物怪録』大塚英志監修、山本忠宏編、ちくま新書、2021年10月、本体980円、新書判192頁、ISBN978-4-480-07435-5
シラー戯曲傑作選 ヴィルヘルム・テル』フリードリヒ・シラー著、本田博之訳、幻戯書房、2021年10月、本体3,500円、四六変形判ソフト上製352頁、ISBN978-4-86488-234-7

★『まんが訳 稲生物怪録』は『まんが訳 酒呑童子絵巻』(大塚英志監修、山本忠宏編、ちくま新書、2020年5月)に続く、日文研(国際日本文化研究センター)が所蔵する江戸時代の絵巻物のマンガ化第2弾。正確にはマンガ化ではなく「まんが訳」と銘打っています。現代作家による古典のコミカライズではなく、絵巻の絵を使って、コミック風にコマ割りし、現代語訳を付して再構成したものです。18世紀中ごろ、広島に住む16才の少年(とはいえ当時としては立派な大人)が自宅で出会ったかなり強烈な怪異の数々を絵入りで紹介したもの。隣人と競った肝試しで山中の天狗杉に触れて祟りをもらい、一ヶ月にわたって奇怪な現象に見舞われます。怪異を目当てに色んな人が尋ねてくるのですが、彼らも目撃者となります。こうした怪異録は江戸文学において人気の分野だったとか。現代に置き換えるならさしずめ、YouTubeで事故物件に住む日々を配信するのに近いでしょうか。YouTubeでも心霊チャンネルは数多くあり、注目を集めているのは周知の通りです。たとえば自宅もの(事故物件)では、Yama-QさんやBlue Seaさんなど。

★『シラー戯曲傑作選 ヴィルヘルム・テル』は「ルリユール叢書」第18回配本、26冊目です。帯文に曰く「スイスの史実を材に、民衆の精神的自由を力強く活写した、劇作家シラーの不朽の歴史劇」。日本語の既訳としては、桜井政隆訳(初訳1929年、改訳: 桜井国隆共訳、1957年)、新関良三訳(初訳1938年)、野島正城訳(初訳1956年)などがあり、それぞれ再刊されたり重版されたりしてきましたが、現在はいずれも版元品切。同作は1804年、シラーが数え年で45才の折に書き終え、同年に初演と出版も実現します。翌年、シラーは逝去。執筆時にはゲーテに何度か読んでもらい、激励を受けた入魂作です。60数年ぶりの新訳により、古典が甦ります。


by urag | 2021-10-24 23:29 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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