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URGT-B(ウラゲツブログ)

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2005年 06月 10日

融資低金利時代と大型書店出店競争

全国書店新聞」6月1日号の「本屋のうちそと」欄では、「大手書店の大型出店攻勢は融資低金利時代の産物では」という趣旨の記事が掲載されています。

「300坪の店舗が年商1億円程では普通は経営が成り立つはずは無いと、知り合いの本屋は言う。(中略)採算分岐点が無いかのような大書店が、田舎でも成り立つのは消費者がずっと我慢している低金利のおかげだからである。日銀の福井総裁は「家計が受け取るはずだった金利収入はこの10年間の低金利下で154兆円減収した」と言った。そのお金は銀行を助け、国債を助け、大企業を助け、高額所得者を助け、税収を助け、そして低金利の融資として大型書店にその姿を変えた。」

「大型書店はこの国の消費者が本来自由に使えたかも知れないお金が、廻り廻ってその姿を変えただけだろう」。そう記者は結んでいます。文面から推察するに、書き手はおそらく小規模書店の店主さんといったところでしょうか。

大手書店の大型出店競争とその現実については、私は「[本]のメルマガ」先月25日付215号で、以下のような小さな記事を書きました。

■部外者が読んでも興味深い、業界最古参「丸善」の中期経営計画

書店業界の最古参である丸善が今月20日に発表した「新中期経営計画2005」を読者諸姉兄はもうご覧になっただろうか。まだなら今すぐ目を通すことをお勧めしたい。丸善の株主や社員でなくとも、ここに書かれてあることは重要かもしれない。書店業界の未来がほの見えてくるいくつかの示唆や傾向が見出せるのだ。

◎「新中期経営計画2005」PDFファイル
http://mis.maruzen.co.jp/home/release/2005/release20050520-2.pdf

丸善はまず現状における自社と自社を取り巻く環境に関連した問題点を次のように見ている。教育・学術市場の環境変化に伴う競争の激化。出版市場の低迷とメディアの変化。書店の大型化と競争の激化。アパレル事業の長期低迷。有利子負債の圧縮・減損会計への対応。

これらの諸問題に対して次の三つの方針が打ち出されている。1)積極的な事業の選択と集中による収益力の強化。2)市場環境の変化に対応した経営・組織体制の構築。3)財務体質の改善。

この方針をもう少し具体的に見ると、次のような計画があることが分かる。新規出店を加速させ、5年間で6700坪の増床を行い、不採算店舗は撤退させる。2007年の新日本橋店のオープンを含め、2006年から毎年1000坪規模の大型書店を1店舗ずつ展開。200坪~600坪の中型店は5店舗を予定。

ローコストオペレーションの更なる推進。パートアルバイト職の育成・増強により、社員一人当たりの担当売場面積を1.6倍にし、正社員数を増やさずに増床に対応する。

子会社店舗の運営管理を本社店舗事業部で一元化し、仕入力の強化、販売データの活用、業務オペレーションの見直しを図る。店舗ネットワークの強化。

アパレル事業の縮小。文具売場の拡大。出版事業の見直し。e-コンテンツ事業や受託出版事業の拡大。

2010年1月期までに484億円の有利子負債残高を50%以上削減。

以上は、丸善の計画の一部分をかいつまんでみたに過ぎないが、丸善特有の個別の問題ではなく総論として言えば、上記のような運営方針は、大型チェーン書店ならば、数値的指標の違いあれ、ほぼ共通した「こんにちの運営哲学」として持っているかもしれない。悲観論ではない。これが現時点での、大型書店大戦争時代の「現実的未来」だろう。

(引用おわり)

私の個人的な見解ですが、大型出店攻勢は遅かれ早かれいずれ終焉を迎える気がします。怖いのはそのあと。各地に撤退の波が訪れたときです。その波は、大型店の出店により経営的に耐え切れなくなった地元の小書店が廃業したあとに訪れるでしょう。まず小書店が消え、そして、大型店が消え、結果としてその地域では本屋さんがゼロ軒に近くなる。ダイエーが撤退したあとの各地の地元商店街はどうなっているでしょうか。あれを対岸の火事としてわが業界は眺めていられるでしょうか。私の「心配」は単なる杞憂でしょうか。

地方によっては、すでに大型書店が撤退した地域もありますから、そうした前例を学ぶ必要があります。私がここしばらく動静を見守りたいのは、300坪以上のお店の撤退劇です。いつの日か、1000坪クラスの店舗が撤退するようになってから学ぶのでは遅い気がします。(H)

by urag | 2005-06-10 21:19 | 雑談 | Comments(0)


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