2016年 12月 07日
「businessnewsline」2016年12月6日付、Harry Martin氏記名記事「Amazon: レジのないスーパー「Amazon Go」を発表・客は商品を取って持ち帰るだけでOK」によれば、米アマゾンはスーパーマーケット「Amazon Go」を来年から店舗展開すると5日に発表したとのこと。「スーパー内に入る際に、客は自分が持っているスマートフォンで認証を行う必要があるが、一旦認証手続きが済んでしまえば、面倒なレジの手間は必要なく、店内に並んでいる商品に関しては手に取るだけで、自動的にコンピュータービジョンで自動認識を行うことで清算手続きが完了してしまう」といいます。さらに以下のような特徴がある、報じられています。 ・いったん手に取ったものでも棚に戻せば、買ったことにはならない。 ・清算のためにレジに並ぶ必要がないため、他のスーパーに比べて手軽に、かつ迅速に買物を済ませることができる。 ・レジ担当の従業員を雇う必要がなくなるため、人件費の大幅な削減が可能。 ・手に取るだけで清算が完了するので、万引被害をゼロにすることも可能。 リンク先の記事では動画「Introducing Amazon Go and the world’s most advanced shopping technology」もご覧になれます。コンピュータ・ヴィジョン、ディープラーニング・アルゴリズム、センサー・フュージョン、といった技術を駆使したこの方式をアマゾンでは「Just Walk Out Technology」と呼んでいます。従業員がますます不要となる小売店の進化には呆然とするほかありません。Amazon Goは来年の早い時期にシアトルの7thアヴェニューで開店するようです。なお、米アマゾンは同じくシアトルのユニヴァーシティ・ヴィレッジに約1年前(2015年11月3日)、リアル書店「Amazon Books」を開店させていることは周知の通り。こちらでの支払い方法はレジでのクレジットカード払いのみ(「ニュースウォーカー」2016年2月9日付記事「米シアトル「Amazon Books」で体験するリアル書店の未来形」参照)。リアル書店でもAmazon Goのようなコンピュータ・ヴィジョンが将来的に可能になるなら画期的なことですが、スーパーと違って書店は1冊ずつしか店頭に置いていない商品が大半なので、勝手が違うかもしれません。 ちなみにAmazon Booksでは「レジ支払時にPrime会員になるよう勧誘されるとのこと。結果、レジ客はPrime会員となって値引き価格で購入するか、拒否して定価で購入するかの選択が迫られるようになったという」と「hon.jp DayWatch」2016年11月2日付記事「米Amazonのリアル書店「Amazon Books」、レジ支払時にPrime会員勧誘活動を開始、非会員だと定価でしか買えないように」で伝えられています。この記事は米国の電子書籍ニュースサイト「The Digital Reader」11月1日付、ネイト・ホッフェルダー氏記名記事「Amazon is Now Charging Non-Prime Member Customers List Price in Its Bookstores」を参照したもの。開店当時と違って、会員でない客にとってはネットで購入するより実店舗で買った方が本の値段が高くなる、という理解で良いかと思われます。この種の囲い込みは功を奏するのでしょうか。 +++ 関連記事には以下のものもあります。 「日本経済新聞」2016年12月7日付記事「アマゾン、実店舗へGO AIで自動会計」では、スーパーではなく「コンビニエンスストア事業」とされています。曰く「米シアトル中心部の初号店で社員を対象にした試験を始めており、17年1月に一般向けに開店する。総菜や生鮮品をそろえる。「アマゾン・ゴー」のブランドで米国の他の大都市にも出店する。/店舗ではセンサーやカメラを駆使し、来店客が手に取ったり、棚に戻したりした商品とその数をAIが認識する。会計はアマゾンの口座から自動で引き落とされる。商品を持ってそのまま退店できる。これらはアマゾンのAI開発部隊が培ってきた技術だ。店舗への商品の配送では、ネット通販での経験を生かす」と。記事では「アマゾンが社員向けに開設したコンビニ店舗(米シアトル)」という写真も掲載されています。 この記事を元にした論説に、「投信1」の2016年12月7日付ニュース解説「アマゾンのコンビニ参入は日本の小売にとって脅威か――セルフレジと購買履歴にプラスアルファが必要!?」があります。「原理的に言えば、実店舗でカメラも含めて行動管理をされるとなると、「購買した」モノだけでなく「購買しようとした」モノも履歴が残されることになるかもしれません。/入店の時点から一挙手一投足がカメラで管理されていて、しかも自分のIDが入店時点からわかってしまっているとなると、気軽にお店に行くのは気が引けるかもしれません。アマゾンがこうしたデータを収集するのか、どう活用・管理するのかは注目です」。このアマゾンの試みが日本にも将来的に入ってくるとしたら、某企業のポイントカード事業に優る顧客情報蒐集になりそうですね。また同解説にはアマゾンの未来について次のように予想しています。「個人個人の購買履歴に基づいてモノづくりの領域に入っていくことでしょう。アマゾンでは既に一部の商品でSPA化が試みられていますが、まだ発展途上と言えそうです。しかし、いずれ小売から製造小売りに移行する時が来ると思います。/その時には本当に他社が手に負えないほど強力な事業になっているのではないでしょうか」。出版社がアマゾンに呑み込まれ、下請けとして本を作ることが常態化する時代も来るでしょうか。直取引をしている版元はそれなりの数に上りますし、アマゾン限定のノヴェルティ付き商品もありますから、もうすでにその時代は始まっているのかもしれませんが。 +++ 「日刊工業新聞ニュースイッチ」2016年12月6日付記事「「Amazon Go」は共同冷蔵庫。今後はマンションやオフィスにも?――コンビニ型の実店舗を開設、その可能性」において日刊工業新聞社ソーシャルプロデューサーの土田智憲さんは「別名、共同冷蔵庫と言っても良いですね。ものを補充する物流の仕組みをつくって、コストを落とすことが可能ならば、もっと小さい単位でのタワーマンションや、オフィスビルへの導入もできてしまいそう。入店時点で、アカウントが把握され、導線や商品を迷った形跡もトレースできてしまいそうで、今までのPOS以上に、情報が緻密になるのでしょうね」のコメントされています。ありていに言って監視社会化がさらに進むといったところかと思います。様々な課題(防犯など)があるとはいえ、こうした技術の進化は日本のコンビニ業界も取り入れることになるのだろうなと想像しています。 +++
by urag
| 2016-12-07 12:33
| 雑談
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Comments(4)
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コメント主さんこんにちは。その情報は初耳です。ただ、状況から判断して想定できないことではありません。しかしそれにしても厳しいですね、もしそうなったら、今度こそただでは済まないですね・・・。
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コメ主さんありがとうございます。仰る通りです。各方面からのいくつかの断片的情報を耳にしましたが、さすがにブログには書けそうもありません。真実はどこへ・・・。
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