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2016年 03月 07日
2016年5月中旬オープン予定 枚方蔦屋:??坪 大阪府枚方市岡東町758 HIRAKATA T-SITE 日販帳合。弊社には5F分として写真集をご発注いただいています。京阪本線枚方市駅前の旧近鉄百貨店跡地に建設される「HIRAKATA T-SITE」内への出店です。地下1階、地上9階建てだという「HIRAKATA T-SITE」は、公式ウェブサイトで次のように宣伝されています。「創業の地、大阪府・枚方市に、16年春、『枚方T-SITE』が誕生します。蔦屋書店をコアに、本の生活提案力を活かした「生活提案型商業施設」を創造し、枚方でのより上質な日常を提案します」。 ネット上ではすでに様々な紹介が出ていますが、たとえばこちらのブログではビルの外観や仮囲いに掲示されたパース(完成予想図)などの写真があります。本棚をイメージしているというビルは総ガラス張り。吹き抜けの壁面いっぱいに並べられた書棚は背が高すぎて、高い場所の本の背を見るのも手に取るのも難しそうです。系列で手掛けている図書館での先例を考えると、店員さんに取ってもらうのかもしれませんが、それにしても、という感じはします。つまり、本が「お飾り」になっていないかという心配です。敷地面積約823坪、延床面積約4,900坪で、そのうち「蔦屋書店」がどれくらいの坪数を占めるのか分かりませんが、NHKの「プロフェッショナルーー仕事の流儀」を見た限りではワンフロアを占める構想だったと記憶しています。内観パースを見ると、本は必ずしもワンフロアに限って展開するものではなさそうですけれども、他の商材とどれほどミックスされることになるのかは、更なる詳報を待つしかありません。【3月8日追記:2F分として人文書のご発注も入りました。芸術書は5Fでしたから、ジャンルごとに多層階に分かれるという理解でいいのかもしれません。】 「枚方つーしん」2014年4月13日付記事「近鉄百貨店跡にできる新商業施設を手がける株式会社ソウ・ツーにどんな施設をつくるのか聞いてきた」には、CCCの関係会社で代官山T-SITEなどの実績がある「ソウ・ツー」の長田(おさだ)さんという男性がざっくばらんに取材に答えていらっしゃいます。いくつかの発言に注目してみます。 「施設のコンセプトとしては、「本を軸とした商業施設」これが大前提です。また「街のランドマーク」これは普通の商業施設によくあるような建物じゃなくて、パースにもあるようなシンボルになるような建物にしたいと思っています」。「あのデザインはというと、建物全体に本棚をイメージしました。ガラス越しにルーバー(木の縦の遮光板)もありよりイメージしやすいと思います。全体が本棚で、いくつか四角いボックスが設置されていますが、あれは「本棚から情報が飛びだしている」ところをイメージしているんですね。そしてガラス面を多く使い開放感や透明感、つまり情報をクリアにお伝えするという意味です」。「この施設を計画するにあたってこだわっているのが、「普通のモノ売りの場にはしたくない」ということです」。完成予想図を拝見する限りではその意気込みが充分に伝わってきます。そこではもはや本という商品は「主役」とは呼べないものの、欠くべからざる重要な脇役であることは間違いありません。 「「本を軸に」と謳っているのは、じっくりと楽しめる滞在型の店舗を作っていきたいと思っているからです。「商品を買いました、帰ります」というのではなく、本とカフェがあって、本は買っても買わなくてもいいのでゆっくり読んでください、カフェはコーヒーなどを買ってもらって、一日中そこでゆったりとくつろいでくださいという形のお店にしようと思っています。なので椅子や座れるところを多く用意して、ずっと一日中いてもらう、「雰囲気を楽しむ」という施設にしたいと思っています」。「モノを提供してはいますが、一番提供しているのは空間です。ここで過ごす時間がかっこいいと思える、オシャレだと思ってもらえるようにしたい、そう思えば人ってやってくると考えています」。この、空間を提供しているのだ、という考え方は蔦屋書店の戦略の中枢にあるものですね。VMD(ヴィジュアル・マーチャンダイジング)はそれぞれの書店で戦略が異なりますが、業界全体を対象とする書店空間研究というものが今こそ確立されなければならないと思います。 「ネットで足りるものはネットとなってしまう。今後さらにこの動きは強まっていくと思っています。だからネットには提供できないもの、そこにしかないもの、わざわざ行きたくなる施設、そこで過ごしたいと思える時間を提案してゆければと思っています」。リアルな空間が持つポテンシャルというものを先んじて考えてきたという意味で、CCCは書店複合化時代のリーディング・カンパニーと呼ばれるにふさわしいでしょう。 「今回の施設では、本を売るというより、雰囲気を提供しているんですね。ここで本を手に取って、ここで本を読める。しかも雰囲気のいい、上質な時間が流れる場で本が読める、またそういった空間のなか関連したサービスや商品が生活シーンによって提案されている。つまり本だけを提供しているのではなくて、雰囲気、空間を合わせたライフスタイルを提供している。同じ本を読むならあの空間の中でと思ってもらうようにしたいと考えています」。まずはっきり言わなければならないのは、出版社は本を貸し出しているわけではないので、読まれてショタレて返品されるということを内心は快く思っていないということです。昨今のブックカフェや複合型書店で見受けられるような「お茶を飲みながら座り読みしていただけますよ」という打ち出し方は、返品可能な長期委託というものの拡大解釈とでも言うべき考えであろうと思います。複合化の波の中ですっかり浸透したスタイルですが、出版社の黙認に積極的な意味は必ずしもありません。それでもいいよ、と考えている版元もいるでしょうけれど、漫画喫茶でもあるまいし、と呆れている出版人がそれなりにいることは特記しておきます(漫画喫茶は本を買い切っているわけですから、むしろマシです)。 CCC系列以外でも使われるようになって昨今かまびすしい「ライフスタイルの提案」についても一言申し上げておくと、提案をする者に問われるのはまず何よりその「知的資質」と重層性、多層性であり、お客様とのコミュニケーション力であろうと思われます。ハコを作り棚を埋めたからと言って、それだけで上質な時間が流れるわけではありません。蔦屋書店に問われているのは「中身」の質であって、時間だの空間だのを構築しうる内実がどうなっているのか、ということです。売場というのはいわば象徴的な意味で「雑誌」の誌面であって、巧みな編集(商品の組み合わせ)が必要であることはもちろんのこと、作り手以上に商品のプロモーションがうまくなければなりません。現状の蔦屋書店さんを観察するかぎりでは、空間研究はできているご様子でも、商品研究は充分とはまだ見えません(特に専門書)。商品研究に本腰を入れない限り、蔦屋書店は張り子の虎になるリスクがあるわけです。むろん優秀なスタッフさんもいらっしゃいますが、出版人から見ると、少なくとも商品研究においては、ジュンク堂書店の方がまだ一枚上ですし、人材の層も相対的には厚い。ジュンク堂は複合化時代の前まで、書店の理想形を体現していました。ジュンク堂に象徴されるような「巨大化」は、複合化時代の今でも命脈を保ってはいますが、テナント家賃の上昇に伴い、撤退リスクが高まりつつあります。蔦屋が得意な空間研究と、ジュンク堂が得意な商品研究。この両輪を兼ね備え、さらにここに十全な「接客研究」を加えた書店こそ、今後の「第三勢力」「新興勢力」として台頭するのにふさわしいのではないかと思われます。 この「接客研究」の肝とは何か。個人的にはこれは単なる「無理な要望も聞くコンシェルジュ」に終わるものではなく、教育や啓蒙という次元が開けていると思っているのですが、これについてはまた別の機会に書ければと思います。【3月8日追記:「教育や啓蒙という次元」について私が念頭においているのは、フレイレ、イリイチ、ポール・グッドマンらの教育論です。つまり意識化、脱学校化、不就学について語らねばなりません。】
by urag
| 2016-03-07 13:03
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