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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 09月 18日

今週の注目新刊(第20回:05年9月18日)

bk1の「新入荷一覧」ではこれだ、と思える書目に出会いづらく(重いので見づらいし)、ヤフー・ブックスの「本日の新刊」――こちらも特別見やすいわけではありませんが――を見直して書目を拾っている感じです。その後改めてbk1で検索を掛けてみると、おや、いずれも24h以内に出荷、となっています。ひょっとして「一覧」に載っているのは「24h」の全部ではない? ええ?!

今週は芸術書系に収穫ありです。パノフスキーにユイスマンス。言うことなしです。

***

ティツィアーノの諸問題――純粋絵画とイコノロジーへの眺望
エルヴィン・パノフスキー著 織田春樹訳
言叢社 2005年8月 本体7,600円 A5判316+29P ISBN4-86209-003-6

■帯文より:パノフスキーが最後の著作に託した〈芸術形象の問題圏〉とは何だったのか。文化人類学から歴史、文学、科学、音楽、映画に至るまで、美術史以外の人文科学の研究者たちが、それぞれの領域の新たな創造のために不可欠とするにいたったパノフスキーの仕事を代表する最晩年の著作。完訳。


三つの教会と三人のプリミティフ派画家
J.K.ユイスマンス(1848-1907)著 田辺保訳
国書刊行会 2005年9月刊 本体3,800円 A5判220p ISBN4-336-04722-7

■版元紹介文より:〈まさしく傑作の名に価する〉と激賞された、ユイスマンスの最重要エッセイ評論集。グリューネヴァルトの十字架刑図やフレマールの画家の聖母像の謎と神秘に迫り、ノートルダム大聖堂をはじめとした教会堂の魂のあらわれを余すところなく描く、比類なき美術批評。本邦初訳。


映画における意味作用に関する試論――映画記号学の基本問題
叢書記号学的実践 (23)
クリスチャン・メッツ(Christian Metz. 1931-1993)著 浅沼圭司監訳 木村建哉ほか訳
水声社 2005年9月 本体5,000円 A5判440頁 ISBN4-89176-484-8

●現物を見ていませんが、本書は87年に第二巻が翻訳された『映画における意味作用に関する試論』の第一巻だと思われます。そうだとすると実に18年ぶりの刊行ですね。ちなみにメッツの既訳書は以下の通りです。

『映画と精神分析――想像的シニフィアン』鹿島茂訳、白水社、1981年8月刊、46判285頁。
原題: Le signifiant imaginaire: psychanalyse et cinema.
※白水叢書(57)として刊行されたのが本邦初訳でした。しかも鹿島さん訳。当時、数え年で32歳。

『映画記号学の諸問題』浅沼圭司監訳、書肆風の薔薇(現=水声社)、1987年3月刊、A5判 332頁、ISBN4-89176-203-9 原題: Essais sur la signification au cinema, tome 2.
※叢書記号学的実践(8)として刊行。当時、風の薔薇は白馬書房が発売元でした。

『エッセ・セミオティック』樋口桂子訳、勁草書房、1993年3月刊、46判269頁、ISBN4-326-15269-9 原題: Essais semiotiques.


ジャン・パウル中短編集 (I)
ジャン・パウル著 恒吉法海訳
九州大学出版会 2005年9月刊 本体8,500円 A5判551頁 ISBN4-87378-875-7

■帯文より:「彼の詩的レンブラントは、より破茶滅茶となり、より小都市風になるにつれ、より一層神々しくなる。」――フリードリヒ・シュレーゲル

■収録作品:『ビエンロートのフィーベル』の著者フィーベルの生涯/カンパンの谷/教理問答の十戒の下の木版画の説明/など

●九州大学出版会はこれまでも地道にジャン・パウルの翻訳書を刊行してきました。それらはすべて、九州大学大学院言語文化研究院の恒吉法海(1947-)教授によるもの。こうした積み重ねの賜物を私たちは幸いにも手にすることができるわけです。

●ちなみに九州大学出版会が、九大にのみ所属しているのではなく、沖縄・九州・中国の国公私立27大学の共同学術出版会であることはあまり知られていないように思います。


アイゼンシュタインとクロネッカーによる楕円関数論
シュプリンガー数学クラシックス 第16巻
アンドレ・ヴェイユ(1906-1998)著 金子昌信訳
シュプリンガー・フェアラーク東京 2005年9月 本体2,500円 A5判122頁 ISBN4-431-71169-4

■帯文より:「この本を書くのは、私にとってたいへん楽しみであった。読者がそれに気づいてくださることを希望する。」――アンドレ・ヴェイユ

■版元紹介文より:本書は,アンドレ・ヴェイユがプリンストンの高等研究所で行なった講義をもとに書き下ろした、楕円関数論の解説書である。1976年に初版が出版されて以来、数十年以上にわたって版を重ねてきた名著である。

■原題:Elliptic Functions According to Eisenstein and Kronecker.

■目次より:

第I部 アイゼンシュタイン
  第I章 序
  第II章 三角関数
  第III章 基本となる楕円関数
  第IV章 基本関係式と無限積
  第V章 変奏I
  第VI章 変奏II

第II部 クロネッカー
  第VII章 クロネッカーへの前奏曲
  第VIII章 クロネッカーの二重級数
  第IX章 終楽章 ――アレグロ・コン・ブリオ――

●数学者アンドレ・ヴェイユは、いわずと知れたシモーヌ・ヴェイユの兄です。2004年に同版元から刊行された巻の自伝の増補新版では、シモーヌの思い出がほんの少しですが告白されています。妹を心配する兄の素顔を垣間見ることができます。


三国志名言集
井波律子著
岩波書店 2005年9月 本体2,500円 46判14+366+33頁 ISBN4-00-023013-1

■帯文より:波乱万丈の物語りを彩る名言・名句・名調子。物語の〈さわり〉を楽しみ、言葉の〈張り〉と〈響き〉を味わう。「三国志」がいよいよ面白い!


***

以上です。(H)

by urag | 2005-09-18 17:06 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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