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2020年 06月 21日
『ele-king臨時増刊号 コロナが変えた世界』ele-king編集部編、Pヴァイン発行、日販IPS発売、2020年6月、本体1,800円、A5判並製224頁、ISBN978-4-909483-57-7 『隔離の島』J・M・G・ル・クレジオ著、中地義和訳、ちくま文庫、2020年6月、本体1,500円、文庫判640頁、ISBN978-4-480-43681-8 『[新訳]ローマ帝国衰亡史』エドワード・ギボン著、中倉玄喜編訳、PHP文庫、2020年6月、本体1,500円、文庫判800頁、ISBN978-4-569-90063-6 『ナチス軍需相の証言――シュぺーア回想録(上)』アルベルト・シュペーア著、品田豊治訳、中公文庫、2020年5月、本体1,400円、文庫判496頁、ISBN978-4-12-206888-9 『ナチス軍需相の証言――シュぺーア回想録(下)』アルベルト・シュペーア著、品田豊治訳、中公文庫、2020年5月、本体1,400円、文庫判488頁、ISBN978-4-12-206889-6 『ペスト』ダニエル・デフォー著、平井正穂訳、中公文庫、1973年初版/2009年改版/2020年5月改版6刷、本体1,200円、文庫判456頁、ISBN978-4-12-205184-3 『ビザンツ帝国――千年の興亡と皇帝たち』中谷功治著、中公新書、2020年6月、本体940円、新書判320頁、ISBN978-4-12-102595-1 『カール・シュミット――ナチスと例外状況の政治学』蔭山宏著、中公文庫、2020年6月、本体860円、新書判288頁、ISBN978-4-12-102597-5 ★『ele-king臨時増刊号 コロナが変えた世界』はまもなく発売。新型コロナが世界の何をどう変えたのか、文化的側面に重点を置きつつ、識者のインタヴューとコラムによって「新しい現実」を検証するもの。インタヴューで登場するのは以下の各氏。内田樹、天笠啓祐、宮台真司、上野千鶴子、五野井郁夫、桔川純子、宇都宮健児、重光哲明、篠原雅武、ダニエル・ミラー、ブライアン・イーノ。そして、コラムを寄稿しているのは以下の各氏です。イアン・F・マーティン、坂本麻里子、後藤護、仲山ひふみ、高島鈴、白石嘉治、三田格。さらに、ブライアン・イーノとヤニス・ヴァルファキスの対談も収録されています。目次詳細は誌名のリンク先でご確認いただけます。 ★ブライアン・イーノはインタヴュー「利益の出ないモノをいかに大切にすることができるか──再解釈される文化とアート」の中で次のように発言しています。「我々は文化のことも、〔…〕「コモンズ」〔共同資産〕として考え始めなくてはならないんじゃないかと思う。皆で維持し、守っていくものとして。様々な研究リサーチがそうであるように、いわゆる利潤追求型のやり方では文化を維持できないだろう、その点は認識していかなくてはならないね」(181頁)。「仮にアートにおいても「儲かる作品しかやらない」ということになったら、それはアートの息の根を止めてしまう。というのも、カルチャーはエコロジー、ひとつの生態系であって、生態系の中にはありとあらゆるものが存在するわけだよね。〔…〕興味を持つ人間が少ないから、それ以外のあれこれは何もいらない、とは言えない」(182頁)。「気に入ったものを少しだけつまみ食いし、残りは無視するわけにはいかない。それだって全体の一部なんだからね」(182~183頁)。 ★Pヴァインさんでは本号と同時発売で、スラヴォイ・ジジェク『パンデミック――世界をゆるがした新型コロナウイルス』(斎藤幸平監修、中林敦子訳、本体1,850円、ISBN978-4-909483-58-4)を刊行されるとのことです。監修者の斎藤さんが解説「リュブリャナの約束――古い理論の新しい使い方?」を寄せておられるそうです。 ★ル・クレジオ『隔離の島』は、2013年に筑摩書房より刊行された単行本の文庫化。原著は『La Quarantaine』(Gallimard, 1995)。巻末の訳者解説「記憶、夢想、フィクション――『黄金探究者』から『隔離の島』へ」によれば、本書は「18世紀末にフランスからインド洋西部モーリシャス島に移住して数世代を重ねた作家の先祖の歴史に素材を汲んだ半自伝的小説3部作の第2巻」。また、「文庫版のための訳者あとがき」ではこう紹介されています。「メディアが、感染者や死者の日々肥大する数としてウイルスの脅威を訴え、感染症拡大を防ぐための外出自粛を説く時代の読者に、19世紀末、インド洋の小島で作家の祖父の身に起きた実話〔天然痘の船内発生と小島への船員乗客の隔離〕に基づくこのフィクション、人間が地を這うようにして生き延び、生まれ変わる、陰惨にして壮麗な物語は、はたして何を伝えるだろうか」。 ★3部作の第1部は『黄金探索者』(中地義和訳、新潮社、1993年;『世界文学全集 II-09』所収、河出書房新社、2009年;『Le Chercheur d'Or』Gallimard, 1985)で、第3部は『はじまりの時』(上下巻、村野美優訳、原書房、2005年;『Révolutions』Gallimard, 2003)です。関連する著書である『ロドリゲス島への旅』(中地義和訳、朝日出版社、1988年;『Voyage à Rodrigues』Gallimard, 1986)や、翻訳予定ありと聞く『Alma』(Gallimard, 2017)などを含めて、いずれすべてが文庫化されることを期待したいです。 ★ギボン『[新訳]ローマ帝国衰亡史』は、2008年にPHP研究所より上下巻で刊行された新書普及版に加筆修正し、文庫化したもの。元となる単行本は2000年刊。原書は全6巻で1776年から1789年にかけて刊行された『The History of the Decline and Fall of the Roman Empire』。今般文庫化された中倉玄喜訳は抄訳で、「浩瀚な原著の中から各時代の代表的な章をそれぞれ選び〔…〕1冊にまとめたもの」(訳者はしがきより)。全訳には『ローマ帝国衰亡史』(全10巻、村山勇三訳、岩波文庫、1951~1959年)、『ローマ帝国衰亡史』(全10巻、中野好夫/朱牟田夏雄/中野好之訳、ちくま学芸文庫、1995~1996年)がありますが、携帯しうるコンパクトなサイズでその粋を味わえるようにするという今回のような配慮も、評価すべきだと思います。 ★シュペーア『ナチス軍需相の証言』は、『第三帝国の神殿にて――ナチス軍需相の証言』(上下巻、中公文庫、2001年)の改題改版。『Erinnerungen』(UlLstein, 1969)の全訳で、単行本では『ナチス狂気の内幕――シュペールの回想録』(読売新聞社、1970年)として刊行されました。巻末特記によれば、改版にあたり「明らかに誤りと考えられる箇所は訂正し、人名・地名・役職名などは現在一般的であるものに改めた」とのことです。ヒトラーの最側近幹部の一人であった建築家シュペーア(Berthold Konrad Hermann Albert Speer, 1905-1981)の少年時代から敗戦までの半生が全30章で綴られた貴重な回想録で、巻頭にはシュペーア自身による「日本語版によせて」が寄せられています。旧文庫版では巻末解説は作家の土門修平さんがお書きになっておられましたが、今回の改版では甲南大学教授の田野大輔さんが「「シュペーア神話」の崩壊」という一文を寄稿されています。また、新たに人名索引が加えられています。 ★田野さんは、回想録の出版によって自ら「善きナチス」像の演出に成功したシュペーアについてこう評しています。「〔1980年代以降の歴史研究によって〕多くの人々の共通理解となったのは、けっして単なる総統お抱えの建築家、軍需省のトップに立つ非政治的なテクノクラートではなく、権力欲にかられてヒトラーに近付いた出世主義者、確信的なナチスとして強制労働者を死に追いやった犯罪者だったということである」(471頁)。「2017年にシュペーアの伝記を出版したマグヌス・ブレヒトケンによれば、この男の自己演出が何十年にもわたって成功をおさめたのは、それが多くのドイツ人の免罪欲求と見事に一致していたからだった。「シュペーア神話」は、彼と同じように野心をもってナチズムを支え、戦後はそうした過去から距離を取りたがっていた何百万もの人々にとって、理想的な投影対象を提供したのである」(471~472頁)。 ★デフォー『ペスト』は新潮文庫のカミュ『ペスト』とともに新型コロナの流行によって読み返されている古典のひとつ。デフォー(Daniel Defoe, 1660-1731)は言うまでもなくイギリスの高名な作家で、代表作は『ロビンソン・クルーソー』(1719年)。本書『ペスト』は1722年に(当時は匿名で)出版された『A Journal of the Plague Year』を訳したもので、訳者の言葉を借りると「馬具商を営むロンドンの一市民、H・Fなる人物による「観察録、つまり思い出の記録」」という体裁。舞台となった1665年のロンドンでは、当時の市民の6分の1以上がペストで亡くなったと推定されるとのこと。新型コロナのパンデミックが今なお終息を迎えていないこんにち、歴史において人間の愚行は繰り返されるものだということを本書は現代人に教えてくれます。なお同書の既訳書には泉谷治訳『疫病流行記』(現代思潮新社、1967年)があり、今月オンデマンド版が発売されています。 ★中谷功治『ビザンツ帝国』は「波乱万丈・有為転変の連続であったビザンツ帝国の歴史を、7世紀から12世紀までの注記を中心に記述」したもの(「はじめに」より)。「この時代こそビザンツが、その歴史的世界のもとで新たな発展を遂げ、周辺領域の人々と交わりつつユニークな歴史を発展させた時期だからである」(同)。「特徴的な皇帝たちの治世を中軸に設定しつつ、その形成から解体にいたるまでを政治の多面性や文化の重層性にも配慮しながら叙述」(同)。章立ては以下の通りです。序章「ビザンツ世界形成への序曲――4~6世紀」、第1章「ヘラクレイオス朝の皇帝とビザンツ世界――7世紀」、第2章「イコノクラスムと皇妃コンクール――8世紀」、第3章「改革者皇帝ニケフォロス1世とテマ制――9世紀」、第4章「文人皇帝コンスタンティノス7世と貴族勢力――10世紀」、第5章「あこがれのメガロポリスと歴史家プセルロス――11世紀」、第6章「たたかう皇帝アレクシオス1世と十字軍の到来――12世紀」、終章「ビザンツ世界の残照――13世紀後半~15世紀」。 ★蔭山宏『カール・シュミット』は「シュミットの伝記ではなく、その思想と理論の歩みをテーマ」にしたもの(「まえがき」より)。「序章で生涯をたどった後、第1章から第3章で、シュミットの政治思想として比較的よく知られたこれらの論点〔例外状況、友敵理論、決断主義、自由主義と民主主義、政治的ロマン主義、独裁、権力国家、ワイマール憲法〕を紹介する。第3章の末尾では、ワイマール共和国崩壊期にヒトラー政権を阻止すべく論陣を張ったシュミットの思想的実践を扱う」(同)。章立ては以下の通りです。序章「シュミットの生涯」、第1章「政治学の基礎概念としての「例外」と「政治的なもの」――『政治神学』『政治的なものの概念』」、第2章「近代的市民の批判――『現代議会主義の精神史的地位』『政治的ロマン主義』」、第3章「ワイマール共和国の崩壊とナチス体制の成立――『独裁』『憲法論』『合法性と正統性』」、第4章「ナチス時代の栄光と失墜――『国家・運動・民族』から『陸と海と』へ」、第5章「第二次大戦後における隠遁と復権」、終章「シュミットの思想と学問」。 +++
by urag
| 2020-06-21 23:33
| 本のコンシェルジュ
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