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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2015年 08月 25日

雑談(18)

◆2015年8月25日13時現在。

「文化通信」2015年8月24日付記事「大阪屋・大竹社長「両社の統合は必ずプラスに働く」、大阪屋友の会納涼会で」によれば、「【関西】大阪屋友の会近畿地区と同会連合会青年部主催の納涼会が8月20日、大阪市中央区のニューミュンヘン南大使館で開かれ、来賓の大阪屋・大竹深夫社長は栗田出版販売の問題に触れ、「両社の統合は必ずプラス…」(以下有料)。栗田との統合についての意気込みは以前と変わりありません。有料部分に何と書いてあったのかが気になります。無料で全文を読ませる記事もあった方が「文化通信」さんのサイトへのアクセスが伸びると思うのですけれども。

いっぽう「新文化」8月24日付記事「大阪屋、4~7月の売上げ前年比3%増に」によれば、「4月から4カ月間の売上高は、「書籍」が前年比15%増、「雑誌」が同10%減、計同3%増。8月20日に行われた第27回「大阪屋友の会納涼会」で、大阪屋の大竹深夫社長が報告した」と。栗田の例の返品問題は雑誌版元からの評判が悪いと聞いていますから二次卸スキームで絡んでくる大阪屋への風当たりも強くならざるをえない部分があるものと思われます。記事に続けて曰く「書店店頭は既存店ベースで、4・5月が同3~4%減、6月が同1%減、7月が同0.6%増、8月が15日まで同0.8%増。大ヒット中の『火花』のほか、地域活性化施策であるプレミアム商品券が店頭を潤した」と。『火花』に続くベストセラーの誕生が待たれるところではあります。

さらに記事に曰く「大阪屋友の会連合会の田村定良会長(田村書店)も「少し明るさが見えた状況で納涼会を開催できるのは数年ぶり」と喜びの表情を見せた」と。田村会長は7月9日の首都圏栗田会にも参加されて栗田に「エールを贈った」と報じられました。数年ぶりの「少し明るさが見えた状況」という発言が意味するところは何でしょうか。栗田の再生計画への賛成票が固まってきたのか、《大阪屋=栗田》の第三極構想が前進していることを展望しておられるのか、それとも単純に売上増を喜んでおられるのか、真意はよく分かりません。「新文化」ウェブ版が栗田問題についてあまり頼りにならない、という声をしばしば耳にします。確かに物足りないところもなくはないように見受けます。結果、版元が別の情報源を探す、という状況になっているのが業界紙の利益に適っていることなのかどうか。いつか丸島社長にお尋ねしてみたいところではあります。

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◆2015年8月26日午前11時現在。

【出版物共同流通センターと出版共同流通を混同した投稿を削除いたしました。関係者の皆様に深くお詫び申し上げます】

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◆2015年8月26日正午現在。

日書連(日本書店商業組合連合会)が発行する「全国書店新聞」平成27年8月15日号の記事「CCCの図書館運営で報告/第28回岡山県組合通常総会」によれば、「岡山県書店商業組合(小野正道理事長)は、6月27日に岡山市の岡山県教科図書販売藤原営業所で第28回通常総会を開催し、組合員73名(委任状含む)が出席した。〔・・・〕情報化推進の報告の中で、図書館の指定管理者制度の導入により、岡山県でも高梁市がカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選択、基本合意書を締結したことを説明。CCCによる運営事例も他所の話ではなくなりつつある現状について意見が交わされた。〔・・・〕(荒木健策広報委員)」とのことです。CCCによる運営事例は、武雄市図書館のほか、10月1日(木)にリニューアルオープンする海老名市立中央図書館や、来年3月にオープンする多賀城市の新しい市立図書館などがあります。

このほか、同15日号では「転換期迎え大胆な改革討議/さいたま市で関東ブロック会」、「組合員書店の減少に危機感/東北ブロック大会で藤原会長」、「組合員減への対応等を協議/氷見市で北信越ブロック会開催」などに注目したいと思います。いずれもマチナカ書店の減少に伴う様々な課題を窺わせるものです。

日書連関東ブロック会(2015年7月12日)では「〔・・・〕日書連・柴﨑副会長より、あいさつ並びに日書連活動の現況について報告が行われ、出版物への軽減税率適用の課題や、書店の存続についての課題、出版社・取次の有事に関する書店の債権・債務について等の話があった。/各県組合の報告では、組合員の減少問題があげられ、現状維持が困難な状況であることが共通していた。書店減少の原因や大型書店の出店問題と並んで、各組合から独自のイベントの開催、県市町村との提携について、具体例をあげた報告が行われた。/フリーディスカッションでは、大手取次が書店を組み込む事例が増えている問題、書店経営を考えた正味の問題等、多くの発言があった。神奈川組合・筒井正博理事長の「本屋の在り方、経営の仕方の転換期が来ている」、同組合・井上俊夫副理事長の「もうすでに書店経営はビジネスではない。目先の計算ではなく先を見据えた経営が必要」との話が、会議のまとめとなった。〔・・・〕(埼玉県書店商業組合・山口洋事務局長)」

東北ブロック大会(7月9日)では「〔・・・〕藤原直会長(宮城県書店商業組合理事長)は、書店の厳しい状況について、平成初期に1100軒を超えていた東北6県の組合書店数が、現在330軒と3分の1以下に減少していること、6県内で60ヵ所の自治体に書店がないことに言及して、「これは由々しきこと。売上が悪いから本屋が辞めるのか、本屋がなくなるから業界全体の売上が少なくなるのか、負のスパイラルに陥っている。だが、やればできることはまだあるし、いろいろな所で頑張っている書店、プラスになっている書店はある。この会で皆さんと情報交換をしながら、明日への期待を培いたい」と述べた」。さらに「日書連・舩坂良雄会長が日書連活動について報告。舩坂会長は、どうしたら書店が今後も商売を続けていけるかが最大の課題だと述べ、書店の収益改善の取り組みとして、藤原ブロック会長を委員長に「雑誌買切制度研究小委員会」を設置し、外商雑誌の買切による報奨金獲得のシステムを検討していると説明。「まだ時間がかかると思うが、書店がやればやるほど利益が上がるように考えたい」と述べた。〔・・・〕このほか、注目を集めている取り組みとして、北海道砂川市のいわた書店が実施する「1万円選書」を紹介。「全国にはまだ読者がいる。どんな本を読んだらいいか迷っている人が多く、読者の相談に応じたり、本好きの人に発信していく店づくりが必要ではないか」と指摘した」。

北信越ブロック会(7月5~6日)では「〔・・・〕組合員数の減少への対応、賦課金の見直し、書店くじの増売等の諸問題について活発に意見交換した。〔・・・〕(澁谷英史広報委員)」とのことです。

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◆8月26日16時現在。

春樹本ですが、紀伊國屋書店さん以外で版元から直接仕入れる書店さんもいらっしゃるようですね。また、取次経由で仕入れる書店さんの中には「紀伊國屋書店→取次と卸が二重構造になった結果として下代(卸価格)は上がり、ただでさえ薄利な書籍販売が、より薄利に……」と訴えておられるお店もあります。

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◆8月26日18時現在。

「読売新聞」8月22日18時27分配信記事「村上春樹さん新刊、紀伊国屋書店が直接仕入れ」に曰く、「出版社は通常、取次会社を通じて書店に本を納めているが、売れ筋の作品については、発売当初は大型書店やネット書店に回り、中小規模の書店には希望通りに行き渡らないこともあった。「職業――」については、書店に対しても返品を認めない代わりに、希望通りの数を出荷する」と。取次3社の扱い分は5~6万部で、買切条件ではそれなりに発注数は抑制されるでしょうから、満数出荷はおそらく可能でしょう。当然のことながら、紀伊國屋書店と日販、トーハン、大阪屋との間では、それなりの事前打ち合わせがあったものと思われます。

fujiponさんのブログ「いつか電池がきれるまで」の8月22日付エントリー「「紀伊国屋書店、村上春樹氏の新刊『買い占め』」についての雑感」は日経記事を受けてのもの。曰く「「本を手にとること」への回帰を促しているのだとは思うのですが、これって本当に「対Amazon」なのだろうか?とも感じます。/むしろ、「対Amazon」を旗印に、リアル書店のなかでのイニシアチブを握る、というのが本当の狙いなんじゃないかな、という気もするのです。/「生き残るべきリアル書店」の選別を考えているのかもしれません」と。これはなかなか穿った分析ではないかと思います。このことに紀伊國屋書店がどれくらい自覚的なのかどうかはわかりませんが、少なくとも現在の業界の空気としては「今後とも版元にせよ書店にせよどんどん淘汰されていく」という予感が広くあると思います。また曰く「リアル書店で本を買わなかった人が、Amazonだったら大量に購入するようになる、ということでもないし、「わざわざAmazonで買わなければならない本」を読む人は、そんなに多くないのです」というのも、一出版人の感覚から言ってリアルな線ではないかと感じます。

またfujiponさんは「ずっと家で仕事をしている人でもないかぎり、「出かけたついでに、リアル書店で買う」ほうが、簡単で、すぐに読める。〔・・・〕ちなみに僕は、この村上さんのエッセイ集はリアル書店で買います」とお書きになっています。これは下段でご紹介する佐藤仁さんの記事にあるご意見とは対照的で興味深いです。佐藤さん曰く「池上彰氏のような方が「リアルな書店に通って、そこに並んでいる本を見ることで世界が見えてくる」と説いても、忙しい人はそんなに頻繁にリアルな書店に通うことはできない。夜も10時くらいには閉店してしまうところが多い。/たしかにリアルな書店の新刊コーナーや興味ある棚を眺めるのは、世の中の流れもわかるし、楽しいことではある。しかし、忙しい人にとってはネットで書籍を購入して、都合の良い時間に職場なり自宅に配送してもらう方が遥かに楽で効率的である」と。fujiponさんのご意見も佐藤さんのご意見も、どちらも真実ではないかと思いますが、これは仕事場の周辺や通勤途中の経路に本屋さんがあるかどうかによって事情が異なるかもしれません。また、仕事の途中に時間を作ったり、通勤ルートを外れてまで本屋さんを訪問するかどうか、という点も影響するでしょう。私自身はネット書店をサーフィンするより、リアル書店で棚から棚へさまよう方が好きですし、古書店を含めた本屋巡りが大好きです。

さらにfujiponさんはこうも書かれています。「実際のところ、いくら村上春樹さんの本といっても、いまの日本で文芸書10万部って、そうそう売れるものじゃないはず。長篇の新作じゃなくて、エッセイだし。/「紀伊國屋だけ」どころか、「中型以上の書店なら、どこにでも置いてあるレベル」「TSUTAYAに平積み」くらいじゃないと、10万部は売れない。/もし売れ残ったら、紀伊國屋としても悲惨なことになります。/蓋を開けてみれば、「どこにでも、普通に売っている本」「わざわざAmazonで買う必要もない本」になる可能性が高いと思います。/下手すると、「紀伊國屋がAmazonに流さざるをえなくなる」のではないかと。/本当に「買い占め」するのなら、増刷なしの限定1万部、紀伊國屋でしか販売しない、というくらい徹底しないと、効果は乏しそう……」。これまた鋭いご意見だと思います。紀伊國屋書店からアマゾンへというルートがもし可能になったらそれはそれですごいですね。売れ残りについては再販制のもとでは値引販売ができませんから、もし本当に余ってしまったら、断裁しか選択肢はないものと言わざるをえません。在庫リスクとはそういうものだからです。ただし、紀伊國屋書店がチェーンで扱うのはあくまでも9万部のうち3~4万部と報道されていますから、その辺は過去の実績をちゃんと踏まえて売り切る自信と覚悟を持っているはずだろうと思います。とはいえ、実際に売り切れるのかどうか、その辺もニュースになりそうですね。

「Yahoo!ニュース」8月24日20時3分配信の、佐藤仁さん(情報通信総合研究所副主任研究員)による記名記事「紀伊國屋書店「ネット書店対抗」で村上春樹氏の 新刊90%買占め:リアル書店は本当に活性化されるのか」に曰く「これからもリアルな書店は、有名作家が新刊を出すたびに『ネット書店への対抗』として、毎回このような『買い占め』を行うのだろうか。そうなると体力勝負になり、相当なリスクも伴うのではないだろうか。本当にリアルな書店は活性化されるのだろうか。〔・・・〕リアルな書店も新刊の『買い占め』でなく、もっと違うところで付加価値を出して、集客をした方が良いのではないだろうか」と。当然の疑問かと思います。紀伊國屋書店さんが今後新たにプレスリリースを出すとはあまり考えにくいですが、色々な疑問の声には率直にお答えになった方が今後のためにはいいような気がします。

ちなみに佐藤さんは「村上春樹氏の新刊をリアルな書店で購入した人が、次に別の本を購入するときに、またリアルな書店で購入するだろうか。『いつものポイントがつくネット書店』に戻ってしまうのではないだろうか」ともお書きになっています。「いつものポイント」というのが確かに重要ですね、ポイントを貯めたい側からすれば。ちなみに、紀伊國屋書店は店頭で買ってもブックウェブで買ってもポイントが付きます。

「日刊ゲンダイ」8月25日付記事「紀伊国屋が村上春樹の新刊買い占め 「独禁法」クリアできるか」に曰く、「ずいぶん大胆な作戦に打って出たものだが、気になるのが「買い占め」だ。9割も仕入れた場合、独占禁止法に抵触しないのか。「独禁法で処罰される買い占めは企業などが自分の立場を不当に利用して、他社を市場から排除する場合です。下請けに対する地位を生かして買い占めるような行為を指します。紀伊国屋の場合は立場の不当な利用にあたらないため違法ではありません。法理上はお金持ちがお店で爆買いしても法に触れないのと同じです」(元東京地検検事で弁護士の落合洋司氏)」と。法律的にはセーフでも、他書店からの評判としては微妙なのかもしれませんが・・・。

記事にまた曰く「「今回の作戦は紀伊国屋にとってオイシイ商売です」とは都内の中堅出版社社長だ。「通常、本を売った際の書店の取り分は1割ちょいですが、今回は直接取引。出版元は65%くらいで紀伊国屋に卸しているはずだから紀伊国屋の利幅は35%。通常の2倍以上になります。もともと村上さんの本はバカ売れする上に、買い取りの一件がニュースになって宣伝効果は十分。話題づくりのために仕掛けたんじゃないですか」。65で卸しているとしたら、通常の2倍以上というのは大げさな気がします。私見では、オイシイ商売だとか話題作りだとかというよりは、今回はガチで戦いに行った(リスクを取った)という印象が強いです。

巷のツイートをまとめた「togetter」の「紀伊国屋書店、春樹新刊を買い占めるの巻」もご参照ください。今回のこと「だけ」で地方の小さい書店の生死を語るのは無理があると思うのですが、その辺はマスコミがちゃんとマチナカ書店の肉声を拾って報道してほしいところです。

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by urag | 2015-08-25 13:46 | 雑談 | Comments(4)
Commented by 無名の人 at 2015-08-25 22:44 x
「新文化」7月20日更新記事「【人事】出版物共同流通センター、新社長に河野隆史氏」について
年を確認してください。

最近記載ちゅうもくです。
Commented by 名無し at 2015-08-26 11:04 x
出版共同流通センターの人事のリンク、2012年7~8月更新に飛ぶのですが?
Commented by urag at 2015-08-26 12:06
無名の人さんこんにちは。ご指摘ありがとうございます。
Commented by urag at 2015-08-26 12:07
名無しさんこんにちは。記事が個別ではなくまとめのみなのです。


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