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2014年 07月 16日

ウェブ連載:ルソー『化学教程』第8回

ルソー『化学教程』の翻訳第8回をまもなく弊社ウェブサイトで公開いたします。

『化学教程』第一部第一編「物体の諸要素とそれらの構成について」第一章「物質の原質について(続き)」

14 化学者の通常の五つの原質に関して言えば、少なくともそれらのうちの〔水、土、エンの〕三つは、それ自体としては混合物や化合物でしかない。「精体esprit(1)とは、精製アルコールflegmeの中に溶けている酸性のエンである。そのような溶解物が硝石の精体あるいは酢の精体である。尿中の揮発性精体とは、精製アルコールの中に溶けている揮発性アルカリでしかない。[A:11]そのような溶解物が、尿の精体であり、鹿角精esprit de corne de cerfのそれである。燃精esprit ardentとは、酒精esprit de vinまたは松精のようなエーテル性油ないし弱イオウsoufre atténué以外の何ものでもない。イオウそれ自体は、火の原質と酸から構成される。[F:19]臭いのきつい諸々の油は、精製アルコールと少しの出がらしの土terre damnéeからなるものの中で溶解した揮発性エンである。エーテル性油とは、オリーヴ油に似た粘液質でどろりとした油が、諸々のエンによって〔原質間の結合を〕緩められ、精製アルコールの中で拡散したものである。オリーヴ油と発酵している何らかの流動物質liqueurを混ぜさえすれば、その油は完全に燃精に変化するだろう。酒精2リーヴルをとって、12リーヴルの普通の水の中にその酒精を拡散させてみよう。そして、この溶液全体を空気にさらしてみよう。すると揮発性エンは〔気化して〕発散してしまう。〔この溶液の〕油性部分は、玉状に集まり、〔液体の〕表面に浮かぶ。この油性部分はあらゆる点でオリーヴ油やアーモンド油に似ている。エンに関しては、エンからは〔無味の〕水と土が得られる。〔この操作は次の通りである。〕蒸留された硝石は多量の酸精esprit acideを産み出す。だが、粉末状の酒石ないし木炭とともに硝石を燃やすと、それは〔酸精ではなく〕不発揮性あるいはアルカリ性ニトロと呼ばれるアルカリ性エンになる。[C:68]もし硝石を風化作用(2)によって液化させ、この液体を紙で濾過するならば、硝石は多くの土〔残留物〕を残す。濾過されたこの流動物質を乾燥するまで蒸留器で蒸留すると、この物質から無味の水が得られる。そのまま乾燥させられたエンはさらに少なくなる。この作業を最後まで繰り返そう。するとほとんどのエンが土に変化するだろう。〔この作業によって〕エンから消えた部分が無味の水に変わったということは確からしい」(3)。

(1)本翻訳ではespritを「精体」と訳す。espritの訳語としては他に「蒸留酒」ないし「揮発性物質」を挙げることができる。しかし、いずれの訳語にも不都合がある。後者に関して言えば、例えば本段落で使われるesprit volatilという言葉を訳すときなどに問題が生じる。また本文のespritの定義が示す通り、この語は必ずしも「酒」を指すものでもない。この点で「蒸留酒」という訳語にも問題がある。このespritという語は蒸留などの化学的操作から得られる「純化され選りすぐられた物質」を一般に意味している(例えばある作家のespritというとき、それはその作家の作品の「精選集」を意味することがある。このあたりの用法にも「純化され選りすぐられた」というespirtという語の側面が見出される)。『化学教程』においてルソーがespritという語を使うとき、多くの場合、それは蒸留を筆頭とする化学的操作によって「純化され選りすぐられた物質」を意味する。それゆえに本翻訳では単独でespritという語が使われる場合、これを「精体」と訳すことにした。

(2)セナが« si on le laisse liquéfier par lui-même »と書いている部分をルソーは化学操作の用語を用いて« si on le laisse liquéfier par défaillance »と書き換えている。

(3)ルソー原注:セナ、第1巻、9頁〔Sénac, J.-B., Nouveau cours de chimie suivant les principes de Newton et de Stahl, Paris, Vincent, 1723.なお本14段落は冒頭の一文および後続の「イオウそれ自体は、火の原質と酸から構成される」という文以外、セナの著作からの書き写しである(この書き写しの部分を引用符を用いて明示した)。右の文に関しては、ルソーはセナの著作に登場する物質名を完全に書き換えている。セナ本人によれば「イオウは水と土に分解される」〕。


・・・続きは弊社ウェブサイトで近日公開いたします。
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by urag | 2014-07-16 16:26 | ウェブ限定コンテンツ | Trackback | Comments(0)
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