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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 08月 04日

大型書店とて、配本のない新刊がある、のか

今週のことです。打ち合わせのために山手線のI駅に出て、小社新刊の陳列具合を確認しに、L本店とJ本店に寄りました。L本店のイルムス館B1Fの新刊コーナーを確認中に、水声社からつい先日刊行された、上田和彦著『レヴィナスとブランショ』がないことに気が付きました。

人文書売場にはあるだろうと思って、書籍館を3Fまで上がり、エレベーター前の新刊台へ。ありません。レヴィナスやブランショの棚にはあるだろうと思って、棚の前に行くと、やはりない。

そんなまさかと思ってB1Fに戻り、外国文学書コーナーの仏文棚の前へ。小社のブランショ本はありがたいことに面陳されていますが、『レヴィナスとブランショ』がない。結局どこにもありませんでした。【8月10日補記:Lのスタッフ情報によれば、現在は人文書で在庫していて、そもその新刊配本は極小部数だったとのこと。】

いくつかの可能性が考えられます。まず、L本店の人文書担当や外文担当のスタッフは目利きですから、即返(入荷した新刊を陳列させずにすぐ返品すること)はありえない。で、万が一事前発注をしていなかったとして、メイン帳合である日販がL本店にこの手の本を配本ゼロにすることがあるだろうか。それも考えにくい。でも近年では、全然ありえない話というわけでもない。

配本ゼロではなかったけれど、1冊~3冊ていどしか入荷せず、すぐに売れてしまったのでしょうか。商品の性質上、即完売は考えにくい。即完売したとして、本当に、1、2冊くらいしか入らなかったのかもしれません。

人文書のMさんに尋ねようかと思いましたが、不在。そこで今度は、向かいのJ本店へ。1Fのレジ前新刊コーナーにはない。まあここはそんなにスペースがないから仕方がない。

4F人文書へ。エスカレーター前の新刊台に積まれていました。隣には小社刊『ブランショ政治論集』が。結局Jで購入しました。1Fレジ付近にいたF副店長に、Lにないなんて不思議ですねと話したら「そうだね、どうしたんだろう」と。ちなみにJは大阪屋帳合。

たしかに『レヴィナスとブランショ』は著者の博論であり、出版社としては新刊委託時にばら撒くよりは、基本的に注文扱いで出荷していく、というスタンスなのかもしれない。しかしテーマ的に本書には類書がなく、1000坪以上の超大型店ならば、仕入れておいてもいい本です。出荷部数を絞るために(返品率を下げるために)、書店への事前の新刊案内もあえてしていなかったのか・・・・・・。関連会社の紙店から水声社の現場に復帰されたS社長に、実態がどうなのか聞いてみたい気もします。

***

1000坪を超える大型書店だから本が揃っているかというと必ずしもそうじゃない。LにないけどJにはある場合もあるし、JにはないがLにはある、ということもある。本当に、何でも店頭にあるし、ストックのスペースも十分という書店であるためには、もう何年も前に京都の三月書房の宍戸さんが業界紙に書いていたように、3000坪以上が必要なんだろうと思います。

いわんや既刊書に至っては、大型店が密集するターミナル駅に出ても、見つからない本があるというのが、こんにちの「本の大洪水」時代の現実なのです。

非常に象徴的あるいは兆候的な出来事のように思えたので、書き留めました。(H)

by urag | 2005-08-04 22:33 | 雑談 | Comments(8)
Commented by M来社・N at 2005-08-05 00:28 x
お久しぶりです。少なくとも、「配本ゼロ」、ということはありません。なぜなら、私が同店にて1冊購入したから(月曜日です)。人文書売場のブランショの棚に棚差しで1冊(だけ)ありました。……たしかに、新刊なのに棚差しで1冊、というのも気にならない訳ではなかったのですが。
Commented by akishimanagae at 2005-08-05 01:21
お世話になってます。うちにも配本で2冊入荷してきてました。1冊売れたけど。配本だと、この本はこんなに要らないよ〜ってことが、よくあります。パターン配本で、ランクが高いとどうしてもそうなってしまうんですけど、どうせすぐに返本してしまうのなら、初めから地方の書店にまわしてもらったほうが……。
Commented by urag at 2005-08-05 10:31
Nさん、akishimanagaeさん、こんにちは。

Nさん、貴重な情報をありがとうございます。配本が1冊ないし数冊程度だったということがありえそうですね。

akishimanagaeさん、パターンおよびランクについては、〈取次=書店〉間、〈書店=版元〉間、あるいは〈取次=版元〉間で、それぞれ微妙な温度差があって、三者ともに満足できることはなかなかないだろうと思います。書店さんが満足するためには、売場での売れ筋傾向とそれへの対策が版元にきちんと伝わっていることが、配本/仕入計画の前提になると思います。〈書店=版元〉間のコミュニケーションが重要だろうと思います。ただし、もちろん、コミュニケーションがあるから適正配本になるかというと、必ずしもそうではない場合もあります。〈書店=版元〉の力関係がそこには影響してくるからです。会社同士の影響関係の場合もあれば、現場の担当者同士の人間関係の場合もある。また、思ったほど売れない場合があるし、思った以上に売れる場合もある。書店サイドにせよ、版元サイドにせよ、楽観したり悲観したりすることなく、淡々と販売の工夫を重ねていくことが重要なのでしょうね。
Commented by 江口 淳 at 2005-08-06 07:14 x
小部数配本の場合まず営業が何故事前注文を取らないのか全く分かりません 又その後の配本リストを取次ぎに依頼しないのも良く分からん 大坂屋が他の大取次より早いのも知らないのは営業失格だ思います
Commented by urag at 2005-08-06 10:24
江口さん、こんにちは。貴重なコメントをありがとうございます。

江口さんがどういう立場におられる方なのかよくわからないので、仰っていることの射程を測りきれない部分があります。江口さんの立場によっては、まったく正論でもあり、あるいは江口さんの指摘が適合的ではない例もあると私には思えます。

まず、営業が事前注文を取らなかったとして、それが江口さんにとって「全く分からない」のは何故なのかがよくわかりません。小部数配本ならば余計綿密に、どの店へ何冊送付するかということを書店さんや取次と相談し、取次に配本リスト(有料)を依頼してはっきり把握しておくのが合理的だということでしょうか。(続く)
Commented by urag at 2005-08-06 12:57
(続き) ごもっともな話ですが、どんなに書店や取次と相談しても、返品は発生します。ある種の出版社にとっては、諸経費を最小限に削りながら、書店や取次と適当な距離を保っていることが重要です。

たとえば、絞り込んで全国で70~80店舗の書店に配本することにしたとして、事前注文を取るために年次ないし月次にかかる電話・FAX代、郵便代、交通費、人件費などはけっして小さいものとはいえません。また、取次の配本リストは有料で一回につき6000円前後の料金がかかりますから、「たかが6000円」と思えるような余裕のある版元でない限り、めったに利用しないと思います。

大阪屋が日販より書店への新刊の納品が早いということを仰っているようですが、若干地域差があると思います。江口さんのご指摘はどれも志向性の強いもので、「営業失格」という強い言葉で誰の何を批判されているのか、真意を伺いたいところです。
Commented by 江口淳   at 2006-08-25 02:37 x
解らない事は自分で調べる事 私の本は菊地君の本屋 僕は本屋の親父さんに出ています まぁ自分で勉強してみてください 元私の部下現ジュンク池袋本店中邑文孝なんかがほざいてる言質もこの業界の殆どの手合は全て過去の人たちの受け売り 本として残る物は皆無です団塊の戯言に付きあう暇があったらググールのお勉強でもしてた方がマシですよ(笑い)
Commented by urag at 2006-08-25 22:02
江口さん一年越しの再レスをありがとうございます。さすが業界の大先輩は格が違いますね。何を仰りたいんだか到底理解が及びません。


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