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2013年 06月 04日

「週刊読書人」にショルカル『エコ資本主義批判』の書評

「週刊読書人」2013年5月17日号に、弊社昨年11月刊、ショルカル『エコ資本主義批判――持続可能社会と体制選択』の書評「実現可能なエコ社会主義とは――長期の社会転換をめざして」が掲載されました。評者は富山大学経済学部学長の小倉利丸教授です。小倉先生、ありがとうございます!

「ショラル・ショルカルが本書で念頭に置いている「エコ資本主義」の主要ターゲットは、ドイツが資本主義を前提として推進しつつある「エコロジー」政策やドイツのエコロジー社会・政治運動を支えている理論と思想への徹底的な批判であるといってよい。〔・・・〕エコロジーを資本主義の枠組を維持したまま実現可能であるというコンセンサス〔・・・〕、著者が厳しく批判するのは、まさにこうしたコンセンサスそのものである。/エコロジーに基づく資本主義の優等生であるだけでなく、EUの基軸国としてユーロ圏がかかえる経済的な苦境を唯一回避しつつ西ヨーロッパの「経済大国」の地位をも維持しているドイツにおけるエコ資本主義の楽観論を排し、いかにこれが不可能であるかを、説得力をもって論じてみせた。言うまでもなく、ドイツがダメであれば、他の諸国もおしなべて資本主義的なエコロジー社会を実現することなどできようはずがない、と断言してもよい」。

「著者が提起する資本主義に代替する社会システムは、産業主義や市場経済に依存しない持続可能な社会主義であるが、この言葉だけをとれば、いったいどこに「ラディカル」なスタンスがあるのか疑う向きもあるかもしれない。本書はドイツのエコ資本主義をターゲットにしていると述べたが、実は、本書の最初の三つの章は20世紀の社会主義の失敗についての徹底的といっていい批判的総括にあてられている。更に後半部分では、市場社会主義への批判や著者自身も関わったドイツの「緑の党」をめぐる論争に言及しており、資本主義を選択肢から外しただけでは不十分であり、同時に、エコロジー社会主義の理念な枠組を組みたててゆく。/本書を読み進めるなかで、これまで提起されてきた近代社会に妥協的なエコロジー社会の選択肢が次々と却下されていく有様は、独断に偏らず、論理を大切にする著者の姿勢もあって、なかなか爽快なものである」。

「では最後に何が可能なエコロジー社会主義として残されることになるのか? 本書の最終章で描かれる社会像は、進歩や文明の前提をあえてリセットしたプリミティブな社会像であり、これは、わたしの関心と深く重なりあう。問題はもはや経済の領域にとどまっては解決できず、文化や価値観、道徳の問題など世界観そのものの転換が要求される。だから、エコロジー運動が既存の政治の枠に縛られた「選挙運動」の類いに回収されることを危惧し、大衆的な支持を失ってでも長期の社会転換の展望を捨てるべきではないということを強調する。これはまったく正しい。〔・・・〕真摯にエコロジー社会を構想する活動家や市民の皆さんには是非手にとってじっくり読んで欲しい一冊である」。

by urag | 2013-06-04 16:13 | 広告・書評 | Comments(0)


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