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2019年 12月 08日

注目新刊:新しい出版社「コトニ社」が書籍第一弾『超看護のすすめ』を刊行

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超看護のすすめ――ナイチンゲールの復権とケアの哲学』井村俊義著、コトニ社、2019年12月、本体2,400円、46変型判256頁、ISBN978-4-910108-00-1
ドクター・マリゴールド――朗読小説傑作選』チャールズ・ディケンズ著、井原慶一郎編訳、幻戯書房、2019年12月、本体3,200円、四六変形判上製296頁、ISBN978-4-86488-186-9
「内向の世代」とともに 回想半世紀』尾高修也著、作品社、2019年12月、本体2,300円、46判上製360頁、ISBN978-4-86182-789-1

★『超看護のすすめ』は船橋を拠点とする新しい人文系出版社「コトニ社」さんの書籍出版第1弾。3部9章立ての目次詳細は同社が参加している版元ドットコムの単品頁でご確認いただけます。「理論よりもモノ、抽象よりも具体、マニュアルよりも物語、明晰さよりも手触りを重視」(21~22頁)する「看護の詩学」が提唱されます。「多様な患者を「透明な個」に置き換えるようなこと〔をせず、…〕彼らの快や不快を最大公約数によって導き出す功利主義的発想とはもっとも遠い場所から患者に近づくことを目的とするのが「看護の詩学」です」(22頁)。

★著者はナンチンゲールが「看護の知識は医学の知識とはまったく異なっている」と述べていることに注目します。「近代的な視座に便利な「モデル」から離れて「意味を感受する精神」を養おうとするナンチンゲール看護の原点に立ち返ることが求められているのではないでしょうか」(29~30頁)。著者の井村俊義(いむら・としよし、1964-)さんは長野県看護大学准教授。ご専門は、文学・民俗学・文化人類学。本書は『チカーノとは何か――境界線の詩学』(水声社、2019年3月)に続く単独著第2弾です。

★看護学というとふつう医学書売場で扱われると思うのですが、現象学やメルロ=ポンティなど、こんにちの看護学は積極的に人文書の成果を採り入れています。コトニ社さんがそうした学際的な成果にコミットされるところから出版を開始されていることは印象的です。代表のGさんはかつて某社で「人類学の転回」シリーズを手掛けた編集者。井村さんも同シリーズでマイケル・タウシグの『模倣と他者性――感覚における特有の歴史』(水声社、2018年6月)の翻訳を担当されています。

★『ドクター・マリゴールド』は「ルリユール叢書」第4回配本(6冊目)。原書は1868年の『The Reading of Mr. Charles Dickens, as Condensed by Himself』で、収録された10篇の中から「ディケンズ(1812-1870)の公開朗読のレパートリーのなかでも最も朗読回数が多かった五篇、言わばベスト・ファイブ」だという「クリスマス・キャロル」「バーデル対ピクウィック」「デイヴィッド・コパフィールド」「ひいらぎ旅館の下足番」「ドクター・マリゴールド」を収録しています。来年2020年はディケンズの没後150年であり、本書はその記念出版です。

★『「内向の世代」とともに 回想半世紀』は、小説家の尾高修也(おだか・しゅうや、1937-)さんによる小説論、文学論、作家論などをまとめた一冊。デビュー後初期の1970~80年代のものと、主に2010年代に発表されてきた単行本未収録作が中心です。「本書をつうじて、近代文学の終焉という考えが、かなりはっきり見えてくるのではなかろうか。私の最近の文章は、すべて「終焉」を見送る思いのなかから生まれたものだともいえる」(後記、355頁)。

★続いて、まもなく発売となる、ちくま学芸文庫の12月新刊4点についてご紹介します。

『風姿花伝』世阿弥著、佐藤正英訳、ちくま学芸文庫、2019年12月、本体1,000円、文庫判272頁、ISBN978-4-480-09962-4
『マタイ受難曲』礒山雅著、ちくま学芸文庫、2019年12月、本体1,800円、文庫判624頁、ISBN 978-4-480-09863-4
『宗教の哲学』ジョン・ヒック著、間瀬啓允/稲垣久和訳、ちくま学芸文庫、2019年12月、本体1,350円、文庫判384頁、ISBN978-4-480-09954-9
『図説 探検地図の歴史――大航海時代から極地探検まで』R・A・スケルトン著、増田義郎/信岡奈生訳、ちくま学芸文庫、2019年12月、本体1,600円、文庫判488頁、ISBN978-4-480-09960-0

★『風姿花伝』は文庫オリジナル。「風姿花伝」「夢跡一紙」「金島書」の3作の、原文、語注、現代語訳を収録し、巻末に略系図、略年表、参考文献、解説、主要語句索引を付したもの。凡例によれば原文は岩波書店版『日本思想体系(24)世阿弥・禅竹』(1974年)所収の、能楽研究者・表章(おもて・あきら、1927-2010)氏による校訂本に依拠したとのこと。新訳を手掛けた佐藤正英(さとう・まさひで、1936-)さんは解説で「本書は、日本倫理思想史の立場からする注釈の試みである」(249頁)とお書きになっています。

★『マタイ受難曲』は東京書籍より1994年に刊行された単行本の文庫化。著者の礒山雅(いそやま・ただし、1946-2018)さんは昨年お亡くなりになられており、改訂や加筆の情報はありませんが、著者の代表作である大著の再刊は待たれていたものではないかと思います。あとがきで明かされている、親本の編集者・鳥谷健一さんとのやりとりに深い感銘を覚えます。鳥谷さんが担当された『バッハ=魂のエヴァンゲリスト』と『モーツァルト=翼を得た時間』はともに講談社学術文庫で文庫化されています。

★『宗教の哲学』は勁草書房より1994年に刊行された単行本の文庫化。共訳者の間瀬さんによる「ちくま学芸文庫版訳者あとがき」が追加されており、最晩年の著者ヒック(John H. Hick, 1922-2012)との交流について明かされています。原著は『Philosopy of Religion』(4th ed., Pearson, 1990)で、巻頭には親本と同様に「日本の読者に」と題した序文が置かれています。宗教多元主義(Religious Pluralism)の名著です。

★『図説 探検地図の歴史』の親本は、1991年に原書房より刊行された同名の単行本。さらに遡るとその単行本は同版元より1986年に刊行された『世界探検地図』の新装改版です。原著は『Explorers' Map: Chapters in the Cartographic Record of Geographical Discovery』(Routledge and Kegan Paul, 1958)。著者のスケルトン(Raleigh Ashlin Skelton, 1906-1970)は英国の地図学史家。単独著の日本語訳書は本のみです。

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by urag | 2019-12-08 21:03 | Trackback | Comments(0)
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