2015年 02月 09日
弊社出版物でお世話になっている著訳者の皆様の最近のご活躍をご紹介します。 ◆ジョルジョ・アガンベンさん(著書:『アウシュヴィッツの残りのもの』『バートルビー』『涜神』『思考の潜勢力』『到来する共同体』) ◆岡本源太さん(著書:『ジョルダーノ・ブルーノの哲学』) ◆柿並良佑さん(共訳:L・サラ-モランス『ソドム』) ◆本橋哲也さん(共訳:G・Ch・スピヴァク『ポストコロニアル理性批判』) ◆宮﨑裕助さん(共訳:P・ド・マン『盲目と洞察』) ◆清水知子さん(著書:『文化と暴力』、共訳:J・バトラー『自分自身を説明すること』『権力の心的な生』) ◎『ポッセ』誌の堀之内出版より新しい思想誌『ニュクス』が創刊 「新世代のための雇用問題総合誌」である『POSSE〔ポッセ〕』の発行元である堀之内出版さんが今月(2015年2月)、新しい思想誌『Νύξ〔ニュクス〕』を創刊されました。特集は「〈エコノミー〉概念の思想史――アリストテレスからピケティへ」と「現代ラカン派の理論展開」の二本立て。内容については誌名のリンク先をご覧ください。トマ・ピケティとエマニュエル・サエズの共著論文「不平等の長期的趨勢」(西亮太訳、120~139頁)をはじめ、読み応えのある論考が並んでいます。 佐々木雄大さんによる「創刊の辞」は版元ウェブサイトで読むことができます。そこで佐々木さんは「短期的な成果追求が重視される現在において、あえて古典的思考を継承することを目的とした「思想のための場」が、新たに生まれるべきではないか」と問いを投げかけ、「有用性とは別の観点から編集された媒体」の必要性を訴えられています。良い意味での「反時代性」を感じさせる姿勢ではないでしょうか。 弊社でお世話になっている著訳者の皆さんでは、アガンベンさんの論考の翻訳と解題を岡本源太さんが手掛けられ、J-L・ナンシーさんの『アドラシオン』(メランベルジェ眞紀訳、新評論、2014年)からの再録論文への解題と、ナンシーさんの別の論文の翻訳を柿並さんが手掛けられています。アガンベンさんの論文というのは、彼が共編した2000頁を越える大冊アンソロジー『天使:ヘブライ思想・キリスト教思想・イスラム思想』(エマヌエーレ・コッチャ共編、ネリ・ポッツァ、2009年)の巻頭におかれたイントロダクションで(原書11~21頁;「『天使』への序論」岡本源太訳、52-62頁)、岡本源太さんによる解題「ジョルジョ・アガンベン「『天使』への序論」を読むために」(64-68頁)が付されています。 柿並さんは「ジャン=リュック・ナンシーの「エコノミー」論――「経済〔エコノミー〕」(『アドラシオン』より)解題」(158~167頁)を寄稿されると同時に、柿並さんの質問に対するナンシーさんの回答「「救済のエコノミー」についての注記」(168~171頁)を訳出されています。 ここさいきん、他誌でも経済学関連の特集号が刊行されています。ピケティ関連書に加えて『ニュクス』創刊号や、『現代思想』2015年1月臨時増刊号「ピケティ『21世紀の資本』を読む――格差と貧困の新理論」、『現代思想』2015年3月臨時増刊号「宇沢弘文――人間のための経済」などがあります。ここにさらに堀之内出版さんの『POSSE』での好評連載をまとめた、市野川容孝・渋谷望編著『労働と思想』(堀之内出版、2015年1月、四六判並製512頁、本体3,500円、ISBN978-4-906708-56-7)や、今月下旬から来月上旬にかけて来日講演予定のマルクス研究者ミヒャエル・ハインリッヒさんの著書も堀之内出版さんから『『資本論』の新しい読み方――21世紀のマルクス入門』(明石英人ほか訳、堀之内出版、2014年)刊行されています。ピケティの売行きが好調な書店さんには堀之内出版さんの雑誌や既刊書をまとめるブックフェアが有効ではないかと思われます。 ちなみに『労働と思想』では、弊社がお世話になっている先生方による以下の論考を読むことができます。本橋哲也「【シェイクスピア】シェイクスピア演劇と労働の力学――「以降」の思想のために」(11~44頁)、宮﨑裕助「【デリダ】職業(プロフェッション)としての言語行為」(249~272頁)、清水知子「【ジジェク】二一世紀のコミュニズム――ベケット的なレーニンとともに」(453~481頁)。 +++ 雑誌に関連してあと二つ新刊をご紹介します。 ◎新しい版元「BLUE ART」が書籍第一弾を刊行 ひとつめ。芸術批評誌『ART CRITIQUE』の編集者の櫻井拓さんがBLUE ARTという出版社を立ちあげられ、書籍第一弾となる福士朋子『元祖FAXマンガ お絵描き少女☆ラッキーちゃん』を刊行されました。美術家の福士さんが1995年にFAXで配信を開始され、2003年からはご自身のウェブサイト「少女画帖」で連載中のマンガをまとめたもの。「ユーモラスでクリティカルに美術の世界を描き出す、美術家による4コママンガ」と帯文に謳われています。解説は美術批評家の林道郎さん。同書の刊行を記念し、恵比寿のNADiff a/p/a/r/tのウィンドウ・ギャラリーでは2月11日~3月29日に作品展示が行われ、2月20日(金)19~21時に著者の福士さんと解説を書かれた林さん、さらに美術家の豊嶋康子さんを交えたトークイベント「ラッキーちゃん、その可能性の周辺」が同店1F展開で行われる(入場無料・予約不要)とのことです。 ◎まもなく発表「新書大賞2015」の大賞は増田寛也編著『地方消滅』 ふたつめ。手前味噌で恐縮ですが、毎年「中央公論」誌上で発表されている「新書大賞2015」に(今年も)参加させていただきました。まもなく2月10日発売予定の同誌3月号で発表され、私のコメントは「目利き29人が選ぶ2014年私のオススメ新書」でご覧いただけます。今年の大賞受賞作が増田寛也編著『地方消滅――東京一極集中が招く人口急減』(中公新書、2014年8月)であることはすでに告知されている通りですが、大賞の贈賞式と増田さんの記念講演が年2月19日 (木) 19時より八重洲ブックセンター本店8Fギャラリーにて行われます。参加費は無料、定員は80名(申込先着順)とのことです。
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