2015年 12月 12日
革命のジョン・レノン―― サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ ジェイムズ・A・ミッチェル著 石崎一樹訳 共和国 2015年12月 本体2,400円 菊変型判並製320頁 ISBN978-4-907986-17-9 帯文より:ロックで政治を変える! 街頭デモ、政治犯救援ライヴ、裁判闘争……。1970年代初頭、最もラディカルに輝いたレノンの「革命時代」を、《いま》この時代に検証する。 ★発売済。原書は、The Walrus & the Elephants: John Lennon's years of revolution (Seven Stories Press, 2013)です。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。FBI初代長官フーヴァーをして「レノンたちがわれわれにつきまとっている、だからわれわれもつきまとってやる、やつらは日毎に扱いにくくなっている、これはわれわれにとっての戦いなのだ」と報告書に書かしめた英国人ミュージシャンとそのパートナーであるオノ・ヨーコの、アメリカでの活動と発言を辿り、彼らを邪魔者扱いした人々との対峙を鮮やかに描いた実録本です。版元さん曰く「この本は、1970年代初頭のジョン・レノンによる社会的実践のドキュメントですが、いま現在の日本でさまざまなアクションとどう関わっていくかについても示唆的です。また、これまであまり照明が当てられてこなかった、ジョン・レノンが一緒に活動したビートルズ以外の唯一のバンド、エレファンツ・メモリーの元メンバーたちからのインタビューも多く用いられていて、ロックファン必読」と。ジョンとヨーコの大胆な活躍と影響力の大きさに改めて驚くとともに、文化人や活動家が権力から受ける実に寒々しい攻撃パターンというものへの理解を深めることができます。ジョンはあるとき、曲に入る前にこう観客に投げかけたと言います、「フラワー・パワーはダメだった、って言うやつもいる。そう言われて、で、何だってんだ? もう一度はじめればいいんだよ」(18頁)。 ★なお今月は、岩波書店からジョナサン・コット『忘れがたき日々――ジョン・レノン、オノ・ヨーコと過ごして』(栩木玲子訳)も発売されたばかりです。版元紹介文に曰く「『ローリングストーン』誌創刊以来の中心的なライターが、1968年の出会いから、ジョンとヨーコと過ごした日々を二人の肉声ともに回想する。1980年12月8日、凶弾に倒れたジョンの3日前の貴重なインタビューも収録」と。ジョンの命日を挟んで注目作が2点発売されたかたちです。 ★また、先月下旬から今週にかけては以下のように古典ものの刊行が相次ぎました。いずれも発売済です。 『ニコマコス倫理学(上)』アリストテレス著、渡辺邦夫・立花幸司訳、光文社古典新訳文庫、2015年12月、本体1,280円、文庫判520頁、ISBN978-4-334-75322-1 『新版アリストテレス全集(8)動物誌(上)』金子善彦ほか訳、岩波書店、2015年11月、本体5,600円、A5判上製函入400頁、ISBN978-4-00-092778-9 『ジャック・ラカン 転移(下)』ジャック=アラン・ミレール編、小出浩之ほか訳、岩波書店、2015年11月、本体5,200円、A5判上製328頁、ISBN978-4-00-024052-9 『デカルト的省察』フッサール著、船橋弘訳、中公クラシックス、2015年11月、本体1,700円、新書判336頁、ISBN978-4-12-160164-3 『空海「性霊集」抄』加藤精一訳、角川ソフィア文庫、2015年11月、本体920円、文庫判272頁、ISBN978-4-04-409492-8 ★アリストテレスの新訳が相次いでいます。新版全集の第11回配本は『動物誌』上巻(第8巻)で、下巻(第9巻)は今月(2015年12月)25日発売予定です。底本は2002年に刊行された新校訂本(Aristotle: 'Historia Animalium', Volume 1, Books I-X: Text, Edited by D. M. Balme, Cambridge University Press, 2002)です。岩波版旧全集では『動物誌』は島崎三郎・山本光雄訳で第7巻と第8巻でした。金子善彦・伊藤雅巳・金澤修・濱岡剛の4氏による新訳上巻に付属している「月報10」では、倉谷滋「セイボウとアリストテレス」、渡辺政隆「ダーウィンのアリストテレス賛歌」が掲載されています。一方、光文社古典新訳文庫ではアリストテレス新訳は初めてのことです。底本には1894年のバイウォーター編OCT(Oxford Classical Text)版が使用されており、上巻では原典全10巻のうち、前半5巻までを収録しています。巻末には共訳者の渡辺さんによる長篇解説が収められています。徳倫理学をめぐる新刊が増えている昨今、源流である『ニコマコス倫理学』が説く「徳(アレテー)」を学び直す絶好の機会となると思われます。 ★『ジャック・ラカン 転移(下)』はセミネール第8巻の後半です。第14講「口唇期と肛門期における要求と欲望」から第27講「分析家とその喪」が収められ、巻末には「訳者覚え書き」が付されています。『デカルト的省察』は『世界の名著』からのスイッチ。巻頭には谷徹さんによる解説「フッサールの問いは終わらない」が付されています。プレスナーによって紹介されたフッサールの言葉が引かれています。「ドイツ観念論のすべてが私にはいつも糞食らえという感じだった。私は生涯にわたって、現実を求めてきた」。また、フッサールがレヴィナスの『フッサール現象学の直観理論』を読んで友人に書き送ったという手紙の一節も印象的です。「彼〔レヴィナス〕は、私の現象学をハイデガーの〔現象学〕と同一平面に置き、そのことで私の現象学の本来的な意味を奪っています」。『空海「性霊集」抄』はカバー裏紹介文に曰く「空海がその人生の折々に著した、詩文や碑文、書簡などを弟子の真済が写し取り、編纂した性霊集。この中から三十篇を厳選し、書き下し文と平易な口語訳、解説で紹介」と。大きな活字と過不足ないルビでたいへん親しみやすいです。
by urag
| 2015-12-12 20:25
| 本のコンシェルジュ
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