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2018年 09月 23日

注目新刊:工作舎版『ライプニッツ著作集 第I期 新装版』刊行開始

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ライプニッツ著作集 第I期 新装版[8]前期哲学』G・W・ライプニッツ著、西谷裕作/竹田篤司/米山優/佐々木能章/酒井潔訳、工作舎、2018年9月、本体9,000円、A5判上製函入448頁+別丁8頁、ISBN978-4-87502-496-5

★今年6月に完結した『ライプニッツ著作集』第Ⅱ期全3巻に続き、第Ⅰ期全10巻が新装版で今月より順次刊行開始となっています。函入本がカバー装に変更され、さらに本文の紙色×刷色が、薄灰色×薄墨色(第8巻ではそう見えたのですが、それ以外では刷色は墨色に見えます)から白色×墨色に変更されています。カバーのデザインは第Ⅱ期と同様ですが、新装版第Ⅰ期では金箔があしらわれており、目にも鮮やかです。新旧どちらのデザインも美しく、第Ⅰ期旧版をお持ちの方も新装版を久しぶりに買い揃えるのが吉かと思います。新装版全巻の特典予約として、旧版月報を冊子にまとめた「発見術への栞」がもらえるとのことです。第1回配本は第8巻「前期哲学」で『形而上学叙説』『アルノーとの往復書簡』などを収録。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。第2回以降の配本予定は以下の通りです。第Ⅰ期旧版と第Ⅱ期の書目も掲出しておきます。また、明日日中に紀伊國屋書店新宿本店にて行われる関連イベントの情報も記しておきます。イベント会場では旧版品切本の販売もあり、『ライプニッツ著作集』のいずれか1点をお買い求めになると特別に小冊子「発見術への栞」が進呈されると聞いています。

第Ⅰ期全10巻新装版(2018年9月~)
第1回配本2018年09月:第8巻前期哲学
第2回配本2018年11月:第4~5巻認識論(人間知性新論 上下巻)
第3回配本2019年01月:第10巻中国学・地質学・普遍学
第4回配本2019年03月:第6~7巻宗教哲学(弁神論 上下巻)
第5回配本2019年05月:第3巻数学・自然学
第6回配本2019年07月:第2巻数学論・数学
第7回配本2019年09月:第9巻後期哲学
第8回配本2019年11月:第1巻論理学

第Ⅰ期全10巻函入旧版(1988年11月~1999年3月)
[1]論理学(澤口昭聿訳、1988年11月、本体10,000円)
[2]数学論・数学(原亨吉ほか訳、1997年4月、本体12,000円)
[3]数学・自然学(原亨吉ほか訳、1999年3月、本体17,000円:函痛有)
[4]認識論:人間知性新論…上(谷川多佳子ほか訳、1993年8月、本体8,500円:品切)
[5]認識論:人間知性新論…下(谷川多佳子ほか訳、1995年7月、本体9,500円:函痛有)
[6]宗教哲学[弁神論…上](佐々木能章訳、1990年1月、本体8,253円)
[7]宗教哲学[弁神論…下](佐々木能章訳、1991年5月、本体8,200円:函痛有)
[8]前期哲学(西谷裕作ほか訳、1990年12月、本体9,000円:品切)
[9]後期哲学(西谷裕作ほか訳、1989年6月、本体9,500円)
[10]中国学・地質学・普遍学(山下正男ほか訳、1991年12月、本体8,500円:函痛有)

第Ⅱ期全3巻(2015年5月~2018年6月)
[1]哲学書簡――知の綺羅星たちとの交歓(山内志朗ほか訳、2015年5月、本体8,000円)
[2]法学・神学・歴史学――共通善を求めて(酒井潔ほか訳、2016年10月、本体8,000円)
[3]技術・医学・社会システム――豊饒な社会の実現にむけて(佐々木能章ほか訳、2018年6月、本体9,000円)


日時:2018年9月24日(月・祝)14:00開演 13:45開場
会場:紀伊國屋書店新宿本店 9階イベントスペース
料金:500円
予約:電話03-3354-0131 新宿本店代表(10:00~21:00)先着50名様

『ライプニッツ著作集』第II期の監修者にして、日本ライプニッツ協会会長の酒井潔さんと、ゲーム作家・文筆家として活躍がめざましい山本貴光さんのスペシャル対談。「実践を伴う理論(theoria cum praxi)」――ライプニッツは私たちに縁遠い天才か? 対談では、1)ライプニッツの書簡術、2)ライプニッツの文章作法、3)壮烈と工夫の仕事人ライプニッツ、4)ライプニッツの普遍学構想、5)ライプニッツ育成計画、等々、ライプニッツの精力的な活動ぶりに迫り、怠惰に流れがちな日常を打破するヒントを探る。

※対談終了後はサイン会を開催。『ライプニッツ著作集』第II期(全3巻)および、発売直後の第I期『第8巻 前期哲学 新装版』はもちろん、旧版第I期の在庫がある巻、酒井さんの著書、山本さんの著書も販売する予定。サインをいただく貴重な機会になると思います。
※『ライプニッツ著作集』第I期新装版全巻予約特典として、旧第I期の月報10巻分をまとめた100頁を超える小冊子「発見術への栞」を進呈。なお本イベントで『ライプニッツ著作集』(第Ⅱ期、新旧第Ⅰ期)をお買い上げの方に限り、この特典をプレゼントします。

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★このほか最近では以下の新刊との出会いがありました。

本を贈る』若松英輔/島田潤一郎/牟田都子/矢萩多聞/橋本亮二/笠井瑠美子/川人寧幸/藤原隆充/三田修平/久禮亮太著、三輪舎、2018年9月、本体1,800円、四六判上製304頁、ISBN978-4-9908116-3-1
文学はおいしい。』小山鉄郎著、ハルノ宵子画、作品社、本体1,800円、46判上製212頁、ISBN978-4-86182-719-8
古本的思考――講演敗者学』山口昌男著、晶文社、2018年9月、本体2,700円、四六判上製344頁、ISBN978-4-7949-7059-6
四苦八苦の哲学――生老病死を考える』永江朗著、晶文社、2018年9月、本体1,700円、四六判並製292頁、ISBN978-4-7949-7055-8
不妊、当事者の経験――日本におけるその変化20年』竹田恵子著、洛北出版、2018年9月、本体2,700円、四六判並製589頁、ISBN978-4-903127-27-9

★『本を贈る』は、批評家、編集者、校正者、装丁家、印刷業者、製本業者、版元営業マン、取次人、書店員、移動式本屋店主、といった本に携わる様々な関係者10名が書いたエッセイをまとめたもの。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。この1冊で本を「贈る」職人たちの横顔を知ることができるので、本にかかわる仕事に関心がある方、ないし目指している方にお薦めできる新刊です。ちなみに本書の奥付の対向頁には本書の製作にかかわった印刷所と製本所のスタッフのお名前が細かい部門ごとに掲出されていて、紙媒体の書籍を作るという作業にいかに多くの人手がかかっているかが一目瞭然となっています。本の重みを感じることのできる本です。ほとんどの本ではこうした関係者の個人名は記載されていませんが、製作段階だけでもこれだけの人数がかかわり、さらに流通・販売段階においても多数の人々の手を借りていることを忘れたくないと思います。

★『文学はおいしい。』は、共同通信配信の新聞連載「文学を食べる」を改訂して書籍化したもの。カツ丼からネギ弁当まで、近代以降の日本文学における食の風景の歴史を、ハルノ宵子さんによる料理のカラーイラストとともに、見開き読み切りで紹介しています。読んでいるだけでお腹が空いてくる「おいしい本」で、夜中に開こうものなら「読む飯テロ」になる魅力的な一冊。取り上げられている100種類の料理と文学作品名のうち、書名のリンク先で主要な30種が掲出されています。内容から察して、作品社さんの公式twitterの「中の人」が担当者かと思いきや、カント、ヘーゲル、ハイデガー、アドルノなど数多くの訳書を手掛け、最近では熊野純彦さんの『本居宣長』を担当されたヴェテランのTさんでした。ちなみに1品目のカツ丼で取り上げられるのが吉本ばななさんの小説『キッチン』で、100品目のネギ弁当で言及されるのが吉本隆明さんのエッセイ「わたしが料理を作るとき」です。ほかならぬハルノさんの思い出話も紹介されているネギ弁当が何なのかについては、ぜひ書籍現物を店頭でご確認下さい。

★『古本的思考』はまもなく発売。単行本未収録の講演、インタヴュー、論考、紀行文など13篇を川村伸秀さんが3部構成にして編んだ一冊です。未公刊の講演録「近代日本における“知のネットワーク” の源流」(南部支部古書懇話会発足記念講話、1992年11月7日)と「吉野作造と街角のアカデミー」(吉野作造記念館主催講演、1997年3月16日)を含みます。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。インタビュー「雑本から始まる長い旅」で山口さんはこう語っています。「古本屋はなんでもかんでも、もうゴミまで集めてくるみたいなものだけど、そこでは偶然性によってどんな本が集まってくるのか分からないんだから、とても仮説的なものだと言える」(296頁)。「その仮設性のなかから何を読むのか。〔…〕パラダイム・チェンジの可能性は、〔新刊よりも〕古本の持つ仮設性の側に遥かにあるんだって言える。〔…〕古本屋さんは、そういうものと最初に出会う現場にいる」(319頁)。「古本的というのはね、古本を通じて人脈を全部取り戻す、そういう過程を通じて枠組み〔パラダイム〕を作りながらまた古本を探し、探した古本のなかからまた新しい枠組みが出てくる、そういう関係そのものだよね」(同頁)。また「近代日本における“知のネットワーク” の源流」では、「古本のほうが遥かに進んだメディア」(257頁)だとも指摘されています。古本の楽しみは、過ぎ去った時代のタイムカプセルの解読にある、と山口さんは見ておられるようです。

★『四苦八苦の哲学』は、生老病死をめぐり、哲学者たちの考察に寄り添いつつ人生の四苦八苦に思いを寄せる一冊。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。「ひとりで哲学の勉強をすること」と「四苦(生老病死)について考えること」をテーマに読み解かれるのは、プラトン『パイドン』、キェルケゴール『死に至る病』、ジャンケレヴィッチ『死』、スーザン・ソンタグ『隠喩としての病』、フーコー『臨床医学の誕生』、キケロー『老年について』、ボーヴォワール『老い』、ハイデガー『存在と時間』、九鬼周造『時間論』、レヴィナス『時間と他なるもの』、バタイユ『エロティシズム』など。本書ご執筆中に還暦をお迎えになったという永江さんは、法政大学文学部哲学かのご出身で、鷲田清一さんとの共著『哲学個人授業』(バジリコ、2008年;ちくま文庫、2011年)があります。

★『不妊、当事者の経験』は、臨床検査技師だった著者が働くかたわら大学で学んで執筆した博士論文と、不妊治療を受ける当事者たち60名への聞き取り調査等をもとにして、一般読者向けに全面的に改稿した長編力作。当事者たちが不妊治療に対して覚える躊躇と、その時代背景や変化、さらに当事者による躊躇への対処法と、不妊治療の未来が論及されています。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。漢字の随所に丁寧にフリガナが振られており、版元さんの手厚い配慮が感じられます。著者自身も当事者だった経験がおありだとのことです。ちなみに洛北出版さんでは、現代の日本人の妊娠経験を研究した、柘植あづみ/菅野摂子/石黒眞里『妊娠――あなたの妊娠と出生前検査の経験をおしえてください』という本を2009年に刊行されています。

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by urag | 2018-09-23 20:40 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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