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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 07月 24日

今週の注目新刊(第14回:05年7月24日)

ひとさまから夏風邪をもらってしまったようで、体が熱くて重いです。咽喉には刺すような痛みが続いています。世界水泳のシンクロ・ソロのドデュ(あるいはデデュー)さんの渾身の演技を見て、その二連覇という偉業に元気をもらい、かろうじて精神的に踏みとどまっている感じです。

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真理の探究――抜粋と注解
フロレンス・ナイチンゲール著 マイケル・D・カラブリアほか編著 竹内喜+菱沼裕子+助川尚子訳 小林章夫監訳
うぶすな書院 本体2800円 4-900470-18-X
■原題:Suggestions for Thought to Searchers after Religious Truth.
●クラーゲスや三木成夫の著書を積極的に刊行してきたうぶすな書院さんの、三年ぶりとなる新刊です。かの高名な看護士ナイチンゲールの非公開だった著書を要約し再編集したもので、彼女の宗教哲学が語られているとのこと。ナイチンゲールの著書については、うぶすな書院さんではこれまでに『看護覚え書』が刊行されています。

アドルフ・ヒトラーの青春――親友クビツェクの回想と証言
アウグスト・クビツェク(1888-1956)著 橘正樹訳
三交社 本体2800円 4-87919-159-0
■帯文より:『我が闘争』(上下巻:角川文庫)や『ヒトラーのテーブルトーク』(上下巻:三交社)と並んでヒトラー関連書に繰り返し登場する、若きアドルフの人間像を最もよく伝える《伝説的書》の完全邦訳。
■版元紹介文より:20世紀初頭、ドナウ河畔の都市リンツそして12の民族が混在する首都ウィーンで、若きヒトラーは何を見、何を感じ、何を決意したのか。希望の星・恐怖の的、政治家ヒトラーの「誕生」はいかにして準備されたのか。

目次:
第一部 リンツでの若き友情
 第1章 最初の出会い
 第2章 奇妙な友情
 第3章 若きヒトラーの肖像
 第4章 アドルフの母のこと
 第5章 アドルフの父のこと
 第6章 学校との決別
 第7章 心の恋人 ステファニー
 第8章 リヒャルト・ワーグナー狂い
 第9章 若き民族主義者
 第10章 スケッチ、絵画、建築
 第11章 決意とヴィジョン

第二部 ウィーンでの体験
 第12章 アドルフのウィーン行き
 第13章 母の死
 第14章 「グストル、一緒に来い!」
 第15章 シュトゥンパー通り二九番
 第16章 帝都ウィーン
 第17章 独学と読書
 第18章 宮廷歌劇場
 第19章 アドルフの自作オペラ
 第20章 移動帝国オーケストラ
 第21章 不本意な中断
 第22章 女性に対するアドルフの態度
 第23章 国会議事堂
 第24章 突然の破局

第三部
 エピローグ 総統兼帝国宰相アドルフ・ヒトラー

訳者あとがき 

●版元の紹介によれば、アウグスト・クビツェク(Augusut Kubizek)は1888年にオーストリアのリンツに生まれ、アドルフ・ヒトラーの青春時代の友人で、ウィーンの音楽院を卒業後、1914年からスロヴェニア地方の劇場指揮者だったそうです。第一次大戦後は、オーストリアのエファーディング市役所に勤務。とのこと。ヒトラーが生まれたのはクビツェクの翌年の1889年。ちなみにこの89年には哲学者のハイデガー、歴史家のトインビー、俳優のチャップリンが生まれています。

テロルを考える――イスラム主義と批判理論
スーザン・バック=モース著 村山敏勝(1967-)訳
みすず書房 本体2500円 4-622-07147-9
■版元紹介文より:アメリカにおけるベンヤミン、アドルノ研究の第一人者の、初の邦訳となる本書は、9・11同時多発テロの衝撃を直接の契機として書かれた。本書が語りかける「イスラム主義」とは、宗教的原理主義でも反米ナショナリズムでもなく、グローバルな民主主義の実践へ向けて、左翼の批判理論とも連帯できる政治言説であり、西洋の政治的規範のヘゲモニーに異議を唱える批判的言説である。「テロリストとテロリスト対策、どちらの暴力も否定するグローバルな公衆として、この事態に働きかけるために、過去のテロルを思考すること」。アメリカ安全保障国家による対テロリズム戦争に対抗するために、多様で、複数の中心をもち、異質な者どうしの議論に開かれたグローバルな公共圏に呼びかける、批判理論の最前線。
●ついにバック=モースさんの単行本初訳が出ました。これをきっかけに彼女のベンヤミン研究の白眉『見ることの弁証法』なども翻訳されていってほしいです。今回の本は小社近刊の「暴力論叢書」とも思想的に近しいので、読むのが楽しみです。

フィデル・カストロ20世紀最後の提言――グローバリゼーションと国際政治の現況
フィデル・カストロ述 デイビッド・ドイッチマン編 渡辺邦男訳
VIENT(発行) 現代書館(発売) 本体4200円 4-7684-8886-2
■版元紹介文より:20世紀最後の巨人フィデル・カストロキューバ首相が、1998年から2000年に行った演説を厳選し、十四章に構成した注目の書。資本主義社会に現われた危機を指摘し、キューバの現状を正直に述べつつ、地球人類の未来を説く名演説が感動を呼ぶ。
●VIENT(海風書房)さんはゲバラの伝記をはじめとする南米系の本などを刊行している出版社さんで、刊行点数は少ないながらも、非常に密度の高い活動を継続されています。

インド・ユダヤ人の光と闇――ザビエルと異端審問・離散とカースト
徳永恂(1929-)+小岸昭著
新曜社 本体2500円 4-7885-0954-7
■帯文より:大航海時代とザビエルらの世界布教がまきおこした全地球的規模の波動。文明の背後に伏流するキリスト教普遍主義やディアスポラの軌跡をインドの地に生きるユダヤ人たちの歴史から照らし出す。

目次:
序 --「エスタード・ダ・インディア」とユダヤ人の運命(小岸昭)
第一章 インドにおけるユダヤ人の問題(徳永恂)
第二章 「インドの使徒」ザビエルとユダヤ人(小岸昭)
第三章 インド・ユダヤ人のアイデンティティ(徳永恂)
第四章 コーチンのユダヤ人街から(小岸昭)
付録 ユダヤ人離散の軌跡(徳永恂)
あとがき(徳永恂)

イザベラ・バードのハワイ紀行
イザベラ・バード(1831-1904)著 近藤純夫訳
平凡社 本体2800円 4-582-83249-0
■帯文より:130年前のハワイ王国にタイムスリップ! キラウエアの火口、ワイピオの渓、マウナロア、ハレアカラ…イザベラの驚くべき冒険を通して、「常夏のエデンの島」の魅力とその実情を知る。
■版元紹介文より:『日本奥地紀行』で知られる女性旅行家の「旅」の原点。火山や激流に挑む驚くべき冒険の数々、先住民との交流や原生自然の貴重な記録が、1873年のハワイ王国にタイムスリップさせてくれる。

歴史年表大事典――まんが歴史にきざまれたできごと
ムロタニツネ象(1934-)まんが・年代暗記文 高埜利彦監修
くもん出版 本体1600円 4-7743-1038-7
■帯文より:まんがで歴史の流れがよくわかる! 国家の統一や政治の改革、文化の発展など、時代をゆるがし、歴史にきざみこまれたいくつものできごと。
■版元紹介文より:古代から現代まで、日本の、世界の歴史を変えたできごとをまんが化!縄文時代(約1万年前)からソ連の解体(1991年)まで、歴史を変えたできごとを、歴史まんがの第一人者の著者が描いたまんがで、楽しく、わかりやすく紹介します。取り上げたできごとは日本と世界を合わせて178項目。大化の改新や関ヶ原の戦い、フランス革命、2度の世界大戦など、それぞれのできごとを年代ごとに見開き2ページで解説。そのできごとが起こった背景や、それによって歴史がどのように変わったのかはもちろん、歴史の表舞台には出てこないさまざまなエピソードも満載。むずかしいと思われがちな歴史を、ときにはユーモラスに描きながら、教科書だけでは知ることができない歴史の一面まで手に取るようにわかります。すべてのできごとに著者オリジナルのゴロ合わせを掲載。できごとが起こった年代も楽しみながら覚えられます。また、主な登場人物の生きた期間や、できごとが起こった場所を示す歴史地図などの情報も充実。日本と世界を変えたできごとがよくわかり、1冊を通して読めば歴史の流れが見えてくる。初めて歴史に触れる子どもたちの入門書として最適な1冊です。

目次:
第1章 文明のおこりと日本の成り立ち
第2章 古代国家と東アジア
第3章 武家政治の成立と展開
第4章 世界の動きと武家政治の発展
第5章 近世社会の発展
第6章 近代ヨーロッパの発展と日本の開国
第7章 近代日本と国際社会
第8章 二度の世界大戦
第9章 戦後の日本と世界

●読者対象が「小中学生から」なので、「大事典」と銘打たれてはいますが、研究者向きではありません。しかし、大人にとっても、文字だけの入門書よりは、「小中学生向き」のマンガによる歴史の方が分かりやすいし、敷居が低くてとっつきやすいでしょう。そんなわけでむしろサラリーマン層を相手に売れるんじゃないかと思います。値段も安いです。菊判なので、少々かさばりますが、ビジネスバッグに入らないようなものではありません。

愛という廃墟
中筋純写真 田中昭二文
東邦出版 本体2300円 4-8094-0459-5
■帯文より:あなたと過ごした・・・・時の流れに置き去りにされた、ふたりの時間。あらかじめ失われたラブホテルの幻影。特別収録DVD田中昭二監督作品「欲望の光と影」。
●『廃墟、その光と影』に続く、廃墟紀行第二弾は、廃墟化した各地のラブホテルが題材。情念というものが物理的に痕跡として残存するならば、記録するのにまさに格好な対象ではあります。前作の内容の一部は「廃墟幻影」で雰囲気を覗き見することができます。

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★今週の注目ライブラリー、新書

乳母の力――歴史を支えた女たち
田端泰子著
歴史文化ライブラリー(吉川弘文館) 本体1700円 4-642-05595-9
■帯文より:〈乳母〉が歴史を動かした! 天皇、将軍、大名たちを支えたその実像! 春日局、比企尼、今参局、藤原兼子・・・。
■版元紹介文より:春日局、比企尼、今参局、藤原兼子ら歴史に名を残す乳母たち。血縁や姻戚関係が大切にされた中世において、天皇家や将軍家、戦国大名に仕え、財産の管理、授乳、後見役、政治権威の補強など、多大な影響力を持った〈乳母の力〉とは何だったのか。時代によって変化した乳母の役割と権勢を辿り、中世社会を陰で支え続けたその実像に鋭く迫る。

〈主な目次〉乳母の中世史―プロローグ/天皇家と公家の乳母(院政時代の乳母/天皇家の乳母―藤原兼子/他)/鎌倉将軍家の乳母(源家の乳母たち/源頼朝の乳母とその周辺/他)/南北朝・室町期の乳母(南北朝期の乳母の実態と乳母観/室町期の乳母/他)/戦国期の乳母/中世の乳母とは―エピローグ

ディアスポラ紀行――追放された者のまなざし
徐京植(1951-)著
岩波新書(岩波書店) 本体740円 4-00-430961-1
■版元紹介文より:生まれ育った土地から追い立てられ、離散を余儀なくされた人々とその末裔たち、ディアスポラ。自らもその一人である在日朝鮮人の著者が、韓国やヨーロッパへの旅の中で出会った出来事や芸術作品に、暴力と離散の痕跡を読み取ってゆく。ディアスポラを生み出した20世紀とは何であったのかを深く思索する紀行エッセイ。

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以上です。皆様も夏風邪にはご注意を・・・・。(H)

by urag | 2005-07-24 22:23 | 本のコンシェルジュ | Comments(0)


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