2013年 12月 02日
![]() 弊社出版物の著訳者の皆様の最近のご活躍、新刊や書評、イベントなどをご紹介します。 ★片山広子(著書:『燈火節――随筆・小説集』『野に住みて――短歌集・資料編』『新編 燈火節』) 以前ご紹介しましたが、片山広子さん(松村みね子さん名義)がお訳しになった、フランシス・ウィリアムズ・ベインの『闇の精』が、西荻の古書店「盛林堂」さんの「盛林堂ミステリアス文庫」の最新刊として、先月下旬、ついに刊行されました。 闇の精 フランシス・ウィリアムズ・ベイン著 松村みね子訳 井村君江ほか解説 盛林堂ミステリアス文庫 2013年11月 税込1,000円 文庫判並製220頁 初版250部 内容:歴史家であったジョセフ・ベインの息子で、印度の物語を次々に十三も創造した作家フランシス・ウィリアムズ・ベイン。作品は、十九世紀末から二十世紀の初頭に出版され、もともとは、サンスクリット語による正体不明な印度古詩の翻訳をするものとして出版された。ただしこれらの物語は、ヒンドゥー教の原典または、伝説などから直接生れたものではなかった。松村みね子が示すとおり、はじめは大英博物館の印度文学部門におさめられたが、じつは創作であるとわかり他部へと移された。こうしてベインは、東洋学者としてではなく、ファンタジー作家としてベールを剥ぎ取られたが、いってみればこれらは、ビリティスと同様に悪意なき文学の悪戯であった。本邦でのベインは、松村みね子の翻訳以来、全く埋もれた幻の作家となっている。今回の復刻は、翻訳以来ほぼ一世紀のときを経て、ダーク・ファンタジーの嚆矢が、奇跡的な復活を遂げることとなる。初期のファンタジー作家としてベインをみるならば、ウィリアム・モリスや、ロード・ダンセーニと比しても、これらの作品について、魅力がないと言うことにまったくならぬ。そして、「闇の精」について言うなら、現代ファンタジーの代表作のひとつである、タニス・リーの「闇の公子」あたりにも、どっかり蔭を落す作品であると言うことが出来よう。 目次: 闇の精 序 のろわれたる姫 月の全蝕 死の接吻 終わりに 青いろの疾風 スリヤカンタの王の戀 閨秀歌人片山廣子と翻訳(長山靖生) 解説(井村君江) 綺なる印度譚(善渡爾宗衛) +++ 盛林堂さんのブログを拝見する限り、これまで盛林堂ミステリアス文庫では、以下の書目を刊行されてきたようです。今後の刊行予定も、公開されている限りのものを拾ってみました。私自身は現物を持っていないので、書誌情報が異なる場合があると思います。 ◎盛林堂ミステリアス文庫 2012年12月『アルベール・サマン名訳集成』文庫判約70頁、800円 収録作:森鴎外訳「クサンチス」、上田敏訳「伴奏」、永井荷風訳「奢侈」、大手拓次訳「秋」、岩佐東一郎訳「夜もすがら」「揺籃」。表紙絵=堀内薫 2013年04月『大阪圭吉作品集成』小林眞・小野純一編、森英俊解説、文庫判、800円、300部 収録作:「水族館異変」他3篇。表紙絵=渡辺啓助 2013年05月『少年科学小説 奇巌城』蘭郁二郎著、會津信吾解説、文庫判、1,000円、300部 収録作:「奇巌城」他4篇。表紙・挿絵=鈴木御水 2013年06月『ドワーフのホロボロスとホグバイターの剣』ロード・ダンセイニ著、稲垣博訳、未谷おと解説、文庫判、800円、200部 表紙絵=山下陽子 2013年07月『いい香のする名前――ソログーブ童話集』フョードル・ソログープ著、前田晁訳、長山靖生解説、文庫判、1,000円、200部 収録作:『翼』『いい香のする名前』『森の主』『少年の血』『捜索』『地のものは地へ』『花冠』『魂の結合者』『獣の使者』。表紙絵=堀内薫 2013年11月『闇の精――フランシス・ウィリアムズ・ベイン作品集』フランシス・ウィリアムズ・ベイン著、松村みね子訳、井村君江・長山靖生解説、文庫判、1,200円、250部 収録作:「闇の精」、「青いろの疾風」(挿絵:水島爾保布)、「スリヤカンタの王の戀」。表紙絵=谷弘兒 2013年11月『吸血鬼――マルセル・シュオブ作品集』マルセル・シュオブ著、矢野目源一訳、長山靖生解説、A5判、2,000円、250部 『吸血鬼』(矢野目源一訳、新潮社、1924年)の復刻。巻末に矢野目源一詩集『光の処女』(籾山書店、1920年)と『聖瑪利亜の騎士』(籾山書店、1925年)を併録予定。表紙絵=山下陽子『やがてはじまる対話』 2013年12月『ナイト・スケッチ』横田順彌著、長山靖生・北原尚彦・小野塚力解説、文庫判、1,000円、200部 2013年12月『屋根の上の魚――リチャード・ミドルトン作品集(仮)』リチャード・ミドルトン著、南條竹則訳・解題、東雅夫序文、文庫判、1,000円、250部 表紙絵=谷弘兒 なお、『大阪圭吉作品集成』以降は国会図書館に納本されているようで、その中にはまだ発売されていない、平井功詩集『驕子綺唱』のプルーフ版も含まれるそうです。これは以前から完全版の刊行が準備されているものかと拝察します。 ★昼間賢さん(訳書:サンドラール『パリ南西東北』) 奈良県が発行する東アジア情報誌「NARASIA Q」第5号「特集:うたうアジア」に、「歌謡曲のアジア」というご論考を寄稿されています。同誌は、企画編集=編集工学研究所、総合監修=松岡正剛、制作=丸善、による奈良県の機関誌です。「NARASIA Q(ならじあ・きゅう) vol.5 特集:うたうアジア」(奈良県、2013年11月刊、非売品、B5判並製64頁、ISBNなし)。 ★松本俊夫さん(著書:『逸脱の映像』) 弊社より9月に刊行させていただいたご高著『逸脱の映像』についての書評が「キネマ旬報」2013年12月上旬号の「映画・書評」欄に掲載されました。内藤誠さんによる書評「最先端の映像についての論考」です。「氏の言葉に襟を正す」と評していただきました。 ★森山大道さん(写真集:『ハワイ』『にっぽん劇場』『何かへの旅』『カラー』『モノクローム』『パリ+』) 弊社より昨年10月に刊行させていただいた写真集『モノクローム』を主題とした写真展が今月下旬まで武蔵野市立吉祥寺美術館にて開催されています。 ◎「森山大道 モノクローム」展 会期:2013年11月23日(土・祝)~12月27日(金)※会期中の休館日:11月27日(水)、12月25日(水) 会場:武蔵野市立吉祥寺美術館(東京都) 料金:100円(小学生以下・65歳以上・障害者は無料) 内容:日本を代表する写真家であり、世界的にもその名を知られる森山大道。粗粒子の質感や手ブレ感覚が効果を発揮した独特の表現は、60年代の写真界に大きなインパクトを与えました。その独特の切り口と強烈なコントラストが織り成す世界は、突きつけられた現実の風景からどこか妖しい非現実感を放ちます。それはリアリティのある夢さながら、その余韻に浸りたくなるユートピアであったり、いつか見たようなノスタルジックな世界であったり、ときに、後味の悪い不吉な映像であったり様々です。白昼夢のような錯覚をも引き起こすこれらの光景はどれも、残像となって脳裏に焼き付き容易く離れるものではありません。/本展では、2008年から2012年に撮影されたシリーズ〈モノクローム〉より、現代の東京に迫った作品約60点をご紹介します。人々の襞をめくるように、そして街の深奥を抉るように細部へ切り込みながらも、そこに介在する絶妙な距離感。突き放した感さえ残るその冷めた視線の先には、容赦の無い毒々しさがあり、無人の光景にさえも生々しいほどの人間臭が立ち込めています。見慣れたはずの東京に確かに存在する、見慣れない光景、その作品の前に立つ者は、目撃者のような感覚を味わうことになるかもしれません。 ★ロベール・ドアノーさん(著書:『不完全なレンズで』) 生誕百周年記念の写真展が来年1月下旬まで秋田市立千秋美術館にて以下の通り開催されています。 ◎「生誕100年記念 ロベール・ドアノー写真展」 会期:2013年11月22日(金)~2014年1月26日(日) 会場:秋田市立千秋美術館 料金:一般800円、高・大学生600円、小・中学生無料 内容:ロベール・ドアノー(1912-1994)は、ごくあたりまえの日常にひそむ小さな奇跡の瞬間をとらえ、“イメージの釣り人”と評された20世紀を代表するフランスの写真家です。彼がユーモアと愛情をこめて写し出した人間ドラマは、今もなお多くの人々に愛され続けています。/本展覧会は、彼の作品を管理保管するアトリエ・ロベール・ドアノーの全面協力のもと、その全貌を回顧するものです。代名詞ともいえるパリを舞台にした作品をはじめ、各界著名人のポートレイト、子供たち、さらに初公開となるカラー作品など、約40万点にも及ぶネガから精選した代表作約190点をご紹介します。ヒューマニズム写真家ドアノーの魅力をご堪能ください。 ★竹田賢一さん(著書『地表に蠢く音楽ども』) トーク番組やライブが以下の通り目白押しです。 ◎「三大怪人 渋谷最大の決戦!」――『〈なしくずしの死〉への覚書と断片 間章著作集II』/竹田賢一『地表に蠢く音楽ども』/山崎春美『天國のをりものが』刊行記念プログラム 日時:2013年12月12日(木)19:00~21:00 配信:DOMMUNE 出演:竹田賢一、山崎春美、朝比奈尚行(時々自動) 司会:須川才蔵、常田薫 ◎トーク&「不屈の民」ライヴ! 竹田賢一×大谷能生~うたう批評家≒かたる演奏家 日時:2013年12月14日(土)19:00~ 会場:Sound Cafe dzumi(東京・吉祥寺) 料金:2000円(ドリンク付) 問い合わせ・予約:mipon67*gmail.com(渡邊)(*を@にしてメールしてください) ◎URAMADO OUTFITS vol.6 日時:2013年12月23日(月/祝)19:30~ 会場:FORESTLIMIT(東京 幡ヶ谷) 料金:前売2300円/当日2500円(+ドリンク) 出演:ジジキ(西村卓也、中尾勘二、工藤冬里、久下惠生)/竹田賢一+ジジキ/山崎春美セッション(山崎春美、後飯塚僚、etc) /鈴木健雄ソロ/田尾創樹 ■
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by urag
| 2013-12-02 19:03
| 本のコンシェルジュ
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