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2013年 07月 07日
考える人 2013年夏号 新潮社 2013年7月4日発売 本体1,333円 B5判並製264頁 JAN:4910123050836 ★発売済。目次詳細は誌名のリンク先をご覧ください。特集「数学は美しいか」では先日『ルールズ・オブ・プレイ』を完訳された山本貴光さんが縦横に活躍されています。特集のイントロダクションである「数学の愉悦を味わうために」や、ブックガイド「発見と難問の森に遊ぶ――入門から専門級まで」(48冊を紹介)を執筆され、さらに、作家の円城塔さんへのインタビュー「天才数学者は、変人とはかぎらない」や、科学史家の伊藤俊太郎さんへのインタビュー「人は数学に何を求めてきたか」、人工知能研究者の三宅陽一郎さんへのインタビュー「人工知能は数学を理解できるのか」、以上三本での聞き手をつとめ、その上、天才数学者テレンス・タオ(Terence Tao, 1975-)教授の論文「素数の研究――その構造とランダム性について」の翻訳も手掛けられています。 ★タオ教授に興味を持った方は、彼の著書『数学オリンピックチャンピオンの美しい解き方』(寺嶋英志訳、青土社、2010年)をご覧ください。あるいは、ポアンカレ予想を解決したもう一人の天才、グリゴリ・ペレリマン(Grigory Perelman, 1966-)については、春日真人『100年の難問はなぜ解けたのか――天才数学者の光と影』(新潮文庫、2011年)が一番読みやすいと思います。 ![]() ![]() 目録学発微――中国文献分類法 余嘉錫(よ・かしゃく:1884-1956)著 古勝隆一・嘉瀬達男・内山直樹訳注 東洋文庫(平凡社) 2013年7月 本体3,200円 全書判上製426頁 ISBN978-4-582-80837-7 帯文より:発微とは、わかりにくい所を明らかにすること。中国の図書分類を古代から行ってきた目録学の意義、方法、歴史を資料に即して説き明かし、学術の歴史をさし示す、入門書にして古典的名著。 目次: 巻一 第一章 目録学の意義とその効用 第二章 「目録」という名称 巻二 第三章 目録書の体制(一)篇目 第四章 目録書の体制(二)叙録 第五章 目録書の体制(三)小序 第六章 目録書の体制(四)版本の叙跋 巻三 第七章 目録学の歴史 上 周から三国まで 第八章 目録学の歴史 中 晋から隋まで 第九章 目録学の歴史 下 唐から清まで 巻四 第十章 目録の分類体系の変遷 附録一 古今の書目の分類異同表 附録二 目録要籍提要 訳注 解題(古勝隆一) 『目録学発微』の版本について(嘉瀬達男) 訳者あとがき 索引 ★まもなく発売。『古書通例――中国文献学入門』(古勝隆一・嘉瀬達男・内山直樹、東洋文庫、2008年6月) に続く、余嘉錫の訳書第二弾。「学術をまず腑分けし、それぞれの学派の「源」をつきとめ、さらにはその「流れ」がどのように展開したのかを詳しく考察する。その責任をもつのが目録編三者であり、目録はまさにその表現である、と余嘉錫は考えた。「史」官は歴史を記述する任務を追ったが、わけても、もっぱら学術を記述するのが「学術の史」たる目録家の仕事である、というわけである」(解題、381頁)。「古く「史」とは、君主の言行を記録する官僚の呼び名であった。そういう意味において、「学術の史」とは、王朝の目録を管理する官僚にこそふさわしい呼び名といえよう。余嘉錫自身、清末の科挙官僚であったから、そのような前近代の感覚を引き継いでいた、と評しうるかもしれない」(同、382-383頁)。『目録学発微』も『古書通例』も、1930~40年代に北京の諸大学での講義に用いた教科書で、いずれも著者の死後に出版されています。「書物全体、そしてその書物を成立させている学術の総体を記述しようという意欲。「学術の史」とは、そのような目録家たちの意気込みを実によく表したことばである。いつの時代にも、学術の記述が不要であるはずがない。それが今の時代にも可能であるのか否か、一考に値するのではないか」(同、383頁)と古勝さんは本書の意義を認められています。 ★今月の平凡社さんの注目新刊には以下があります。グスタフ・ルネ・ホッケ『マグナ・グラエキア――ギリシア的南部イタリア遍歴』(種村季弘訳、田中純解説、平凡社ライブラリー)、フィリップ・K・ディック『市に虎声あらん』(阿部重夫訳)、丸川哲史『思想課題としての現代中国――革命・帝国・党』。阿部さん訳のディックがすごいとの評判です。東洋文庫の次回配本(8月)は『ラーマーヤナ 7』です。 ラッセンとは何だったのか?――消費とアートを越えた「先」 原田裕規編著 フィルムアート社 2013年6月 本体2,200円 四六判並製268頁 ISBN978-4-8459-1314-5 帯文より: 癒しの「マリン・アーティスト」なのか? 究極の「アウトサイダー」なのか? 初のクリスチャン・ラッセン論。 版元紹介文より:バブル期以後、イルカやクジラをモチーフにしたリアリスティックな絵で一世を風靡したクリスチャン・ラッセン。その人気とは裏腹に、美術界ではこれまで一度として有効な分析の機会を与えられずに黙殺されてきた。/本書では、ラッセンを日本美術の分断の一つの象徴と捉え、徹底した作品分析と、日本における受容のかたちを明らかにしていく。/ラッセンについて考えることは、日本人とアートとの関係性を見詰め直し、現代美術の課題をあぶり出すことに他ならない。美術批評をはじめ、社会学、都市論、精神分析など多彩なフィールドに立つ論者15名による、初のクリスチャン・ラッセン論。 ★発売済。目次詳細は書名のリンク先をご覧ください。執筆者は、斎藤環、北澤憲昭、大野左紀子、千葉雅也、大山エンリコイサム、上田和彦、星野太、中ザワヒデキ、暮沢剛巳、土屋誠一、河原啓子、加島卓、櫻井拓、石岡良治、の各氏です。2012年8月に日本橋馬喰町のギャラリーCASHIで催された「ラッセン展」での問題提起を引き継ぐ論集です。この展示で行われた問題提起というのは次の通りです。「ラッセンの作品を「現代美術」然に額装したり、公募団体作家の作家に額装を取り外してもらうことなどによって、作品を尊重する視点もしない視点もフレーミングに左右されてしまうのではないか」(12頁)。「究極的には、ラッセンをめぐる問題を現代美術の課題として捉え、浮上しては沈没していくげんせつの円巻に終止符を打つため、問題を歴史化することを志向する展覧会だった」(13頁)。 ★本書に論考「美術史にブラックライトを当てること――クリスチャン・ラッセンのブルー」(『美術手帖』2012年10月号掲載「美術史にブラックライトを当てること」を大幅加筆修正)を寄せた千葉雅也さんは、先月末発売された『現代思想』2013年7月号(特集:ネグリ+ハート)で、連載「アウト・イン・ザ・ワイルズ」の最終回を発表されています。いずれこの連載は単行本化されるものと思われます。また、すでにtwitter上で予告が出ていますが、千葉さんは博士論文を書き直したドゥルーズ論『動きすぎてはいけない──ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』を今秋に某版元から上梓される予定です。 ★なお本書の装幀を手掛けられた宇平剛史さんは、弊社が先月刊行した、リピット水田堯『原子の光(影の光学)』の装幀を担当された新進気鋭のデザイナーです。 +++ さてすでに2013年も上半期が瞬く間に過ぎてしまったわけですが、当ブログで取り上げた本の中では、熊野純男さんによるハイデガー『存在と時間』(岩波文庫)の新訳刊行開始(カントの三批判書の新訳刊行と並行するという快挙)、中山元さんのカント新訳第4弾『実践理性批判』(光文社古典新訳文庫)、イルミナティ創始者のアダム・ヴァイスハウプトの本邦初訳(『秘密結社イルミナティ入会講座〈初級篇〉』KKベストセラーズ)、ソシュールの『一般言語学著作集』(岩波書店)の刊行開始、ネグリ+ハートの『コモンウェルス』(NHKブックス)刊行による三部作完結とネグリの初来日、など色々話題がありました。 しかしながら当然、当ブログで記事にできたものがすべてなのではありません。例えば、京都大学学術出版会「西洋古典叢書」の記念すべき通巻100巻目、ヘシオドス『全作品』(中務哲郎訳)が5月に刊行されたのは実に素晴らしいことで、慶賀に堪えません。6月に刊行された2点、中央公論美術出版から刊行された下村耕史編著『アルブレヒト・デューラー「築城論」注解』や、共立出版のイースリー+クラインバーグ『ネットワーク・大衆・マーケット――現代社会の複雑な連結性についての推論』はいずれも一万円を越える高額本ですが、長らく書架に収められるだろう意義深い出版でした。 3月にありな書房から刊行されたピエトロ・ベンボ『アーゾロの談論』(仲谷満寿美訳・解説)も、同様に貴重なルネサンスの古典の翻訳出版です。今月発刊開始となる勁草書房「Bibliotheca Hermetica叢書」(第一回配本は榎本恵美子『天才カルダーノの肖像――ルネサンスの自叙伝、占星術、夢解釈』)については遠からず改めてご紹介します。また、いよいよまもなく工作舎さんからキルヒャーの『普遍音楽』が出ます。7月12日取次搬入と聞いています。A5変型判上製448頁で4800円というお値打ち価格。造本はもちろん工作舎さんですから、間違いなく美しい本のはずです。ケプラー『新天文学』の予告と表裏一体のチラシも絶賛配布中とのことです。 ネグリやラトゥーシュらの訳書や来日で賑わう一方、3年前に死去したダニエル・ベンサイドは5月に新刊が2点も出ました。『未知なるものの創造――マルクスの政論』(渡部實編訳、同時代社)、『マルクス取扱説明書』(湯川順夫ほか訳、柘植書房新社)。続いている、と言えば、クリシュナムルティの新刊がここ三カ月ほど立て続けに出ています。『伝統と革命――J・クリシュナムルティとの対話』(大野純一訳、コスモスライブラリー、2013年4月)、『スタンフォードの人生観が変わる特別講義――あなたのなかに、全世界がある』(中川吉晴訳、PHP研究所、2013年5月)、『愛について、孤独について』(中川正生訳、麗澤大学出版会、2013年6月) 。 少し変わり種かもしれませんが、4月発売のデビッド・アダミー『電子戦の技術 基礎編』(河東晴子ほか訳、東京電機大学出版局)は、非常に興味深い本で、現代戦争を考える上で欠かすことのできない文献ではないかと思われます。続編を期待したいです。6月発売のD・R・ヘッドリク『インヴィジブル・ウェポン――電信と情報の世界史1851-1945』(横井勝彦・渡辺昭一監訳、日本経済評論社)と併読すると、「見えない武器」と「見えない戦争」の時代に生きる私たちの未来に何が待ち構えているか、ヒントが得られそうです。さらに2月発売のエリック・ブリニョルフソンとアンドリュー・マカフィーの『機械との競争』(村井章子訳、日経BP社)の視野も加えれば、この戦争が人力によるインテリジェンスではなく、人力不要のアルゴリズムによって自動化された機械的監視、妨害、攻撃によって地上が全面的に覆われる時代を想像することもできるかもしれません。そして私たちはいずれ2045年問題(いわゆる技術的特異点)に直面するのでしょうか。 シリーズものでは、二つ、注目したいものがあります。一つ目はビジネスマン向きに作られているPHP研究所の古典「新訳」シリーズで、今年、2月に『新訳 荘子』(岬龍一郎編訳著)、4月にカエサル『新訳 ガリア戦記』上下巻(中倉玄喜訳解説;2008年単行本の普及版)、6月に道元『新訳 正法眼蔵』(ひろさちや編訳)が刊行されました。名著への親しみやすいチャンネルとして、読者層を広げておられます。二つ目は、みすず書房の「大人の本棚」シリーズです。4月にクライスト『こわれがめ』(山下純照訳)、5月にバーネット『白い人びと ほか短篇とエッセー』(中村妙子訳)ならびに、ホイットマン『草の葉 初版』(富山英俊訳)と、目を瞠るような書目を連発されています。どちらのシリーズも、役割をきちんと地道に果たされ続けるその姿勢に感銘を覚えます。 みすず書房さんではまもなく、マッシモ・カッチャーリ『死後に生きる者たち――〈オーストリアの終焉〉前後のウィーン展望』(上村忠男訳、田中純解説)を刊行されます。また、8月にはなんと、オットー・ランク『出生外傷』(細澤仁・安立奈歩・大塚紳一郎訳)が出るとのことで驚いています。さらに9月には、大島かおり訳『アーレント ユダヤ論集成』2巻本が予告されています。一方、岩波書店さんでは、8月29日発売予定でヴィトゲンシュタイン『哲学探究』(丘沢静也訳)が46判512頁で出るそうです。丘沢さんは『反哲学的断章――文化と価値』(青土社、1981年;新装版1988年;新版1995年;改訂新版1999年)以来のヴィトゲンシュタインですね。
by urag
| 2013-07-07 23:54
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