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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 06月 21日

TRCブックポータル、8月でサービス終了

図書館流通センター(TRC)が「ブック・ポータル」のサービスを、来る8月半ばを目処に終了すると発表しています。

ブックポータルというのは、書籍検索各種とリンク集などから成るウェブサイト。検索には、「今日の新刊」「週刊新刊案内」「新刊書籍検索」などがあり、私も「週刊新刊案内」は毎週チェックしており、さいきんでは当ブログの「今週の注目新刊」が依拠するデータベースでもありました。

「新刊書籍案内」というのは、1980年1月以降に出版された日本の新刊書籍を検索できる一大データベースで、6月17日現在、 1,106,977点ものタイトルが登録されています。書影の拡大表示では他のデータベースに比類するものがなく、書影を直接確認したい読者にとっては非常に便利なものでした。

これほどまでに便利で有用なためでしょうか、TRCはブックポータルを封印する理由を以下のように述べています。

「理由といたしまして、「ブック・ポータル」における掲載内容不正コピー利用の増加、個人情報保護法の施行に伴う個人情報の保護、また著作権者に対する権利保護といった観点がございます。あわせて、図書館・出版社等の情報保護のため、「リンク集」も終了させていただきます。」

私の意見はこうです、情報保護はたしかに重要ですが、サービスを今頃になって終了するのではなく、利用や引用などのガイドラインをきちんとユーザーに提示し、アフィリエイト・プログラムなども作るなりして、サービス利用を継続するのが賢明ではないでしょうか。

もとよりTRCが掲載している書影は版元の書籍をスキャンしたものだし、内容紹介はオビやあとがき、奥付その他から再構成されたもので、TRCのスタッフが当該書籍を読んでまったくゼロから書き起こしたというような独自なテキストではありません。

いわばTRC自体が、版元に帰属する諸情報を二次的に利用したり加工しているわけなのに、どこになんの権利を主張しているのか、いまひとつ判然としません。ようするに「データベース」全体の価値というのをTRCは自己認識しているわけなのでしょう。

アメリカのアマゾンではすでに書影だけでなく、中味も立ち読みできたり、本文を検索できたりするサービスが始まっています。販売につながるならどんなことでも利用し提供しようという貪欲さがそこにはある。それとは対照的なスタンスをTRCには感じます。

個人客は今後は「bk1」を利用せよ、とのことです。折りしも本日、業界紙「新文化」では、TRCの平成17年3月期決算が増収減益だったことを伝え、「連結対象のネット書店、ビーケーワンの株式評価損5億5500万円を計上した結果、当期純利益は6億1900万円(同33・6%減)を余儀なくされた」ことが明らかにされています。bk1の今後が不透明に見えつつある昨今、一抹の不安を感じます。

TRCの「新刊書籍検索」に相当する機能は、bk1の書籍検索でもえることができます。ただし、「今日の新刊」については、bk1では自社在庫を持っているものしか表示されません。TRCのデータ総体より必然的に限定的なものになります。

そして、TRCの「週刊新刊案内」に相当するものは、bk1にはありません。網羅的ではない「今日の新刊」を我慢して日めくりしていくしかないのです。これは痛い。ユーザーにとっては実に効率が悪い。

つまり、そこにTRCのサービスの素晴らしさがあり、裏を返せばそこにTRCの利権もあるということなのでしょうか。たしかに「週刊新刊案内」はTRCが図書館販売向けに作成しているカタログ「週刊新刊全点案内」のデータ版に当たるわけなのでしょうから。

私としては「週刊新刊案内」まで消滅して欲しくないのです。売れる売れないにかかわらず、最大限網羅的な情報が、新刊大洪水時代の読書人には必要なのです。その点をTRCさんには理解して欲しいと思います。そうでなければ、「しょせん、図書館向けの商売がメインだから」と冷ややかな目で見られるのがオチだと思います。情報提供は無料にし、本の実売で稼ぐ、というビジネスモデルはすでに破綻しているのでしょうか。(H)

by urag | 2005-06-21 21:40 | 雑談 | Comments(4)
Commented by あまさき at 2005-09-05 01:59 x
TRC側からはリアクションはなかったんでしょうか
Commented by urag at 2005-09-05 11:25
あまさきさんはじめまして! リンク先の記事「新刊リストよ、お願いだからザオラル!」(9月4日付)を拝読し、心の底から共感しております。TRCからのリアクションはありません。一出版人としてTRCと付き合い、一ライターとしてbk1と長く付き合ったことがある私ですが、一読者としては先方に距離を感じています。

今まではこの話題で誰かと意見交換することもなく、ただただ孤独に思っていたので、あまさきさんの記事を知ることが出来てとても嬉しいです。週刊新刊案内の復活のためならば、何でもしたいと私は思っています。
Commented by あまさき at 2005-09-05 21:06 x
図書館流通センターから、さっそくご丁寧な返答メールをいただきました。
ごくごくかいつまめば要点は3点。
  ・長年のご愛顧感謝、でもサービスは終了しました。
  ・検索はbk1でどうぞ。
  ・印刷物の「週刊新刊全点案内」を年間5万円で購読する方法もあります。
だそうです。
とりつくしまもない。 わはは(T_T)

あと、ほかのお方から
 ヤフーの新刊案内はどうかな:http://books.yahoo.co.jp/today
との旨の示唆もいただきました。
Commented by urag at 2005-09-05 21:47
あまさきさんこんにちは。TRCの対応はトホホなものでしたね。「週刊新刊全点案内」を年間五万円で買えというのはいかがなものかと思います。「買え」とは言っていなくても、これではまるで「欲しいなら買え!」と言っているのと同じですよね。ヤフー・ブックスの「本日発売の新刊」は、bk1の「今日の新刊」よりはいいですよね。


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