今春から刊行との情報が流れていた、
燈影舎版『シェリング著作集』全5巻がいよいよ来月(2005年10月)下旬から刊行開始になります。書店に案内チラシが流れていると聞き及びますので、いよいよ確度が高くなったということでしょう。
燈影舎と言えば、京都学派の古典を復刊していくシリーズ『京都哲学撰書』や、『西田哲学選集』など、地道な出版活動を続けている京都の出版社です。母体は西田天香氏が明治37年に創設した
一燈園という思想的・宗教的団体で、昭和4年に財団法人として認可された「懺悔奉仕・光泉林」が運営しています。建築、演劇、農業、学校などの多角的なグループを形成する特異な団体です。その一角が燈影舎ということになります。
「没後150年記念特別企画」と銘打たれた今回の日本初の著作集は、シェリング(1775-1854)の全生涯にわたる膨大な著作から主要作を厳選したものです。「主要著作、論文の初版本を底本とし、読み易く明快に翻訳」とのこと。
編集幹事は、高山守さん(東京大学教授)と松山壽一さん(大阪学院大学教授)。高山さんは
日本シェリング協会の会長をおつとめになっておられます。協会はもちろんこの企画をバックアップされているのでしょうが、監修者と協会役員はあまり重複しているようには見えません。協力はバイエルン科学アカデミー・シェリングコミッション。
A5判上製カバー装で、平均500頁強、各巻の定価は税込で8,000円台だそうです。書店店頭で配布され始めた内容見本によれば、全5巻の内容構成は以下の通り。
第1巻:自我と自然の哲学 (高山守・松山尋一=編) 第2回配本:06年1月下旬
哲学の原理としての自我について
独断論と批判主義に関する哲学的書簡
自然哲学に関する諸考案 序説
世界霊について (抄訳)
自然哲学体系の第一草案 (抄訳)
自然哲学体系草案 序説
第2巻:超越論的観念論の体系 (久保陽一・小田部胤久=編)
超越論敵観念論の体系
第3巻:同一哲学と芸術哲学 (伊坂青司・西村清和=編) 第1回配本:05年10月下旬
私の哲学体系の叙述
哲学体系の詳述
芸術の哲学 一般部門
学問論 第十四講 ほか
哲学一般に対する自然哲学の関係について (抄訳)
哲学との関連からみたダンテについて
第4巻:自由と歴史の哲学 (藤田正勝・山口和子=編)
哲学と宗教
人間的自由に関する哲学的探究
シュトゥットガルト私講義
諸世界時代 第一草稿
第5巻:神話と啓示の哲学 (大橋良介・諸岡道比古=編)
神話の哲学への歴史的批判的序論 第十、二十二、二十四講 ほか
啓示の哲学 第一書 (第一~八講)
画期的な企画で、大いに期待できます。同時代の哲学者では、ヘーゲルには岩波書店の全集があり、フィヒテには晢書房の全集(刊行中)があり、ショーペンハウアーには白水社の全集があります。全5巻とはいえ、こうした著作集を待ち望んでいた読者は少なからずいるはず。待ち遠しいですが、まもなくです。(H)