他社版元さんの話とはいえ、1977年7月から
渋谷区松濤2-21-3に長らく所在されていた「
工作舎」さんが、2005年8月1日から
中央区月島1-14-7旭倉庫4Fに移転されたというのは、ある種の驚きを感じさせました。
松濤といえばいまや人も知る高級住宅街で、77年当時の地価がどれほどだったかは知りませんが、工作舎さんの公式ウェブサイトの「
沿革」によれば、1971年4月:池袋東口の池ビル→1972年8月:新宿番衆町ローヤルビルというふうに移転され、そのあと77年7月に東大駒場キャンパスの裏手の山手通り沿いに移られ、雑誌『遊』第二期が開始されるのです。いつでも東大に出かけられるというのは非常に便利だったろうと思います。
そして今回は、山の手の高級住宅街から一転ウォーターフロントの下町、月島へ。月島と言えばもんじゃ焼きですが、別に工作舎さんはもんじゃ焼きを目当てに移転されたのではありません。しかし大胆です。おそらく業務全般の便を考えて、月島がいい!と思える決め手があったに違いありません。編集長の米澤敬さんの「編集飛び石日記」の
073には、こんなことが書かれていました。
「実に28年ぶりの移転だ。社内はけっこう浮き足立っている。なにせ、未整理のままの書物や資料が、いたるところに山積みされてきた。「遊」時代の版下や写真だけでも膨大な量になる。どうしていままで整理整頓を心がけてこなかったのかと反省しても、無論、後の祭である」。
皆さんご存知のことと思いますが、米澤さんは、デザイナーの松田行正さんが主宰する出版社「
牛若丸」さんから、『ミネラリウム・インデックス』『変』『ファンクション』といった著書を刊行されています。私は中でも『ミネラリウム・インデックス』が大好きです。内容も装丁も何もかも素晴らしいです。うっとりします。活版印刷はやっぱりいい。しかもたったの1500円(税別)。金額の高い安いでは量れない、私の宝物のひとつです。(H)