2021年 09月 05日
★まず、法政大学出版局さんの新刊2点について記します。 『哲学の25年――体系的な再構成』エッカート・フェルスター著、三重野清顕/佐々木雄大/池松辰男/岡崎秀二郎/岩田健佑訳、法政大学出版局、2021年9月、本体5,600円、四六判上製654頁、ISBN978-4-588-01131-3 『ポール・ロワイヤル論理学』アントワーヌ・アルノー/ピエール・ニコル著、山田弘明/小沢明也訳、法政大学出版局、2021年9月、本体5,000円、A5判上製500頁、ISBN978-4-588-15120-0 ★『哲学の25年』はドイツの哲学者でベルリン・フンボルト大学名誉教授のエッカート・フェルスター(Eckart Förster, 1952-)による『Die 25 Jahre der Philosophie: Eine Systematische Rekonstruktion』(Klostermann, 2011)の全訳。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。18世紀末から19世紀初頭におけるドイツ観念論の展開をつぶさに追った研究書。フェルスターはカントの『オプス・ポストゥムム』の英訳者として知られています。論文の翻訳はありましたが、単行本の日本語訳は初めてです。 ★『ポール・ロワイヤル論理学』は17世紀フランスの論理学教科書『La logique, ou l'art de penser』(1662年)を1683年の第5版から全訳したもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。著者のアントワーヌ・アルノー(Antoine Arnauld, 1612–1694)とピエール・ニコル(Pierre Nicole, 1625–1695)はジャンセニズムの拠点ポール・ロワイヤル修道院の教師で、デカルトやパスカルら当時の最新哲学の成果を本書に採り入れています。ミシェル・フーコー『言葉と物』でも論及されている古典です。 ★まもなく発売となるちくま学芸文庫5点を列記します。 『近代世界の公共宗教』ホセ・カサノヴァ著、津城寛文訳、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,700円、文庫判608頁、ISBN978-4-480-51066-2 『インド洋海域世界の歴史――人の移動と交流のクロス・ロード』家島彦一著、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,800円、文庫判672頁、ISBN978-4-480-51069-3 『増補 現代美術逸脱史――1945-1985』千葉成夫著、ちくま学芸文庫 文庫判 496頁 刊行 09/09 ISBN 9784480510709 JANコード 9784480510709 『日本資本主義の群像――人物財界史』栂井義雄著、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,100円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51072-3 『記憶の切繪図――七十五年の回想』志村五郎著、ちくま学芸文庫、2021年9月、本体1,500円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-51075-4 ★『近代世界の公共宗教』はスペイン生まれで米国で活躍する宗教社会学者ホセ・カサノヴァ(José Casanova, born 1951-)の代表作『Public Religions in the Modern World』(University of Chicago Press, 1994)の訳書。親本は1997年に玉川大学出版部より刊行。文庫化にあたり、著者自身による「改訂日本語版への序文」と、訳者による「ちくま学芸文庫版への訳者あとがき」が加えられています。後者の記述から推察するに訳文は改訂されています。 ★『インド洋海域世界の歴史』は東京外国語大学名誉教授の家島彦一(やじま・ひこいち、1939-)さんによる東西交易をめぐる海域史研究で、親本は1993年に朝日新聞社より刊行された『海が創る文明――インド洋海域世界の歴史』。文庫化にあたり著者自身による「文庫版あとがき」が付されています。「新版を上梓するにあたって、原本にある地名や人名の一部の表記を改めた」とのことです。 ★『日本資本主義の群像』は経営史家の栂井義雄(とがい・よしお, 1906-1983)さんによる代表的財界人10名の研究で、親本は1980年に教育社より刊行。文庫化にあたり、東京大学名誉教授の武田晴人さんによる解説「戦前財界を彩った企業人たち」が付されています。 ★『増補 現代美術逸脱史』は美術批評家の千葉成夫(ちば・しげお, 1946-)さんによる日本戦後美術の通史で、親本は1986年に晶文社より刊行。文庫化にあたり、「この先へ」と題された約100頁もの補章、文庫版あとがき、そして多摩美術大学教授の光田由里さんによる「文庫版解説にかえて」が加えられています。 ★『記憶の切繪図』は「Math&Science」シリーズの新刊。プリンストン大学名誉教授の数学者、志村五郎(しむら・ごろう, 1930-2019)さんの回想録で、親本は2008年に筑摩書房より刊行。文庫化にあたり、スタンフォード大学数学科教授の時枝正さんによる解説「きれぎれのおもいで」が付されています。 ★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。 『口に入れるな、感染する!――危ない微生物による健康リスクを科学が明かす』ポール・ドーソン/ブライアン・シェルドン著、久保尚子訳、インターシフト発行/合同出版発売、2021年9月、本体1,800円、A5変型判並製240頁、ISBN978-4-7726-9573-2 『演劇で〈世界〉を変える――鈴木忠志論』菅孝行著、航思社、2021年9月、本体2,700円、四六判上製304頁、ISBN978-4-906738-45-8 『骨を引き上げろ』ジェスミン・ウォード著、石川由美子訳、青木耕平附録解説、作品社、2021年9月、本体2,600円、46判上製320頁、ISBN978-4-86182-865-2 ★『口に入れるな、感染する!』は米国の食品化学の研究者二氏による『Did You Just Eat That?: Two Scientists Explore Double-Dipping, the Five-Second Rule, and Other Food Myths in the Lab』(Norton, 2018)の訳書。家の中や外出先での飲食や日常生活における危険な微生物による健康リスクを具体的に教える一冊。目次とプロローグ、解説は、書名のリンク先で公開されています。 ★『演劇で〈世界〉を変える』はまもなく発売。評論家で劇作家の菅孝行(かん・たかゆき, 1939-)さんによる、演出家鈴木忠志(すずき・ただし, 1939-)さんをめぐる論考です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。菅さんは航思社からは2019年に『天皇制と闘うとはどういうことか』を上梓されています。 ★『骨を引き上げろ』は米国の作家ジェスミン・ウォード(Jesmyn Ward, 1977-)による2冊目の長篇小説で全米図書賞受賞作『Salvage the Bones』(Bloomsbury Publishing, 2011)の訳書。2005年にハリケーン・カトリーナが米国南部沿岸地域を襲った前後12日間を、とある一家を中心にして描いた作品。目次詳細と青木耕平さんの附録解説PDFが書名のリンク先で公開されています。
by urag
| 2021-09-05 23:30
| ENCOUNTER(本のコンシェルジュ)
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
ブログジャンル
検索
リンク
カテゴリ
最新の記事
画像一覧
記事ランキング
以前の記事
2024年 12月 2024年 11月 2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2004年 06月 2004年 05月 最新のコメント
最新のトラックバック
|
ファン申請 |
||