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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2015年 10月 04日

備忘録(5)

いわゆる「ツタヤ図書館」へのマスコミや市民による監視は日に日に強まっていると見ていいかと思います。指定管理者制度の内実はもっと議論されていいものですし、選書・蔵書は図書館の根幹であり生命なので、多数のツッコミが明日への糧となることを祈らずにはいられません。少なくとも「100円本ばかり仕入れやがって」という巷の批判はCCCにとって大きな恥辱とすべきことで、蔵書買い入れの現状が市民だけでなく出版人の理解もまったく得られないであろうことは言うまでもありません。こうなる背景に、CCCから見て図書館行政や出版界の利益構造の問題があるというのなら、ぜひとも疑義は広く提示されるべきですし、図書館問題から出発できる改革も必ずあるはずと信じたいです。

◆2015年10月4日15時現在。

「産経ニュース」2015年10月4日付記事「「ツタヤ」管理の図書館に「女性を不愉快にさせる本」 蔵書にタイ風俗店ガイド 神奈川・海老名図書館」に曰く、リニューアルにあたり「バンコクの飲食店や性的サービスを提供する風俗店の紹介のほか、店員とのやりとり事例を示したタイ語会話集などを掲載」したガイド本が少なくとも3冊購入と。「海老名市はリニューアルオープン前に新規購入リストを市教育委員会の教育長らが確認、選書をやり直していた。市教委は「選定基準内で問題はないと判断した。他自治体での選定実績もある」と話している」とも。溜息しか出ませんね。同記事へのコメント欄付きヤフーニュース版は「「ツタヤ」管理の神奈川・海老名図書館 蔵書にタイ歓楽街案内」。海老名市議会議員の山口良樹さんによる議会リポート「図書館問題(第2弾)」もご参照ください。「教育長が自ら再選書したリスト(合計127ページ)」も閲覧することができます。ツイッターでの反響の中には図書分類の杜撰さにもツッコミが入っています。

【19時追記:詳しい惨状は「ねとらぼ」10月4日付記事「旧約聖書「出エジプト記」が旅行ガイド? 海老名市立図書館の配架がちぐはぐすぎて不安視する声」でご覧いただくことができます。正直笑えない事態ですが、紹介されているツイッターでのツッコミには秀逸なものもあってやっぱり笑ってしまいます。CCC提供による大喜利状態です。日々適正な分類を目指して格闘している書店員さんが図書館の書架を見て耐えきれないほどむずがゆくなるというのは比較的に「あるある」の部類の出来事ですけれども、海老名市立中央図書館はそうした次元をさらに越えてしまっているのかもしれません。同記事のヤフーニュース版のコメント欄もご覧ください。】

海老名市立中央図書館の関連記事には先日ご紹介したもの以外に以下のものがあります。

「産経新聞」2015年10月1日付、古川有希氏記名記事「海老名市に全国2例目、“ツタヤ図書館”1日改装オープン 選書で混乱も」に曰く「9月の海老名市議会でも、CCCが提出した約8300冊の追加購入予定リストに、眼鏡拭きやシリコン鍋などの付録が付いたムック本、女性の入れ墨ファッションを取り上げた本が含まれているとして、「公立の図書館にふさわしくない」などと懸念の声が上がっていた。/これを受け、海老名市はリスト見直しに着手し、“不適正”と見なした本をリストから排除。当初のリストから1千冊以上少ない7161冊を購入したが、一部は発注が直前になったためリニューアルに間に合わなかった。/同図書館館長を務めるCCCの高橋聡氏(43)は「書店での販売実績を加味し、多くの人に利用していただきたいという観点でリストを提出した」と説明」と。ムックの附録はどう管理するのでしょうね。同記事のヤフーニュース版でのコメント欄も参考になります。

「FNNニュース」10月1日付動画「2例目となる「TSUTAYA図書館」、神奈川・海老名市にオープン」では市民の「(古本は)すごくいい。誰かしら読んでくれるなら、その方が本も報われるかな」、「それはそれでニーズはあると思う」というあっけらかんとした声が紹介されていて、インタヴューされた方がお気の毒。こんな文脈で取り上げられるとは思わなかったでしょう。

「神奈川新聞」10月1日付記事「【動画】ツタヤ運営の図書館きょうオープン 8万冊増、年中無休」に曰く「4階のプラネタリウム室跡に幼児専用のライブラリーを開設」と。写真の丸天井を見る限りプラネタリウム室はさほど大きなものではなかったようですが、動画での高橋館長の説明によれば年4回の投影会をやりたいとのことで、丸天井が残されて良かったと思います。同記事のヤフーニュース版のコメント欄もご覧ください。



なお、YouTubeの「Chujiro rx」さんのチャンネルでは海老名市立中央図書館のセレモニーや同図書館をめぐる市議会での一般質問の様子を動画で見ることができます。セレモニーではCCCの増田社長やTRCの谷一社長も映っていますね。

「ハフィントンポスト」9月30日付、猪谷千香氏記名記事「「武雄市図書館の時はド素人でした」 海老名市でオープンした2館目のTSUTAYA図書館は何が違う?」に曰く、「海老名市立中央図書館の開館に先立ち、9月30日に行われた会見で、CCCの高橋聡館長は、武雄市図書館の選書問題について、こう振り返った。「行政手続としては問題ないと、当時から武雄市に言われていますが、武雄市図書館の時、僕たちはド素人でした。一館もやってない状態で、時間がなく、かつ予算もないという特殊な状況の中、2年半運営した経験を積んだ自分たちからすれば、もっと良いことができたのではないかと反省しています」」と。率直な反省の弁は評価できるのですけれども、海老名市の市民の皆さんとしては「仕方ないか」では済まされない部分があるでしょう。内情をブチまけることが許されないCCCの皆さんにも同情を禁じえません。

「THE PAGE」10月2日付、小川裕夫氏記名記事「武雄市図書館で是非 なぜ東京・千代田区で「民間委託」が機能したか?」に曰く、「図書館の運営を指定管理者に任せている千代田区ですが、武雄市のような問題は発生していません。/「指定管理者制度を導入するときは、貸出率や経営効率を上げようという意見も出ました。しかし、千代田区は出版社が多く立地している自治体です。そのため、編集者や作家といった人たちが図書館を頻繁に利用しています。また、日本有数の古書店街である神田神保町もあります。いわば、千代田区にとって出版は大事な産業であり文化でもあります。図書館も出版文化を担う施設ですから、経営効率を求めるものではないという考えに至りました」(千代田区文化振興課)」と。また曰く「代田区は企業が多く立地し、法人税収を多く得ています。図書館を充実させることができるのは、潤沢な税収があるからです。しかし、それだけが理由ではありません。千代田区は企業が多く立地するという特徴を踏まえて、ビジネスマンの図書館利用を積極的に奨励しているのです。/「千代田区は図書館を“ビジネスを発想するセカンドオフィス”と位置づけ、ビジネス支援のセミナーなどを開催しています。また、会社帰りのビジネスマンが資格試験の勉強で立ち寄れるように閉館時間を22時にまで繰り下げるといった工夫もしています」(同)」と。なるほど。さらに次の指摘は非常に重要かと思われます。「もちろん、デメリットもあります。図書館の運営を民間事業者に任せているので、行政に図書館運営のノウハウが蓄積されないのです。指定管理者が替わった場合、次に図書館を運営する事業者にノウハウが引き継がれません。仮に、新たな民間事業者にノウハウがなければ、図書館の運営は行き詰ってしまうのです」。同記事のヤフーニュース版コメント欄もご参照ください。

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by urag | 2015-10-04 16:12 | 雑談 | Comments(0)


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