このたび月曜社では来月下旬にモーリス・ブランショの政治論集(正式題名は後日公表します)を刊行する予定ですが、刊行前後には共訳者による次のようなミニ・シンポが開催されます。以下転載です。
バタイユ・ブランショ研究会 (2005年春季)ミニ・シンポジウムのお知らせ
「モーリス・ブランショ『政治論集1958-1993』 をめぐって
――アルジェリア戦争、六八年五月、戦争の記憶」
日時・場所:2005年5月28日(土)10:00~12:30 立教大学(東京都豊島区)5号館5124教室
(日本フランス語フランス文学会・2005年度春季大会第1日目の研究会枠で実施。入場無料)
発表者:
安原伸一朗(明治大学非常勤講師) :「1958-1962年 アルジェリア戦争」
西山雄二 (一橋大学博士課程) :「1968年〈六八年五月〉」
郷原佳以(日本学術振興会特別研究員):「1981-1993年 戦争の記憶」
シンポジウム内容:
2003年2月20日、作家・文芸批評家モーリス・ブランショが95歳で逝去した。それから三ヵ月後、ブランショにとっては初めての政治論集が公刊された(Ecrits politiques 1958-1993, Lignes & Manifestes, 2003. 月曜社より近刊予定)。この『政治論集』には、副題にもあるように、1958年から1993年に至るまでの彼の政治的テクストが収録されている。今回の論集には、確かに、右派ジャーナリストとして活躍したブランショの30年代のテクストは全く収録されていないものの、アルジェリア戦争期以後の彼の政治的テクストが一冊にまとめられたという点では重要な論集であるといえるだろう。
第一部にはアルジェリア戦争期に書かれたテクストが収められており、「7月14日」誌に掲載されたテクスト、「国際雑誌」の企画案、さらにはブランショ唯一のインダヴューを読むことができる。第二部には〈六八年五月〉に書き上げられたビラやアピール文、デュラスやマスコロらとともに結成した学生作家行動委員会の雑誌「コミテ」のテクストなどが収録されている。そして、第三部では、ブランショがユダヤ性をめぐって、ハイデガーやレヴィナス、アンテルムに触れながら執筆した、1981年から1993年までのテクストが収められている。
この『政治論集』からは、まず何よりも、ブランショが各時代状況に対して政治的そして文学的に格闘し、批判的な言葉を紡ぎ出している姿を読みとることができる。しかしそれだけでなく、本書には、戦後のフランス社会が現在に至るまで抱えている問題の諸相が詰まっているといえるだろう。アルジェリア戦争が突きつけた反植民地闘争とこれに参加する知識人の抵抗運動、〈六八年五月〉に突発的に生じた学生と労働者の異議申し立て運動、ユダヤ民族が被ったナチス強制収容所の災厄の記憶と忘却など、本政治論集が抱える問題系は極めて多岐にわたる。
シンポジウムでは、この『政治論集』の共訳者三人が担当セクションの解題をおこない、各々の視座から論を展開する。その後、時間を十分にとって質疑応答の時間とし、活発な意見交換の場としたい。
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皆様のお越しをお待ちしております。(H)