★本日取次搬入の新刊です。原書は、The Man Who Quit Money(Riverhead Press, 2012)。著者の友人であるダニエル・スエロが様々な人生経験と放浪生活を経て、無所有無一文の洞窟生活へとたどり着く半生が描かれています。血湧き肉躍る冒険譚というよりは、あちこちでひどい目や悲しい出来事にぶち当たる、苦難や失敗や挫折の連続が明かされています。しかしそうした経験の中で彼の人生は研ぎ澄まされていき、彼が読む東西の名著古典や様々な考え方を持つ人びとや集団との出会いによって、さらに彼の内面は磨かれていきます。読者はスエロや著者とともにこの世界の様々な「ほころび」を目の当たりにし、自分自身の生き方と向き合うことになるでしょう。世の中のしくみに乗っかって生きている「ごく普通の」私たちは、バラバラにほどけていくしかない世界の「ほころび」とともに自分自身の生きる意味すらあとかたもなくほどけて見失ってしまうかのような不安感や無力感に襲われますが、スエロはそうした危機の中でこそ自分をもう一度見出しています。その姿から読者は励ましを得ることができるのではないかと思います。