
今を遡ること約20年前、1984年7月25日に丹生谷貴志さんの処女作『光の国あるいはvoyage en vain』は、「リゾーム群書」の第一弾として朝日出版社より刊行されました。装丁は戸田ツトムさん。
初版本の帯文にはこう謳われていました。
思考の
シンクロトロンが
超高速旋回して
ゆらぎをはらんだ
「アンタンシテ=強度」
が出現する!
目次は以下の通りでした。
I 神・神々・砂の書
II 「死」・木星の逃亡者・「光の国」
III 砂漠・bêtise・「光の国」
あとがき
幻の「リゾーム群書」の続刊予定には、以下の書き手が名を連ねていました。
浅田彰
中沢新一
小林康夫
四方田犬彦
松浦寿輝
如月小春
なんという贅沢なシリーズだったことでしょう。結局続刊は実現しませんでしたが、浅田さんや四方田さん、丹生谷さん、そして彼らの同世代の細川周平さんはほどなく筑摩書房の「水星文庫」で著書を刊行することになります。『ヘルメスの音楽』、『映画はもうすぐ百歳になる』、『砂漠の小舟』、『トランス・イタリア・エクスプレス』といった魅力的な書物たちです。
小社より刊行予定の『光の国』新版ですが、内容に変更はありません。「新版へのあとがき」が新しく書き下ろされています。「ニューアカ」「ポストモダン」全盛期を知らない若い世代にも興味深く読んでもらえるだろうと思います。回想的でありながら非常に未来的な「あとがき」です。もう少し刊行が近づいたら、一部をご紹介できるかもしれません。(H)