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2020年 05月 25日

注目新刊:デリダ講義録『ハイデガー』白水社、ほか

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弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近の出版物をご紹介します。併せて弊社続刊情報も添えます。

★ジャック・デリダさん(著書:『条件なき大学』)
白水社版『ジャック・デリダ講義録』の第4回配本、高等師範学校(ENS:エコール・ノルマル・シュペリウール)での1964~65年度の講義(Heidegger : la question de l'Être et l'Histoire, Cours de l'ENS-Ulm (1964-1965), Galilée, 2013)の訳書が刊行されました。概要や目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。亀井さんによる「訳者あとがき」によれば、本書の日本語訳においては、ジェフリー・ベニントンによる英訳本を第二の底本として参照したとのことです。仏語手稿を判読した際に生じた仏語版の膨大な(!)誤りが英訳版では正されている、と。「英訳で修正されたと思われる箇所はことごとく反映することによって成ったのが、この日本語訳である。したがって、指摘された誤記の問題は、基本的に――日本語訳者が確認しえた限りにおいてではあるが――払拭されているとお考えいただきたい。その反面、底本であるフランス語原文とこの日本語訳との間には膨大な数の違いが生じていることを、以上の事情からご理解いただきたい」(321頁)。訳者の皆さんの苦労はたいへんなものだったことが想像できます。

ジャック・デリダ著 亀井大輔/加藤恵介/長坂真澄訳
白水社 2020年5月 本体7,300円 A5判上製366頁 ISBN978-4-560-09804-2
版元紹介文より:ハイデガーの『存在と時間』をデリダ自身が翻訳し、読解する全9回の講義。自筆原稿16頁カラー口絵収録。

※なお、月曜社ではデリダの70年代後半の著作をまもなく翻訳出版する予定です。


★ヴェルナー・ハーマッハーさん(著書:『他自律』)
インスクリプトより3月に刊行されたクライスト論集『ハインリッヒ・フォン・クライスト――「政治的なるもの」をめぐる文学』に、ハーマッハーさんの著書『遠ざかった理解』(Entferntes Verstehen, Suhrkamp, 1998)に収録されているクライスト論(Das Beben der Darstellung. Kleists Erdbeben in Chili)が訳出されました。「描出の揺らぎ――クライストの「チリの地震」」(大宮勘一郎/橘宏亮/西尾宇広訳、219~282頁)です。本書全体の目次は、書名のリンク先でご覧いただけます。この論集は、2017年5月に開催された日本独文学会春季研究発表会のシンポジウム「ハインリッヒ・フォン・クライスト――政治的詩人か、政治的なるものの詩人か」での日本の研究者三氏による発表と全体討議が出発点となっているとのことです。

ハインリッヒ・フォン・クライスト──「政治的なるもの」をめぐる文学
大宮勘一郎/橘宏亮/西尾宇広/R・クリューガー/G・ノイマン/W・ハーマッハー/H・ベーメ著 大宮勘一郎/橘宏亮/西尾宇広編訳
インスクリプト 2020年3月 本体4,400円 四六判上製364頁 ISBN978-4-900997-78-3
帯文より:実存を賭した抗争に露呈する「政治的なるもの」――。「チリの地震」「ヘルマンの戦い」、その極北たる「ペンテジレーア」…。近代のとば口を疾駆したクライストの文学世界を、主要テクストすべてに触れながら照らし出し、その現代性を鋭く剔抉。重要クライスト論四篇、併せて訳出。

※なお、月曜社ではハーマッハーさんの著書の翻訳や独自論文集の編纂、論考の翻訳が合計4件進行中です。そのうちのひとつである論考の翻訳は、本年の近刊書に収録予定です。


★ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『瀆神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』『書斎の自画像』)
★ジャン=リュック・ナンシーさん(著書:『ミューズたち』)
★高桑和巳さん(訳書:アガンベン『バートルビー』『思考の潜勢力』、共訳:クラウス/ボワ『アンフォルム』)
青土社の月刊誌『現代思想』2020年5月号、緊急特集「感染/パンデミック」にアガンベンさんのエッセイ3篇、ナンシーさんのエッセイ2篇が掲載されています。高桑さんはアガンベンさんの2篇を翻訳しているほか、ロベルト・エスポジトや、セルジョ・ベンヴェヌートのエッセイも訳しておられます。本特集全体の目次詳細は誌名のリンク先でご覧いただけます。

アガンベン「エピデミックの発明」高桑和巳訳、9~10頁;“L'invenzione di un'epidema”, Quodlibet, 26/2/2020.
ナンシー「ウイルス性の例外化」伊藤潤一郎訳、11頁;“Exception virale”, Antinomie, 27/2/2020.
エスポジト「極端に配慮される者たち」高桑和巳訳、12~13頁;“Curati a oltranza”, Antinomie, 28/2/2020.
ベンヴェヌート「隔離へようこそ」高桑和巳訳、14~17頁;“Coronavirus and philosophers”, Europian Journal of Psychoanalysis, 8?/3/2020.
アガンベン「感染」高桑和巳訳、18~19頁;“Contagio”, Quodlibet, 11/3/2020.
アガンベン「説明」高桑和巳訳、20~21頁;“Chiarimenti”, Quodlibet, 17/3/2020.
ナンシー「あまりに人間的なウイルス」伊藤潤一郎訳、22~26頁;“Un trop humain virus”, YouTube, 17/3/2020.

青土社 2020年4月 本体1,500円 A5判並製270頁 ISBN978-4-7917-1397-4
版元紹介文より:感染症との闘いとその共存は、人類史のなかで一大テーマとなってきた。本特集では感染症とその対策をめぐる現場の最前線から、パンデミックをめぐる人類史、そして患者の隔離政策やワクチン接種などをめぐる統治、感染をめぐる表現などを追い、検討する。

※なお、月曜社ではアガンベンさんの訳書やナンシーさんの訳書を何点か続刊予定です。


★江川隆男さん(訳書:ブレイエ『初期ストア哲学における非物体的なものの理論』)
コロナ禍を受けて河出書房新社から刊行されたアンソロジー『思想としての〈新型コロナウイルス禍〉』に「自由意志なき〈自由への道〉――行動変容から欲望変質へ」と題した論考を寄せておられます(164~171頁)。本書全体の目次が版元ウェブサイトと現物とで少々異なるようなので、現物通りの目次を以下に転記しておきます。

河出書房新社編集部編
河出書房新社 2020年5月 本体1,800円 A5判並製200頁 ISBN978-4-309-24966-7
版元紹介文より:コロナウイルは人類を未曽有の危機へおいやろうとしている。感染症と文明、人間と病気などをめぐって、この危機がなげかける問いに思想家、専門家たちが向きあう、いま最も必要な一冊。

目次:
大澤真幸「不可能なことだけが危機をこえる――連帯・人新世・倫理・神的暴力」
仲野徹「オオカミが来た!――正しく怖がることはできるのか」
長沼毅「コロナウイルスで変わる世界」 
宮沢孝幸「新型コロナウイルスは社会構造の進化をもたらすのか」 
椹木野衣「ポスト・パンデミックの人類史的転換」 
與那覇潤「歴史〔ワクチン〕が切れた後に――感染爆発するニヒリズム」
笙野頼子「台所な脳で?――Died Corona No Day」
酒井隆史「パンデミック、あるいは〈資本〉その宿主」
小川さやか「資本主義経済のなかに迂回路をひらく――タンザニアの人々の危機への対処から」
木澤佐登志「統治・功利・AI――アフターコロナにおけるポストヒューマニティ」 
樋口恭介「Enduring Life (in the time of Corona)」
綿野恵太「「ウンコ味のカレーか、カレー味のウンコか?」という究極の選択には「カレー味のカレー」を求めるべきである。」
工藤丈輝「流感・舞踏」
小泉義之「自然状態の純粋暴力における法と正義」
江川隆男「自由意志なき〈自由への道〉――行動変容から欲望変質へ」
石川義正「「人間に固有の原理としての愚劣」」
堀千晶「感染症と階級意識」
白石嘉治×栗原康「カタストロフを思考せよ」


★岡田温司さん(著書:『アガンベンの身振り』、共訳:アガンベン『書斎の自画像』)
担当編集者だった松井純さんの逝去という困難を乗り越え出版された書き下ろし作が平凡社より刊行されました。「モランディやカラヴァッジョの本も、アガンベンの翻訳も、松井純との接点があってこそ生まれえたもので、これらのわたしの仕事は、まさしくこの敏腕編集者との「共作」であるといっても過言ではないほどだ。/その松井純との数年ぶりの仕事として出発したのが小著で、予定では三月末のわたしの退官に合わせて出版されるはずであったが、残念ながら完成を俟たずしてひとり逝ってしまった。ある意味でこの小著には、わたしたちのこれまでの「共作」の成果がさまざまなかたちで盛り込まれているといって過言でない」(あとがき、187頁)。版元サイトに目次情報がないので書誌情報とともに転記しておきます。

岡田温司著
平凡社 2020年5月 本体3,000円 4-6判上製208頁 ISBN978-4-582-47906-5
帯文より:ルネサンスやバロックという偉大な遺産を受け継ぐイタリアで、現代の芸術は、いかに過去と向き合い、乗り越えるのか――映画と絵画と文学のうちに分光され屈折される多彩な光を読む。

はじめに
Ⅰ ピランデッロと初期映画
Ⅱ フェリーニとカトリシズム
Ⅲ パゾリーニと伝統のアヴァンギャルド
Ⅳ アントニオーニとイメージの迷宮
Ⅴ ベルトルッチと造形芸術
あとがき
参考文献
人名索引


★岡田聡さん(共著:『交域する哲学』、訳書:シュスラー『ヤスパース入門』)
スイスの改革派神学者フリッツ・ブーリ(Fritz Buri, 1907-1995)の、本邦初訳となる一書を上梓されました。主著である『Theologie der Existenz』(Bern: Paul Haupt, 1954)の全訳です。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

実存の神学
フリッツ・ブーリ著 岡田聡訳
ヨベル 2020年4月 本体1,500円 46判並製168頁 ISBN978-4-909871-14-5
実存の哲学か、実存の神学か? シュヴァイツァー、ヤスパースらから影響を受け、ブルトマン、バルトらとの対決のなか、自らの「哲学的神学」を形成したフリッツ・ブーリ。本邦初訳。


★中山元さん(訳書:ブランショ『書物の不在』)
光文社古典新訳文庫より刊行中の、ハイデガー『存在と時間』全8巻の第7巻が先月発売になりました。第7巻に収録されているのは、第一部第二篇第三章第六一節「現存在にふさわしい本来的な全体存在の確定から始めて、時間性を現象的にあらわにするまでの方法論的な道程の素描」から、第四章第七一節「現存在の日常性の時間的な意味」までを収録。後半部は中山さんによる詳しい解説です。

ハイデガー著 中山元訳
光文社古典新訳文庫 2020年4月 本体1,300円 文庫判並製448頁 ISBN978-4-334-75423-5
カバー裏紹介文より:通常わたしたちは「今(現在)」の連続を生きていると考えているが、ハイデガーはそうは考えない。この巻では現存在の全体性と本来の可能性について、気遣いや頽落、恐れ、不安などの現象を「将来」「既往」「瞬視」という独自の時間概念に結びつけて考察する。(第2篇第4章第71節まで)


★松葉祥一さん(共訳:ロゴザンスキー『我と肉』)
コレージュ・ド・フランス講義草稿 1959-1961』(ステファニー・メナセ編、松葉祥一/廣瀬浩司/加國尚志訳、みすず書房、2019年1月)に続いて、モーリス・メルロ=ポンティの講義ノートの共訳書を上梓されました。前著は『Notes de cours 1959-61』(Gallimard, 1996)の翻訳で、「メルロ=ポンティが1961年に急逝する直前まで書かれていたコレージュ・ド・フランス講義のための草稿はじめ、遺稿として発見された当時の講義草稿を復元・編集して一書となすもの」(版元紹介文より)でした。今回の新刊はそれに先立つ1956~1960年の講義ノート(原著は『La Nature. Notes. Cours du Collège de France』Seuil, 1995年)で、「1956年から1960年にいたる〈自然〉を主題としたメルロ=ポンティのコレージュ・ド・フランス講義を、受講生のノートや著者自身の講義準備草稿をもとに再構成したものである」(版元紹介文より)とのことです。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

モーリス・メルロ=ポンティ著 ドミニク・セグラール編 松葉祥一/加國尚志訳
みすず書房 2020年5月 本体8,400円 A5判上製528頁 ISBN978-4-622-08891-2
帯文より:〈自然〉は、われわれの土壌であり、目の前にあるものではなく、われわれを支えているものなのである・・・。自然と人間の関係を多角的に考察した、1956-1960年、メルロ=ポンティの講義ノート。


★水野浩二さん(著書:『倫理と歴史』、訳書:ヴァール『具体的なものへ』)
サルトルの初期代表作『L'Imaginaire : psychologie phénoménologique de l'imagination』(Gallimard, 1940)の新訳『イマジネール』を共訳で出版されました。既訳には『サルトル全集(12)想像力の問題――想像力の現象学的心理学』(平井啓之訳、人文書院、1955年;改訂版、1975年)があります。共訳者の澤田直さんによる「訳者解説」に曰く「今回、その〔平井訳〕改訂版(1975年)を参照したが、解釈はまことに的確で、文章としての読みやすく、見事と言うほかないものだった。にもかかわらず、ここに新訳を出して世に問うのは、すでに述べたように、新資料もいろいろ発見され、新しい知見ももたらされたからである」(456頁)。新訳の訳書名については次のように書かれています。「ここでの想像力に関する議論は、いわゆるカント的な「構想力(Einbildungskraft)」の流れにはない。つまり、直観と概念のあいだを媒介し、それによって規定される心的能力が問題なのではない。そうではなくて、ベルクソンとフッサールによって――だが別々に――始められた、別の発想での想像力、つまり、ある物質的・知覚的対象との関係における像(image; Bild)の意識が問題なのである。その意味で、本書で頻出するimaginationを「想像力」と一義的に訳してしまうと、誤解を与えてしまう可能性である。確かに、日本語の「想像力」は、過去の表象を再生することだけでなく、何もないところから何かを発想することも指すが、ここでのimaginationは、むしろ、現実を否定して、何かをイメージとして表象する力のことだからだ。本書の訳を『イマジネール』と訳した所以である」(436頁)。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。

ジャン=ポール・サルトル著 澤田直/水野浩二訳
講談社学術文庫 2020年5月 本体1,720円 A6判並製472頁 ISBN978-4-06-519438-6
カヴァー裏紹介文より:実存主義の旗手ジャン=ポール・サルトル(1905-80年)が1940年に出版した哲学著作。豊富な具体例を交えて「イメージ」と「想像力」を考察した本書は、哲学・思想のみならず創作の現場に尽きせぬインスピレーションを与え続けている。これまで『想像力の問題』の表題で流通してきた重要書を、第一級の研究者が総力をあげて待望の新訳!


★本橋哲也さん(共訳:スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』)
北ダコタ州立大学教授で英文科長のレベッカ・ウィーバー=ハイタワー(Rebecca Weaver-Hightower, 1968-)の初訳を上梓されました。単著第一作である『Empire Islands: Castaways, Cannibals, and Fantasies of Conquest in Post/Colonial Island Narratives』(University of Minnesota Press, 2007)の全訳です。「本書では、シェイクスピアの『テンペスト』からデフォーの『ロビンソン・クルーソー』、そして「植民地主義的かつ帝国主義的な島のトポス」が、精神分析理論の応用によって詳細に検出されます。日本語圏でも多くの読者を得てきたピーター・ヒュームの『征服の修辞学』やホミ・バーバの『文化の場所』以来の、ポストコロニアリズムの視点からの文学・文化表象研究のひとつの到達点を示す著作であると申し上げても過言ではないでしょう」と本橋さんは訳者あとがき「島々と所有の物語」でお書きになっています。目次詳細は書名のリンク先でご確認いただけます。ちなみに『征服の修辞学』『文化の場所』はともに本橋さんの共訳書として法政大学出版局より刊行されています。

レベッカ・ウィーバー=ハイタワー著 本橋哲也訳
法政大学出版局 2020年5月 本体4,800円 四六判上製454頁 ISBN978-4-588-01118-4
帯文より:『テンペスト』『ロビンソン・クルーソー』から現代小説・映画・政治的言説へ。われわれを魅了してやまない漂着物語に潜む植民地主義的かつ帝国主義的な島のトポスを剔出する。

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by urag | 2020-05-25 04:30 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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